そろそろ上がろうか、とアミさんが促しても、僕は海の中にいることを選んだ。プカプカ浮きながらでも十分に休憩はできる、とうそぶくと、Y美は「ま、お前、はだかんぼうだからね。勝手にしな」と捨て台詞して、アミさんと一緒に砂浜に向かった。
海藻でおちんちんを隠すと、遠目には水着に見えなくもない。少し沖に移動し、周囲に人がいないのをいいことに、僕は仰向けになった。波は優しく、太陽は雲に隠れていた。僕は目を閉じ、何も考えまいとした。おば様の家で暮らすようになってから、何かを考えるとは、つまり悩み、苦しむことにほかならないような気がする。だから、考えない。五感を全開にする。感覚に身を委ねる。
青くて、どこか黒ずんだ空を見つめる。耳が海面の境にあるので、波の加減によって音の聞こえ方が変わる。海面の外に出ているときは、風の音に紛れて、いかにも夏の海っていう感じの賑わいが聞こえてくる。人々のはしゃぎ、笑う姿が目に浮かぶ。女の子たち、男の子たち、「ちょっと、やめてよお」女の子の甲高い声。ザブンと波をかぶって耳が海面の下に沈むと、世界は一変する。間近に聞こえてくるのは海そのものの音だ。慣れてくると、海の中の音だと思っていたものが自分の呼吸だと気づく。生きている自分の音、呼吸、心臓の鼓動が海に組み込まれる。
何かが僕の頭をツンツンと突いていた。木片か何かだろうと思ったら、空気で膨らんだビニールだった。仰け反った僕の目に女の人の顔が逆さに見えた。
うわっ。びっくりして、海面に出していた股間を沈めた。気づかないうちに足の届かないところまで流されていたようで、バランスを崩した僕は頭まで海に浸かってしまった。あがいて海面から顔を出し、口からビューと海水を吐く。フロートの上で腹這いの女性は、クスッと笑った。年齢は五十歳くらい。ワンピースの水着は、胸から膝のあたりまですっぽり覆い、水着と二の腕の半ばにフリル付きの袖があって、水着とは思えないくらい肌の露出度が低かった。水着のない僕としては、その生地の八十分の一でもいいから切り分けてもらいたいくらいだった。
「あなた、こんなところで何してるの?」と話しかけてくる。目元には笑いの名残のような皺があったものの、声は少し尖って、どこか非難の響きがあった。
泳いでました、と答えるものの、女の人はいよいよ不審の念を強めたようだった。「一人なの?」「ご家族の方は?」「名前と年齢は?」「どこから来たの?」と、次々と質問を投げかけてくる。足の届かないところで足をばたつかせる僕に、フロートの端を差し出してくれたのは、しっかり答えさせるためだろう。ともあれ、僕としては、何かつかまる物があるのは有り難かった。女の人は、自分のことをマチコと名乗った。
「ナオスくんがぽっかり浮いているのが浪間に見えた時、ほんとにびっくりしたわよ。ね、まさかとは思うけど、水着つけてるよね?」
僕はフロートに顔を押しつけるようにして首を横に振った。股間にどっさり挟んでいた海藻は、仰向けの体勢が崩れた際にどこかへ行ってしまった。
「やっぱり、そうか」マチコさんは眉をしかめた。「なんか黒い小さなビキニパンツだなあと思ってたら、だんだん近づくにつれ、あれ、何か違うかなって感じがしたんだよね。やっぱり裸だったか。ナオスくん、水着はどうしたの?」
ええと、と口籠ってしまう僕に、マチコさんは何かを察したようだった。
「かわいそうに、丸裸なのね。水着はどうしたの? 誰かに脱がされたの?」
意外なほど優しい調子だった。急に込み上がってくるものを感じて、僕は泣きそうになった。この女の人は、僕を自分よりも弱い小動物として見て、保護しようとする気持ちがある。声の調子から、それがはっきり分かった。水着をどうしたのか、と僕に問いながら、少しも僕を責めていないのだ。珍しいことだった。これまで数えきれないくらいの人から素っ裸でいるところを見咎められ、なぜ裸なのかと問い詰められた。人々の口調はたいてい刺々しいか、嘲笑的か、事務的かのいずれかであり、僕の苦しい立場に想像が及んでいない点ではどれも似たようなものだった。個性を失い、同時に人間らしい共感の感情の欠如が露わになった、つまらない人間の群れ、それが質問者の正体だ。でも、フロートの上で甲羅干しをしながら浪間を漂っているこの女の人は、違う。
浜辺はずいぶんと遠く、人々がミニチュアのおもちゃに見えた。海の中にも多くの人の姿が認められるものの、ここまで沖にいる人は、ごく少数だ。同じ海に浸かりながら、フロートの女の人と僕だけが切り離された世界にいるみたいだった。大きく海面が揺れる。ぼんやりしていると、どんどん沖へ流されるようだった。マチコさんは浜辺に向かってバタ足をはじめた。フロートにつかまらせてもらいながら、何もしないのは申し訳が立たない。それで僕もお付き合い程度には、海中で足をキックした。しかしそれもすぐにおざなりになった。そう、率直に言って僕は浜辺のほうへ向かいたくなかったからだ。
「もっと沖にいたいんじゃないの?」マチコさんは、僕の気持ちを読み取った。
「はい。だって…」
「すっぽんぽんだから? おちんちんを見られたくないから?」
僕は答える代わりに、年齢相応の威厳があらわれた女の人の顔を見た。
「そんな目で見ないでよ。ナオスくんの気持ちはよく分かります。恥ずかしいわよね。なるべく人に見られたくないと思うのは当然よ。でもね、あなた、あんまり沖に行くと危ないわよ。どんどん流されて、戻れなくなる」
そう言われても、僕にはピンと来なかった。不思議なくらいだ。どこか自分とはあんまり関わりのない人の話を聞いているような気持ちだった。マチコさんは、僕の反応のなさに驚き、ぐっと顔を近づけて、「ねえ、分かってるの?」と僕の海面から出た肩を揺すった。
「もしかしてあなた、このまま死んでしまってもいいと思ってる?」
それは、ないと思う。ただ、一糸まとわぬ体が沖にまで流されていくのを全身の肌で感じていると、次第にうっとりした気分になってくるのは、事実だった。甘美な気持ちに浸って、脳が痺れてくる。Y美たちに性的にいじめられ、過度な快楽を強制的に味わわされている時に感じる、「もうどうでもいいや」という気分に少し似ている。海という自然が相手だと、このような気持ちへの移行もずっとスムーズで、僕は眠るように、とろけるような快楽をむさぼってしまうのだった。
「しっかりなさい。死んでしまうわよ」と、叱咤される。世界には今、僕と、この女の人しか存在しないような気がした。ふっと力が抜けて、頭のてっぺんまで海の中に入ってしまった。世界唯一のパートナーに引き上げてもらい、なんとかフロートに腕を乗せる。頭からポタポタと垂れる水滴が顔に当たって、普段だったらシャキッとするはずなのに、この海の中にいると、その刺激すら海中に素っ裸でいることで全身に感じる官能と同一化してしまい、ますます快感の泥沼に嵌まるような気持ちになる。もっと沖へ流されて、このまま人間の世界と永遠に決別してもいい、自然の精になって、風や光になって、ずっと海や山を巡っていたい、とぼんやり思う。
「とりあえずナオスくん、このフロートに上がりなさいな」と勧められ、「いや、でも」と、全裸の身を意識してためらうのだけど、マチコさんは、「いいから、さ、早く」と譲らず、フロートの端に寄ってスペースを空けてくれた。仕方がない。僕は恥ずかしいのを我慢して海中から一糸まとわぬ身を出すと、マチコさんに倣ってフロートにうつ伏せになった。マチコさんは「ほんとに真っ裸なのね」と感心して、視覚だけでなく触覚でも確かめる必要があるかのように、僕のお尻や背中をぺたぺた触った。
「すごく柔らかい」と、マチコさんは感動し、嬉しそうに目を細めた。僕の首から肩、背中、お尻、太腿の内側、脹脛とマチコさんの手はよく動き、軽く撫でたり強く押したりした。時折息荒く、「いいわ」と呟く。
フロートは想像していたよりも大きかった。マチコさんは何か決心したようだった。すっと身を起こし、端に置いた透明なビニール製の袋を引き寄せて細長い足ひれを取り出し、手早く足につけると、フロートからずり落ちるように海に入った。
「浜辺のほうは人が多くて恥ずかしいでしょうから、磯から回りましょう」とマチコさんは提案し、海中の足を動かしてフロートを押しはじめた。足ひれの効果は素晴らしく、フロートはぐんぐん進んだ。まるでモーターボートだ。浜辺を横に見ながら、磯に近づく。
網や小さなバケツを持って磯遊びをする人たちの姿がらちらほら目についた。フロート上でうつ伏せになっている全裸の僕を見つけて、小さな子供たちが指さし、驚きの声を上げる。中には大きな笑い声を出す者もいたが、付き添いの大人たちに注意されて、納得したように静かになった。何かしらハプニングがあって水着を紛失し、恥ずかしい裸を隠すためにわざわざ人の気配がない岩場のほうへ回り込むのだろうと説明する声がはっきり聞こえてきて、フロートの上でお尻を丸出しにしている全裸の身がカッと熱くなる。「笑うもんじゃないぞ、明日は我が身かもしれないぞ、お前たち」と父親らしき人がたしなめると、「いやよ、私」と、幼い女の子がさも馬鹿にしきったような目で僕を見て、言った。「あんな恥ずかしい目に遭うって、よっぽど悪い子なのよ」
ごつごつした岩場を過ぎると、およそ人の通れないような奇岩が海に向かって突き出ていた。波が激しく岩にぶつかり、白い泡を撒き散らす。岩と距離を空けながらフロートが無事に岩の前を通り抜けると、小さな砂浜が見えてきた。磯のあいだにある、小さな砂浜だった。マチコさんはその方向へフロートを進めた。
ここは穴場なのよ、とマチコさんが声を潜めた。滅多に人が入ってこないそうだ。これも巨大な奇岩のおかげということだ。砂浜に寄せる波は穏やかで、すぐ背後には高くて険しい崖が聳えていた。この幅の狭い砂浜は、満潮時には、完全に海の下に隠れてしまうだろう。波が寄るたびに少しずつ砂浜を侵食する。
さ、潮が満ちてくる前に、とマチコさんが言った。すぐ左に縦長の岩がすっと伸びて、砂浜の一部に影を落としている。僕は導かれるようにして、砂浜に仰向けになった。濡れた体が砂地に少し沈む。ちょうど雲が動いてギラギラする太陽が出てきたところだったので、この岩の日除けは恩恵だった。
ワンピースの水着をめくって乳房を露出させたマチコさんは、僕に跨ると、僕の口に指を入れて、湿らせた。指でかき回され、口がピチャピチャと音を立てる。口の中が甘い香りでいっぱいになる。砂糖を入れられた紅茶のようだ。
「とてもいい子ね、ナオスくんは。マチちゃんを喜ばせてくれるわね」とマチコさんは囁き、さらに上体を屈めて、乳首を僕の口に含ませる。僕は日頃からおば様に奉仕をさせられている。だから、突然このようなことをされても、迷うことはない。すっと体の奥のところでスイッチが入る。体に沁み込んだ奉仕の手順を実行する。舌を使い、乳首とその周辺を強弱つけながら舐め、軽く噛み、吸った。マチコさんは歓喜の声を漏らした。
「すごい… ナオスくん、あなた、どこで教わったの?」
舌を動かすと、おば様に仕込まれた習性で、同時に手や足も動員して、相手の体の感度の高い部分を探る。神経を集中させて、体のちょっとした反応を見逃さないようにする。息の乱れ、体のきゅっと引き締まったり、ピクンと痙攣したりする瞬間から、ポイントを見つけて、徐々に肌の感度を高める。性的行為は、全身の触感に尽きる。
指を立てて、爪先で腋の下から腰までのラインを撫でる。口の動きを一段と激しくする。汗でぴったり張りついたワンピースの水着を少しずつ剥がして、舐める範囲を広げる。鳩尾からお臍の周り、さらに下腹部へ至る。マチコさんは僕の上で体を弓なりに反らせて、喜悦の声を打ち寄せる波の音に忍ばせた。
腰の周囲で丸まっている水着をぐっと下げ、縮れた毛に口を寄せ、お椀に口を当てたようにずんずん吸って刺激を加える。おば様の好きな行為の一つだった。マチコさんもお気に召したようで、アウッアウッと喘いで、だらりと下げた手をピクッと震わせた。「いい、もっと」とマチコさんはせがみ、僕から下りると、体に絡まる水着を取り払うようにして、全裸になった。再び僕に跨るのだけれど、今度は僕のお腹ではなく、顔に腰を下ろした。股間の襞が僕の口を塞ぐ。
教えられた手順で奉仕に徹する。うまくできなかったり、疲れていい加減な動きになったりすると、おば様にお尻や背中を打たれたり、ひどいときにはおちんちんの袋を締めつけられたりしながら、日々、涙を流して体に沁み込ませてきた技だった。舌を細めてねっちりした液の壺に差し入れて、小刻みに動かしているあいだ、両手は張りのある腹部を撫で、反応を伺いながら、時には軽く爪を立てる。足は、ぐっと持ち上げて、親指の外側で首筋を撫でる。これをすべて同時にやりながら、神経を集中させ、相手の反応によって刺激の度合いを調整する。おば様と僕では身長差が二十五センチほどあるので、足の指で首筋を撫でる際、おば様は状態をうんと反らす。それが合図になって、僕は足を上げるのだけれど、マチコさんの場合はおば様ほど身長がないので、上体をそれほど反らさなくても、僕の足の指を首筋に届けることができた。
太腿を揺するようにして背中を愛撫しながら、足の指で耳をくすぐる。マチコさんは喘ぎ、「いい、いいわあ、もっと」と忘我の声を迸らせて、腰を上下前後に揺すった。そのむちむちの肌とねばねばする分泌物の匂いは、僕の官能を知らず知らずのうちに高める。マチコさんの後ろに振り回した手の先がピンと屹立したおちんちんに当たった。
あれ、おちんちんが、とマチコさんは初めて気づいたように首を回して、すっかり硬くなっている無防備なおちんちんに目を向けた。「ごめんなさいね、マチちゃんばっかり楽しんじゃって」と言って、僕の顔から砂地に腰を移すと、正座をして、頭を下げるようにしておちんちんに口をつけた。アウウッ。強烈な快感が下腹部からじんじんと伝わってくる。せり上がってくる快感の水位は、もう首元まで満ちて、僕を内側から溺れさせるまで、あと少しだった。マチコさんは射精寸前のところでおちんちんから口を放すと、「まだいかないでね、もう少し」とせがんだ。僕は黙って頷いた。こんなにも僕の快楽のことを気遣ってくれるとは、感動的だった。おば様への奉仕では、絶対にあり得ない。マチコさんは砂浜で四つん這いになった。お尻の穴も舐めてほしいと言う。僕は素直に応じて、お尻の割れ目に顔を近づけた。
太腿を手でさすりながら、舌をぐっとお尻の穴に入れて、動かす。ヒイイ、いや、やめて、と抵抗の言葉を発するのは、意外だった。これは言葉どおりの意味ではなく、快感そのものの反応なのだろう。おば様には見られない特徴だった。ぐったりしたマチコさんはそのまま砂浜にうつ伏せに倒れた。僕は休むことなく、愛撫の指を震わせながら、マチコさんのお尻から太腿、足先にかけて舌を這わせる。「信じられない、なんなの、きみは…」とマチコさんが呟いた。
喘ぎ、呻くマチコさんの口から、しばらくすると、単語の連なりが聞こえてきた。気に留めず、なお舌による愛撫を続けていると、マチコさんの発する声はいよいよ明瞭になる。お願い、私にも舐めさせて、とマチコさんは頼むのだった。「え、なんでですか?」と、予想外の申し出にたじろぐ僕に、自分ばっかり気持ちよくなって申し訳ない、と恥ずかしそうにうつむいて答える。このような奥ゆかしいお言葉を現実に耳にするのは生まれて初めてであり、なんだか騙されているような気がしないでもなかった。それでも、僕の目から涙がはらはらと落ちた。このように体が反応するのは、これはマチコさんの気持ちに偽りがないことを示すものだろう。なんて優しい人だろう。僕は素直に四つん這いになった。
まず、おちんちんの袋にペロッと舌が入った。熱い息がお尻の穴やおちんちんの付け根に吹きかかって、肌の感度をいやが上にも高めたところだった。まさにそのタイミングでおちんちんの袋を舐められたのだから、これはどうしても声を上げてしまう。しかも、その声は僕の意に反して長く尾を曳いてしまい、四つん這いのまま、切なくなって、腰を揺する。さっきまで海水に濡れていたおちんちんとその袋は、マチコさんの唾液に濡れて、すっかり塩気を拭き取られたようだ。代わりに女の人の甘い匂いが塗り込められる。
アウウ、と恥ずかしい声がまたしても出る。舌がおちんちんの裏側を這い、根元へゆっくり向かう。舌にべったりおちんちんが包まれている。それは生き物だった。だから常に動き、のたうち回る。気づくと、舌の先端がおちんちんの付け根を集中的に責めていた。と思ったら亀頭の敏感な部分を舌の先端が触れ、嬲る。
もうどうにかなってしまいそうだった。甘い苦痛に身悶えする僕のお尻に手をかけたマチコさんの舌がおちんちんの付け根からお尻の穴までの何もない空間へ移動する。チュッチュッと音を立てて、女の人であれば襞のあるその場所を執拗に吸う。
お尻の穴にマチコさんの舌の感触が走る。ウウッ。甘美な電気が背筋と下腹部の二か所から同時に流れ、首筋をぐるりと回って一つになり、威力を増しながら頭のてっぺんに届く。アウウッ、と僕は長く息を吐いて、砂浜に埋まって倒れそうになる腕でなんとか体を支え、背中を反らした。
僕のお尻の穴は、これまでY美たちの性的ないじめによって、たびたびこじあけられた。それどころか、棒状の異物を面白半分に挿入されたこともある。おば様もまた、僕の全身を駆使した奉仕に対する満足の度合いが僕の必死の努力にもかかわらず期待値を下回ってしまった時なぞは、しばしば手慰みに僕のお尻を嬲った。これはおば様の腹いせメニューの代表的な一つだった。「すごい、こんなのも入るんだね」と感心するY美たち女子の声、「我慢しなさい、これは罰なんだら」と容赦なく責めるおば様の声が脳裏を去来し、何度も寝返りを打った。そうだ、僕はいったいどれだけの夜を痛くて寝つけない苦しさの中で過ごしたことだろう。そんな経験を積んできたものだから、僕のお尻の穴は柔らかく、広がりやすくなっている。マチコさんが驚くのも無理はなかった。
十分に湿らせたお尻の穴にマチコさんの細くすぼめた舌が入って、狭いところに閉じ込められた生き物のように暴れ出した。全身をわななかせて、凄まじい刺激に耐えるものの、限界がきて、もう一切、力が入らなくなる。腕も肩も砂浜の砂に沈む。顎もまた砂に着地し、僕の目の前には、砂漠のような砂浜があった。
ねえもっと、もっと、とマチコさんのハスキーな声がし、裸体を仰向けに返される。半身を起こし、豊かな乳房に手をかけた僕は、乳首への愛撫を再開した。マチコさんは僕の硬くなったおちんちんを内腿でさするようにして、僕の唇に口を当て、舌を入れてきて、唾液を注ぐと、いいのよ、と掠れた声で誘った。最初、その意味が分からなかった。
「しても、いいのよ」
仰向けになったマチコさんの襞はぬるぬるして、指で触れると、たちまち奥へ吸引されるようだった。この中へすっかり硬くなったおちんちんを入れてもいいということだろうか。「マチちゃんに、して」と耳元で囁かれる。急に僕の心臓の鼓動が早くなった。僕は、これまで女の人の性器の中におちんちんを入れたことがない。おば様への奉仕がどんなに上首尾に進み、喜悦の声を上げながらおば様がのたうち回っても、絶対におば様は挿入させてくれなかった。過去に一度、奉仕の際におば様が上に乗る僕の腕を引っ張り、それが結構な勢いだったものだから、おちんちんが股間の受け入れ態勢万全の穴に入りそうになったことがあった。おば様の恍惚とした表情が一瞬にして鬼女のそれに変わった。僕は折檻され、単なるアクシデントにもかかわらず、「もうしません、二度と入れようとしません」とさめざめ泣きながら誓わされた。
しかしそれも過去の話だ。ついにセックスできる。できるのだ。
これまでさんざん女性の体には奉仕するばかりで、性行為をさせてもらったことがなかった。おちんちんを女性の穴に入れる機会は、これだけ女性たちに素っ裸の身を嬲られる境遇にいながら、大人になるまで訪れないだろうと思って、諦めていた。それが、まさか、こんな絶好のチャンスが到来するとは。
期待に胸を弾ませて、僕は仰向けに寝るマチコさんの開いた股のあいだに裸身を入れて、腕立て伏せをはじめる体勢になった。あとは腰を前方へ突き出すだけで、屹立したおちんちんがマチコさんの中へズボッと入ってゆくだろう。初めての体験。生唾を飲み込み、ゆっくりと腰を前へ動かした時、ザッザッと砂を踏む音がして、一人の影がマチコさんの乳房の上にかかった。影の形から女性だと直感した。徐々に顔を上げる。細くて白い足、スクール水着。
「え、あ、あれ、Y美さん…」
鞭のようにしなった左足の甲が僕の右頬を捉えた。気づいたら、僕の一糸まとわぬ体は波打ち際まで飛ばされていた。体にべったり付着したマチコさんの唾液が寄せてきた波に洗われる。
海藻でおちんちんを隠すと、遠目には水着に見えなくもない。少し沖に移動し、周囲に人がいないのをいいことに、僕は仰向けになった。波は優しく、太陽は雲に隠れていた。僕は目を閉じ、何も考えまいとした。おば様の家で暮らすようになってから、何かを考えるとは、つまり悩み、苦しむことにほかならないような気がする。だから、考えない。五感を全開にする。感覚に身を委ねる。
青くて、どこか黒ずんだ空を見つめる。耳が海面の境にあるので、波の加減によって音の聞こえ方が変わる。海面の外に出ているときは、風の音に紛れて、いかにも夏の海っていう感じの賑わいが聞こえてくる。人々のはしゃぎ、笑う姿が目に浮かぶ。女の子たち、男の子たち、「ちょっと、やめてよお」女の子の甲高い声。ザブンと波をかぶって耳が海面の下に沈むと、世界は一変する。間近に聞こえてくるのは海そのものの音だ。慣れてくると、海の中の音だと思っていたものが自分の呼吸だと気づく。生きている自分の音、呼吸、心臓の鼓動が海に組み込まれる。
何かが僕の頭をツンツンと突いていた。木片か何かだろうと思ったら、空気で膨らんだビニールだった。仰け反った僕の目に女の人の顔が逆さに見えた。
うわっ。びっくりして、海面に出していた股間を沈めた。気づかないうちに足の届かないところまで流されていたようで、バランスを崩した僕は頭まで海に浸かってしまった。あがいて海面から顔を出し、口からビューと海水を吐く。フロートの上で腹這いの女性は、クスッと笑った。年齢は五十歳くらい。ワンピースの水着は、胸から膝のあたりまですっぽり覆い、水着と二の腕の半ばにフリル付きの袖があって、水着とは思えないくらい肌の露出度が低かった。水着のない僕としては、その生地の八十分の一でもいいから切り分けてもらいたいくらいだった。
「あなた、こんなところで何してるの?」と話しかけてくる。目元には笑いの名残のような皺があったものの、声は少し尖って、どこか非難の響きがあった。
泳いでました、と答えるものの、女の人はいよいよ不審の念を強めたようだった。「一人なの?」「ご家族の方は?」「名前と年齢は?」「どこから来たの?」と、次々と質問を投げかけてくる。足の届かないところで足をばたつかせる僕に、フロートの端を差し出してくれたのは、しっかり答えさせるためだろう。ともあれ、僕としては、何かつかまる物があるのは有り難かった。女の人は、自分のことをマチコと名乗った。
「ナオスくんがぽっかり浮いているのが浪間に見えた時、ほんとにびっくりしたわよ。ね、まさかとは思うけど、水着つけてるよね?」
僕はフロートに顔を押しつけるようにして首を横に振った。股間にどっさり挟んでいた海藻は、仰向けの体勢が崩れた際にどこかへ行ってしまった。
「やっぱり、そうか」マチコさんは眉をしかめた。「なんか黒い小さなビキニパンツだなあと思ってたら、だんだん近づくにつれ、あれ、何か違うかなって感じがしたんだよね。やっぱり裸だったか。ナオスくん、水着はどうしたの?」
ええと、と口籠ってしまう僕に、マチコさんは何かを察したようだった。
「かわいそうに、丸裸なのね。水着はどうしたの? 誰かに脱がされたの?」
意外なほど優しい調子だった。急に込み上がってくるものを感じて、僕は泣きそうになった。この女の人は、僕を自分よりも弱い小動物として見て、保護しようとする気持ちがある。声の調子から、それがはっきり分かった。水着をどうしたのか、と僕に問いながら、少しも僕を責めていないのだ。珍しいことだった。これまで数えきれないくらいの人から素っ裸でいるところを見咎められ、なぜ裸なのかと問い詰められた。人々の口調はたいてい刺々しいか、嘲笑的か、事務的かのいずれかであり、僕の苦しい立場に想像が及んでいない点ではどれも似たようなものだった。個性を失い、同時に人間らしい共感の感情の欠如が露わになった、つまらない人間の群れ、それが質問者の正体だ。でも、フロートの上で甲羅干しをしながら浪間を漂っているこの女の人は、違う。
浜辺はずいぶんと遠く、人々がミニチュアのおもちゃに見えた。海の中にも多くの人の姿が認められるものの、ここまで沖にいる人は、ごく少数だ。同じ海に浸かりながら、フロートの女の人と僕だけが切り離された世界にいるみたいだった。大きく海面が揺れる。ぼんやりしていると、どんどん沖へ流されるようだった。マチコさんは浜辺に向かってバタ足をはじめた。フロートにつかまらせてもらいながら、何もしないのは申し訳が立たない。それで僕もお付き合い程度には、海中で足をキックした。しかしそれもすぐにおざなりになった。そう、率直に言って僕は浜辺のほうへ向かいたくなかったからだ。
「もっと沖にいたいんじゃないの?」マチコさんは、僕の気持ちを読み取った。
「はい。だって…」
「すっぽんぽんだから? おちんちんを見られたくないから?」
僕は答える代わりに、年齢相応の威厳があらわれた女の人の顔を見た。
「そんな目で見ないでよ。ナオスくんの気持ちはよく分かります。恥ずかしいわよね。なるべく人に見られたくないと思うのは当然よ。でもね、あなた、あんまり沖に行くと危ないわよ。どんどん流されて、戻れなくなる」
そう言われても、僕にはピンと来なかった。不思議なくらいだ。どこか自分とはあんまり関わりのない人の話を聞いているような気持ちだった。マチコさんは、僕の反応のなさに驚き、ぐっと顔を近づけて、「ねえ、分かってるの?」と僕の海面から出た肩を揺すった。
「もしかしてあなた、このまま死んでしまってもいいと思ってる?」
それは、ないと思う。ただ、一糸まとわぬ体が沖にまで流されていくのを全身の肌で感じていると、次第にうっとりした気分になってくるのは、事実だった。甘美な気持ちに浸って、脳が痺れてくる。Y美たちに性的にいじめられ、過度な快楽を強制的に味わわされている時に感じる、「もうどうでもいいや」という気分に少し似ている。海という自然が相手だと、このような気持ちへの移行もずっとスムーズで、僕は眠るように、とろけるような快楽をむさぼってしまうのだった。
「しっかりなさい。死んでしまうわよ」と、叱咤される。世界には今、僕と、この女の人しか存在しないような気がした。ふっと力が抜けて、頭のてっぺんまで海の中に入ってしまった。世界唯一のパートナーに引き上げてもらい、なんとかフロートに腕を乗せる。頭からポタポタと垂れる水滴が顔に当たって、普段だったらシャキッとするはずなのに、この海の中にいると、その刺激すら海中に素っ裸でいることで全身に感じる官能と同一化してしまい、ますます快感の泥沼に嵌まるような気持ちになる。もっと沖へ流されて、このまま人間の世界と永遠に決別してもいい、自然の精になって、風や光になって、ずっと海や山を巡っていたい、とぼんやり思う。
「とりあえずナオスくん、このフロートに上がりなさいな」と勧められ、「いや、でも」と、全裸の身を意識してためらうのだけど、マチコさんは、「いいから、さ、早く」と譲らず、フロートの端に寄ってスペースを空けてくれた。仕方がない。僕は恥ずかしいのを我慢して海中から一糸まとわぬ身を出すと、マチコさんに倣ってフロートにうつ伏せになった。マチコさんは「ほんとに真っ裸なのね」と感心して、視覚だけでなく触覚でも確かめる必要があるかのように、僕のお尻や背中をぺたぺた触った。
「すごく柔らかい」と、マチコさんは感動し、嬉しそうに目を細めた。僕の首から肩、背中、お尻、太腿の内側、脹脛とマチコさんの手はよく動き、軽く撫でたり強く押したりした。時折息荒く、「いいわ」と呟く。
フロートは想像していたよりも大きかった。マチコさんは何か決心したようだった。すっと身を起こし、端に置いた透明なビニール製の袋を引き寄せて細長い足ひれを取り出し、手早く足につけると、フロートからずり落ちるように海に入った。
「浜辺のほうは人が多くて恥ずかしいでしょうから、磯から回りましょう」とマチコさんは提案し、海中の足を動かしてフロートを押しはじめた。足ひれの効果は素晴らしく、フロートはぐんぐん進んだ。まるでモーターボートだ。浜辺を横に見ながら、磯に近づく。
網や小さなバケツを持って磯遊びをする人たちの姿がらちらほら目についた。フロート上でうつ伏せになっている全裸の僕を見つけて、小さな子供たちが指さし、驚きの声を上げる。中には大きな笑い声を出す者もいたが、付き添いの大人たちに注意されて、納得したように静かになった。何かしらハプニングがあって水着を紛失し、恥ずかしい裸を隠すためにわざわざ人の気配がない岩場のほうへ回り込むのだろうと説明する声がはっきり聞こえてきて、フロートの上でお尻を丸出しにしている全裸の身がカッと熱くなる。「笑うもんじゃないぞ、明日は我が身かもしれないぞ、お前たち」と父親らしき人がたしなめると、「いやよ、私」と、幼い女の子がさも馬鹿にしきったような目で僕を見て、言った。「あんな恥ずかしい目に遭うって、よっぽど悪い子なのよ」
ごつごつした岩場を過ぎると、およそ人の通れないような奇岩が海に向かって突き出ていた。波が激しく岩にぶつかり、白い泡を撒き散らす。岩と距離を空けながらフロートが無事に岩の前を通り抜けると、小さな砂浜が見えてきた。磯のあいだにある、小さな砂浜だった。マチコさんはその方向へフロートを進めた。
ここは穴場なのよ、とマチコさんが声を潜めた。滅多に人が入ってこないそうだ。これも巨大な奇岩のおかげということだ。砂浜に寄せる波は穏やかで、すぐ背後には高くて険しい崖が聳えていた。この幅の狭い砂浜は、満潮時には、完全に海の下に隠れてしまうだろう。波が寄るたびに少しずつ砂浜を侵食する。
さ、潮が満ちてくる前に、とマチコさんが言った。すぐ左に縦長の岩がすっと伸びて、砂浜の一部に影を落としている。僕は導かれるようにして、砂浜に仰向けになった。濡れた体が砂地に少し沈む。ちょうど雲が動いてギラギラする太陽が出てきたところだったので、この岩の日除けは恩恵だった。
ワンピースの水着をめくって乳房を露出させたマチコさんは、僕に跨ると、僕の口に指を入れて、湿らせた。指でかき回され、口がピチャピチャと音を立てる。口の中が甘い香りでいっぱいになる。砂糖を入れられた紅茶のようだ。
「とてもいい子ね、ナオスくんは。マチちゃんを喜ばせてくれるわね」とマチコさんは囁き、さらに上体を屈めて、乳首を僕の口に含ませる。僕は日頃からおば様に奉仕をさせられている。だから、突然このようなことをされても、迷うことはない。すっと体の奥のところでスイッチが入る。体に沁み込んだ奉仕の手順を実行する。舌を使い、乳首とその周辺を強弱つけながら舐め、軽く噛み、吸った。マチコさんは歓喜の声を漏らした。
「すごい… ナオスくん、あなた、どこで教わったの?」
舌を動かすと、おば様に仕込まれた習性で、同時に手や足も動員して、相手の体の感度の高い部分を探る。神経を集中させて、体のちょっとした反応を見逃さないようにする。息の乱れ、体のきゅっと引き締まったり、ピクンと痙攣したりする瞬間から、ポイントを見つけて、徐々に肌の感度を高める。性的行為は、全身の触感に尽きる。
指を立てて、爪先で腋の下から腰までのラインを撫でる。口の動きを一段と激しくする。汗でぴったり張りついたワンピースの水着を少しずつ剥がして、舐める範囲を広げる。鳩尾からお臍の周り、さらに下腹部へ至る。マチコさんは僕の上で体を弓なりに反らせて、喜悦の声を打ち寄せる波の音に忍ばせた。
腰の周囲で丸まっている水着をぐっと下げ、縮れた毛に口を寄せ、お椀に口を当てたようにずんずん吸って刺激を加える。おば様の好きな行為の一つだった。マチコさんもお気に召したようで、アウッアウッと喘いで、だらりと下げた手をピクッと震わせた。「いい、もっと」とマチコさんはせがみ、僕から下りると、体に絡まる水着を取り払うようにして、全裸になった。再び僕に跨るのだけれど、今度は僕のお腹ではなく、顔に腰を下ろした。股間の襞が僕の口を塞ぐ。
教えられた手順で奉仕に徹する。うまくできなかったり、疲れていい加減な動きになったりすると、おば様にお尻や背中を打たれたり、ひどいときにはおちんちんの袋を締めつけられたりしながら、日々、涙を流して体に沁み込ませてきた技だった。舌を細めてねっちりした液の壺に差し入れて、小刻みに動かしているあいだ、両手は張りのある腹部を撫で、反応を伺いながら、時には軽く爪を立てる。足は、ぐっと持ち上げて、親指の外側で首筋を撫でる。これをすべて同時にやりながら、神経を集中させ、相手の反応によって刺激の度合いを調整する。おば様と僕では身長差が二十五センチほどあるので、足の指で首筋を撫でる際、おば様は状態をうんと反らす。それが合図になって、僕は足を上げるのだけれど、マチコさんの場合はおば様ほど身長がないので、上体をそれほど反らさなくても、僕の足の指を首筋に届けることができた。
太腿を揺するようにして背中を愛撫しながら、足の指で耳をくすぐる。マチコさんは喘ぎ、「いい、いいわあ、もっと」と忘我の声を迸らせて、腰を上下前後に揺すった。そのむちむちの肌とねばねばする分泌物の匂いは、僕の官能を知らず知らずのうちに高める。マチコさんの後ろに振り回した手の先がピンと屹立したおちんちんに当たった。
あれ、おちんちんが、とマチコさんは初めて気づいたように首を回して、すっかり硬くなっている無防備なおちんちんに目を向けた。「ごめんなさいね、マチちゃんばっかり楽しんじゃって」と言って、僕の顔から砂地に腰を移すと、正座をして、頭を下げるようにしておちんちんに口をつけた。アウウッ。強烈な快感が下腹部からじんじんと伝わってくる。せり上がってくる快感の水位は、もう首元まで満ちて、僕を内側から溺れさせるまで、あと少しだった。マチコさんは射精寸前のところでおちんちんから口を放すと、「まだいかないでね、もう少し」とせがんだ。僕は黙って頷いた。こんなにも僕の快楽のことを気遣ってくれるとは、感動的だった。おば様への奉仕では、絶対にあり得ない。マチコさんは砂浜で四つん這いになった。お尻の穴も舐めてほしいと言う。僕は素直に応じて、お尻の割れ目に顔を近づけた。
太腿を手でさすりながら、舌をぐっとお尻の穴に入れて、動かす。ヒイイ、いや、やめて、と抵抗の言葉を発するのは、意外だった。これは言葉どおりの意味ではなく、快感そのものの反応なのだろう。おば様には見られない特徴だった。ぐったりしたマチコさんはそのまま砂浜にうつ伏せに倒れた。僕は休むことなく、愛撫の指を震わせながら、マチコさんのお尻から太腿、足先にかけて舌を這わせる。「信じられない、なんなの、きみは…」とマチコさんが呟いた。
喘ぎ、呻くマチコさんの口から、しばらくすると、単語の連なりが聞こえてきた。気に留めず、なお舌による愛撫を続けていると、マチコさんの発する声はいよいよ明瞭になる。お願い、私にも舐めさせて、とマチコさんは頼むのだった。「え、なんでですか?」と、予想外の申し出にたじろぐ僕に、自分ばっかり気持ちよくなって申し訳ない、と恥ずかしそうにうつむいて答える。このような奥ゆかしいお言葉を現実に耳にするのは生まれて初めてであり、なんだか騙されているような気がしないでもなかった。それでも、僕の目から涙がはらはらと落ちた。このように体が反応するのは、これはマチコさんの気持ちに偽りがないことを示すものだろう。なんて優しい人だろう。僕は素直に四つん這いになった。
まず、おちんちんの袋にペロッと舌が入った。熱い息がお尻の穴やおちんちんの付け根に吹きかかって、肌の感度をいやが上にも高めたところだった。まさにそのタイミングでおちんちんの袋を舐められたのだから、これはどうしても声を上げてしまう。しかも、その声は僕の意に反して長く尾を曳いてしまい、四つん這いのまま、切なくなって、腰を揺する。さっきまで海水に濡れていたおちんちんとその袋は、マチコさんの唾液に濡れて、すっかり塩気を拭き取られたようだ。代わりに女の人の甘い匂いが塗り込められる。
アウウ、と恥ずかしい声がまたしても出る。舌がおちんちんの裏側を這い、根元へゆっくり向かう。舌にべったりおちんちんが包まれている。それは生き物だった。だから常に動き、のたうち回る。気づくと、舌の先端がおちんちんの付け根を集中的に責めていた。と思ったら亀頭の敏感な部分を舌の先端が触れ、嬲る。
もうどうにかなってしまいそうだった。甘い苦痛に身悶えする僕のお尻に手をかけたマチコさんの舌がおちんちんの付け根からお尻の穴までの何もない空間へ移動する。チュッチュッと音を立てて、女の人であれば襞のあるその場所を執拗に吸う。
お尻の穴にマチコさんの舌の感触が走る。ウウッ。甘美な電気が背筋と下腹部の二か所から同時に流れ、首筋をぐるりと回って一つになり、威力を増しながら頭のてっぺんに届く。アウウッ、と僕は長く息を吐いて、砂浜に埋まって倒れそうになる腕でなんとか体を支え、背中を反らした。
僕のお尻の穴は、これまでY美たちの性的ないじめによって、たびたびこじあけられた。それどころか、棒状の異物を面白半分に挿入されたこともある。おば様もまた、僕の全身を駆使した奉仕に対する満足の度合いが僕の必死の努力にもかかわらず期待値を下回ってしまった時なぞは、しばしば手慰みに僕のお尻を嬲った。これはおば様の腹いせメニューの代表的な一つだった。「すごい、こんなのも入るんだね」と感心するY美たち女子の声、「我慢しなさい、これは罰なんだら」と容赦なく責めるおば様の声が脳裏を去来し、何度も寝返りを打った。そうだ、僕はいったいどれだけの夜を痛くて寝つけない苦しさの中で過ごしたことだろう。そんな経験を積んできたものだから、僕のお尻の穴は柔らかく、広がりやすくなっている。マチコさんが驚くのも無理はなかった。
十分に湿らせたお尻の穴にマチコさんの細くすぼめた舌が入って、狭いところに閉じ込められた生き物のように暴れ出した。全身をわななかせて、凄まじい刺激に耐えるものの、限界がきて、もう一切、力が入らなくなる。腕も肩も砂浜の砂に沈む。顎もまた砂に着地し、僕の目の前には、砂漠のような砂浜があった。
ねえもっと、もっと、とマチコさんのハスキーな声がし、裸体を仰向けに返される。半身を起こし、豊かな乳房に手をかけた僕は、乳首への愛撫を再開した。マチコさんは僕の硬くなったおちんちんを内腿でさするようにして、僕の唇に口を当て、舌を入れてきて、唾液を注ぐと、いいのよ、と掠れた声で誘った。最初、その意味が分からなかった。
「しても、いいのよ」
仰向けになったマチコさんの襞はぬるぬるして、指で触れると、たちまち奥へ吸引されるようだった。この中へすっかり硬くなったおちんちんを入れてもいいということだろうか。「マチちゃんに、して」と耳元で囁かれる。急に僕の心臓の鼓動が早くなった。僕は、これまで女の人の性器の中におちんちんを入れたことがない。おば様への奉仕がどんなに上首尾に進み、喜悦の声を上げながらおば様がのたうち回っても、絶対におば様は挿入させてくれなかった。過去に一度、奉仕の際におば様が上に乗る僕の腕を引っ張り、それが結構な勢いだったものだから、おちんちんが股間の受け入れ態勢万全の穴に入りそうになったことがあった。おば様の恍惚とした表情が一瞬にして鬼女のそれに変わった。僕は折檻され、単なるアクシデントにもかかわらず、「もうしません、二度と入れようとしません」とさめざめ泣きながら誓わされた。
しかしそれも過去の話だ。ついにセックスできる。できるのだ。
これまでさんざん女性の体には奉仕するばかりで、性行為をさせてもらったことがなかった。おちんちんを女性の穴に入れる機会は、これだけ女性たちに素っ裸の身を嬲られる境遇にいながら、大人になるまで訪れないだろうと思って、諦めていた。それが、まさか、こんな絶好のチャンスが到来するとは。
期待に胸を弾ませて、僕は仰向けに寝るマチコさんの開いた股のあいだに裸身を入れて、腕立て伏せをはじめる体勢になった。あとは腰を前方へ突き出すだけで、屹立したおちんちんがマチコさんの中へズボッと入ってゆくだろう。初めての体験。生唾を飲み込み、ゆっくりと腰を前へ動かした時、ザッザッと砂を踏む音がして、一人の影がマチコさんの乳房の上にかかった。影の形から女性だと直感した。徐々に顔を上げる。細くて白い足、スクール水着。
「え、あ、あれ、Y美さん…」
鞭のようにしなった左足の甲が僕の右頬を捉えた。気づいたら、僕の一糸まとわぬ体は波打ち際まで飛ばされていた。体にべったり付着したマチコさんの唾液が寄せてきた波に洗われる。
優しくされたナオス君の心情が切ないですね。
抜粋ということは全体はまだ執筆中ということでしょうか。
どうか無理なさらず頑張って下さい。
全体はもう完成しています。
今は、見直しているところです。
もうまもなく出せるんだけど…
髪の乱れたところを櫛で整えている感じです。
回答ありがとうございます。
もうすぐ完成ということで、
ミステリーに加えてナオス君の過去やマチコさんなど
続きを読める日を楽しみにしております。
どうか頑張って下さい。
ナオス君の自殺思想に似たような感覚は危険ですね…
新たにマチコさんという女性が出てきますが今後、ナオスくんをいじめる側になるのか、Y美にいじめられる側になるのか今後の展開が気になります。
ご無沙汰しております。
いつもありがとうございます。
死んでもいいやっていう感情が何かの拍子に生まれるとびっくりしますね。
でも、自然に受け止めて流すのが一番の対処法だそうです。感情の振幅にすぎないですから。
新しい登場人物は、このエピソード限定です。今後もお付き合いくださいね。
自殺を考える前に思い止まる事が出来ればいいのですが…一度箍が外れるとそれもできなくなってしまいます。
最近ではSNS上での誹謗中傷が要因で亡くなられた女子レスラーの方がニュースで取り沙汰されてましたね!
呟きに書かれてる小説の1シーンらしきものは.今後、本編と絡みがあるのでしょうか?
いつもありがとうございます。
そうなんですよ、いつのまにか始めてましたね。
これまでにも別のアカウントで、柄にもないまじめくさったことを呟いていましたが、もともと僕は性的な人間なので、twitterでもそれを通すことにしました。
小説の一シーンみたいなものは、思いつきです。
これからも思いつきを呟いていけたらなと思っています。
よろしくお願いします。