「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

日本と世界のリアル状況確認と僕の思索を書き留めるブログ。
重要なことはメルマガで展開していますので、ご購読下さい。

長井健司を金儲けの道具にする「集英社」と明石昇二郎氏①

2009-08-28 07:15:57 | その他
スタートはおととしのことになります。

長井健司を巡る書籍は
もともと署名数を飛躍的に増やす方法はないとかと
会の中で議論に議論を重ねた際に
僕がアイディアとして
長井さんに関係する書籍を出し、
その書籍の中に
送料負担を出版社側で負担した形で
読者カードハガキを挿入し、
そのハガキの下半分を
この活動の署名用紙にして署名を呼びかけるという
スタイルのものを作れば、
本の実売部数の
六割くらいは署名が集められるのではないかと
考えたからです。
そのためには本の存在を一般に
分かりやすくするために
一定以上の部数で出すことや(最低一万部想定でした)、
本自体の中身のグレードを上げた上で
エンターティメント的にも
面白く読める本に仕上げたいと考えていました。
本の方向性は、
僕や
宗教学者の島田裕巳さんらと話しながら
決めていきました。
版元がクリアする条件が多いため
(葉書送料負担を強いること、
さらに厳しい出版情勢の中でこの類の本に初刷り一万部スタートを
課すことなど)、
我々のネットワークと縁がある
サイゾー社より出版することになりました。
というかサイゾー社が
頑張ってこの条件を引き受けるというところから
話が始まりました。
もちろん当初から会の編著として
会の名義で出版することは
既定の路線で
著作権も会が握ることは前提の話でした。
ここで当時活動が活発で
ほとんど僕が書く時間はなく、
執筆協力のライターを立てたほうがよいという話になり
明石氏をそのライターに選びました。
紙ではないメディアの仕事で
僕は明石氏と関係があり、
そこでは特に彼と問題も生じておらず、
ライターとしても長年実績があるため
あくまで発注仕事として
彼に依頼をすることにしました。

ここで、彼のリスクや能力を
もっと冷静に冷徹に見極めることができなかったのが
今回の僕の最大のミスだと考えています。
みなさん、申し訳ありません。

印税の割合の話になります。
ほとんど、会が元データを提供し、
企画立案、どういう感じで書いてゆくのか、
中身の細部まで細かくチェックし、
タイトル、章立てなどもこちらで作っていく作業をし
表現加筆も加えることが前提で、
そのために当該ブログからの転用も全面的に認めました。
当然中身の大半は会のオリジナル部分がほとんどため
会の編著ということになります。

一義的に会が全て印税を受け取って
明石氏に執筆協力費を定額払って済ませても
良かったのですが
こちらは悪意がまったくないし
明石氏にも通常のゴーストよりも
きちんとしたリターンがかえるほうが良いだろうと
明石氏のことも考え、
印税を会と明石氏で折半することに致しました。
この印税も通常の10パーセントより上積むことで
特例としてサイゾーと合意があり
明石氏には6から7パーセントの印税が
わたる予定でした。

なお、会の印税は、一万部、1300円だと
7パーセントで約90万円。
十万部でれば900万円となります。
一万部程度なら
会の予算として
篤志家からのサポートで運営した部分を
自前にできるかもとも思いましたし
万が一、十万部近く売れれば、
APFなどとも話をしていた
「長井健司賞」を日本で創設する
元金になるのではとも思いました。

実際の編集会議の中で
本の名義に関して明石氏から
「自分の名義では出版は無理なのか」という打診が
ありましたが
そもそもこの本は会の名前で出さなければ
意味がないし、
前提として署名葉書の挿入があるし
反対活動を知ってもらう目的だと話しました。

執筆協力としては名前は入れますが
あくまで会の編著ということで
僕やサイゾー社および明石氏知人のフリー編集者、
明石氏との会議でも合意しました。

さらにテープおこしや愛媛などの取材費用、
及び他の仕事ができないので印税を前払いして欲しいなど、
明石氏から金銭請求が原稿の完成前から
出版社側に頻繁にあり
実費以外にも一定額を明石氏に事前に支払っていると
聞いています。
僕のところにも
「この本の執筆期間に他の仕事ができないので
先に応分に出してくれ」と再三再四
要求がありました。

本はサイゾーから実際、出版されていないのですから
実費はともかく、印税の前払いなど
ありえないことなのですが、
少なくともこれまでに支払は
実費含め総額で130万円に
及んでいると聞いています。
つまり仮に本が一冊1300円としても
一万部の七パーセント印税は90万円程度。
他実費たしての金額と考えると
出てもない本にサイゾー社は
130万円の赤字を抱えていることになります。

金銭的にもこちらに非がないどころか、
過剰に対応している状態です。
僕はこの支払の経緯を
実はリアルタイムで
すべて正確に捕捉していなかったため
支払総額を後で知って
「えっ。まだ販売前にこんなに払ったの。まずいよ。」と
後でかなりびっくりしたくらいです。

ある意味、こちらサイドが
金払いが良すぎたことが
この状況を招きました。
もちろん会のお金からは支出されていませんが
(会には全くお金がありませんので)、
大変な目にあった、サイゾー社やサイゾー社のオーナーには
僕は本当に申し訳なく思っています。

この編集過程の中で、
いくつかの食い違いがおきています。
これが、今回の遠因になると思うのです。

まず
長井さんを追うスタイルという本の形からして
できればミャンマー国内の取材、
安全上の問題から断念するとしても
バンコクやタイ国境での
取材をおこなっていかないと、
本の根幹部分はできないのではということを
会も出版社側も明石氏に伝えました。
もちろん全ての経費は
出版社や会のサイドで見るというのが
前提の話です。
取材先についても会の側でコーディネーションを
行うことも前提で話しました。

僕はいまだによくわからないのですが
明石氏は
「ミャンマーには行かない。危険すぎる。」と
いわれました。
というか、言い張られ続けました。

明石氏はルポライターですが
しかしながら
万人の誰もが知るほどのルポライターでは
ありません。
我々の会に参加もしていません。
はっきりいって一般の方となんらかわりません。
組織ジャーナリストなら
所属会社でビザがおりないことも
考えられますが
普通にビザがおりる方が可能性が高いと思います。

どの程度取材するかによりますが
例えば、長井さんの狙撃地点がわかる
立橋の上に立つことや
泊まったホテルに泊まることくらいまでなら
当局の監視はつくことはあるでしょうが
たぶん大きな危険なく
ある程度までの取材なら
できるだろうとぼくらは判断しました。

しかしながら
「行かない」の一点張りです。
こちらも
「この人は長井さんのことをきちんと
取材するつもりがあるのか」という
疑念がもたげてきました。
しかしながら譲るべきところは
譲って、話をしなければとも思い、
長井さんが取材拠点にした
バンコクや
反軍政の拠点があるタイ・ミャンマー国境は
それでも最低取材しないというと
「それは行ってもよいのだけど」と
言いながらスケジュールがなんだのと
言い訳をし続けられ
一向に重い腰が上がる気配すらありません。

間違わないでいただきたいのですが、
取材費はすべてこちらが出すことは前提の話です。
取材先のコーディネートもこちらがする感覚です。
「こいつ本当にちゃんとやる気があるのか」
僕の中で疑念がさらに高まりました。

(この項続く)