【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

蛍光灯

2011-10-09 18:39:58 | Weblog

 「デジタル時代」になって意外だったのは、器機の起動やシャットダウンに時間がかかるようになったことです。アナログのようにスイッチポンとはいきません。スイッチを入れてしばらく経ってからやっとテレビが映るようになったり、器機のスイッチを切るのに数秒間パワースイッチを押しっぱなしにする必要があったり。私はぶつぶつ言います。「昔の蛍光灯か?」。そういえば「けーこーとう」が悪口として使われた時代もありましたっけ。だけど最近の蛍光灯は、けっこう早く点きますよねえ。時代が進んだのか逆戻りをしているのか、一体どちらなんでしょう?(そういえばパナソニックのBDレコーダーが「一秒で起動」をウリにしていますが、それでも「一秒」かかるんですよねえ)

【ただいま読書中】『地球の長い午後』ブライアン・W・オールディス 著、 伊藤典夫 訳、 ハヤカワ文庫SF224、1977年(98年19刷)、640円(税別)

 遙かな未来。潮汐によって自転が止まった地球の大陸は、ジャングルに支配されていました。体格が現在の数分の一に矮小化し知能もほとんど失った人類は、ジャングルの中でも比較的危険が少ない「大地」と「頂」の中間地帯にかろうじて生きています。危険とは……人くらいの大きさのトラバチ、毒の棘を持つイラクサゴケ、根と茎が鞭の跳蔓(トビツル)、木の皮に偽装して獲物を待つ食肉植物鬼喰(オニクライ)……まるで想像力の限界に挑戦するかのように、まだまだ奇怪な「危険」が次々登場します。一番派手に見えるのは、ツナワタリ。まるで蜘蛛のように張った糸の上を移動するさしわたしが1マイルもある巨大な気球のような植物ですが、その“蜘蛛の巣”は地球と(静止した)月との間に張られているのです。
 月世界がまた奇っ怪です。ドリトル先生の月世界を兇悪にしたもの、と言ったらいいかな。ツナワタリが運ぶものでテラ・フォーメーションされてしまった月の表面では、人類も生存可能ですが、地球の食肉植物もまた同様に生存可能なのです。ただし、地球に適応した植物は月では勢いがそれほどありません。しかし人類は新しい環境にも適応できます。そこで彼ら(月に住む人類)は、人類の覇権を取り戻すために地球を襲撃する計画を練ります。
 いやもう、のっけから大風呂敷の大展開。ここまででまだ60ページ行ってませんよ。
 さらに地球では別の「計画」が進行していました。知能を持つ寄生植物アミカサダケが、人類を支配して、自分の知能と人類の肉体とを合体させて地球の覇権を得よう、と目論んでいたのです。それまで知能がない生き物にしか寄生したことがなかったアミガサダケは、初めて人類に寄生して、その可能性の大きさに狂喜します。これで全地球の支配も夢ではない、と。しかし、アミガサダケの目論見は狂いっぱなしとなります。せっかく取り憑いた女の子はあっさり死んでしまうし、男の子の方はアミガサダケの指示に逆らってばかり。このへんのぎくしゃくぶりと「アミガサダケ+男の子」がどんどん“不幸”な環境に追いやられていくところは、はらはらドキドキであると同時に大笑いでもあります(決してユーモアSFではないんですけどね)。
 生態学的にはちょっと(相当)無理がある設定ではありますが、いやもう、面白いからすべて許しちゃいます。読んだことがない人はぜひご一読を。読んだことがある人も、ぜひ再読を。



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