日々、思うことをサラサラと。

日頃、イイな、とかおかしいゾ、とかキレイだなと思うことをサラサラと書き出してみたい。

あるピアニストの話

2019年02月24日 | 喜怒☆楽
そのピアニストの名は松岡三恵さん。


読売新聞(2/23付け)芥川喜好さんのコラム「時の余白に」で紹介されている。
ここひと月ほど折に触れて一枚の(三恵さんの)CDを聴いていたという。
30年近く前のリサイタル時が音源のCD。現代はテクニックの際立つあざといものも少なくなく
心打たれることも稀になってきたというその耳に、その音は驚きの経験であったと。(ショパン・リスト・シューマン)

17歳で名だたる音楽コンクールで優勝(ちなみにその時の2位はフジコ・ヘミングさん)その才能に称賛の声が上がる。
そして驚くことにそれまでの8年間、三恵さんは自分のピアノを持っていなかったというのです。
資産家であった実家は空襲で全てを失い、彼女は学校のピアノを借りて(時にロウソクの灯で譜を読み)弾き続けた。
その事実を知ったヤマハ(音楽会協賛社)の社員であった”石井さん”は社長にピアノの無償貸与と奨学金支給を得られるように
直訴し、そこをきっかけにやがて三恵さんの前にはピアニストとしての前途洋々の道筋が見えてくるのです。

だが、三恵さんは26歳で石井さんと結婚を機に表舞台から身を引きます。
「もともと華やかなものに興味はなく、目立つことを嫌っていた。
日常を心豊かに暮らすことに価値を置いていた。私も賛成でした」と石井さんの言。

大学教師や音楽関連の仕事の道を遠ざけたのは「楽しいはずの音楽」が出来なくなるから。
柔軟さを欠く日本の学校教育・文部行政には不信感を持っており、規律に縛られることを避けたという。

それでも三恵さんの元には個人レッスンを希望する生徒さんが集まってくるようになる。
その教え子たちは今それぞれ国内外に散らばり、国際的に活躍する方も音楽教師もいるという。
三恵さん没後(2015)、教え子だった方が「先生の録音はないのですか」という言葉に、石井さんは遺品の中から
蘇らせたテープがこのCDなのです。

最後に芥川さんはこうコラムを結びます。
「あり余る才能を、自分が脚光を浴びるためではなく、音楽を通して人を育てるため、
落ち着いた豊かな日常を生きるために、惜しみなく使ったひと。見事な生涯というべきです」・・・と。

(ほぼ、芥川さんの言葉をお借りして”名コラム”を無謀にも短く要約しました
早速、このCDを聴いてみたいと思い、各サイトを探したが「お取り寄せ」状態ばかり(品切れの可能性大)
果たして私はこのCDを聴くことができるだろうか。





月1回第4土曜日に掲載されるこの芥川喜好さんのコラム「時の余白に」を毎月とても愉しみにしている。
主に美術関連の記事を書かれているが、その記事から派生する人物背景の景色が鮮やかに伝わってくる。
その文章には心惹かれる。語彙の嵌めかたがスっと綺麗に立ち上る。


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連日のアッバス・キアロスタミ監督

2019年02月16日 | 映画
今、連日この映画監督作品に没頭している。
イランの知る人ぞ知る監督です。
「桜桃の味」1997年



不覚にも、20年(?)近く前にこの監督作品(桜桃の味)に触れておきながら途中でリタイアした経緯あり、です。
あぁ、あの頃の私には・・・と振り返ってみると、この作品は無理だっただろうなと思う。
ほぼ、車内の男と土埃の立つ色彩の乏しいジグザグ道の映像でのみ撮られている。
どこか不穏な空気を漂わせながら”協力”してくれる人を探している。
幾人か出会った男たちとの素朴な会話が沁みる。貧困の中にいておよそ「欲」とは無縁な心象風景。
最後に出会った老人の話が素直にスッと胸深く沁みてくる。

「桜桃の味」の10年前に素晴らしい作品を制作している。
 「友だちのうちはどこ?」1987 


「そして人生はつづく」1992

 「オリーブの林をぬけて」1994

と監督の3部作と言われている。どの作品も後の「桜桃の味」に繋がってくるような風景を持っている。
じっくり、じわりと効いてくる画面とセリフです。地元の素人さんを役に起用しているせいか
ドキュメンタリーのような味わいがある。
特筆すべきはラストの素晴らしさです。どの作品も印象深いけれど「友だちのうちはどこ?」の
ラストは殊に秀逸です このラストは一生涯忘れないだろうな。
綺麗な花が辺り一面一瞬で開花したようなそんな余韻が残った。

”地味”な映画ゆえ、じっくり腰を据えて見る覚悟は必要かも。
ただ、嵌ったら虜になるでしょう。


他に日本で撮影した「ライク・サムワン・イン・ラブ」2012年。出演:高梨臨・加瀬亮
これは高梨臨がとてもいい演技をしていた。援助交際をしている不穏な空気を纏った女学生
を好演している。恋人役の加瀬亮もちょっと危なくて怖い。

後は「スタンド・アップ」が観たいのだけどなかなか手に入らない。
ラストを絶賛するコメントが多く(おぉ、この監督のラスト)、観たいみたい




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凄いなぁ、宇野くん、紀平さん

2019年02月11日 | フィギュアスケート
4大陸選手権にて、宇野昌磨くん、紀平莉花さん優勝!

この4大陸選手権はロシアが含まれていないので関心の薄い大会だったのだが・・。
(上記二人の万全ではない調子も伝えられていたし)
今回はどちらも全く期待していなかったこともあり録画放送はパスするつもりでいた。
が・・・夕刻のニュースで逆転優勝の報が入る
紀平さんに至ってはほぼパーフェクトだったという。

紀平さんの冒頭完璧な3アクセル。こんな危なげないすっきり綺麗に決まった3アクセルは
私の目には初だな(着地の綺麗さときたら
そして宇野くんは落ち着いた気迫を感じられた。
羽生くんもネイサン・チェンも欠場しているがフリーで世界最高点を勝ち取ったのだから
立派です
それにしても二人のメンタルの強さに驚く。メンタルの強さは最大の武器。


紀平さんも三原さんも演技後、会場のスタンディングオベーションを受けている。
あの目の肥えたアメリカの観衆からの・・
会場で生で観ていると、TV画面で見る採点以外のところで選手の思いが微妙に
伝わることがある。いかにその曲目に同化して演技しているか技術面プラスαが加味されて
観衆に起こる現象。今回、この大会ではスタンディングオベーションが多かったような気がする。





ジェイソン・ブラウンはイメージチェンジ成功ですね、変わりましたっ
もう、この選手の演技(ダンスセンス)大好物です








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ありふれた奇跡・・再び

2019年02月10日 | 喜怒☆楽
「ありふれた奇跡」2009年1月期~放送/連続ドラマ・11話
脚本・山田太一  主演:仲間由紀恵 加瀬亮

2009年の作品。あれから10年が経ち、またフッと見たくなった。
 冒頭、陣内が駅のホームに佇んでいる。それを何気に見た加瀬亮と仲間は”フツー”ではない何かを察知する。
先に予感としてある飛び込みを阻止しようと二人は駈けつける。この二人はどうしてフツーの景色の中からそれを察知
できたのか?
やがて固く蓋をして今を懸命に生きる二人の感情が解きほぐされていく。メール文として伝えられる二人の言葉のやりとりが好きだ。
抑制の中にある瑞々しい感情、お互いの傷に触れまいとする優しさ、シンプルな短い言葉で潔かったり包んだりする。
家族の関わり方も抑制がほどよく効いている。
エンヤの挿入曲が心地よく響いてきて、ロケーションのカットも秀逸。



ここ暫くTVドラマで継続して見たいと思う作品が出てこない。
気になる俳優・脚本家の情報が入ると1~2回は見てみる・・が、ほぼそれだけで終了の作品ばかりが
続いていた(一週間に一作でもワクワクして待つようなドラマがあると気持ちが湧き立つ)
そこで過去作を振り返ってみると、やはり断トツで脳裏に浮かぶのが「ありふれた奇跡」なのだ。
山田太一さんの脚本の素晴らしさに脱帽する。
配役に至っては適材適所これ以上ないくらいの見事な人選だった
加奈(仲間由紀恵)の家族:父(岸部一徳)母(戸田恵子)祖母(八千草薫)
翔太(加瀬亮)の家族:父(風間杜夫)祖父(井川比佐志)離婚した母(キムラ緑子)
他に陣内孝則、松重豊・・・・。全ての俳優が見事な演技をしていた。
キャスト同士の混ざり具合が絶妙の調合なのだ。
加奈と翔太、父親同士の秘密の会話、祖父と祖母の在り方、真逆の母親たち・・・などなど
全ての立場の登場人物に真摯に向き合っている。
シンプルな会話と抑制の効いた演技の中、各場面の人の景色が綺麗だ。
(殊に祖母役の八千草薫の各登場人物とのそれぞれの場面はどこを切り取っても素晴らしい)

加瀬亮も仲間由紀恵もこの作品で「役者冥利に尽きる」と言っても過言ではないのではないか



余談
ツタヤディスカスの期間1か月レンタルで週に2話づつ見ようと思っていたが、二日で夜を徹して見尽してしまった。
夢中でした。


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雑感いくつか

2019年02月04日 | 喜怒☆楽
恵方巻の豪華版が止まらない。
一本にいくら・まぐろ・カニ・・・etcって
これを一度に口の中に放り込んで(混ぜ込んで)どんな味がするの?
私はダメだな。ゾっとする。
シンプルに大好きな卵とかんぴょうと胡瓜の太巻をいただきました。


新井浩文さんの逮捕。
ずっと注目してきた俳優さんだった。映画でもドラマでも独特の個性で旬到来していたのに。
やっとここまで登り詰めてきて・・・残念だ、残念。
惜しい俳優を失っってしまった。




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