そのピアニストの名は松岡三恵さん。

読売新聞(2/23付け)芥川喜好さんのコラム「時の余白に」で紹介されている。
ここひと月ほど折に触れて一枚の(三恵さんの)CDを聴いていたという。
30年近く前のリサイタル時が音源のCD。現代はテクニックの際立つあざといものも少なくなく
心打たれることも稀になってきたというその耳に、その音は驚きの経験であったと。(ショパン・リスト・シューマン)
17歳で名だたる音楽コンクールで優勝(ちなみにその時の2位はフジコ・ヘミングさん)その才能に称賛の声が上がる。
そして驚くことにそれまでの8年間、三恵さんは自分のピアノを持っていなかったというのです。
資産家であった実家は空襲で全てを失い、彼女は学校のピアノを借りて(時にロウソクの灯で譜を読み)弾き続けた。
その事実を知ったヤマハ(音楽会協賛社)の社員であった”石井さん”は社長にピアノの無償貸与と奨学金支給を得られるように
直訴し、そこをきっかけにやがて三恵さんの前にはピアニストとしての前途洋々の道筋が見えてくるのです。
だが、三恵さんは26歳で石井さんと結婚を機に表舞台から身を引きます。
「もともと華やかなものに興味はなく、目立つことを嫌っていた。
日常を心豊かに暮らすことに価値を置いていた。私も賛成でした」と石井さんの言。
大学教師や音楽関連の仕事の道を遠ざけたのは「楽しいはずの音楽」が出来なくなるから。
柔軟さを欠く日本の学校教育・文部行政には不信感を持っており、規律に縛られることを避けたという。
それでも三恵さんの元には個人レッスンを希望する生徒さんが集まってくるようになる。
その教え子たちは今それぞれ国内外に散らばり、国際的に活躍する方も音楽教師もいるという。
三恵さん没後(2015)、教え子だった方が「先生の録音はないのですか」という言葉に、石井さんは遺品の中から
蘇らせたテープがこのCDなのです。
最後に芥川さんはこうコラムを結びます。
「あり余る才能を、自分が脚光を浴びるためではなく、音楽を通して人を育てるため、
落ち着いた豊かな日常を生きるために、惜しみなく使ったひと。見事な生涯というべきです」・・・と。
(ほぼ、芥川さんの言葉をお借りして”名コラム”を無謀にも短く要約しました
)
早速、このCDを聴いてみたいと思い、各サイトを探したが「お取り寄せ」状態ばかり(品切れの可能性大)
果たして私はこのCDを聴くことができるだろうか。
月1回第4土曜日に掲載されるこの芥川喜好さんのコラム「時の余白に」を毎月とても愉しみにしている。
主に美術関連の記事を書かれているが、その記事から派生する人物背景の景色が鮮やかに伝わってくる。
その文章には心惹かれる。語彙の嵌めかたがスっと綺麗に立ち上る。

読売新聞(2/23付け)芥川喜好さんのコラム「時の余白に」で紹介されている。
ここひと月ほど折に触れて一枚の(三恵さんの)CDを聴いていたという。
30年近く前のリサイタル時が音源のCD。現代はテクニックの際立つあざといものも少なくなく
心打たれることも稀になってきたというその耳に、その音は驚きの経験であったと。(ショパン・リスト・シューマン)
17歳で名だたる音楽コンクールで優勝(ちなみにその時の2位はフジコ・ヘミングさん)その才能に称賛の声が上がる。
そして驚くことにそれまでの8年間、三恵さんは自分のピアノを持っていなかったというのです。
資産家であった実家は空襲で全てを失い、彼女は学校のピアノを借りて(時にロウソクの灯で譜を読み)弾き続けた。
その事実を知ったヤマハ(音楽会協賛社)の社員であった”石井さん”は社長にピアノの無償貸与と奨学金支給を得られるように
直訴し、そこをきっかけにやがて三恵さんの前にはピアニストとしての前途洋々の道筋が見えてくるのです。
だが、三恵さんは26歳で石井さんと結婚を機に表舞台から身を引きます。
「もともと華やかなものに興味はなく、目立つことを嫌っていた。
日常を心豊かに暮らすことに価値を置いていた。私も賛成でした」と石井さんの言。
大学教師や音楽関連の仕事の道を遠ざけたのは「楽しいはずの音楽」が出来なくなるから。
柔軟さを欠く日本の学校教育・文部行政には不信感を持っており、規律に縛られることを避けたという。
それでも三恵さんの元には個人レッスンを希望する生徒さんが集まってくるようになる。
その教え子たちは今それぞれ国内外に散らばり、国際的に活躍する方も音楽教師もいるという。
三恵さん没後(2015)、教え子だった方が「先生の録音はないのですか」という言葉に、石井さんは遺品の中から
蘇らせたテープがこのCDなのです。
最後に芥川さんはこうコラムを結びます。
「あり余る才能を、自分が脚光を浴びるためではなく、音楽を通して人を育てるため、
落ち着いた豊かな日常を生きるために、惜しみなく使ったひと。見事な生涯というべきです」・・・と。
(ほぼ、芥川さんの言葉をお借りして”名コラム”を無謀にも短く要約しました

早速、このCDを聴いてみたいと思い、各サイトを探したが「お取り寄せ」状態ばかり(品切れの可能性大)
果たして私はこのCDを聴くことができるだろうか。
月1回第4土曜日に掲載されるこの芥川喜好さんのコラム「時の余白に」を毎月とても愉しみにしている。
主に美術関連の記事を書かれているが、その記事から派生する人物背景の景色が鮮やかに伝わってくる。
その文章には心惹かれる。語彙の嵌めかたがスっと綺麗に立ち上る。