伸ばし切った両腕、その手は僕の頭よりもやや高い位置に固定されている。足は肩幅よりもやや広く開かされ、両の足首を括った麻縄が街灯の支柱と若木にそれぞれ固く結び付いて、この理不尽な苛めから逃げる自由を完璧に封じる。晴天の残酷な明るさのもと、僕は一片の布切れもまとわぬ素っ裸の身をくねらせ、メライちゃんのきごちない手がおちんちんをいじり回すのに耐えていた。
「いやだ、お願いだからやめて」
性的に反応してしまう自分が許せなくなって、思わず叫んでしまう。恥ずかしくてたまらなかった。すぐにS子に「うるさいな、静かに」とお尻の肉を抓られる。
Y美に命令されて、メライちゃんは無理矢理やらされているに過ぎない。従わなければ、メライちゃんもまた僕のような恥ずかしい目に遭わされてしまう。だから、メライちゃんに向かって「やめて」とは言えない。もっぱらY美やS子に許しを乞いながら、少しずつ高まってくる快楽に悶え、喘ぐ。両手両足を縄で縛られた体から汗が噴き出て、思わぬ方向へ流れた。
幸いなことにミュー、ルコ、風紀委員、N川さん、エンコの五人はこの場にいなかった。彼女たちは、Iさんの言いつけでごみ拾いをさせられている。大きな半透明のポリ袋を持って、公園の外周の植込みなどに落ちている紙くずだの煙草の吸殻などを拾い集め、袋がいっぱいになるまで戻って来れないようだった。公園自体は、遊具一つない多目的広場が広がっているだけなので、ごみが落ちていたらすぐに分かる。袋を満たすには、公園の外周だけでなく、もしかすると、もう少し離れたところまで、場合によっては幹線道路の方まで、足を伸ばす必要があるかもしれない。
背後からはIさんの話し声が聞こえた。霊魂は自然界に満ちている、生命力を得るには精通してまもない男の子の精液が一番よい、などと中年女性たちを相手に理解不能な論理を説いている。厳粛な雰囲気だった。もしも学校で先生がこんな話を始めたら、僕たち生徒はすぐに気が抜けて、あちこちで私語が始まり、がやがやうるさくなるだけだろう。
「真剣さが足りないんだよ、お前はよ」
突然Y美が怒鳴って、後ろからメライちゃんの髪の毛を掴んで左右に揺すった。メライちゃんの手がおちんちんから離れて自分の頭へ移り、呻いた。膝を曲げたまま、首を曲げて見上げて、Y美に詫びる。捻った首筋の肌が白い陶器のようだった。苦痛にゆがんだ顔をおちんちんに向ける。Y美の剣幕に怯えて顔面が強張っている。ショートカットの髪が引っ張られてボサボサだった。
「ほら、早くしろよ」
膝で背中を押され、メライちゃんの鼻がおちんちんにくっ付いた。指で支えたおちんちんを上下左右に振る。振り幅が次第に小さくなり、やがて本格的な扱きに変わった。それと同時に、もう片方の手がおちんちんの袋に添えられた。
あっけなく感じてしまい、「見ないで」と懇願するもむなしく、メライちゃんの見ている前でぐんぐん大きくなってゆく。メライちゃんは、焦らすようなことはせず、最初から最後まで同じ刺激を与え続けた。たちまち射精寸前まで追い込まれた。Y美とS子が頻りに「形を見ろ」とメライちゃんに言う。精液が飛び出す寸前で手が止まった。僕は喘ぎ、全身に力を入れて、キュッとおちんちんの先を締めるようにして射精を我慢した。許可なく勝手に射精してしまったら、お仕置きされてしまう。僕だけでなく、メライちゃんも同罪にされるかもしれない。
迫りくる性的な快楽に耐える苦しみは、人の苦しむ姿のうちで最も惨めなものの一つかもしれない。その苦しみは、生への執着からではなく、性的な快楽をもっとむさぼりたいというあさましい欲望から生じているのだから、人間がこの世に生れて受ける数々の苦しみの中では、一番低いランクに位置しそうなものだけれども、実際に射精寸前で止められ、扱かれ、止められ、我慢を強いられていると、その苦しみは、生きる苦しみそのものにまで高まってくるのを感じる。苦しみ、悶えることで、僕自身の惨めな欲望を曝け出しているのだから、これほど恥ずかしい苦悶もない。
手足をいっぱいに広げた格好で固定され、素っ裸のまま悶える僕をY美とS子とメライちゃんがじっと見つめている。僕を小馬鹿にした、蔑むような視線を向けるY美とS子に挟まれて、メライちゃんの無表情は異様な感じがした。三人の視線は、伸ばし切った手足の指の先から脇の下、胸を這い回った後、最後には射精寸前でひくひくと震えるおちんちんに落ち着くようだった。
荒々しい手がお尻を掴み、お尻の穴に指先が当たって、少し挿入された。Iさんだった。中年女性の信者たちを連れて、いつのまにか僕の後ろに回っていた。性的なポテンシャルをうんと上げることが大事、というようなことをIさんが例の説法口調で語り、女性信者たちが「はい。従います」と答える。指がいっそう深く挿入された。言葉にならない声を漏らし、体をくねらせる。Iさんが説法しながら指を動かす。痛いような、気持ちがいいような、よく分からない感じだった。おちんちんは射精寸前の硬さ大きさを晒したまま、前にいる同級生の女子たちの視線を浴びて、行き場を失ったように先端の膨らんだ部分を震わせている。
女性信者たちがどろりとした液体を僕の体に塗り始めた。ローションだと言う。今更ながらターリさんの縛りが恨めしかった。どんなに力を込めても手や足が若木や鉄柱から自由になることはなかった。がっしりと縛られているため、むなしく体をくねらせ、喘ぎ、懇願するしか僕には抵抗の術がない。そのターリさんが僕の悶える姿をY美たちの後ろで腕を組んで見つめ、満足そうに頷いている。
「だいぶ気持ちがいいみたいだな。快楽三昧じゃないか」
ターリさんの豪快な笑い声に驚いて、メライちゃんがびくっと震えた。僕の前にいる三人は初めてターリさんがそこにいることに気づいたようだった。あからさまに不快な顔をしたY美が振り返って、ターリさんを睨みつけた。
背後からぬるぬるドロドロした透明なジェル状の液体を僕の体にくまなく塗る女性信者たちの手が妖しい動きを始めた。塗るというよりは愛撫するという動きだった。一段と性的な快楽が高まってくる。でも、女性信者たちはなかなかおちんちんには手を出さなかった。最後の最後まで残しておくつもりかもしれない。その代わり、おちんちんの袋からお尻の穴まで次々と指が責め立ててきた。おちんちんの袋を引っ張ったかと思うと、お尻の穴にずぶずぶと指がスムーズに入るのを良いことに、どこまでも挿入して、全ての関節をもぞもぞと動かす。
汗とローションにまみれて、僕の一糸まとわぬ体はぬめりを帯びたようだった。S子が爬虫類みたいだと評して笑う。Y眉がメライちゃんの首筋に息を吹きかけ、何事か囁いた。メライちゃんの手にもローションが渡された。
そそり立ったおちんちんの裏側にまずメライちゃんの指先が当たった。ドロドロした液体を根元から先端にかけて、ゆっくりと丹精込めて塗り込める。中年女性の信者たちは僕の耳や首を撫で回しながら、「いい子ね、感じて、感じなさい」と盛んに囁いた。要するに、僕を悶えさせ、我慢に我慢を重ねた挙句に放出された精液が欲しいだけなのだった。それさえ手に入るのであれば、女性信者たちは性行為以外のどんな性的奉仕にも応じるのかもしれない。しかし、僕の求める性的奉仕はこんな屈辱的な物ではない。誰にも見られない密室の暗がりでこっそりサービスしてくれるほうがどれだけ良いか分からない。もちろん、そんなサービスは望むべくもない。素っ裸で四肢を広げて拘束されている僕にどんな選択肢があると言うのだろう。
まだまだ、というIさんの声が無情に響いた。朦朧として、メライちゃんに見られたくないという意識がどんどんもろくなっていく。もうどうせ昨日メライちゃんに射精の瞬間を見られたのだ。しかも年少の男の子の手で逝かされてしまった。メライちゃんが鷺丸君に強引にキスされているのを見させられた揚句の射精だった。スカートやシャツに飛び散った精液をメライちゃんは黙って拭いていた。もうメライちゃんは僕を今までのようには接してくれないだろう。昨日を境にして、僕への意識がすっかり変わってしまったに違いない。こんなことを考えながら、圧倒的な勢いで押し寄せてくる性的な快楽の波がおちんちんの袋からおちんちんへと昇ってくるのを必死に防いでいる。
「まだ駄目だよ、我慢」
亀頭の膨らみを見て、Y美が叫んだ。Y美に髪を引っ張られ、メライちゃんの手も止まった。危ないところだった。おちんちんの先っぽを懸命にきゅっと締めて、内股に力を込めるようにして、なんとか持ちこたえる。あと一秒遅ければ射精していた。
全身を波打たせて息を荒くする僕の顎にIさんが手を入れ、俯きがちな顔を上に向かせる。まじまじと見つめてから、Y美に目配せした。やっと射精させてもらえる、と思った瞬間、気が緩んだ。メライちゃんの指と指で作った輪っかがすっと根元から緩慢に動いたのだった。そのまま指を放してくれたらこんなことにはならなかったのに、指と指をくっ付けたまま、輪を外すようにおちんちんの先へ向かって動いた。おちんちんの根元近くではゆっくりとした動きだったが、次第に速度を上げて、すっと先端へ向かった。
駄目、駄目と叫んで内股に力を込め、腰を引いて必死でおちんちんの先をすぼめるのだけれど、遅かった。一瞬の気の緩みを衝いて微量の電気を帯びた生ぬるい水のようなものが波になって上昇し、手足の先まで行き渡り、全身をくまなく痺れさせる。我慢できる範囲をはるかに超えた快楽だった。メライちゃんの指の輪が亀頭の裏側を撫でると同時に、僕は堪えに堪えてきた精液を一気に放出してしまった。
無表情だっメライちゃんの目が驚愕のせいか、通常の二倍近くまで大きく見開かれている。見慣れているはずのY美やS子も口を半開きにしたまま、精液を放つおちんちんに目が釘付けだった。今日初めての射精であること、これまでの寸止めによって散々焦らされたことによって、Y美たちの予想を上回る量の精液がどくどくと出る。しかも、精液が出た瞬間もなぜかメライちゃんはおちんちんから手を放さず、それどころか、もう一度指の輪っかをおちんちんの根元の方へ一度戻してから、再び先端へ向けて動かしたので、腰を引き引き、おちんちんの先っぽを閉めようと力を入れる体にまた新たな快楽の波がざわざわと立ち始めて、精液放出の最中に更なる射精をしてしまったかのように、どくどくと精液がおちんちんの中の管を通って止まなかった。
「信じられない、いやらしい声出しながら、女の前で精液出すとはね」
「しかもすごい量じゃん」
最後の数滴がおちんちんの先端からどろりと垂直に落ちると、Y美とS子は困ったような顔をして僕を冷やかした。S子が亀頭の先端から筋を引いて垂れる精液を指ですくい、「こんなに伸びるよ」とねばねばした精液が糸のように伸びるのをメライちゃんに見せてから、おちんちんになすり付ける。
砂粒でざらざらした地面に落ちた精液をメライちゃんが手のひらに移して、おちんちんに塗り込めてゆく。Y美の命令で無理矢理やらされていることなのに、少し離れたところで信者たちと話し合いをしていたIさんは戻って来るなり、「まあ、この子も随分と積極的になったじゃないの」とメライちゃんのしゃがみ込んでおちんちんに向かう背中を見て、笑った。
精液塗れになったおちんちんを見て、中年女性の信者たちは、失望を隠さなかった。Iさんは彼女たちに同情を寄せて、「またの機会にしましょう」と慰め、白い着物の膝と紫の上着の袖に付着した塵を払った。ターリさんが縄を解いてくれたので、僕は両手両足が自由になったけれども、裸身を腕で覆う猶予もなく、すぐにその場で気をつけの姿勢で立たされ、Iさんにたっぷりと叱られる羽目になった。
許可が出る前に射精してしまったため、精液を採取できず、みすみす無駄にしてしまった。性的な刺激を受けながらじっと溜め込んで、ある程度の時間を経てから出したものこそ価値が高い。中年の女性信者たちが求めていたのは、まさにそのような精液だった。彼女たちの落胆を思いなさい、とIさんが怖い目で睨みながら、予想外のタイミングで射精してしまった僕に反省を促した。
「土下座でしょ。土下座しなさい」
申し訳ございませんでした、と繰り返し土下座して詫びる。
「快楽のコントロールをお前の同級生の女子たちに一任した私にも原因がある。許可のない射精は処罰の対象であり、みそぎの期間が延期されるのが通例ではあるが、今回は特別に許すこととする」
白い着物に紫の上着を羽織ったその姿だけでも宗教的な荘厳さがあるのに、そこへさらに威厳を加えるかのような、物々しい声音でIさんが話す。ほっとして顔を上げると、メライちゃんもまた安堵の表情を浮かべて、僕を見下ろした。しかし、罰から解放されたと安心するのはまだ早かった。折しも、ごみ拾いをさせられていたミューやルコたちが透明なポリ袋に空き缶だの菓子の空き箱だのをいっぱい詰めて戻ってきたところだった。Iさんが罪を帳消しにする代わりとして、メライちゃんと僕にごみ拾いを命じた。
「二人一組になって、ごみ袋がぱんぱんに膨らむまで詰めてくること」
Iさんは、ポリ袋をメライちゃんに渡した。
「もうこの辺りのごみはほとんど私たちが拾ったから、大して残ってないよ」
N川さんが憐れむような目でメライちゃんにアドバイスし、中年の女性信者に空き缶がどっさり入ったポリ袋を渡した。
「そうだね。私たちが拾い尽くしたから、この辺にはもうないよ」
風紀委員がズボンに付着したひっつき虫や棘を取り払いながら同意する。にやにや笑っているところを見ると、僕が素っ裸のままごみ拾いさせられるのを小気味よく思っているようだった。風紀委員だけではない。ルコもエンコも薄笑いを浮かべている。
「あのう」
道路の向こうと聞いて不安を覚えたのか、メライちゃんが恐る恐るIさんに声を掛けた。
「ごみはもちろん拾います。でも」
「でも、何よ」
「ナオス君に何か服を着せてあげちゃ駄目なんですか?」
「何言ってるんですか、あなたは」
振り向いたIさんはぎょりとした目でメライちゃんを睨んだ。びくっとしてメライちゃんが身を縮める。みそぎの間、僕がパンツ一枚穿くことも許されていないことをメライちゃんは知らないようだった。勝手に衣類をまとうものなら、たちまち剥ぎ取られ、一糸まとわぬ格好を強制される期間が今度こそ延長されてしまう。
「あなた、この子を射精させた張本人でしょ。もっと自覚しなさいよ。ほんとはあなたにも丸裸になってもらいたいところだけど、女の子だからそれは勘弁するのよ。でも、一応罰なんだから、靴と靴下は脱いでもらおうかな」
「え、裸足になるんですか」
「早く脱いで。女の子は裸足、男の子は素っ裸。それがあなたたちがごみ拾いをする時の格好。それ以外は認めないよ」
Iさんの宣告にY美たちがどっと笑った。
よく見るといろんなところに染みのある、かなり着古した白いワンピースを身にまとったメライちゃんは、細かい砂粒でざらざらする地面にぺたりとお尻を着けると、黙って靴と踝にまでも届かない短い靴下を手早く脱いだ。愚図愚図していたら、いつIさんの気が変わって僕のように素っ裸に剥かれるか分からない。白くてぷりぷりした、小さな足の指が明るい日のもとに晒された。体つきの細い線から想像していたよりもふくよかで、健康的な足の指だった。裸足に慣れていないメライちゃんは地面のざらざらした感触に軽い痛みを感じるようで、立ち上がってもきちんと静止できなかった。
ポリ袋をメライちゃんが持ち、爪先立つようにして歩く。ごみを拾ってきて、袋に入れるのは僕の役目なのだとY美が言った。N川さんが教えてくれた通り、多目的広場と宮殿の形をした公衆トイレしかないこの公園に目ぼしいごみは残っていなかった。
日が沈むまでにポリ袋をごみで一杯にしないと、罰としてメライちゃんのワンピースに鋏が入れられることになった。Y美とS子が考えた罰だった。Iさんは反対した。
「これは宗教的なしきたりの中で行われるものだから、罰はナオス君が受けないといけないのよ」と口を挟むと、
「そういう罰は別にそっちで考えください。これは私たちの間で決めたペナルティーだから、みなみ川教の宗教行事とは関係ありません」と、Y美は、これまでのIさんに対する遠慮勝ちな物言いとは打って変わった口調でぴしゃりと反論した。
時刻は五時を回っていた。思い悩んでいるうちに日はどんどん傾いてゆく。公園の中はもちろん、外周にも大してごみが残っていないことを実感すると、思案顔のメライちゃんが僕の方を振り向いた。「まさか」と僕は言った。
「あっちまで行くの?」
「仕方ないよ」メライちゃんが溜め息をついた。片側だけで二つの車線がある、広い幹線道路を横切って向こう側に渡ると、整備開発中の宅地があり、畑の広がる側に自然発生的にできた道があった。農家の人たちが通って踏み固めただけの土の道だった。ごみがたくさん落ちていそうだし、何よりも人目につきにくい。ただ、問題は少し距離があることだった。N川さんとエンコもさすがにここまでは足を伸ばさなかったと言う。
車が途切れたのを見計らって、緑の葉をぎっしり付けた大きな白樫の木から道路へ出る。裸足には熱い舗装路の上を跳ねるように走って、白いガードレールを跨ぐ。体が触れないように気を付けたのに、おちんちんの袋をガードレールの上部にぶつけてしまい、火傷しそうなほど熱かった。メライちゃんが心配して声を掛けてきたので、急いで「大丈夫」と答える。メライちゃんに続いて土だらけの斜面を下ると、区画整理中の宅地が遠くまで続いていた。戸建の家がまばらに見える。
金網のフェンスを乗り越えて草陰の道をしばらく進むと、広い範囲にわたって藪があった。メライちゃんと僕は四つん這いになって藪の中に入る。布が引っ掛かって裂ける音とメライちゃんの小さな悲鳴が聞こえた。僕はうんと腰を落とし、お腹を土に着けて這うように進んだ。素っ裸だから肌を傷つけないようにしなくてはならない。藪を抜け、畑沿いの一本道の前に出て立ち上がると、メライちゃんのワンピースの腰のところが一部切れて、腰から上の青白い肌が露出していた。
「もう嫌い。破れちゃったよ」
首を回して破れたところを確認するメライちゃんは、尾骶骨の上にある裂け目に手を当てた。裂け目は、手を広げない状態で親指から小指くらいまでの長さだった。普通にしていればパンツは見えないけれど、少し動いたり、見る角度を変えるだけで、簡単に目に入ってきそうだった。
「やだ。ナオス君、そんなに見ないでよ」
手でおちんちんを隠したまま所在なく立っている僕をメライちゃんが睨んだ。
区画整備された宅地の中にある舗装路と畑の間にある土の道には、予想した通り、肥料のビニール袋、梱包資材など、たくさんのごみが落ちていた。僕はせっせとごみを拾い、メライちゃんが口を開いて持つポリ袋に入れた。舗装路側からは草やまばらに生えた樹木などで、こちら側が見づらくなっているのも有難かった。
顔や首回りの汗をハンカチで拭いながら、メライちゃんが木陰に向かって歩き出した。もう夕方なのに真昼と少しも変わらない暑さだった。屈み込んで段ボールの切れ端を拾う僕にメライちゃんが「汗で背中がぬらぬら光っているよ。洋服を着てなくても暑いんだね」と、話し掛けてきた。恥ずかしいから自分だけが全裸でいることはあまり意識しないようにしていた僕はおちんちんに手を当てて立ち上がり、「うん」とだけ答えて拾った物をメライちゃんの広げるポリ袋の中に入れた。
小学生の男の子たちが自転車で通りかかった時、メライちゃんと僕は、刈り取られてうず高く積まれた草の山に回り込んで隠れた。服を着たメライちゃんまで全裸の僕と一緒になって隠れるのは、余計なトラブルを回避するためだった。二人で身を寄せ合って、息を殺しながら、やんちゃな男の子たちが過ぎるのをじっと待つ。
ボロボロのスラックスに麻の長袖シャツを肘までまくった麦わら帽の男がふらふらと歩いてきた時は、どういう訳か、メライちゃんだけ隠れるのが遅れてしまった。穴があいているとはいえ一応服を着ているという安心感が、僕ほどには慌てて身を隠す必要性を彼女に感じさせなかったのかもしれない。遠くにいた男は、ジグザグに歩いたり止まったりしまながら、いつのまにか音もなく接近していた。
今更隠れることもできない。道端で畑を見渡す振りをしながら、ただじっと男が通り過ぎるのを待つメライちゃんに後ろから声が掛けられた。男の目に情欲の炎がゆらゆらと揺れているのに気づいて、後ずさる。裸足で汚れて穴のあいたワンピースを一枚まとった格好では、男の欲望を刺激しやすいのかもしれなかった。男はへらへら笑い、意味不明な言葉を呟きながらメライちゃんの体に手を伸ばしてきた。絹を引き裂く音がする。
やめて、と鋭く叫ぶ声は、しかし相手の麦わら帽の男のほかは、僕の耳にしか届かなかったようだった。刈り取られた草の山の後ろから全裸のまま飛び出す。男はいやがるメライちゃんを抱きしめ、西瓜畑に押し倒した。ワンピースを引っ張り、肩から抜き取ろうとする。ためらっている暇はない。僕は板の切れ端を手に取って、メライちゃんに馬乗りになった男へ後ろから近づいていた。
麦わら帽の男は意味不明なことを言い、変な笑い声を立てて、メライちゃんの首筋に唇を付けて、チュッチュッと音を立てて吸う。汚らしい布切れで塞がれた口から「いや、やめて」とメライちゃんの泣き叫ぶ声が漏れる。
忍び寄り、板の切れ端を男の頭に振り下した僕は、すぐに前に出てメライちゃんの手を引っ張り、助け起こした。ぼろ切れと化したワンピースをまとったメライちゃんが胸元を押さえながら、走る。裸足なのに鹿のような身軽さだった。しかし、男の足はそれを上回った。たちまち追いつかれたメライちゃんは、無口になった男に腕を背中に回された。
下手に動くと腕の骨を折られてしまう恐怖にメライちゃんが全身を強張らせる。男が叫んだ。もごもごして聞き取りづらい発音だったが、どうも僕に「こっちに来い」と言っているようだった。メライちゃんのワンピースの裾がびりびりに千切られて、二つの太腿が恥ずかしそうに日の光を浴びる。もう少しでパンツが見えるところだった。肩口も力づくで広げられ、もう片方の手で押さえなければブラジャーが露出してしまいそうだった。
「痛い。やめなさいよ」
気丈な声を発するメライちゃんの目から、もう涙は流れていなかった。怒ったように口元を引き締めて、自分の腕を背中に回す男を睨みつけている。男は聞く耳を持たず、じっと僕を見つめた。
何を言ってるのか、明瞭な発音ではないので分かりづらかったけれど、麦わら帽の男は僕におちんちんを隠さないで立てと命じているらしい。「きっとそうだよ。この人、ナオス君に頭を後ろで組めって言ってるみたい」とメライちゃんが言う。男と体が触れ合っているだけあって、僕よりもしっかり聞き取れたようだった。
逆らうとメライちゃんに危害が加えられる恐れがあった。
「分かりました。言う通りにしますから、彼女を自由してやってください」
頭の後ろで両手を組み、一糸まとわぬ体を隠さずに晒して男の前に立ったのに、こうして好きな女の子におちんちんをじっと見られる恥ずかしさにも耐えているのに、男はなおも不満そうに鼻を膨らませて、メライちゃんの背中に回した腕を放そうとしなかった。板の切れ端で頭を叩かれたことがよほど許せないらしい。
ゴニョゴニョと意味の分かりづらい言葉を放ち、男が僕を無理矢理に四つん這いにさせると、板の切れ端でお尻を叩いた。「痛い」突然の痛みに声を上げる僕を無視して、男は僕のお尻を叩き続けた。
「痛い。ごめんなさいごめんなさい。許してください」叩かれた直後は悲鳴を上げ、その後は呻き声を漏らし、涙をこぼしながら、ヒリヒリする痛みに耐える。確かに最初に男の頭を殴ったのは僕だった。でもそれはメライちゃんを助けるためで、こんなに力一杯叩いたつもりはなかった。無我夢中だったから、それなりに力が入っていたのかもしれないが、今僕がお尻を叩かれている程の強さはなかったと断言できる。実際、男はそれほどの肉体的な痛みを受けたようには見えなかった。それよりも、メライちゃんと楽しもうとしたところを邪魔されたことに腹を立てているのかもしれない。
何十発ものお尻叩きが終わると、男は草陰の中からゴムチューブを取り出し、僕の体を乱暴に引き寄せた。たちまちにして僕は両の足首、手首を一つに縛り上げられてしまった。こんな風に拘束されては、どんなに体を動かそうとしても移動すらままならない。縛られた手足を空に向けて、おちんちんからおちんちんの袋、お尻の穴まで丸出しにして土の上に放置される。僕から離れると、麦わら帽の男は下卑た笑いを浮かべてメライちゃんを抱き締めた。
犯される、処女が奪われる、という甚大な恐怖の念がメライちゃんをして、凄まじく大きな悲鳴を上げさせた。遠くで声がして、何人かの影がこちらへ小走りに向かってくるのが見えた。ターリさんたちだった。
駆けつけるや否や、ターリさんは男の頭から麦わら帽子を叩き落とし、ぼさぼさの髪を掴んでメライちゃんから引き離すと、いきなり顔面を素手で殴り付けた。二発三発。男がよろめく。四発目でとうとう土の上に大の字で倒れた。男の顔は血まみれで表情が見えなかった。
手足を一か所で拘束されて、亀がひっくり返ったように天を仰いだままの僕は、この場にいつまにか集まっている人々に無視され続けた。男に襲われたところを助けられたメライちゃんにはIさんだけでなく、Y美たちまでも、今までとは別人のように優しく接し、慰めた。僕の相手をしている暇はなかったのだろう。
すぐ後ろに僕が転がっていることに気づかずにエンコが一歩下がった時、僕は激痛に身悶えした。エンコの踵が見事におちんちんの袋に当たったのだった。そこで初めてY美は僕の存在を思い出したようだった。しかし、メライちゃんに対するのとは違い、その態度はまったく冷ややかなものだった。開口一番、男として僕がメライちゃんを守れなかったことを責める。S子がメライちゃんを呼び寄せ、「こんな役立たずのおちんちん、蹴っ飛ばしてみたら」と勧めた。
おちんちんもお尻の穴も無防備に晒して身動きできない僕は、「お願い、そんなこと、やめてください」と哀訴しながら、拘束された不自由な体を小刻みに震わせた。Y美が股間からこぼれているおちんちんの袋を手に取って、「ここが弱点なのよ。軽く蹴っただけで、馬鹿みたいに泣き喚くんだから、男って面白いでしょ」と、メライちゃんに教える。いきなり押し倒され、ワンピースをめくられたメライちゃんが男性への恐怖を払拭するには、素っ裸の男をひとしきり心ゆくまで苛めるしかない、とIさんが言ったので、Y美は意を強くしたようだった。メライちゃんに早くこのおちんちんを蹴って、男全体に仕返しをしてやりなよ、と唆すと、メライちゃんは、大きく息を吸った。
まさかメライちゃんはそんなことはしない、したとしても極めて軽く、うんと加減してくれるだろうという希望を僕は捨てきれなかった。あのメライちゃんに襲いかかった麦わら帽子の男と僕とは全く関係がないこと、むしろ僕は板の切れ端で男の頭を叩くなどして止めようとしたこと、そのため男の怒りを買い、お尻を散々板で叩かれた末にこうして素っ裸のまま見っともない格好で縛られていることをメライちゃんは知っている。同じ男だからという理由だけで僕が罰を受けなければならないなんて、こんな理不尽な話はない。メライちゃんなら分かってくれる。僕はひたすらそう祈った。
たっぷり深呼吸をしてから、メライちゃんが「うん」と言った。まさか、信じられない、本当に蹴るつもりなのか。僕は身悶えして「お願い、僕は関係ないんだよ」と、声を震わせてメライちゃんに覚醒を呼び掛けた。メライちゃんは悪い夢を見て、正常な判断ができなくなっている。早く覚めて、お願いだから。手足を一つにしてゴムチューブで縛られている僕の股のところにメライちゃんの立ち姿が見えた。白いワンピースは土に汚れてところどころに穴があいていた。そこから青白い肌を垣間見せるメライちゃんが落ち着きはらった澄んだ目をして僕を見下ろしている。
「我慢してね。私は男の人が大っ嫌いになりそうなんだから、ね」
きっぱりと言うメライちゃんにY美たちが感心したように頷いた。S子などは目を見開いて驚いている。助けようとして助けられず、逆にお尻を叩かれて縛られてしまった情けない、頼りにならない助っ人の僕が、今度は男を代表して恨みを晴らす生贄にされる。いやだ、こんなの絶対に納得できない。拘束された不自由な体を揺すって必死に抗議する僕のおちんちんを扱きながら、Y美が言った。これも男としてのお前の弱さが原因なのだから諦めるしかないんじゃないの、ほら、こんな風に軽く扱くだけで気持ち良くなっておちんちんが勃ってくるでしょ。
ぴくんとおちんちんが首をもたげるのを見て、Y美がくすりと笑った。こんな状況でも外から一定の刺激を与えるだけで、こうも簡単に反応してしまうおちんちん。Y美の笑う目には男の人全般に対する軽侮の念が込められていた。
「おちんちんの、この玉が入ってる袋はね、ちょっと力を加えるだけで男はすごく痛がる。それなのに、こうやって股の間からこぼれてるから、おかしいわよね。まるで打ってくださいって言わんばかりよ。そんなにデリケートな物なら体の中にしまっとけっ言いたくもなるよ。何かがぶつかってもおかしくないよね」
足の甲がおちんちんの袋に触れ、少しずつ押してきた。「こんな風に蹴りなさいね」と、Iさんがメライちゃんの足を持って、教えている。足の指先がおちんちんに当たり、撫でつけるように動いた。じんじんと刺激を受けて、快楽の刺激に頭がうまく働かなくなる。ただ、とてつもない危険が迫っているような感じは消えることなく、胸の辺りをぞわぞわさせた。僕は首を上げ、もう一度考え直すように哀願した。
「何言ってんのよ、あんたは。ほれ、メライも分かったら早く蹴りな」
ぎゅっとおちんちんの袋を掴んでS子が僕を黙らせると、メライちゃんの剥き出しの太腿の裏側をパチーンと叩いた。おちんちんが、これからおちんちんの袋を蹴られる恐怖に怯えて小さく縮こまっているよりも、勃起しているほうが心理的に蹴りやすくなるだろう、というIさんのアドバイスは、確かにメライちゃんに当てはまったようだった。強引に性的な接触を試みた、憎むべき男への復讐。硬化したおちんちんへ注ぐメライちゃんの眼差しには、静かな怒りの感情が湛えられていた。
もう無理だ、と絶望の気持ちに襲われ、もがきにもがく。ゴムチューブで手足を一つに縛られ、お尻の穴まで丸出しの、これ以上ないくらい惨めな仰向けの姿勢のまま、おちんちんの袋を蹴られてしまう。「やめて」と僕は叫び、目をつむった。
「ナオス君、ごめん」
不意に優しいメライちゃんの声がして、僕は許されたのかと思った。メライちゃん、最後の最後で気が変わったのだ、目が覚めたのだ、と思った。全身の力がほどけた瞬間、それは来た。柔らかい内臓を鷲掴みにされ、ぐっと心臓の方へ押し込まれたかのような痛みだった。頭の中が真っ白になった。どれくらい痛みが続いたのか、分からなかった。口を閉じることもできず、口の端から涎が糸を引いて垂れる。続いて、もう一発。蹴り上げた足の裏とおでこを露わにしたメライちゃんの顔が並んで見えた。涙の中に浮かんでそれらがゆらゆらと漂う。
「もう一回いってみようか」Y美がそそのかす。
「いいの? 白目剥いてるみたいだけど」
あどけない調子で問い返すメライちゃんに対し、僕は自分の身を守るための精一杯の声を上げていた。
「やめてください。なんでも言うこと聞きますから。やめて」
更にもう一発。声が途絶え、意識が飛んだ。
しばらくして、女の人の話し声が聞こえた。でも何を話しているのか分からなかった。ターリさんの野太い声が混じって、女の人たちはくすくす笑った。
「触ってみて。熱くなってる」
おちんちんの袋を撫でながらY美は言い、S子やルコに触らせた。ルコが袋の中の玉を掴もうとし、うまく掴めないので、向きになった。力が込められ、僕は泣きじゃくって痛みを訴えた。同級生の女の人たちは順に触り、最後はメライちゃんの手がおちんちんの袋を掴んだ。
「大丈夫かな」と、メライちゅんの後ろから覗き込んでミューが心配そうな表情を浮かべた。同級生の中で、このミューだけが痛めつけられたおちんちんの袋に触れようとしなかった。仰向けのまま一つに縛り上げられた手足をむなしく動かして、少しも退く気配のない鋭い痛みの中に悶える僕は、薄く目をあけ、ミューのきちんと揃えた膝が軽く曲がっているのを見た。その白く輝いた膝小僧が今にもおちんちんの袋を蹴り上げそうで、そう思っただけで身震いしてしまう。
真っ白、死んだように真っ白、とエンコが僕の顔を覗き込んで興奮気味に伝える。言った。ターリさんの手が僕の股間に伸びると、何か冷たいジェル状の液体をおちんちんの袋に塗った。ゴムチューブの結び目が解かれ、仰向けの僕はようやく手足を地面に下ろすことができた。
「さっきは精液の搾取に失敗したけど、おちんちんの袋に刺激を与えた今、もう一度精液を出してもらうのは良い考え」
ぽつりとIさんが呟き、ここまで一緒についてきた中年の女性信者たちを呼ぶと、今度は絶対に取りこぼさないように細心の注意を払いなさい、と言った。
「ナオス君、射精するのよ。できるでしょ?」
しゃがみ込んでIさんが話し掛けてきた。白い着物から白檀のほのかな香りがした。無理です、と頭の中で答えるのだけれど、激痛はまだ続いて声を出せない。
「頑張ってね。せっかく睾丸に衝撃を加えたのだから、新たな力が出てくるわよ」
全く理解できない、ただの思い込みにすぎないようなみなみ川教の教えを押しつけて、Iさんは僕の首筋や胸を撫でる。乳首を指で押し、摘まみ、引っ張りながら僕を見つめて、にっこりと笑う。僕はなんとか首を横に振った。
「いやなの? そう」Iさんは困ったように首を傾げた。「でも、あなたに拒否する権利はないのよね。射精するの」
まだおちんちんの袋には酷い痛みが残っているのに、Iさんは僕に立つように命じる。僕は首を横に振って、「いやです。堪忍してください」と、必死に声を絞り出した。「まだ痛くて、できません」
全く大袈裟なんだから、とIさんは憎々しげに呟いて僕の乳首を抓ると、腰を上げた。折り曲げていた白い着物の裾からちらちらと見えた白い下着が、つむった目の奥で妖しく浮かんだ。
なかなか起き上がれない僕に業を煮やしたY美がメライちゃんに僕の両足を持つように言いつけた。土の上に仰向けに寝る僕の股の間にしゃがみ込んだメライちゃんは、すっかりY美やS子の言いなりになっていた。
僕の足首を掴むと、ひょいと引っ張り上げた。
「チャコはこれから射精しなくちゃいけないのに、いやだってわがまま抜かしてるんだよ。射精させてくださいって自分から願い出るまで、足でグリグリやりな」
やめて、と訴える僕の顔をY美が踏んだ。「いい子だからね、メライ。早くやるんだよ。さっき男に抱きつかれて怖い思いをしただろう?」言いながら、Y美は靴先を僕の口に突っ込んた。「復讐するつもりでやりな。遠慮はいらないよ」Y美は僕の口から靴を抜くと、こめかみをコツンと蹴った。
ぐっと両足が引っ張られるように持ち上げられると、まだキンキンと痛みの残るおちんちんの袋にメライちゃんがそっと足の裏を当てた。
「こんな感じでいいの?」恐る恐るメライちゃんが訊ねる。
「そうだよ。もっと力を込めてグリグリグリってやるの」両足を脇で挟んでぐっと足を突き出す仕草をして、S子が答えた。
「ごめんね、ナオス君、ほんとにごめん」
潤んだ大きな瞳で詫びるメライちゃんは、ぼろ切れのようなワンピース姿だった。ところどころに穴があいて生白い肌を露出させ、短い裾からは、片足をおちんちんの方へ伸ばしたばかりにパンツのフリルが見え、男に千切られてしまった胸元は、両手で僕の足首を掴んでいるために、垂れて、ブラジャーの一部を覗かせている。初めて見るメライちゃんの下着は、どちらも純白だった。おちんちんの袋の痛みとは別に、おちんちんがぴくんと反応してしまう。
「ごめんね、ナオス君」メライちゃんはまだ謝り続ける。「私、裸足にされたから、ずっと裸足で歩いてたから、足の裏、すごく汚れてるの。こんな汚い足で、ナオス君の大切なところを踏み付けるなんて」申し訳ない、とばかりに鼻をすする。
風紀委員とN川さんは、そんなことは気にする必要はない、元気を出しな、と口々に励ました。メライちゃんのおちんちんを踏む足に少しずつ力が加わった。
下着の一部を見て、興奮したおちんちんが変化する。そのことにいち早く気づいたのはY美だった。
「おい、メライ。そんなことでめそめそしてる場合じゃないよ。こいつは、お前のぼろぼろのワンピースから露出しているブラジャーだのパンティーだのを見て、早速興奮してるようだからさ」
「嘘でしょ」一瞬、メライちゃんの動きが止まった。じっとおちんちんを観察しているような熱い視線がおちんちんに絡み付くのを感じる、おちんちんが最初よりも大きくなっていることに気づくと、「酷い。覗き見るなんて最低じゃないの」と叫んで強い力を加え、足の裏でおちんちんの袋を踏みしだき始めた。「私だって好きでこんな格好してるんじゃないのよ。変な目で見ないでよ」ヒステリックに叫び、小刻みな振動を加える。同時に足の指が上にずれて、おちんちんに当たり、ぐりぐりと小刻みな動きを繰り返しているうちに指の間におちんちんが挟まってしまった。痛みと同時に性的な快楽がじんじんとおちんちんの袋からおちんちんに伝わってくる。
「ねえねえ、どんな感じ? 好きな女の子に電気あんまされるのは?」
のけ反って悶え、のたうち回る素っ裸の僕を見下ろしながら、S子とエンコが訊ねる。足の指が微妙におちんちんを擦って、袋への刺激と相重なる。体じゅうがじんじんと痺れ、何も考えられない。ただ、喘ぎながら、「やめて、お願いだから許して、やめて」と同じ言葉を繰り返している。
また一段とおちんちんが大きくなってしまったようで、目敏いY美がメライちゃんに知らせた。足でおちんちんを嬲られて、「やめてやめて」と痛みを訴えながらも、こんな風におちんちんを硬くさせてしまう。男の子の生理を知らないメライちゃんにしてみれば、嫌悪感を催すだけだろう。
軽蔑、蔑みの気持ちがおちんちんを踏み付ける足の裏からじんじん伝わってきた。僕はもうメライちゃんの方を見上げることもできず、硬い土の上でのけ反り、悶えて、ひたすら痛みと痛みを伴う悦楽に耐えながら、今も恋心を捨てることができない相手を前に、延々と全裸で醜態を晒し続けた。
「やめて欲しかったら、お願いしないと駄目じゃん。早くお願いしなよ、射精させてくださいって」
涙でぐしゃぐしゃになった僕の顔を覗き込んだY美は、メライちゃんの足の指で扱かれて大きくなりつつあるおちんちんを人差し指でツンツンと突いた。突然、エンコがメライちゃんのワンピースの裾を捲った。フリル付きの白いパンツが丸見えになる。素早くエンコの手を払うメライちゃん。その拍子に電気あんまを続ける足が移動した。痛い。おちんちんの袋の中の玉が逃げ場を失い、圧迫されている。激痛に堪らなくなって悲鳴を上げる僕は、射精をお願いするどころではなかった。
「馬鹿だね。早く射精させてくださいってお願いすればいいのに」
苦悶する僕を不思議そうに見下ろしてS子が呟いた。と、メライちゃんの足が再び移動して、足の指がおちんちんの根元から先を擦り付けるように動いた。痛みが少し軽減され、代わりに性的な刺激が増大する。痛みと快楽の挟間で悶えながら、僕はメライちゃんに向かって、「射精させてください」と訴えた。
女性信者と宗教の話に夢中だったIさんは、おちんちんの先から精液が滲み出て、亀頭をぬらぬらと光らせていることに気づくのが遅れた。慌てて止めに入ったものの、メライちゃんは電気あんまをなかなかやめられなかった。ターリさんが後ろから引き離して、ようやく興奮状態から醒めたようだった。
「これだけおちんちんが立ってるんだから、射精できないなんて言わせないよ」
白い着物に付いた埃を払いながらIさんが言い、僕に立つように命じた。腕に力を込め、立ち上がろうとしたけど、のろのろとしか動けない。見かねたターリさんが脇から僕を支えて立たせる。「しっかりせんか、こら」と裸の背中をぴしゃりと叩き、IさんとY美、メライちゃんの前で気をつけの姿勢をさせる。
気をつけの姿勢を、膝を震わせながらもなんとか保つ僕を見るメライちゃんの目には、Y美たちと同じ、優越感、いじめる側に立つ者の安堵感のようなものがあった。麦わら帽の男から逃れた直後、Y美たちが心配して駆け寄り、慰めた。メライちゃんがY美の側に立つのは、当然だった。僕は心理的にも完全に追い込まれた形になった。
「早くしなさいよ。自分でやるのよ」とIさんは言い、くるりと背を向け、中年の女性信者たちを前の方に呼んだ。精液の搾取に今度こそ失敗しないように彼女たちをひざまずかせ、シャーレを渡す。
草陰の向こうから賑やかな話し声が聞こえた。「来たようね」「遅かったわね」と中年の女性信者たちは頷き合った。みなみ川教の婦人部が来たことを知った僕は、思わず体の前で腕を交差させ、おちんちんに手を当てた。
バサッと丈の高い雑草を踏み倒す音がして、案内のターリさんを先頭に女の人たちが姿を現わした。
「あら、いやだ。真っ裸じゃないの、この子は」
「何か悪さしたんでしょうよ。だからお洋服を取り上げられたのね」
次から次へとお喋りに花を咲かせつつ、婦人会の人たちが入ってきた。素っ裸の身を少しでも隠そうとして腕を交差させ、腰を引く。そんな僕を見て、婦人会の人たちは笑ったり、呆れた顔をしたりする。その数は、二十人を下らなかった。あまりの多さにたじたじになる。
年齢も十代の、僕とそれほど変わらないような人もいれば、溌剌とした若い人妻、若い人たちよりも少し年齢を重ねたような人、顔の皺、白髪の目立ってきた人、お婆さんまでいて、実に様々だった。全員がみなみ川教の信者であり、Iさんの呼び出しに応じて、ここに集まったとのことだった。
「ね、もしかしてナオス君じゃないの」
一人の線の細い、しなやかな手足を持った、少女らしい体型の女の人が僕の前に歩み出て、訊いた。ふわっとした大きめのシャツにぴちぴちの長ズボンという格好で、僕の体にくっつきそうな程に迫る。見慣れた制服姿ではないからすぐには分からなかったけど、同じ学校同じ学年の女子だった。Y美たちにも気づくと、びっくりして、体をねじり、手を振る。その方向から同じ学年の女子がさらに三人、手招きに応えて出てきた。
「すごい。こんなところで会うなんてね」
「ほんと、すっごい偶然だねえ」
同い年の女子たちは手を取り合い、ピョンピョン跳ねて喜んでいる。でも、Y美の嬉しそうな顔は最初だけだった。四人の婦人会に所属する女子たちが投げかけてくる質問への対応をS子に振って、難しい顔をしてIさんのもとに行き、何事か相談する。Iさんはうんうんと頷き、Y美から離れると、おもむろに両手を広げた。
「皆さんは、よく観察してください。今から、この男の子が自分の手で扱いて精液を出してくれます。皆さんの中に、これまで男の子が自分の手で精液を出すところを見たことがある人はいますか」
居並ぶ婦人会たちの人へIさんは問うた。ひぐらしの鳴く声が一際高まった。日差しはかなり弱まって、西の空をうっすらと色づかせていた。
「では、初めて見る人」
次々と手が挙がった。その中には、もちろん同い年の四人も混じっていた。恥ずかしそうに顔を伏せ、ちらちらと上目遣いで僕を見ている。
「では、心して見てください。それを見るだけであなたたちはパワーを受けます。精液はしっかり受け止めて、私たちの力にしましょう。今日はこの裸の男の子と同じ学校の女の子もパワーを受けに来ています。恥ずかしがらずにしっかり見るように」
くすくす笑いがあちこちから聞こえた。Iさんは婦人会の人たちをずらりと僕の回りに並ばせた。最前列は、ここで出会った同学年の四人の女子とメライちゃんだった。メライちゃんは中年の女性信者たちに代わって僕の精液を受け取る役を負うことになり、シャーレを持たされて、列の真ん中に座らされた。
メライちゃんに正面から見据えられながらオナニーをさせられる。その精液をメライちゃんに受け取らせるのは、本来なら信者の役目なのに、Y美がIさんに無理を言って、メライちゃんに代わらせたのだった。
二列目には、Y美やS子たちが中腰になって並んだ。更にその後ろを婦人会の女の人たちが列を成し、僕をぐるりと囲む。僕はおちんちんを手で隠し、腕で体を覆いながら、足を交差させて、立ち尽くしていた。いろんな年齢層の女の人たちが、これから素っ裸のままオナニーをさせられる僕を見つめる。Iさんの言うパワーとやらを受け取ろうとして、真剣な眼差しだった。
蹴られたおちんちんの袋がまだズキズキと痛かったけれど、体じゅうが羞恥でカッと熱くなり、痛みから気を逸らすことができた。この異常な事態に緊張した体をほぐそうとしてくれたのだろうか、誰かの手がお尻に触れてきた。荒々しくお尻を撫で、抓り、ぴしゃぴしゃと叩く。ターリさんだった。真後ろに立つターリさんは、僕の体を回して自分に向かせると、おちんちんに当てた手を外させ、深呼吸を命じた。
この場にいる僕以外の男性は、ターリさんだけだった。たくさんの女の人たちの前でオナニーを強制される恥ずかしい気持ち、おちんちんの袋の長く尾をひく痛みに共感してくれる人は、このターリさんを措いて他にいない。僕はゆっくり息を吸い、吐いた。
「覚悟はできたか?」
「もうこれ以上見せ物になりたくないです」
「見られてしまうんだよ。おちんちんだけでなく、オナニーまでさせられ、精液の出る瞬間までお前は観察されるんだ。諦めてくれ」
太い眉の下の小さな目が僕の打ちひしがれた顔を覗き込んだ。脇から体の側面に手を当て、すっと腰まで滑らせる。婦人会をはじめとする女の人たちのねちねちした視線を背中やお尻に感じながら、ターリさんがおちんちんの状態を手でまさぐりながらチェックするのをじっと我慢した。
「時間がない。始めなさい」
背中を向け、お尻を晒し続ける僕に対して命じたにもかかわらず、Iさんの目はターリさんに向けられていた。ターリさんの両手が僕の肩をがっしりと掴み、体を回転させた。゛見物人たちがざわざわし、やがて静まった。僕は顔を上げることができない。目の先に地面に腰を落として膝を組む人たちの靴があった。中央には土に汚れた裸足が見えた。メライちゃんの足だ。シャーレを両手で持って構えている。
恥ずかしい。でも、今更できないなんて言えないし、とても許される状況ではない。手は反射的におちんちんを隠していた。僕はその手を横にずらし、おちんちんを自分の指で支えた。正面の空には夕日がゆらゆら浮かび、憎らしい程の明るさを放って、僕の羞恥に火照った裸身を染める。
「顔を上げなさい。しっかり見る人たちをあなたも見るのよ」
まるで馬に鞭打つように、Iさんがぴしゃりと僕のお尻を叩いた。
「いやだ、お願いだからやめて」
性的に反応してしまう自分が許せなくなって、思わず叫んでしまう。恥ずかしくてたまらなかった。すぐにS子に「うるさいな、静かに」とお尻の肉を抓られる。
Y美に命令されて、メライちゃんは無理矢理やらされているに過ぎない。従わなければ、メライちゃんもまた僕のような恥ずかしい目に遭わされてしまう。だから、メライちゃんに向かって「やめて」とは言えない。もっぱらY美やS子に許しを乞いながら、少しずつ高まってくる快楽に悶え、喘ぐ。両手両足を縄で縛られた体から汗が噴き出て、思わぬ方向へ流れた。
幸いなことにミュー、ルコ、風紀委員、N川さん、エンコの五人はこの場にいなかった。彼女たちは、Iさんの言いつけでごみ拾いをさせられている。大きな半透明のポリ袋を持って、公園の外周の植込みなどに落ちている紙くずだの煙草の吸殻などを拾い集め、袋がいっぱいになるまで戻って来れないようだった。公園自体は、遊具一つない多目的広場が広がっているだけなので、ごみが落ちていたらすぐに分かる。袋を満たすには、公園の外周だけでなく、もしかすると、もう少し離れたところまで、場合によっては幹線道路の方まで、足を伸ばす必要があるかもしれない。
背後からはIさんの話し声が聞こえた。霊魂は自然界に満ちている、生命力を得るには精通してまもない男の子の精液が一番よい、などと中年女性たちを相手に理解不能な論理を説いている。厳粛な雰囲気だった。もしも学校で先生がこんな話を始めたら、僕たち生徒はすぐに気が抜けて、あちこちで私語が始まり、がやがやうるさくなるだけだろう。
「真剣さが足りないんだよ、お前はよ」
突然Y美が怒鳴って、後ろからメライちゃんの髪の毛を掴んで左右に揺すった。メライちゃんの手がおちんちんから離れて自分の頭へ移り、呻いた。膝を曲げたまま、首を曲げて見上げて、Y美に詫びる。捻った首筋の肌が白い陶器のようだった。苦痛にゆがんだ顔をおちんちんに向ける。Y美の剣幕に怯えて顔面が強張っている。ショートカットの髪が引っ張られてボサボサだった。
「ほら、早くしろよ」
膝で背中を押され、メライちゃんの鼻がおちんちんにくっ付いた。指で支えたおちんちんを上下左右に振る。振り幅が次第に小さくなり、やがて本格的な扱きに変わった。それと同時に、もう片方の手がおちんちんの袋に添えられた。
あっけなく感じてしまい、「見ないで」と懇願するもむなしく、メライちゃんの見ている前でぐんぐん大きくなってゆく。メライちゃんは、焦らすようなことはせず、最初から最後まで同じ刺激を与え続けた。たちまち射精寸前まで追い込まれた。Y美とS子が頻りに「形を見ろ」とメライちゃんに言う。精液が飛び出す寸前で手が止まった。僕は喘ぎ、全身に力を入れて、キュッとおちんちんの先を締めるようにして射精を我慢した。許可なく勝手に射精してしまったら、お仕置きされてしまう。僕だけでなく、メライちゃんも同罪にされるかもしれない。
迫りくる性的な快楽に耐える苦しみは、人の苦しむ姿のうちで最も惨めなものの一つかもしれない。その苦しみは、生への執着からではなく、性的な快楽をもっとむさぼりたいというあさましい欲望から生じているのだから、人間がこの世に生れて受ける数々の苦しみの中では、一番低いランクに位置しそうなものだけれども、実際に射精寸前で止められ、扱かれ、止められ、我慢を強いられていると、その苦しみは、生きる苦しみそのものにまで高まってくるのを感じる。苦しみ、悶えることで、僕自身の惨めな欲望を曝け出しているのだから、これほど恥ずかしい苦悶もない。
手足をいっぱいに広げた格好で固定され、素っ裸のまま悶える僕をY美とS子とメライちゃんがじっと見つめている。僕を小馬鹿にした、蔑むような視線を向けるY美とS子に挟まれて、メライちゃんの無表情は異様な感じがした。三人の視線は、伸ばし切った手足の指の先から脇の下、胸を這い回った後、最後には射精寸前でひくひくと震えるおちんちんに落ち着くようだった。
荒々しい手がお尻を掴み、お尻の穴に指先が当たって、少し挿入された。Iさんだった。中年女性の信者たちを連れて、いつのまにか僕の後ろに回っていた。性的なポテンシャルをうんと上げることが大事、というようなことをIさんが例の説法口調で語り、女性信者たちが「はい。従います」と答える。指がいっそう深く挿入された。言葉にならない声を漏らし、体をくねらせる。Iさんが説法しながら指を動かす。痛いような、気持ちがいいような、よく分からない感じだった。おちんちんは射精寸前の硬さ大きさを晒したまま、前にいる同級生の女子たちの視線を浴びて、行き場を失ったように先端の膨らんだ部分を震わせている。
女性信者たちがどろりとした液体を僕の体に塗り始めた。ローションだと言う。今更ながらターリさんの縛りが恨めしかった。どんなに力を込めても手や足が若木や鉄柱から自由になることはなかった。がっしりと縛られているため、むなしく体をくねらせ、喘ぎ、懇願するしか僕には抵抗の術がない。そのターリさんが僕の悶える姿をY美たちの後ろで腕を組んで見つめ、満足そうに頷いている。
「だいぶ気持ちがいいみたいだな。快楽三昧じゃないか」
ターリさんの豪快な笑い声に驚いて、メライちゃんがびくっと震えた。僕の前にいる三人は初めてターリさんがそこにいることに気づいたようだった。あからさまに不快な顔をしたY美が振り返って、ターリさんを睨みつけた。
背後からぬるぬるドロドロした透明なジェル状の液体を僕の体にくまなく塗る女性信者たちの手が妖しい動きを始めた。塗るというよりは愛撫するという動きだった。一段と性的な快楽が高まってくる。でも、女性信者たちはなかなかおちんちんには手を出さなかった。最後の最後まで残しておくつもりかもしれない。その代わり、おちんちんの袋からお尻の穴まで次々と指が責め立ててきた。おちんちんの袋を引っ張ったかと思うと、お尻の穴にずぶずぶと指がスムーズに入るのを良いことに、どこまでも挿入して、全ての関節をもぞもぞと動かす。
汗とローションにまみれて、僕の一糸まとわぬ体はぬめりを帯びたようだった。S子が爬虫類みたいだと評して笑う。Y眉がメライちゃんの首筋に息を吹きかけ、何事か囁いた。メライちゃんの手にもローションが渡された。
そそり立ったおちんちんの裏側にまずメライちゃんの指先が当たった。ドロドロした液体を根元から先端にかけて、ゆっくりと丹精込めて塗り込める。中年女性の信者たちは僕の耳や首を撫で回しながら、「いい子ね、感じて、感じなさい」と盛んに囁いた。要するに、僕を悶えさせ、我慢に我慢を重ねた挙句に放出された精液が欲しいだけなのだった。それさえ手に入るのであれば、女性信者たちは性行為以外のどんな性的奉仕にも応じるのかもしれない。しかし、僕の求める性的奉仕はこんな屈辱的な物ではない。誰にも見られない密室の暗がりでこっそりサービスしてくれるほうがどれだけ良いか分からない。もちろん、そんなサービスは望むべくもない。素っ裸で四肢を広げて拘束されている僕にどんな選択肢があると言うのだろう。
まだまだ、というIさんの声が無情に響いた。朦朧として、メライちゃんに見られたくないという意識がどんどんもろくなっていく。もうどうせ昨日メライちゃんに射精の瞬間を見られたのだ。しかも年少の男の子の手で逝かされてしまった。メライちゃんが鷺丸君に強引にキスされているのを見させられた揚句の射精だった。スカートやシャツに飛び散った精液をメライちゃんは黙って拭いていた。もうメライちゃんは僕を今までのようには接してくれないだろう。昨日を境にして、僕への意識がすっかり変わってしまったに違いない。こんなことを考えながら、圧倒的な勢いで押し寄せてくる性的な快楽の波がおちんちんの袋からおちんちんへと昇ってくるのを必死に防いでいる。
「まだ駄目だよ、我慢」
亀頭の膨らみを見て、Y美が叫んだ。Y美に髪を引っ張られ、メライちゃんの手も止まった。危ないところだった。おちんちんの先っぽを懸命にきゅっと締めて、内股に力を込めるようにして、なんとか持ちこたえる。あと一秒遅ければ射精していた。
全身を波打たせて息を荒くする僕の顎にIさんが手を入れ、俯きがちな顔を上に向かせる。まじまじと見つめてから、Y美に目配せした。やっと射精させてもらえる、と思った瞬間、気が緩んだ。メライちゃんの指と指で作った輪っかがすっと根元から緩慢に動いたのだった。そのまま指を放してくれたらこんなことにはならなかったのに、指と指をくっ付けたまま、輪を外すようにおちんちんの先へ向かって動いた。おちんちんの根元近くではゆっくりとした動きだったが、次第に速度を上げて、すっと先端へ向かった。
駄目、駄目と叫んで内股に力を込め、腰を引いて必死でおちんちんの先をすぼめるのだけれど、遅かった。一瞬の気の緩みを衝いて微量の電気を帯びた生ぬるい水のようなものが波になって上昇し、手足の先まで行き渡り、全身をくまなく痺れさせる。我慢できる範囲をはるかに超えた快楽だった。メライちゃんの指の輪が亀頭の裏側を撫でると同時に、僕は堪えに堪えてきた精液を一気に放出してしまった。
無表情だっメライちゃんの目が驚愕のせいか、通常の二倍近くまで大きく見開かれている。見慣れているはずのY美やS子も口を半開きにしたまま、精液を放つおちんちんに目が釘付けだった。今日初めての射精であること、これまでの寸止めによって散々焦らされたことによって、Y美たちの予想を上回る量の精液がどくどくと出る。しかも、精液が出た瞬間もなぜかメライちゃんはおちんちんから手を放さず、それどころか、もう一度指の輪っかをおちんちんの根元の方へ一度戻してから、再び先端へ向けて動かしたので、腰を引き引き、おちんちんの先っぽを閉めようと力を入れる体にまた新たな快楽の波がざわざわと立ち始めて、精液放出の最中に更なる射精をしてしまったかのように、どくどくと精液がおちんちんの中の管を通って止まなかった。
「信じられない、いやらしい声出しながら、女の前で精液出すとはね」
「しかもすごい量じゃん」
最後の数滴がおちんちんの先端からどろりと垂直に落ちると、Y美とS子は困ったような顔をして僕を冷やかした。S子が亀頭の先端から筋を引いて垂れる精液を指ですくい、「こんなに伸びるよ」とねばねばした精液が糸のように伸びるのをメライちゃんに見せてから、おちんちんになすり付ける。
砂粒でざらざらした地面に落ちた精液をメライちゃんが手のひらに移して、おちんちんに塗り込めてゆく。Y美の命令で無理矢理やらされていることなのに、少し離れたところで信者たちと話し合いをしていたIさんは戻って来るなり、「まあ、この子も随分と積極的になったじゃないの」とメライちゃんのしゃがみ込んでおちんちんに向かう背中を見て、笑った。
精液塗れになったおちんちんを見て、中年女性の信者たちは、失望を隠さなかった。Iさんは彼女たちに同情を寄せて、「またの機会にしましょう」と慰め、白い着物の膝と紫の上着の袖に付着した塵を払った。ターリさんが縄を解いてくれたので、僕は両手両足が自由になったけれども、裸身を腕で覆う猶予もなく、すぐにその場で気をつけの姿勢で立たされ、Iさんにたっぷりと叱られる羽目になった。
許可が出る前に射精してしまったため、精液を採取できず、みすみす無駄にしてしまった。性的な刺激を受けながらじっと溜め込んで、ある程度の時間を経てから出したものこそ価値が高い。中年の女性信者たちが求めていたのは、まさにそのような精液だった。彼女たちの落胆を思いなさい、とIさんが怖い目で睨みながら、予想外のタイミングで射精してしまった僕に反省を促した。
「土下座でしょ。土下座しなさい」
申し訳ございませんでした、と繰り返し土下座して詫びる。
「快楽のコントロールをお前の同級生の女子たちに一任した私にも原因がある。許可のない射精は処罰の対象であり、みそぎの期間が延期されるのが通例ではあるが、今回は特別に許すこととする」
白い着物に紫の上着を羽織ったその姿だけでも宗教的な荘厳さがあるのに、そこへさらに威厳を加えるかのような、物々しい声音でIさんが話す。ほっとして顔を上げると、メライちゃんもまた安堵の表情を浮かべて、僕を見下ろした。しかし、罰から解放されたと安心するのはまだ早かった。折しも、ごみ拾いをさせられていたミューやルコたちが透明なポリ袋に空き缶だの菓子の空き箱だのをいっぱい詰めて戻ってきたところだった。Iさんが罪を帳消しにする代わりとして、メライちゃんと僕にごみ拾いを命じた。
「二人一組になって、ごみ袋がぱんぱんに膨らむまで詰めてくること」
Iさんは、ポリ袋をメライちゃんに渡した。
「もうこの辺りのごみはほとんど私たちが拾ったから、大して残ってないよ」
N川さんが憐れむような目でメライちゃんにアドバイスし、中年の女性信者に空き缶がどっさり入ったポリ袋を渡した。
「そうだね。私たちが拾い尽くしたから、この辺にはもうないよ」
風紀委員がズボンに付着したひっつき虫や棘を取り払いながら同意する。にやにや笑っているところを見ると、僕が素っ裸のままごみ拾いさせられるのを小気味よく思っているようだった。風紀委員だけではない。ルコもエンコも薄笑いを浮かべている。
「あのう」
道路の向こうと聞いて不安を覚えたのか、メライちゃんが恐る恐るIさんに声を掛けた。
「ごみはもちろん拾います。でも」
「でも、何よ」
「ナオス君に何か服を着せてあげちゃ駄目なんですか?」
「何言ってるんですか、あなたは」
振り向いたIさんはぎょりとした目でメライちゃんを睨んだ。びくっとしてメライちゃんが身を縮める。みそぎの間、僕がパンツ一枚穿くことも許されていないことをメライちゃんは知らないようだった。勝手に衣類をまとうものなら、たちまち剥ぎ取られ、一糸まとわぬ格好を強制される期間が今度こそ延長されてしまう。
「あなた、この子を射精させた張本人でしょ。もっと自覚しなさいよ。ほんとはあなたにも丸裸になってもらいたいところだけど、女の子だからそれは勘弁するのよ。でも、一応罰なんだから、靴と靴下は脱いでもらおうかな」
「え、裸足になるんですか」
「早く脱いで。女の子は裸足、男の子は素っ裸。それがあなたたちがごみ拾いをする時の格好。それ以外は認めないよ」
Iさんの宣告にY美たちがどっと笑った。
よく見るといろんなところに染みのある、かなり着古した白いワンピースを身にまとったメライちゃんは、細かい砂粒でざらざらする地面にぺたりとお尻を着けると、黙って靴と踝にまでも届かない短い靴下を手早く脱いだ。愚図愚図していたら、いつIさんの気が変わって僕のように素っ裸に剥かれるか分からない。白くてぷりぷりした、小さな足の指が明るい日のもとに晒された。体つきの細い線から想像していたよりもふくよかで、健康的な足の指だった。裸足に慣れていないメライちゃんは地面のざらざらした感触に軽い痛みを感じるようで、立ち上がってもきちんと静止できなかった。
ポリ袋をメライちゃんが持ち、爪先立つようにして歩く。ごみを拾ってきて、袋に入れるのは僕の役目なのだとY美が言った。N川さんが教えてくれた通り、多目的広場と宮殿の形をした公衆トイレしかないこの公園に目ぼしいごみは残っていなかった。
日が沈むまでにポリ袋をごみで一杯にしないと、罰としてメライちゃんのワンピースに鋏が入れられることになった。Y美とS子が考えた罰だった。Iさんは反対した。
「これは宗教的なしきたりの中で行われるものだから、罰はナオス君が受けないといけないのよ」と口を挟むと、
「そういう罰は別にそっちで考えください。これは私たちの間で決めたペナルティーだから、みなみ川教の宗教行事とは関係ありません」と、Y美は、これまでのIさんに対する遠慮勝ちな物言いとは打って変わった口調でぴしゃりと反論した。
時刻は五時を回っていた。思い悩んでいるうちに日はどんどん傾いてゆく。公園の中はもちろん、外周にも大してごみが残っていないことを実感すると、思案顔のメライちゃんが僕の方を振り向いた。「まさか」と僕は言った。
「あっちまで行くの?」
「仕方ないよ」メライちゃんが溜め息をついた。片側だけで二つの車線がある、広い幹線道路を横切って向こう側に渡ると、整備開発中の宅地があり、畑の広がる側に自然発生的にできた道があった。農家の人たちが通って踏み固めただけの土の道だった。ごみがたくさん落ちていそうだし、何よりも人目につきにくい。ただ、問題は少し距離があることだった。N川さんとエンコもさすがにここまでは足を伸ばさなかったと言う。
車が途切れたのを見計らって、緑の葉をぎっしり付けた大きな白樫の木から道路へ出る。裸足には熱い舗装路の上を跳ねるように走って、白いガードレールを跨ぐ。体が触れないように気を付けたのに、おちんちんの袋をガードレールの上部にぶつけてしまい、火傷しそうなほど熱かった。メライちゃんが心配して声を掛けてきたので、急いで「大丈夫」と答える。メライちゃんに続いて土だらけの斜面を下ると、区画整理中の宅地が遠くまで続いていた。戸建の家がまばらに見える。
金網のフェンスを乗り越えて草陰の道をしばらく進むと、広い範囲にわたって藪があった。メライちゃんと僕は四つん這いになって藪の中に入る。布が引っ掛かって裂ける音とメライちゃんの小さな悲鳴が聞こえた。僕はうんと腰を落とし、お腹を土に着けて這うように進んだ。素っ裸だから肌を傷つけないようにしなくてはならない。藪を抜け、畑沿いの一本道の前に出て立ち上がると、メライちゃんのワンピースの腰のところが一部切れて、腰から上の青白い肌が露出していた。
「もう嫌い。破れちゃったよ」
首を回して破れたところを確認するメライちゃんは、尾骶骨の上にある裂け目に手を当てた。裂け目は、手を広げない状態で親指から小指くらいまでの長さだった。普通にしていればパンツは見えないけれど、少し動いたり、見る角度を変えるだけで、簡単に目に入ってきそうだった。
「やだ。ナオス君、そんなに見ないでよ」
手でおちんちんを隠したまま所在なく立っている僕をメライちゃんが睨んだ。
区画整備された宅地の中にある舗装路と畑の間にある土の道には、予想した通り、肥料のビニール袋、梱包資材など、たくさんのごみが落ちていた。僕はせっせとごみを拾い、メライちゃんが口を開いて持つポリ袋に入れた。舗装路側からは草やまばらに生えた樹木などで、こちら側が見づらくなっているのも有難かった。
顔や首回りの汗をハンカチで拭いながら、メライちゃんが木陰に向かって歩き出した。もう夕方なのに真昼と少しも変わらない暑さだった。屈み込んで段ボールの切れ端を拾う僕にメライちゃんが「汗で背中がぬらぬら光っているよ。洋服を着てなくても暑いんだね」と、話し掛けてきた。恥ずかしいから自分だけが全裸でいることはあまり意識しないようにしていた僕はおちんちんに手を当てて立ち上がり、「うん」とだけ答えて拾った物をメライちゃんの広げるポリ袋の中に入れた。
小学生の男の子たちが自転車で通りかかった時、メライちゃんと僕は、刈り取られてうず高く積まれた草の山に回り込んで隠れた。服を着たメライちゃんまで全裸の僕と一緒になって隠れるのは、余計なトラブルを回避するためだった。二人で身を寄せ合って、息を殺しながら、やんちゃな男の子たちが過ぎるのをじっと待つ。
ボロボロのスラックスに麻の長袖シャツを肘までまくった麦わら帽の男がふらふらと歩いてきた時は、どういう訳か、メライちゃんだけ隠れるのが遅れてしまった。穴があいているとはいえ一応服を着ているという安心感が、僕ほどには慌てて身を隠す必要性を彼女に感じさせなかったのかもしれない。遠くにいた男は、ジグザグに歩いたり止まったりしまながら、いつのまにか音もなく接近していた。
今更隠れることもできない。道端で畑を見渡す振りをしながら、ただじっと男が通り過ぎるのを待つメライちゃんに後ろから声が掛けられた。男の目に情欲の炎がゆらゆらと揺れているのに気づいて、後ずさる。裸足で汚れて穴のあいたワンピースを一枚まとった格好では、男の欲望を刺激しやすいのかもしれなかった。男はへらへら笑い、意味不明な言葉を呟きながらメライちゃんの体に手を伸ばしてきた。絹を引き裂く音がする。
やめて、と鋭く叫ぶ声は、しかし相手の麦わら帽の男のほかは、僕の耳にしか届かなかったようだった。刈り取られた草の山の後ろから全裸のまま飛び出す。男はいやがるメライちゃんを抱きしめ、西瓜畑に押し倒した。ワンピースを引っ張り、肩から抜き取ろうとする。ためらっている暇はない。僕は板の切れ端を手に取って、メライちゃんに馬乗りになった男へ後ろから近づいていた。
麦わら帽の男は意味不明なことを言い、変な笑い声を立てて、メライちゃんの首筋に唇を付けて、チュッチュッと音を立てて吸う。汚らしい布切れで塞がれた口から「いや、やめて」とメライちゃんの泣き叫ぶ声が漏れる。
忍び寄り、板の切れ端を男の頭に振り下した僕は、すぐに前に出てメライちゃんの手を引っ張り、助け起こした。ぼろ切れと化したワンピースをまとったメライちゃんが胸元を押さえながら、走る。裸足なのに鹿のような身軽さだった。しかし、男の足はそれを上回った。たちまち追いつかれたメライちゃんは、無口になった男に腕を背中に回された。
下手に動くと腕の骨を折られてしまう恐怖にメライちゃんが全身を強張らせる。男が叫んだ。もごもごして聞き取りづらい発音だったが、どうも僕に「こっちに来い」と言っているようだった。メライちゃんのワンピースの裾がびりびりに千切られて、二つの太腿が恥ずかしそうに日の光を浴びる。もう少しでパンツが見えるところだった。肩口も力づくで広げられ、もう片方の手で押さえなければブラジャーが露出してしまいそうだった。
「痛い。やめなさいよ」
気丈な声を発するメライちゃんの目から、もう涙は流れていなかった。怒ったように口元を引き締めて、自分の腕を背中に回す男を睨みつけている。男は聞く耳を持たず、じっと僕を見つめた。
何を言ってるのか、明瞭な発音ではないので分かりづらかったけれど、麦わら帽の男は僕におちんちんを隠さないで立てと命じているらしい。「きっとそうだよ。この人、ナオス君に頭を後ろで組めって言ってるみたい」とメライちゃんが言う。男と体が触れ合っているだけあって、僕よりもしっかり聞き取れたようだった。
逆らうとメライちゃんに危害が加えられる恐れがあった。
「分かりました。言う通りにしますから、彼女を自由してやってください」
頭の後ろで両手を組み、一糸まとわぬ体を隠さずに晒して男の前に立ったのに、こうして好きな女の子におちんちんをじっと見られる恥ずかしさにも耐えているのに、男はなおも不満そうに鼻を膨らませて、メライちゃんの背中に回した腕を放そうとしなかった。板の切れ端で頭を叩かれたことがよほど許せないらしい。
ゴニョゴニョと意味の分かりづらい言葉を放ち、男が僕を無理矢理に四つん這いにさせると、板の切れ端でお尻を叩いた。「痛い」突然の痛みに声を上げる僕を無視して、男は僕のお尻を叩き続けた。
「痛い。ごめんなさいごめんなさい。許してください」叩かれた直後は悲鳴を上げ、その後は呻き声を漏らし、涙をこぼしながら、ヒリヒリする痛みに耐える。確かに最初に男の頭を殴ったのは僕だった。でもそれはメライちゃんを助けるためで、こんなに力一杯叩いたつもりはなかった。無我夢中だったから、それなりに力が入っていたのかもしれないが、今僕がお尻を叩かれている程の強さはなかったと断言できる。実際、男はそれほどの肉体的な痛みを受けたようには見えなかった。それよりも、メライちゃんと楽しもうとしたところを邪魔されたことに腹を立てているのかもしれない。
何十発ものお尻叩きが終わると、男は草陰の中からゴムチューブを取り出し、僕の体を乱暴に引き寄せた。たちまちにして僕は両の足首、手首を一つに縛り上げられてしまった。こんな風に拘束されては、どんなに体を動かそうとしても移動すらままならない。縛られた手足を空に向けて、おちんちんからおちんちんの袋、お尻の穴まで丸出しにして土の上に放置される。僕から離れると、麦わら帽の男は下卑た笑いを浮かべてメライちゃんを抱き締めた。
犯される、処女が奪われる、という甚大な恐怖の念がメライちゃんをして、凄まじく大きな悲鳴を上げさせた。遠くで声がして、何人かの影がこちらへ小走りに向かってくるのが見えた。ターリさんたちだった。
駆けつけるや否や、ターリさんは男の頭から麦わら帽子を叩き落とし、ぼさぼさの髪を掴んでメライちゃんから引き離すと、いきなり顔面を素手で殴り付けた。二発三発。男がよろめく。四発目でとうとう土の上に大の字で倒れた。男の顔は血まみれで表情が見えなかった。
手足を一か所で拘束されて、亀がひっくり返ったように天を仰いだままの僕は、この場にいつまにか集まっている人々に無視され続けた。男に襲われたところを助けられたメライちゃんにはIさんだけでなく、Y美たちまでも、今までとは別人のように優しく接し、慰めた。僕の相手をしている暇はなかったのだろう。
すぐ後ろに僕が転がっていることに気づかずにエンコが一歩下がった時、僕は激痛に身悶えした。エンコの踵が見事におちんちんの袋に当たったのだった。そこで初めてY美は僕の存在を思い出したようだった。しかし、メライちゃんに対するのとは違い、その態度はまったく冷ややかなものだった。開口一番、男として僕がメライちゃんを守れなかったことを責める。S子がメライちゃんを呼び寄せ、「こんな役立たずのおちんちん、蹴っ飛ばしてみたら」と勧めた。
おちんちんもお尻の穴も無防備に晒して身動きできない僕は、「お願い、そんなこと、やめてください」と哀訴しながら、拘束された不自由な体を小刻みに震わせた。Y美が股間からこぼれているおちんちんの袋を手に取って、「ここが弱点なのよ。軽く蹴っただけで、馬鹿みたいに泣き喚くんだから、男って面白いでしょ」と、メライちゃんに教える。いきなり押し倒され、ワンピースをめくられたメライちゃんが男性への恐怖を払拭するには、素っ裸の男をひとしきり心ゆくまで苛めるしかない、とIさんが言ったので、Y美は意を強くしたようだった。メライちゃんに早くこのおちんちんを蹴って、男全体に仕返しをしてやりなよ、と唆すと、メライちゃんは、大きく息を吸った。
まさかメライちゃんはそんなことはしない、したとしても極めて軽く、うんと加減してくれるだろうという希望を僕は捨てきれなかった。あのメライちゃんに襲いかかった麦わら帽子の男と僕とは全く関係がないこと、むしろ僕は板の切れ端で男の頭を叩くなどして止めようとしたこと、そのため男の怒りを買い、お尻を散々板で叩かれた末にこうして素っ裸のまま見っともない格好で縛られていることをメライちゃんは知っている。同じ男だからという理由だけで僕が罰を受けなければならないなんて、こんな理不尽な話はない。メライちゃんなら分かってくれる。僕はひたすらそう祈った。
たっぷり深呼吸をしてから、メライちゃんが「うん」と言った。まさか、信じられない、本当に蹴るつもりなのか。僕は身悶えして「お願い、僕は関係ないんだよ」と、声を震わせてメライちゃんに覚醒を呼び掛けた。メライちゃんは悪い夢を見て、正常な判断ができなくなっている。早く覚めて、お願いだから。手足を一つにしてゴムチューブで縛られている僕の股のところにメライちゃんの立ち姿が見えた。白いワンピースは土に汚れてところどころに穴があいていた。そこから青白い肌を垣間見せるメライちゃんが落ち着きはらった澄んだ目をして僕を見下ろしている。
「我慢してね。私は男の人が大っ嫌いになりそうなんだから、ね」
きっぱりと言うメライちゃんにY美たちが感心したように頷いた。S子などは目を見開いて驚いている。助けようとして助けられず、逆にお尻を叩かれて縛られてしまった情けない、頼りにならない助っ人の僕が、今度は男を代表して恨みを晴らす生贄にされる。いやだ、こんなの絶対に納得できない。拘束された不自由な体を揺すって必死に抗議する僕のおちんちんを扱きながら、Y美が言った。これも男としてのお前の弱さが原因なのだから諦めるしかないんじゃないの、ほら、こんな風に軽く扱くだけで気持ち良くなっておちんちんが勃ってくるでしょ。
ぴくんとおちんちんが首をもたげるのを見て、Y美がくすりと笑った。こんな状況でも外から一定の刺激を与えるだけで、こうも簡単に反応してしまうおちんちん。Y美の笑う目には男の人全般に対する軽侮の念が込められていた。
「おちんちんの、この玉が入ってる袋はね、ちょっと力を加えるだけで男はすごく痛がる。それなのに、こうやって股の間からこぼれてるから、おかしいわよね。まるで打ってくださいって言わんばかりよ。そんなにデリケートな物なら体の中にしまっとけっ言いたくもなるよ。何かがぶつかってもおかしくないよね」
足の甲がおちんちんの袋に触れ、少しずつ押してきた。「こんな風に蹴りなさいね」と、Iさんがメライちゃんの足を持って、教えている。足の指先がおちんちんに当たり、撫でつけるように動いた。じんじんと刺激を受けて、快楽の刺激に頭がうまく働かなくなる。ただ、とてつもない危険が迫っているような感じは消えることなく、胸の辺りをぞわぞわさせた。僕は首を上げ、もう一度考え直すように哀願した。
「何言ってんのよ、あんたは。ほれ、メライも分かったら早く蹴りな」
ぎゅっとおちんちんの袋を掴んでS子が僕を黙らせると、メライちゃんの剥き出しの太腿の裏側をパチーンと叩いた。おちんちんが、これからおちんちんの袋を蹴られる恐怖に怯えて小さく縮こまっているよりも、勃起しているほうが心理的に蹴りやすくなるだろう、というIさんのアドバイスは、確かにメライちゃんに当てはまったようだった。強引に性的な接触を試みた、憎むべき男への復讐。硬化したおちんちんへ注ぐメライちゃんの眼差しには、静かな怒りの感情が湛えられていた。
もう無理だ、と絶望の気持ちに襲われ、もがきにもがく。ゴムチューブで手足を一つに縛られ、お尻の穴まで丸出しの、これ以上ないくらい惨めな仰向けの姿勢のまま、おちんちんの袋を蹴られてしまう。「やめて」と僕は叫び、目をつむった。
「ナオス君、ごめん」
不意に優しいメライちゃんの声がして、僕は許されたのかと思った。メライちゃん、最後の最後で気が変わったのだ、目が覚めたのだ、と思った。全身の力がほどけた瞬間、それは来た。柔らかい内臓を鷲掴みにされ、ぐっと心臓の方へ押し込まれたかのような痛みだった。頭の中が真っ白になった。どれくらい痛みが続いたのか、分からなかった。口を閉じることもできず、口の端から涎が糸を引いて垂れる。続いて、もう一発。蹴り上げた足の裏とおでこを露わにしたメライちゃんの顔が並んで見えた。涙の中に浮かんでそれらがゆらゆらと漂う。
「もう一回いってみようか」Y美がそそのかす。
「いいの? 白目剥いてるみたいだけど」
あどけない調子で問い返すメライちゃんに対し、僕は自分の身を守るための精一杯の声を上げていた。
「やめてください。なんでも言うこと聞きますから。やめて」
更にもう一発。声が途絶え、意識が飛んだ。
しばらくして、女の人の話し声が聞こえた。でも何を話しているのか分からなかった。ターリさんの野太い声が混じって、女の人たちはくすくす笑った。
「触ってみて。熱くなってる」
おちんちんの袋を撫でながらY美は言い、S子やルコに触らせた。ルコが袋の中の玉を掴もうとし、うまく掴めないので、向きになった。力が込められ、僕は泣きじゃくって痛みを訴えた。同級生の女の人たちは順に触り、最後はメライちゃんの手がおちんちんの袋を掴んだ。
「大丈夫かな」と、メライちゅんの後ろから覗き込んでミューが心配そうな表情を浮かべた。同級生の中で、このミューだけが痛めつけられたおちんちんの袋に触れようとしなかった。仰向けのまま一つに縛り上げられた手足をむなしく動かして、少しも退く気配のない鋭い痛みの中に悶える僕は、薄く目をあけ、ミューのきちんと揃えた膝が軽く曲がっているのを見た。その白く輝いた膝小僧が今にもおちんちんの袋を蹴り上げそうで、そう思っただけで身震いしてしまう。
真っ白、死んだように真っ白、とエンコが僕の顔を覗き込んで興奮気味に伝える。言った。ターリさんの手が僕の股間に伸びると、何か冷たいジェル状の液体をおちんちんの袋に塗った。ゴムチューブの結び目が解かれ、仰向けの僕はようやく手足を地面に下ろすことができた。
「さっきは精液の搾取に失敗したけど、おちんちんの袋に刺激を与えた今、もう一度精液を出してもらうのは良い考え」
ぽつりとIさんが呟き、ここまで一緒についてきた中年の女性信者たちを呼ぶと、今度は絶対に取りこぼさないように細心の注意を払いなさい、と言った。
「ナオス君、射精するのよ。できるでしょ?」
しゃがみ込んでIさんが話し掛けてきた。白い着物から白檀のほのかな香りがした。無理です、と頭の中で答えるのだけれど、激痛はまだ続いて声を出せない。
「頑張ってね。せっかく睾丸に衝撃を加えたのだから、新たな力が出てくるわよ」
全く理解できない、ただの思い込みにすぎないようなみなみ川教の教えを押しつけて、Iさんは僕の首筋や胸を撫でる。乳首を指で押し、摘まみ、引っ張りながら僕を見つめて、にっこりと笑う。僕はなんとか首を横に振った。
「いやなの? そう」Iさんは困ったように首を傾げた。「でも、あなたに拒否する権利はないのよね。射精するの」
まだおちんちんの袋には酷い痛みが残っているのに、Iさんは僕に立つように命じる。僕は首を横に振って、「いやです。堪忍してください」と、必死に声を絞り出した。「まだ痛くて、できません」
全く大袈裟なんだから、とIさんは憎々しげに呟いて僕の乳首を抓ると、腰を上げた。折り曲げていた白い着物の裾からちらちらと見えた白い下着が、つむった目の奥で妖しく浮かんだ。
なかなか起き上がれない僕に業を煮やしたY美がメライちゃんに僕の両足を持つように言いつけた。土の上に仰向けに寝る僕の股の間にしゃがみ込んだメライちゃんは、すっかりY美やS子の言いなりになっていた。
僕の足首を掴むと、ひょいと引っ張り上げた。
「チャコはこれから射精しなくちゃいけないのに、いやだってわがまま抜かしてるんだよ。射精させてくださいって自分から願い出るまで、足でグリグリやりな」
やめて、と訴える僕の顔をY美が踏んだ。「いい子だからね、メライ。早くやるんだよ。さっき男に抱きつかれて怖い思いをしただろう?」言いながら、Y美は靴先を僕の口に突っ込んた。「復讐するつもりでやりな。遠慮はいらないよ」Y美は僕の口から靴を抜くと、こめかみをコツンと蹴った。
ぐっと両足が引っ張られるように持ち上げられると、まだキンキンと痛みの残るおちんちんの袋にメライちゃんがそっと足の裏を当てた。
「こんな感じでいいの?」恐る恐るメライちゃんが訊ねる。
「そうだよ。もっと力を込めてグリグリグリってやるの」両足を脇で挟んでぐっと足を突き出す仕草をして、S子が答えた。
「ごめんね、ナオス君、ほんとにごめん」
潤んだ大きな瞳で詫びるメライちゃんは、ぼろ切れのようなワンピース姿だった。ところどころに穴があいて生白い肌を露出させ、短い裾からは、片足をおちんちんの方へ伸ばしたばかりにパンツのフリルが見え、男に千切られてしまった胸元は、両手で僕の足首を掴んでいるために、垂れて、ブラジャーの一部を覗かせている。初めて見るメライちゃんの下着は、どちらも純白だった。おちんちんの袋の痛みとは別に、おちんちんがぴくんと反応してしまう。
「ごめんね、ナオス君」メライちゃんはまだ謝り続ける。「私、裸足にされたから、ずっと裸足で歩いてたから、足の裏、すごく汚れてるの。こんな汚い足で、ナオス君の大切なところを踏み付けるなんて」申し訳ない、とばかりに鼻をすする。
風紀委員とN川さんは、そんなことは気にする必要はない、元気を出しな、と口々に励ました。メライちゃんのおちんちんを踏む足に少しずつ力が加わった。
下着の一部を見て、興奮したおちんちんが変化する。そのことにいち早く気づいたのはY美だった。
「おい、メライ。そんなことでめそめそしてる場合じゃないよ。こいつは、お前のぼろぼろのワンピースから露出しているブラジャーだのパンティーだのを見て、早速興奮してるようだからさ」
「嘘でしょ」一瞬、メライちゃんの動きが止まった。じっとおちんちんを観察しているような熱い視線がおちんちんに絡み付くのを感じる、おちんちんが最初よりも大きくなっていることに気づくと、「酷い。覗き見るなんて最低じゃないの」と叫んで強い力を加え、足の裏でおちんちんの袋を踏みしだき始めた。「私だって好きでこんな格好してるんじゃないのよ。変な目で見ないでよ」ヒステリックに叫び、小刻みな振動を加える。同時に足の指が上にずれて、おちんちんに当たり、ぐりぐりと小刻みな動きを繰り返しているうちに指の間におちんちんが挟まってしまった。痛みと同時に性的な快楽がじんじんとおちんちんの袋からおちんちんに伝わってくる。
「ねえねえ、どんな感じ? 好きな女の子に電気あんまされるのは?」
のけ反って悶え、のたうち回る素っ裸の僕を見下ろしながら、S子とエンコが訊ねる。足の指が微妙におちんちんを擦って、袋への刺激と相重なる。体じゅうがじんじんと痺れ、何も考えられない。ただ、喘ぎながら、「やめて、お願いだから許して、やめて」と同じ言葉を繰り返している。
また一段とおちんちんが大きくなってしまったようで、目敏いY美がメライちゃんに知らせた。足でおちんちんを嬲られて、「やめてやめて」と痛みを訴えながらも、こんな風におちんちんを硬くさせてしまう。男の子の生理を知らないメライちゃんにしてみれば、嫌悪感を催すだけだろう。
軽蔑、蔑みの気持ちがおちんちんを踏み付ける足の裏からじんじん伝わってきた。僕はもうメライちゃんの方を見上げることもできず、硬い土の上でのけ反り、悶えて、ひたすら痛みと痛みを伴う悦楽に耐えながら、今も恋心を捨てることができない相手を前に、延々と全裸で醜態を晒し続けた。
「やめて欲しかったら、お願いしないと駄目じゃん。早くお願いしなよ、射精させてくださいって」
涙でぐしゃぐしゃになった僕の顔を覗き込んだY美は、メライちゃんの足の指で扱かれて大きくなりつつあるおちんちんを人差し指でツンツンと突いた。突然、エンコがメライちゃんのワンピースの裾を捲った。フリル付きの白いパンツが丸見えになる。素早くエンコの手を払うメライちゃん。その拍子に電気あんまを続ける足が移動した。痛い。おちんちんの袋の中の玉が逃げ場を失い、圧迫されている。激痛に堪らなくなって悲鳴を上げる僕は、射精をお願いするどころではなかった。
「馬鹿だね。早く射精させてくださいってお願いすればいいのに」
苦悶する僕を不思議そうに見下ろしてS子が呟いた。と、メライちゃんの足が再び移動して、足の指がおちんちんの根元から先を擦り付けるように動いた。痛みが少し軽減され、代わりに性的な刺激が増大する。痛みと快楽の挟間で悶えながら、僕はメライちゃんに向かって、「射精させてください」と訴えた。
女性信者と宗教の話に夢中だったIさんは、おちんちんの先から精液が滲み出て、亀頭をぬらぬらと光らせていることに気づくのが遅れた。慌てて止めに入ったものの、メライちゃんは電気あんまをなかなかやめられなかった。ターリさんが後ろから引き離して、ようやく興奮状態から醒めたようだった。
「これだけおちんちんが立ってるんだから、射精できないなんて言わせないよ」
白い着物に付いた埃を払いながらIさんが言い、僕に立つように命じた。腕に力を込め、立ち上がろうとしたけど、のろのろとしか動けない。見かねたターリさんが脇から僕を支えて立たせる。「しっかりせんか、こら」と裸の背中をぴしゃりと叩き、IさんとY美、メライちゃんの前で気をつけの姿勢をさせる。
気をつけの姿勢を、膝を震わせながらもなんとか保つ僕を見るメライちゃんの目には、Y美たちと同じ、優越感、いじめる側に立つ者の安堵感のようなものがあった。麦わら帽の男から逃れた直後、Y美たちが心配して駆け寄り、慰めた。メライちゃんがY美の側に立つのは、当然だった。僕は心理的にも完全に追い込まれた形になった。
「早くしなさいよ。自分でやるのよ」とIさんは言い、くるりと背を向け、中年の女性信者たちを前の方に呼んだ。精液の搾取に今度こそ失敗しないように彼女たちをひざまずかせ、シャーレを渡す。
草陰の向こうから賑やかな話し声が聞こえた。「来たようね」「遅かったわね」と中年の女性信者たちは頷き合った。みなみ川教の婦人部が来たことを知った僕は、思わず体の前で腕を交差させ、おちんちんに手を当てた。
バサッと丈の高い雑草を踏み倒す音がして、案内のターリさんを先頭に女の人たちが姿を現わした。
「あら、いやだ。真っ裸じゃないの、この子は」
「何か悪さしたんでしょうよ。だからお洋服を取り上げられたのね」
次から次へとお喋りに花を咲かせつつ、婦人会の人たちが入ってきた。素っ裸の身を少しでも隠そうとして腕を交差させ、腰を引く。そんな僕を見て、婦人会の人たちは笑ったり、呆れた顔をしたりする。その数は、二十人を下らなかった。あまりの多さにたじたじになる。
年齢も十代の、僕とそれほど変わらないような人もいれば、溌剌とした若い人妻、若い人たちよりも少し年齢を重ねたような人、顔の皺、白髪の目立ってきた人、お婆さんまでいて、実に様々だった。全員がみなみ川教の信者であり、Iさんの呼び出しに応じて、ここに集まったとのことだった。
「ね、もしかしてナオス君じゃないの」
一人の線の細い、しなやかな手足を持った、少女らしい体型の女の人が僕の前に歩み出て、訊いた。ふわっとした大きめのシャツにぴちぴちの長ズボンという格好で、僕の体にくっつきそうな程に迫る。見慣れた制服姿ではないからすぐには分からなかったけど、同じ学校同じ学年の女子だった。Y美たちにも気づくと、びっくりして、体をねじり、手を振る。その方向から同じ学年の女子がさらに三人、手招きに応えて出てきた。
「すごい。こんなところで会うなんてね」
「ほんと、すっごい偶然だねえ」
同い年の女子たちは手を取り合い、ピョンピョン跳ねて喜んでいる。でも、Y美の嬉しそうな顔は最初だけだった。四人の婦人会に所属する女子たちが投げかけてくる質問への対応をS子に振って、難しい顔をしてIさんのもとに行き、何事か相談する。Iさんはうんうんと頷き、Y美から離れると、おもむろに両手を広げた。
「皆さんは、よく観察してください。今から、この男の子が自分の手で扱いて精液を出してくれます。皆さんの中に、これまで男の子が自分の手で精液を出すところを見たことがある人はいますか」
居並ぶ婦人会たちの人へIさんは問うた。ひぐらしの鳴く声が一際高まった。日差しはかなり弱まって、西の空をうっすらと色づかせていた。
「では、初めて見る人」
次々と手が挙がった。その中には、もちろん同い年の四人も混じっていた。恥ずかしそうに顔を伏せ、ちらちらと上目遣いで僕を見ている。
「では、心して見てください。それを見るだけであなたたちはパワーを受けます。精液はしっかり受け止めて、私たちの力にしましょう。今日はこの裸の男の子と同じ学校の女の子もパワーを受けに来ています。恥ずかしがらずにしっかり見るように」
くすくす笑いがあちこちから聞こえた。Iさんは婦人会の人たちをずらりと僕の回りに並ばせた。最前列は、ここで出会った同学年の四人の女子とメライちゃんだった。メライちゃんは中年の女性信者たちに代わって僕の精液を受け取る役を負うことになり、シャーレを持たされて、列の真ん中に座らされた。
メライちゃんに正面から見据えられながらオナニーをさせられる。その精液をメライちゃんに受け取らせるのは、本来なら信者の役目なのに、Y美がIさんに無理を言って、メライちゃんに代わらせたのだった。
二列目には、Y美やS子たちが中腰になって並んだ。更にその後ろを婦人会の女の人たちが列を成し、僕をぐるりと囲む。僕はおちんちんを手で隠し、腕で体を覆いながら、足を交差させて、立ち尽くしていた。いろんな年齢層の女の人たちが、これから素っ裸のままオナニーをさせられる僕を見つめる。Iさんの言うパワーとやらを受け取ろうとして、真剣な眼差しだった。
蹴られたおちんちんの袋がまだズキズキと痛かったけれど、体じゅうが羞恥でカッと熱くなり、痛みから気を逸らすことができた。この異常な事態に緊張した体をほぐそうとしてくれたのだろうか、誰かの手がお尻に触れてきた。荒々しくお尻を撫で、抓り、ぴしゃぴしゃと叩く。ターリさんだった。真後ろに立つターリさんは、僕の体を回して自分に向かせると、おちんちんに当てた手を外させ、深呼吸を命じた。
この場にいる僕以外の男性は、ターリさんだけだった。たくさんの女の人たちの前でオナニーを強制される恥ずかしい気持ち、おちんちんの袋の長く尾をひく痛みに共感してくれる人は、このターリさんを措いて他にいない。僕はゆっくり息を吸い、吐いた。
「覚悟はできたか?」
「もうこれ以上見せ物になりたくないです」
「見られてしまうんだよ。おちんちんだけでなく、オナニーまでさせられ、精液の出る瞬間までお前は観察されるんだ。諦めてくれ」
太い眉の下の小さな目が僕の打ちひしがれた顔を覗き込んだ。脇から体の側面に手を当て、すっと腰まで滑らせる。婦人会をはじめとする女の人たちのねちねちした視線を背中やお尻に感じながら、ターリさんがおちんちんの状態を手でまさぐりながらチェックするのをじっと我慢した。
「時間がない。始めなさい」
背中を向け、お尻を晒し続ける僕に対して命じたにもかかわらず、Iさんの目はターリさんに向けられていた。ターリさんの両手が僕の肩をがっしりと掴み、体を回転させた。゛見物人たちがざわざわし、やがて静まった。僕は顔を上げることができない。目の先に地面に腰を落として膝を組む人たちの靴があった。中央には土に汚れた裸足が見えた。メライちゃんの足だ。シャーレを両手で持って構えている。
恥ずかしい。でも、今更できないなんて言えないし、とても許される状況ではない。手は反射的におちんちんを隠していた。僕はその手を横にずらし、おちんちんを自分の指で支えた。正面の空には夕日がゆらゆら浮かび、憎らしい程の明るさを放って、僕の羞恥に火照った裸身を染める。
「顔を上げなさい。しっかり見る人たちをあなたも見るのよ」
まるで馬に鞭打つように、Iさんがぴしゃりと僕のお尻を叩いた。
GWに素敵なプレゼントとなりました。
これからゆっくり読ませていただきます。
ありがとうござました。
メライちゃんドS化フラグが立ってしまい、
今後が楽しみな展開になりましたね
その好きな子から金的を食らうとは哀れな……
メライも相当ひでぇな
ナオスきゅんに服を着せて抱きしめてあげたい
すごく待ち遠しかったです。
メライちゃんの金蹴りと電気あんま攻撃とは予想外でした。
みなみ川教が関わる話は気持ち悪さと不気味さが特に際立ってますね
Y美の家やみなみ教がどうこうじゃなく町全体が屑の集まり