歌舞伎座には多くの名画があって、その中でも特に私が好きだったのは、二階の西側の回廊に飾られている、松林桂月の桜の絵だった。
墨一色と胡粉で描かれた満開の桜、その枝の向こうからさやけく顔をのぞかせる、朧月がほんのり輝いている。
墨の濃淡で、春の朧夜のにおい立つような、何とも言えない、甘く切ない春の宵のかぐわしさが描き出されていて、心底酔った。墨だけでこのような風情が表し得るものなのかと、びっくりし、感服した。
歌舞伎座のコレクションはたくさんあるから、時々掛け替えられる。ここ数年は見かけたことがなく、お別れの前にもう一度あいたいものだなあ…と残念に思っていた。
写真は平成の7年前後だったろうか、本興行とは別の、長唄関係者の追悼記念公演があったときで、長唄協会から贈ったスタンド花の傍らで、同日撮った写真が出てきたので、たぶん、そのころだと思う。
何かの展覧会で、北の丸の近代美術館でこの絵にあった時にはちょっとびっくりした。
もう記憶が定かでなくて申し訳ないのだが、歌舞伎座から貸し出したものだったのか、桂月作品の模写がもう何枚かあったのか、そのときは腑に落ちた解説を読んだような気がするが、もう思い出せない。
墨一色と胡粉で描かれた満開の桜、その枝の向こうからさやけく顔をのぞかせる、朧月がほんのり輝いている。
墨の濃淡で、春の朧夜のにおい立つような、何とも言えない、甘く切ない春の宵のかぐわしさが描き出されていて、心底酔った。墨だけでこのような風情が表し得るものなのかと、びっくりし、感服した。
歌舞伎座のコレクションはたくさんあるから、時々掛け替えられる。ここ数年は見かけたことがなく、お別れの前にもう一度あいたいものだなあ…と残念に思っていた。
写真は平成の7年前後だったろうか、本興行とは別の、長唄関係者の追悼記念公演があったときで、長唄協会から贈ったスタンド花の傍らで、同日撮った写真が出てきたので、たぶん、そのころだと思う。
何かの展覧会で、北の丸の近代美術館でこの絵にあった時にはちょっとびっくりした。
もう記憶が定かでなくて申し訳ないのだが、歌舞伎座から貸し出したものだったのか、桂月作品の模写がもう何枚かあったのか、そのときは腑に落ちた解説を読んだような気がするが、もう思い出せない。