思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

【愛と冒険のマジックショー】7 現金を奪おうとする者

2024-12-13 20:47:00 | 11.愛と冒険のマジックショー

 階段をのぼりながら、僕たちは互いに自己紹介をした。
 レザースーツの女の人は桐江未沙という名前だった。
 警察庁の下請けのような仕事をしていると言ったけど、詳しいことは話してくれなかった。テロリスト集団、黒い宝石へ流れる資金や武器について調べるため組織に潜入し、見極めが終了したので退散しようとしていたところだったという。性的に嬲られている僕を見て、驚くとともに怒りを覚えたと語った。

 幅の狭い階段にふさわしい小さな踊り場を二つ通過して、鉄製のドアに行き当たった。桐江未沙さんは慣れた手つきで針金を鍵穴に入れて回した。ドアを開けると、そこは丸テーブルがひとつ、ハイプ椅子が二つあるだけの簡素な事務室だった。
 部屋の隅っこに流し台を見つけた僕は、いそいで口をすすぎ、口内に残っていた精液とそのにおいを洗い流した。
 桐江未沙さんと僕はそれぞれ違う目的で黒い宝石に接近した。僕は自分がどのようにして黒い宝石と関わりをもったかを簡単に説明した。彼女は黙って僕の顔を見つめた。感情を読み取らせないよう、顔から表情を消す特殊な技能を身につけているようだった。夏祭り実行委員長の役を引き受けた商工会会長の門松徳三郎氏の暗殺が今日の夏祭りの締めのスピーチで計画されていることを無表情で聞いた。

 黒い宝石はいくつもの部門に分かれているが、基本的に部門どうしで情報を共有することはしない。トップの人物もまた、部門のそれぞれの動きは把握していない。逮捕された時のリスクを軽減するには、よその部門が何をやっているかなどは知らないほうがよいとのことだった。
 以上はすべて桐江未沙さんから教えてもらった知識だ。彼女は資金調達部門の探りに専念していたから、別の部門による暗殺計画は知るところではなかったのである。

 ステージ幕のバケツに仕掛けられた爆弾は無事に取り外したこと、その情報はミヤジマジョーにまだ届いていないことまで聞いて、彼女は初めてホッとした表情を見せた。それとともに、僕への興味を新たにしたようで、いろいろと質問が始まった。なぜ全裸なのかも遠慮がちに聞いてきた。彼女は僕のマジックショー出演を知らなかった。
「で、ミヤジマは警察に任せたのね」
「うん。そうするしかないでしょ」と僕は返した。
「そのとおり。相手は多数の犠牲者が出るのも厭わないテロリストだからね。もっと早く警察に通報するべきだったね」
 もちろん、僕もそう思っていた。でも桃李さんがほとんど説得力をもたない理由によって執拗に、時に威嚇するようにしてこれを反対したのだった。
 この一事は、僕をして桃李さんがじつは黒い宝石内部の者ではないかと疑わせるに十分だった。
 そこで熟女トリオの板倉さん、ミョー子さん、ハツミさんにそれとなく桃李さんのことを聞いてみた。案の定、桃李さんは商工会の者ではなかった。門松会長に脅迫状が届いてから、門松会長が雇ったセキュリティアドバイザーだった。

 門松会長は人を雇うに即決を常としたので、採用に至った詳しい経緯を知る者はなかった。高い報酬を狙って口八丁のやり手が門松会長との面談を求めて引きも切らない。桃李さんはいずれそういった手合いに紹介されて商工会に潜入したのだろう。
 僕は桃李さんに気づかれないようにこっそり板倉さんたちに桃李さんが怪しいことを伝え、ミヤジマジョーに接触するのを僕よりも遅らせるようにお願いした。
 勘のよい板倉さんはすぐに察して、この役をミョー子さんに一任した。ミョー子さんは見事に自分の役割を果たした。ミヤジマの射的屋に向かう途中、桃李さんと腕を組み、色仕掛けで寄り道に誘った。

 そのおかげで僕は桃李さんよりも早くミヤジマに会って、挑発することができた。ミヤジマは僕を早々に地下室へ連行し嬲り始めたので、ついに桃李さんからの爆弾撤去の報に接する機会を逸した。
 ミヤジマジョーは元地下格闘技団体に所属するウェルター級だった。さすがの桐江さんでも、ミヤジマが残っているうちは男たちを攻撃できなかったという。
 では、一対一の勝負だったらどうだろう。「それだったら負けないわよ」と彼女は即答した。

 バケツに仕掛けた爆弾が撤去されたことを知らないミヤジマジョーは、門松会長のスピーチの際、舞台上にあらわれるバケツを狙って狙撃する。
 どこから狙撃するのか。
 考えられる場所は二つあった。ステージから見て左斜め前方の平屋の青果店の屋上か、もしくは右斜め前方の物置小屋の屋根である。
 二つに一つなのだけど、僕は桃李さんがミヤジマを守るためにあえて狙撃場所とは反対の場所にもっともらしい当たりをつけて、警察などの関係者を誘導すると読んだ。
 そこで僕はあらかじめ板倉さんに次のお願いをした。
 おそらく桃李さんは妙な自信をもって狙撃場所を特定する。一応はそれに従ったふりをして、こっそり警察にはそれとは反対の場所で待機するように、桃李さんに気づかれないように伝えてほしい。桃李さんが青果店の屋上だと言ったら物置小屋の屋根に、物置小屋の屋根だと言ったら青果店の屋上にミヤジマが特性のコルク銃をもってあらわれるだろうから。

「なるほどね。あとはもう警察に任せておけばだいじょうぶってことね」
 桐江未沙さんが事務室の中をあちこち見回しながら言った。
「何を探してるの?」
「何か服の代わりになる物はないかなって思って。あなた、ずっと裸じゃないの」
 ありがとう、と言おうとして喉が詰まってしまった。この人は僕のことを気にかけてくれているんだ、と思うと、安堵感がじわじわと広がった。

 レザースーツをまとった桐江さんは僕に貸せる衣類は持っていない。そして残念ながら、この狭い事務所には僕の裸体を覆う物は見当たらなかった。
 丸テーブルにはテーブルクロスがなく、曇りガラスをはめ込んだ二つの窓にはレースのカーテンすら掛かっておらず、流し台にはプラスチックの水切り台があるきりで、どうもこの事務室の使用者は洗ったコップを拭く習慣がなく、いつも自然乾燥させるようだった。
「た、たしかに恥ずかしいけど、もういろんな人に見られちゃってるし、我慢できるから、とりあえず裸のままでもいいの。ありがとう」と、僕はパイプ椅子に座ったまま体をすぼめて礼を述べた。
「仕方ないね。しばらくそのままの格好でいるしかないみたいね」
 桐江未沙さんが残念そうに息をついた。
 やだ、そんな憐れむような目で僕を見ないで。もう裸でいるのには慣れているのに、この場で服を全部脱がされたみたいな意識にさせられ、羞恥で体がカッと熱くなる。しかも同情されて、自分のこれまでのつらい体験が一気に噴き出してくる。

 と、不意に対処しなくてはならない大事なことに気づいた。
 黒い宝石の男たちを地下室に閉じ込めていることを警察に通報した桐江未沙さんが受話器を置いた。
「まだのんびりするには早すぎた。すぐに向かわないといけない場所がある」
 桐江未沙さんが僕を振り向いた。僕は続けた。
「もうひとり、黒い宝石がいる。その人はノーマークだから逃亡すると思う。しかも事務所から現金を奪うかもしれない」
「なにそれ。確かなの?」
「うん、確か」
「了解。すぐに向かいましょう。で、その人はどこにいると思うの?」
「ステージの裏にある、事務室とか楽屋が入っている細長い仮設の建物だよ」
 桐江未沙さんは筒の形をしたバッグを持って、部屋を出た。階段をおりるかと思ったら、のぼってゆく。僕も続いた。すぐに屋上に出た。

 三階建ての建物だった。
 夏祭りの明るさを反映して、夜空に星はほとんど見えなかった。かろうじて薄雲をまとった半円の月が認められる程度だ。お囃子のピーヒャラが盛んに聞こえてくる。
 この建物は夏祭りの会場からわずかに外れた場所にあり、屋台の密集する目抜き通りを見渡せた。地下でつながっているミヤジマの射的屋は、この建物から五メートルほど離れた位置にあった。
 筒の形をしたバッグからいくつかの細いパイプと布地を出して、桐江未沙さんが手早く組み立てる。たちまちそれはハングライダーの形になった。三角形の翼の底辺部を支えるパイプには小型のジェットエンジンが二基付いている。

「準備オッケー」合金の丸いゴーグルを装着した彼女が言った。
「これで行くの?」
「そうよ。歩いて向かってたら間に合わないでしょ。心配しないでいいのよ。わたしはいつもこれで移動してるから」
 腰に回したハーネスを締めつけながら、てきぱきと答える。それでも僕の不安は消えなかった。「でも、これ一人乗り用じゃないの?」
「あなたひとりぐらいだったら、なんとかなるって。わたしと一緒に飛びたくないの? それなら別に無理強いしないけど」

 僕はおちんちんを両手で隠したまま考えた。
 やはりここは桐江さんと一緒にハングライダーに乗るしかなかった。夏祭りの人波でごった返す中を仮設事務所まで素っ裸のまま歩いて移動する恥ずかしい経験は、もうしたくなかった。どうせトラブルに巻き込まれて、スムーズに移動できなくなるのは目に見えているから。
「お願い。僕も一緒に乗せて。でも何か着る物が必要なのでは?」
「必要ない。どうせ夜の空中だから、そんなにたくさんの人に気づかれる心配はないって。こっちに来て」
 桐江未沙さんは僕を自分の前に後ろ向きに立たせると、ぐっと自分の体を密着させた。

 レザースーツのごわごわした感触。その奥に彼女の柔らかい肉体が息づいているのを背中に感じる。
 問題はふたりの身長差だった。
 ハーネスは腰に通すのを基本とする。僕がコントロール用の横棒を掴むと、彼女の腰に合わさる部位は、おちんちん付近だった。
「恥ずかしいかもしれないけど、ちょっと我慢して」
 彼女は僕を前向きにすると、ハーネスを腰の下部分に結びつける作業にかかった。邪魔にならないよう僕はおちんちんから手を外さなくてはならなかった。ちょうど彼女の目の前の位置だったけど、もうすでに見られているわけだし、我慢するしかなかった。

 途中でハーネスの丈足らずが判明した。彼女と僕で体を重ねて固定するのだから、どうしてもハーネスの長さが足りなくなってしまう。
 風防用のゴーグルを眉のほうへ上げて、彼女は一度結んだハーネスをほどく作業にかかった。手の甲が何度も、一度なぞは指先がおちんちんに接触した。
 幅広のハーネスには真ん中部分に穴のあいた箇所があった。
「ちょっとごめんね」
 一計を案じたらしく、僕のおちんちんを手に取り、その穴にはめ込んだ。さらに穴を広げておちんちんの袋までも入れ込む。

 下から届く屋台の提灯の明かりで、彼女が顔を赤く染めているのが分かった。
 本当はこんなことをしたくないけど、安全第一に考えると、ハーネスを固定するには、ハーネスの穴におちんちんを通して固定するしかなかった。
 彼女のおちんちんを支える手は柔らかく、その位置を頻繁に変えるので、不本意ながら、僕の中で変なスイッチが入ってしまった。
 ウウ・・・・・・。甘い電流が下腹部に発生した。
「もう、一刻を争う非常事態なんだから、やめてよ」
「ご、ごめん。知らないけど、どうしても、こうなっちゃう」僕は大きくなってしまったおちんちんを隠しながら、詫びた。
「もうッ」と彼女は頬をぷんと膨らませ、おちんちんを隠す僕の手を慌ただしく払うと、おちんちんの根元に留めたハーネスを固定する作業にかかった。

 おちんちんの根元がキュッと締まる。細縄で引き回された経験を数多くもつ僕にはお馴染みの感触だった。
「こんな感じでいいかな。しばらく我慢して。緊急時にはハーネスがその・・・・・・」彼女はおちんちんという言葉を言いたがらなかった。「あなたのそこから外れるようにしておいたから、そこが・・・・・・」いよいよ顔を赤くして口ごもる。そんな恥じらいの素振りをされると、なんだか僕の中で羞恥の気持ちがいよいよ強くなってくる。「外れちゃうことはないの」
「万が一僕がハングライダーから落下することになっても、ハーネスに引っ張られておちんちんが外れる心配はないってこと?」
「そう・・・・・・」何度も言わせないで、と抗議するような目で僕を睨んでから、眉の上のゴーグルをおろす。「通常は拘束しているけど、緊急時は外れるの。そのほうが安全だから。じゃ、行くわよ。バーにつかまって」

 素っ裸の僕に背後から体を密着させて桐江未沙さんが横棒を手元に引いた。僕も彼女の拳の内側に寄せて、しっかり握る。
 次にしなくてはならないのは、後部の横棒に足を乗せることだった。彼女の体格に合わせた位置にあるので、横棒は少しばかり離れた位置にある。僕はつま先を引っ掛けるのが精一杯だった。彼女には太股に相当する位置のようだけど。

 屋上のフェンスに乗せた板に向かって彼女は駆け出した。助走の速度を上げて、板の傾斜をのぼっていく。このまま屋上から落下するのではないかという恐怖で目をつむった瞬間、体がふわりと浮いた。ジェットエンジンが唸り始めた。
 全身の肌、体じゅうのあちこちを風に撫でられる。地上では滅多に感じられない、分厚い風だ。ハングライダーはぐいぐいと高度を上げた。
 乗る前からこわいと思っても仕方ないから考えないようにしてきたけれど、今になってこわくてたまらない。絶えずお腹のあたりをヒュッとくすぐられる。僕はお尻を上げるようにして桐江未沙さんのレザースーツに身を沈ませ、後頭部を胸の谷間にフィットさせた。少しでも不安を解消するためだ。

 夏祭り全体が一望できる高さに達した。小さな光の粒が寄り添うようにして、それぞれ瞬いている。囃子の甲高い横笛や鼓の響きも風に運ばれてきて、かすかに聞こえる。粒子になって大気を漂っているような気になる。でも僕にそれを堪能する余裕はなかった。ただ全身をぶるぶる震わせているだけだ。肌という肌に夜風を浴びているから、全裸に慣れている僕でもさすがに寒く感じられた。
「寒い?」
「うん」寒さで横棒を握り続けるのが難しくなってくる。
「裸だもんね。もうちょっと我慢してね」
 うう、と呻くしかできなかった。僕は歯を食いしばって今の体勢を維持していた。

 後ろの横棒に引っ掛けたつま先がもう少しで外れそうだった。足の指の付け根部分をパイプに乗せていたけれど、飛行中にずれて、今は足の親指の爪付近がパイプに当たっている感じだった。
 もしパイプから足が外れたら、僕はコントロール用の横棒をつかむ両手とハーネスで括られたおちんちんだけで自分の体を支えることになる。そうなったら、さすがに地上の人々もハングライダーにぶら下がる素っ裸の僕に気づいてしまうだろう。
 桐江未沙さんのハングライダー操縦は巧みだった。まるで自分の体の一部であるかのように操った。直進では速度を上げて僕の息を詰まらせ、減速したと思ってホッとすると、いきなり機体を揺すって右や左に曲がった。
 曲がる方向に体を傾けるので、彼女の胸の谷間に頭を挟んでいる僕は、機体の向きを変えるたびに左右どちらかの乳房に頬を埋めた。
 彼女の首の辺りから濃厚な甘い香りがした。

 目的地点である仮設事務所の場所を僕に確認した彼女は、「じゃ、今から向かうから、がんばって耐えてね」と言った。
「やだ、やめ・・・・・・」恐ろしくなって声がぶるぶる震え、最後まで言い切らないうちにハングライダーは急降下を始めた。こわい。これまでとは比べものにならない速度、おそらくジェットコースターを上回る速度だったと思う。反射的に目をつむってしまって、横棒を握ったまま腕を突っ張ることだけを意識した。首から胸、おちんちん、太股にかけて、夜の空気がビュンビュン流れていく。
 鋭く右にカーブした途端、力を込めて引っ掛けてきた足の指先がとうとうパイプから外れた。
 しまった。バーを握る手だけで全体重を支える格好になってしまった。

 目をあけるとステージ前の広場、上空三メートルまで降下していた。下から驚く人の声が次々と聞こえてくる。ハングライダーを珍しがるよりは、素っ裸でぶら下がっている僕をおもしろがる人のほうが圧倒的に多かった。
 おちんちんにつないだハーネスは切れてなくなった。僕は文字通り一糸まとわぬ体をステージ前の広場にいる人たちになすすべもなく晒し続けていた。バーを握る両手が痛い。

「は、恥ずかしい。桐江さん、こんなのやだ」僕は泣きべそをかいた。
「もうすぐ着くから、あとちょっとだよ。頑張れ」
 優しい声で励ましてくれる彼女の存在をありがたいと思いながらも、耳に入ってくるのは僕の羞恥を煽る心ない言葉ばかりだった。
「あの体つきは見覚えがあるよ。さっきマジックショーで裸だった男の子じゃないの」
「ほんとだね。あいかわらずチンチン丸出しで何やってんだろうね」
「さっきはステージで勃起して、お尻叩かれてたよね」
「やばいよ、それ。まともじゃないよね。尻叩かれてますます喜んでたし」
 嘲りを全身の肌で受けてハングライダーにぶら下がったまま、少しずつ下降していく。仮設の事務所はもうすぐだった。
 
 発泡スチロールの皿などが堆積するコンテナの上にさしかかった時だった。桐江未沙さんが叫んだ。「おりて」
 手が痛くてこれ以上は握っていられなかったので、多少の恐怖は感じたものの、ためらわずにバーから両手を放した。すとんとコンテナの中に裸身を投じる。ゴミ専用のコンテナだった。人々が屋台で飲み食いした大量の発泡スチロールの皿や紙コップが緩衝材になってくれて、僕は大した衝撃を受けることなく落下できた。
 ただしゴミの量があまりに多くて、底のほうまで沈んでしまい、結構な深さだったから、這い上がるのに思いのほか手間取ってしまった。

 大量のゴミのほとんどは使い捨ての紙製の食器で、ケチャップや辛子、油のようなものがべっとり付いていた。焼きそばやカレーライスの残飯もあった。
 大きなコンテナで、ふちが刑務所の壁のように高く、桐江未沙さんが手を引っ張ってくれて、ようやくこのゴミの山から抜け出せた。とにかく必死だったから、お尻に割り箸の片割れが挟まっているのにも気づかなかった。指摘してくれた桐江未沙さんもさすがにおかしかったようで、遠慮がちにちょっと笑った。割り箸は油べっとりだった。

 コンテナからゴミに汚れた全裸の男子が出てきたということで、大勢の人が周りに集まってきたけど、桐江未沙さんが鋭い目で牽制してくれたおかげで、誰も僕の体に触れるほど接近することはできなかった。
 仮設事務所へ桐江未沙さんと一緒に向かう。
「こういうとき、裸だと楽でいいよね」と彼女が言った。
「え、どういう意味?」
「ケチャップとか付いてても、あんまり気にしなくていいじゃん。すぐ拭き取れるから。これが服だったら、ケチャップや油の染みって、なかなか取れないよ」
 僕は歩きながら自分の裸身を見た。確かにところどころケチャップやマスタード、焼きそばの油のようなものが付着している。
「そりゃそうかもしれないけど」ケチャップに染まったおちんちんを手で素早く拭う。「でも、僕としてはやっぱり何か着る物が欲しいよ。ケチャップの染みが付いた服だって、ないよりはずっとましだもん」
 桐江未沙さんは黙って、ただ気の毒そうに僕の裸身に目を向けた。ゴーグルを外した彼女の顔が少し垂れ下がった目尻のせいで、かよわい女子のように見えた。

 いかにも急拵えといった趣の、細長いプレハブの建物に入った。壁のスイッチを押すと天井の蛍光灯がいっせいに点灯した。廊下を進む。事務所は一番奥だった。
 左側の板と板の継ぎ目からかすかに通う夜風を腰や太股に感じる。建物内はがらんとして、事務局の者は全員出払ってるようだった。夏祭りの閉会式が終わったばかりだし、ミヤジマジョーの狙撃現場を取り押さえた騒ぎもあるから、事務局は諸々の対応に追われているところなのだろう。

 でも、その人物は必ずこの中にいる、と僕は読んでいた。事務所に続く廊下には手前に三つの楽屋が並んでいる。その二つ目まで人のいないことを確認して、三つ目の外開きのドアを引いた時、奥の事務所のドアが音を立てた。

 誰か出てきた。コツコツと近づいてくる足音。僕は急いで楽屋のドアを閉めた。
 読みは的中した。事務所から出てきたのは木原マリさんだった。ボストンバッグを提げている。ステージ上の司会で胸元を大胆に覗かせたノースリーブのボディコンドレスという、性的魅力を強調した衣装に代わって、上はおとなしめのゆったりした白のブラウス、下はギャザーの入った紫のロングスカートをベルトで締めていた。

 ステージでは二十代前半と称しても全然通じたのに、今は僕が最初に倉庫で出会った時のような、三十代中頃の年齢見える。うつむき加減に歩いていた彼女は、黒のレザースーツ姿の桐江未沙さんと全裸の僕に気づいて、驚いて顔を上げた。
「あら、ナオス君。きょうはいろんなところでよく会うわね。あいかわらずお洋服取り上げられたままなのね」
 あっさり平静さを取り戻し、微笑さえ浮かべる木原マリさん。その老練な手管に僕は内心舌を巻いた。若作りが巧みなので年齢不詳かと思ったけど、やはりこの人の実年齢は三十五六といったところなのだろう。
「どちらにお出かけですか?」
 僕の問いに木原マリさんはちょっと肩をすくめただけだった。
「そんなの、答える必要ないでしょ」
 前髪を掻き上げて睨みつけてくる。なかなかの凄みだけど、僕は怯まなかった。
「そのバッグの中身は何ですか」
「警察みたいね、ナオスくん、素っ裸のくせに。そんな権限あるの?」
「ないです。でも見せてくれますか?」
「見せないとだめかしら」
「ええ、見せてください」
 強気で迫った。服を着た人たちに混じっていつも全裸だから、だんだんと度胸がついてきたのかもしれない。
「いいわよ。見たければご自由にどうぞ」
 木原さんは、自分の足元にボストンバッグを落とした。
 失礼します、と僕は言い、ボストンバッグの前で膝をつき、チャックを引いた。案の定、出てきたのは札束の山だった。門松会長が豪語した一千万円、それがこのバッグの中に収まっている。

 無人の事務所に忍び込んで、この部屋に隠されている現金一千万円を探し回り、ついに見つけて、持ち逃げしようとしたのだろう。もし僕と桐江さんが警察だったら、この場で現行犯逮捕するところだ。
 現在進行中の爆弾事件、パニックを引き起こさないよう関係者だけで極秘裏にこれを扱っている事務局やスタッフは大わらわで、しばらく事務所は空っぽであることを見据えての犯行と読めた。
「このお金はどちらからお持ちになられたんですか?」と、僕は警察のような気分になって質問した。
「わたしが警察みたいねって言ったら、警察みたいな気分になったんでしょ。暗示にかかりやすいのね、ナオスくんは」
「はぐらかさないで」僕はもう一度ボストンバッグの中身に目を移し、百万円の束を数えた。ぴったり十ある。

「ねえ、こっちを見て」と木原マリさんが声をかけてきた。中腰になった僕はボストンバッグの向こう側に立つ木原さんへ視線を向けた。
 ウウッ、なんということ、おちんちんが反応してしまった。

 木原さんは自らスカートをまくっていた。彼女は下着をつけてなくて、陰部の黒い、艶やかな毛がいきなり僕の目に焼き付いた。
 キャハハ、と木原マリさんが笑い声を上げて、スカートの裾から手を離した。
「もうビンビンに勃起してるよ。でもサービスはここまでだからね」
 ヒギィ。木原さんに硬くなったおちんちんを握られてしまった。ぐいと締めつけて、まるで握力でも測っているみたいだった。おちんちんには目盛りなんか付いてないのに。
「痛い、やめて、離して、離して」
 陰嚢を責められるのとは別種の、おちんちんそのものを絞られるような激しい痛みに僕は泣き叫び、そのまま崩れそうになるのだけど、木原マリさんはそれを許してくれず、おちんちんを握りしめた手を引っ張り上げるのだった。
「立ちなさいよ」
「やめて、痛い、おちんちんが潰れる」
 つま先立ちしながら、キリキリと締めつけられる痛みに絶える。

 木原マリさんは、おちんちん責めをやめてほしければ質問に答えなさいと迫った。僕に拒否する自由はない。ただ痛みが強すぎて、「わたしがここにいるってなんでわかったの?」と問われても、呻き声が漏れるばかりで全然返せなかった。
「答えなさい」といよいよ力を加えられ、僕は悲鳴混じりの声で、「いや、だから、それは」と、危険信号のサイレンが鳴り響く頭の中で必死に言葉を紡ごうとした。痛みをやり過ごそうとして言葉を紡ぐことに意識を集中したのだった。そのため、痛みが少しずつながら弱まっていることに気づくのが遅れた。

 木原マリさんの手はおちんちんから離れていた。
 いつのまにか木原マリさんの後ろに回った桐江未沙さんが彼女の腕を引っ張ったからだ。驚いて振り返った木原さんは「邪魔すんじゃねえぞ、こら」と威嚇したが、あえなく桐江さんの一撃を受けて、その場にへたへたと倒れ込んだ。
「このクソ女がッ」呻きながらも憎まれ口を叩く木原さんに、桐江さんはさらなる一撃を加えて気絶させた。

「ずいぶんと騙されやすいのね、あなた」と桐江未沙さんに言われ、最初、なんのことかさっぱりわからなかった。彼女は木原マリさんのロングスカートの中に手を差し入れて、取り出した物を僕に見せた。「あなたが見たのはこれじゃなかった?」
 それは木原さんの肌の色にそっくりな色のボクサータイプのパンツだった。股間の部分に黒々として縮れた細い毛が密集していた。縮れた細い毛。しかしそれは木原さんの、いや、人間の陰毛ではなかった。人工物だった。
 フェイクだったのだ。男たちに見せておもしろがっていたのかも知れない。
 こんな物を見てピクッと反応し、おちんちんを硬くさせてしまったかと思うと、僕は悔しさで胸がいっぱいになってしまった。あんな安手のパンツに騙されたのだ。涙が次々とこぼれてきた。

「まあ、仕方ないわよ。あなたの年齢なら別に恥ずかしいことでもなんでもないし」
 やや当惑しながらも、桐江未沙さんは僕を慰めようとしてくれた。
「悔しくて仕方ないの」僕はしゃくり上げながら言った。「だって僕はいつも裸で、何かも丸出しにさせられているのに、女の人はちっとも僕に見せてくれないんだもん。やっと見せてくれたと思ったら、ニセモノだったなんて」
 しかもおちんちんが不覚にもピクッと、一気に頭をもたげて、笑われてしまった。
「笑われても気にしないことね。あなたは日頃から女性たちによくしてもらってるんじゃないの?」
「え、僕が?」涙の膜を通して桐江未沙さんの顔を見る。「全然そんなことない」僕は汚い物でも払うみたいに首を横に振った。涙が散って、桐江さんのレザースーツの胸の膨らみにかかった。

 問われるまま僕は素直に語った。
 まだセックスをしたことがないこと。居候先のおば様の奉仕をさせられるのはしょっちゅうだけど、おちんちんの挿入は厳禁であること。

 以前に一度、間違っておば様の膣に硬くなったおちんちんの先端が当たって、もう少しで入りそうになったことがあった。その時のおば様の鬼の形相は忘れられない。僕は全裸のまま家の外に連れ出され、木に吊され、激しく打擲された。そして木に吊されたまま一晩を過ごした。
 おば様のひとり娘であるY美にいたっては、同い年の僕をものすごく警戒している。よほど服を脱いだ姿を見られたくないようだった。お風呂場の脱衣所を施錠できるようにしてほしいとおば様に頼んで、おば様は「この子が覗きに行くのを心配してるの?」と呆れたけど、Y美は「本人にそのつもりはなくても私が入浴中なのを忘れて入ってくるかもしれないから。この子、そそっかしいでしょ、案外」と言い張り、とうとう脱衣所の引き戸に南京錠を取り付けてしまった。

 肉体の力で絶対に僕に負けない自信をもちながら、それでも男子である以上は女子の裸を見たがる本能が何かの拍子に目覚めると疑って、おさおさ警戒を怠らないのだった。僕への攻撃、日常的ないじめは、その強い警戒心の裏返しとも言える。
 長い脚だけは惜しみなく晒して、僕はしばしばその足の前に跪き、指を一本一本しゃぶらされたけど、それ以外の部位はけっして僕の目に触れさせようとしなかった。
シャツの裾からお臍が一瞬だけ見えたような記憶がひとつかふたつ、あるくらいだ。体だけではない。Y美の下着の詰まった引き出しをうっかり開けてしまった時は、激昂したY美にお尻の穴をいやというほど拡張させられ、おちんちんの袋を竹刀で突かれる折檻を受けた。

 ともあれ僕はY美の裸を実際に生で拝んだことはない。それどころか下着姿すら未見だった。おば様は「年頃の女の子だからね」と娘の用心深さに理解を示して、僕にも思春期に入った女子のデリケートな気持ちを察するように言った。
 そのY美と同じ年齢である僕は洋服をすべて取り上げられ、素っ裸での生活を余儀なくされているというのに、それについては、なんとも思っていないようだった。

 桐江未沙さんは驚きを隠さなかった。
「そうだったのね。でもそんなの、全然気にすることないから。いつか時が来たら、きっとあらわれるよ、いいひとが」
 遠慮がちに僕に同情の眼差しを向けてから、彼女はそんなことを言い出すのだった。
「いいひとってどんなひと? セックスさせてくれるひと?」
「ばかね。あなたのことを大切に思ってくれるひとよ。そういうひとと一緒に寝るの。すっごく気持ちいいんだから」
 いつか、そういうひとがあらわれ、僕たちは体を合わせる。そんな未来を思っていたら、桐江未沙さんがそっとハグしてくれた。レザースーツに包まれた太股がおちんちんに少しだけ触れた。

 あ、とてもいい。すると、またおちんちんにスイッチが入って、ひゅんと立ち上がってしまった。いつも裸で日常的に性的な刺激を受けているから、恥ずかしいくらい敏感になっている。
「もう、あんたったら、まったくもう」
 顔を赤らめ、軽く僕を非難した彼女は、硬くなったおちんちんから恥ずかしそうに目を逸らすと、さきほど覗いた楽屋の中に入って、バスタオルを持って出てきた。
「服はないけど、これを体に巻いたら」
 ありがたい。手渡された純白のバスタオルで僕はさっそく裸身を包んだ。
「女の子みたいな巻き方をするのね。男の子は普通、腰に巻くけど」
 彼女にくすくす笑われ、僕はあらためてバスタオルを巻いた自分の格好を見た。確かに女の子っぽいかもしれなかった。

 バスタオルはとても大きく、脇の下で巻いても太股の半分ほどまで隠れた。おちんちんやお尻はもちろん、乳首や背中までしっかり覆われて、服を着ている感覚に近かった。もしもこれを腰に巻いたら、長すぎて足の動きを妨げ、タオルも取れやすくなっただろう。
「ありがと。すごく嬉しい。やっと裸を隠せた」
 心から安堵して礼を述べると、彼女はそっと微笑んだ。

 なるほどねえ、と桐江未沙さんが感心してうなずいた。
 僕はちょっぴり得意だった。
 どうしてステージショーで司会を担当した木原マリさんが黒い宝石の一味だと気づいたのか、そして爆弾騒ぎで無人となった事務所に戻ってくると思ったのか、その理由を説明したところだった。
 衣類を身に着ける幸運にはまだ与っていないけど、バスタオルを一枚、体に巻いている。これだけでも、ずっと素っ裸を晒し続けてきた身にしてみれば、大船に乗ったような安心感をもたらしてくれる。

「彼女がミヤジマの女だってよく気づいたものね。ミヤジマの財布に入っていたのは、そんなに印象深い写真だったの?」
「うん、とっても」
「どんな写真?」
「え、説明しなきゃ、だめ?」
「説明して」
 それは全裸の木原マリさんが後ろ手に緊縛されて正座をし、背中を滝に打たれている写真だった。
「すごいね、それ。中学生のあなたには刺激が強すぎたんじゃない?」
「うん、まあまあ・・・・・・」
「でも、写真では顔を伏せてたんでしょ? どうして緊縛された全裸の女が木原マリってわかったの?」
「右脚の付け根の痣と、胸の谷間のふたつのほくろ」
「あなたは実際に木原マリの体にそれを見たの? 見たとしたらいつ?」
「見たよ。はっきり見た」と僕は即答した。

 あの悪夢のステージショー、大勢の観客が見つめるだけでなく、テレビ中継までされているステージで僕は素っ裸のまま手錠の嵌まった両手を吊り上げられ、少し前に注射された薬剤によってムクムクと頭をもたげてくるおちんちんを、その勃起する過程をすっかり公開させられた。
 木原マリさんはボディコンドレスの裾をめくり、肉付きのよい太股を大きく露出させ、完全勃起状態の僕をからかった。

 痣。彼女の脚の付け根部分には確かに痣があった。
 続けて木原さんは腰を落として僕の硬くなったおちんちんをいじり、股まで押し込んでは離した。パチン、と音を立てておちんちんが下腹部に当たる。彼女はこれを何度も繰り返して楽しんだ。ふと目を落とすと、ノースリーブのボディコンドレスから胸の谷間がかなり深くまで見えた。
 ほくろ。胸の谷間には、確かにふたつのほくろがあった。

 だから、ミヤジマジョーの長財布の中に入っていた写真、滝から落ちてくる水を背中で受けながら後ろ手に縛られたまま正座し、顔を伏せている全裸の女の写真が偶然目に入ったとき、僕はすぐにそれが木原マリさんだと気づいたのだった。
「そっか。あなたも、ちゃっかり見るべきものは見てるのね。安心したわ」
 まあね、と僕は言った。裸でもタオルを巻いているとそれほど卑屈にならずに済む。タオルの効果は絶大だった。

 黒い宝石の目下の課題は、活動資金の流れが政治的な理由により途絶えがちなこと。
 この方面を調べていた桐江未沙さんが僕にそう教えてくれた。
 門松徳三郎会長がこの事務所に現金一千万円を隠していると豪語した場に確かに木原マリさんもいた。
「えらいえらい」
 桐江未沙さんが僕の頭を撫でてくれた。

 出口に向かって廊下を歩き始めると、門松徳三郎会長と事務所の人たちがどっと、このプレハブの建物に入ってきた。ボストンバッグを持ったレザースーツ姿の桐江未沙さん、バスタオル一枚を巻いた僕を正面に見て、彼らは虚を突かれたように立ち止まった。
 桐江未沙さんに僕はこの人たちが誰だか耳打ちして伝えた。彼女は門松会長にボストンバッグを手渡し、中身を確認するように言った。
「おう、これは事務所に隠しておった一千万じゃ。間違いない。あんた、これをどこで?」
 桐江未沙さんは黙って僕らの後ろ、壁にもたれて座り込む、とろんとした顔の木原マリさんを指した。ちょうど意識を回復したところだった。

「木原さんじゃないの。彼女が盗もうとしたってこと?」
 板倉さんが目を丸くして、ほとんど叫ぶに等しい声を上げた。
「黒い宝石の一味ですからね。警察に引き渡したほうがいいと思います」
 僕が進言すると、門松会長は「おう、そうだな」と言って、おかっぱ頭のミョー子さんに警察を呼びに行かせた。
「まあ、木原さんも、黒い宝石の関係者だったのね」
「とてもそんなふうに見えなかったわよね」
 静かな驚きが関係者のあいだに広がった。

 舞台幕を巻き上げる横棒に紐で括ったバケツ、その中に黒い宝石が仕掛けた爆弾は僕たちがすでに撤去したのだけど、それを知らずにライフル銃を持って狙撃現場にあらわれたミヤジマジョーは、はたして張り込んでいた警官たちに身柄を拘束されたという。
「ナオスくんのおかげで無事に爆弾テロも阻止できたし、今回の実行犯も逮捕できたのよ。一千万円の持ち逃げも防いでくれたし。もう、なんて感謝したらいいのかしらねえ」と、ハツミさんが感に堪えないという調子で語り始めた。「もし爆弾が爆発してたら、会長だけでなく犠牲者がいっぱい出てたでしょうね。会長はどうでもいいけど」
「ん? わしは、どうでもいい?」憮然として聞き返す門松会長。
「いえいえいえ、はい」
「おいおい、はい、なのかよ」
「いえいえいえ、すみません、はい」
「なんだよ、結局、はい、じゃねえかよ」と門松会長が突っ込んだところで、僕はようやく割り込むタイミングを得た。掛け合い漫才をやってる場合ではないのだ。
「桃李さんも警察に身柄を拘束されたということで、よろしいですか?」
 この場に桃李さんの姿がなかったので、一応確認しておこうと思ったのである。
 すると、板倉さんから意外な答えが返ってきた。
「そのことだけどね、ナオスくん、どうもあなた、その点だけはちょっと考えすぎちゃったみたいね。桃李さんは黒い宝石とはなんの関係もないんだって。ちゃんとした会社のれっきとしたセキュリティアドバイザーよ。わたし、名刺も見せてもらったんだから」
 ・・・・・・マジですか。
 失望の目まいを覚えた。まずい、大変にまずい。板倉さんたち、すっかり騙されている。

 僕は桃李さんが巧みな話術の持ち主だったことを思い出した。
 板倉さんたち熟女トリオだけでなく、門松会長や夏祭り実行委員会事務局の面々までも、すっかり桃李さんの弁明を信じてしまったようで、僕の読みを間違いだと決め込んでいる。
 門松会長が憐れみともに、間違いを許すような寛大さの滲んだ笑顔を僕に向けた。しかし僕は簡単に引き下がるつもりはなかった。バスタオルで胸や背中、おちんちん、お尻を覆っていると、自分の考えにたいする自信が不思議なくらい揺らがない。
「桃李さんに名刺を見せてもらったんですね。その名刺に書かれた電話番号にかけてみましたか?」
「そんな必要はないでしょ。そこまで疑う理由は何よ。逆に聞きたいわ」
 板倉さんは不思議そうに首を傾げて微笑んだ。まるで僕に「自分の間違いを認めるのは少しも恥ずかしいことではないのよ」と伝えようとしているみたいだった。
「ちゃんと理由があって僕は確信してるんです。桃李さんは黒い宝石の一味ですよ」
 思い切って断言すると、周囲からあからさまなため息が聞こえてきた。僕は臆することなく続けた。「桃李さんはミヤジマジョーが狙撃するであろう場所を決めつけて、皆さんを誤った場所に誘導しませんでしたか?」
「確かに桃李さんがわたしたちに教えたのは、実際にミヤジマが狙撃しようとした場所ではなかったわ。でも、それだけで桃李さんが黒い宝石だって疑うの? 間違いは誰だってするでしょう。あなただって勘違いするし」
「まあ僕のことはともかく」僕は体に巻いたバスタオルの、落ちないように中に折り込んだ部分を手で押さえながら、続けた。「それこそが桃李さんの狙いだったんですよ。ミヤジマは桃李さんの仲間ですからね。爆弾を撤去されてそれをミヤジマに伝えたくてもできなかった。そうなったらせめてミヤジマが捕まらないように計らうでしょう」

 狙撃場所として考えられる地点は二カ所あった。僕は板倉さんに桃李さんが案内するのとは別の地点に警察を張り込ませるようにお願いしていた。そのおかげでミヤジマは警察の手に落ちた。
テロ攻撃が未遂に終わり、仲間のミヤジマも捕まったとなると、桃李さんとしても万事休すで、自分は黒い宝石とはなんの関係もないことを信じてもらうために、才覚のかぎりを尽くすだろう。名刺などの小道具まで持ち出すとは、逆に言うとそれだけ追い詰められたということでもある。
 その名刺にしたって、そこに記載された電話番号を確かめればすぐに偽物と分かる代物なのに、遺憾ながら門松氏や板倉さんたちはあっさり信じ込んでしまって、確認の必要すら覚えなかったようだ。
「とにかくわたしたちは桃李さんが黒い宝石とは関係がないってことを本人の口からちゃんと聞いたんですからね。ナオスくんも変に意地張ってないで、素直に自分の間違いを認めたらどうなの。きっと桃李さんも許してくれるわよ」
 自分の思い通りに人を動かそうとする時、優しい目をする人がいる。板倉さんもそのひとりだ。せっかくの申し出だけど僕は首を横に振った。「いやです」
「まあ、頑固ねえ、見かけによらず」
 さすがに板倉さんも呆れたようだった。ここにいる全員が、ただひとり桐江未沙さんを除いて、僕の頑なな態度を好意的に受け取っていない。その桐江さんに腕を背中に回されて自由に身動きできない木原マリさんは、憎しみのこもった目で僕を見つめている。

 これまで僕は何度も、数え切れないくらい、孤立無援のつらさを経験してきた。
 これはひとえに僕が服を着た人たちの中にただひとり、バスタオルすら与えられない素っ裸で混じっているのが原因だと思っていた。衣服さえ身に着けていれば、このようなつらさ、孤立感に苛まれることはないのに、といつまでも全裸でいるしかない不運を嘆いたものだった。
 でも、それは裸が原因ではなかった。

 こうしてバスタオルで裸身を覆うという、ささやかな幸運が自分の身に降ってきたにもかかわらず、僕は依然として、素っ裸を晒していた時と何ら異なるところのない孤立無援を味わっている。ひとりぼっちで周囲から非難の目で見られ、僕という人間を否定する圧に潰されそうになっている。
 僕は大きく息を吐いてから、板倉さんに切り出した。
「桃李さんからもらった名刺、今、出せますか」
「あるわよ」
 板倉さんはハンドバッグから一枚の名刺を取り出した。
「そこに書いてある電話番号にかけてみてください、今すぐ。僕の言ってることが正しいって分かるから」
 おそらく十中八九、でたらめな電話番号だ。
「わかったわ。あなたがそこまで言うならね」
 名刺を手にしたまま板倉さんが事務室に行きかけたところで、
「ちょっと待った。その必要はねえよ」
 と、呼び止める声が上がった。
 桃李さんだった。とうとう本人がこのプレハブの建物に入ってきたのだ。

 パッと顔を輝かせる板倉さん。桃李さんの登場を喜び、歓迎するのは彼女だけではなかった。おお、とか、ああ、とか、言葉にならない感動の声があちこちから聞こえてきた。
「聞いたぞ、ナオスくんよ。おれが黒い宝石の人間だって、みんなに吹聴したようだな。心外だなあ。きみに疑われるなんてよお」
 皆の視線が自分に集まっているのを十分に意識した、舞台で役者が発するような張りのある声だった。にこやかな表情だけど、無理に作っているのがバレバレだった。だって目がちっとも笑ってないから。
「おう、なんとか言ってくれ。おれが黒い宝石だって証拠を見せてくれよ。頼むよ」
 周囲の人をかきわけて、桃李さんが僕に近づいてくる。
 と、入り口にミョー子さんの姿が見えた。警官をふたり連れて入ってきたのだった。
「お待たせしたわねえ。やっと警察の人、見つけたの。みんな爆弾未遂事件で忙しそうだったからねえ、なかなか捕まらなかったのよお。警察を捕まえるのは大変ね。逆は簡単すぎるみたいだけど」
 ミョー子さんは上機嫌だった。フンフンとハミングしながら僕の前を通り過ぎ、二名の警官が続いた。黒い宝石の同志にしてミヤジマジョーの情婦、現金一千万円を持ち出そうとした木原マリさんは、桐江未沙さんに腕を背中に回されて身動きできない状態だった。

 桐江さんが警官に木原マリさんの身柄を引き渡す直前、僕はあることに気づいて大声を上げた。
「桐江さん、その人たちは偽物の警官だよ。木原さんを渡さないで」
「なんで、そう思ったの?」
 慌て気味の僕と違って、桐江さんは冷静だった。鋭い目をして僕の返答を待つ。
「彼らの制服、左胸に付いてるバッジを見て。ふたりとも二十代前半くらいなのに、金色の地に縦の棒が三本入ってるでしょ。これってもっと階級が上の人のバッジじゃないかな。彼らが付けてるのはおかしいと思わない」
「あらやだ、これは警視総監のバッジじゃないの」桐江未沙さんが吹き出した。「しかも偽物だし。あんたら、バッジマニアなの? 黒い宝石のお兄さんたち」
 正体を見破られたふたりは、開き直って強引に桐江未沙さんから木原マリさんを奪い取ろうとしたものの、逆に高速の回転蹴りを浴びる始末。警官の装いをした二体が吹っ飛び、バキバキバキッ、と音を立ててプレハブ安普請の薄い壁が倒れた。

 露わになった楽屋で身を起こし、すぐに反撃してくるところ、彼らもそれなりに鍛えられた戦闘員だったと見るべきだろう。僕だったら間違いなく失神してた。
 これを迎える桐江未沙さんは、しかしそれ以上の達人だった。とりあえずいったん木原マリさんに一撃を加えて気絶させると、彼女から離れて身を低くし、かと思うとジャンプして相手の背後に回ったり、しなやかに体を反らしてバク転したりしながら、彼らの交互に繰り出すパンチをよけた。
 シュッ、シュッ、と空気を切る音ばかり聞こえて掠りもしない。廊下という狭い場所であり、逃げられる空間も限られているのに、警官のなりをした男たちのパンチは一発も当たらないのだ。もう芸術的と評したいほど見事な身のこなしだった。無駄のない動きで、黒のレザースーツの蛍光灯を受けた光沢が軽やかに、優雅に動くのに見とれて、僕なぞは現在の危機的な状況をほんのわずかな時間ながらすっかり忘却するほどだった。

 確かな手応えがあればともかく、空振りの連続でいっこうにダメージを与えられないとなると、消耗する体力もおのずと大きく感じられて、疲れやすくなる。むなしく、意味を見いだせない労働、その矢継ぎ早の攻撃は、屈強なふたりの男から急速に彼らの体力を奪った。彼らの息の乱れを敏感に感じ取って、攻撃に転じる桐江未沙さんの動きも、また感嘆措く能わざるものだった。
 少し垂れ目で、眉と目のあいだにちょっと広がりのある桐江未沙さんの特徴的な顔がキリッと引き締まった。守勢では適度に脱力し、やや弛緩した顔つきだったから、このキリッとした表情への切り替えをもって攻勢モードに入ったと見てまちがいないだろう。桐江さんの瞳に力が入って、大きくなった。傍観者の僕まで背筋に寒いものを感じる。まるで阿修羅像だ。その迫力に気圧されたのか、あろうことか、男たちはナイフを取り出した。しかし彼らにナイフを振り回す機会は、ついに与えられなかった。
 パンチとキックを組み合わせて、リズミカルに、パンチとキックのあいだにほんの一拍の休みを置くだけで、早回しのようなスピードで一気に攻める。これはやられる側だったらたまったものじゃないな、と僕は鳥肌の立つ思いだった。

 男たちはナイフを握っているにもかかわらず、全然攻撃できない。それどころか、倒れることすら許されないのだ。倒れる暇があればパンチでもキックでも食らいなさい、と容赦なく桐江未沙さんが畳みかけるものだから、ふたりの偽物警官はガンガンと薄っぺらな壁に激突する。
 本当は倒れたいのに倒れさせてもらえない、倒れるという休息すら与えられない彼らに代わって、俄仕立ての壁が割れて倒れて、狭かった戦いの場を少しずつ広げていく。広くなればそれだけ桐江さんに勢いをつけたパンチキックを可能にさせる。
 気づくと内側の壁はみんな取っ払われて、三つの楽屋も奥の事務室も楽々見渡せるようになっていた。

 パンパンに腫れ上がった顔、ところどころ紫に変色した顔の男たちは、ろくに目も開けられない状態で、切れた目蓋や唇から血を滴らした。ナイフはとっくに彼らの手から離れていた。
 左右に並んだふたりが揃って前に倒れるところで、後退した桐江さんが助走をつけてきた。カモシカのように跳躍し、足先をまさに崩れる寸前の男たちの胸に向ける。ドン、と鈍い音がした。
 これが現実なのかと目を疑った。体格のよい、ケンカ慣れしたはずのふたりの男がストーンと後ろへ、まるでビーチボールのようにすっ飛んだのである。
 蹴り出す直前、桐江未沙さんの背中は床と平行だった。彼女が胸元近くまで折り曲げていた脚は男たちの胸に靴底をつけた瞬間、バネのように伸びた。果たして、男たちは遠くまで飛んだ。どれくらい遠くまで飛んだのか。
 すでに仕切りの壁はすべて崩れていたから、隣の楽屋も、またその隣の楽屋も通り過ぎて、その先の事務室すら通過する勢いで外に面した壁に衝突したのだった。めりめりと彼らの肉体が壁に食い込み、少ししてからどさりと音を立てて落ちた。ふたりにやっと休息の時が訪れたようだった。

 激しいアクションにすっかり目を奪われて、桃李さんがナイフを手にしていることになかなか気づかなかったのは迂闊だった。倒された男たちが握っていたものだ。いつのまにか拾ったらしい。
「動くな、女ッ」と、桃李さんが桐江未沙さんに怒鳴った。
 ついに正体をあらわした。

 素早く僕の後ろに回って、片手で抱きしめながらナイフの刃先を僕の首筋に当てる。緊張で刃先がぶるぶる震えているのが分かる。
「少しでも下手な真似をしてみろ。こいつの首をぶすっとナイフで抉ってやるからな」
 そう脅すと、桃李さんは僕のバスタオルに手をかけて、これを剥ぎ取った。
「いや、やめてえ」
 ふたたび素っ裸の身を丸出しにさせられ、僕は叫んだ。
 と、それとほとんど時を同じくして外壁がバタンと倒れた。今さっきの男たちの激突でついに自らを支えられなくなったのだ。それをきっかけにして、三方の外壁が次々と倒れた。あっという間にこのプレハブの安普請は柱と屋根を残すばかりとなった。
 まさに僕がバスタオルを奪われたタイミングで、外壁が崩れ、外から丸見えになったのである。
 もはや屋外と変わらなかった。バスタオルを失った僕は片手で手首を、もう片方の手でおちんちんを隠した。

 生温い夜風が僕の脇腹や下腹部、乳首をすっと撫でていく。遠巻きに驚き、慌てふためく声もはっきり聞こえた。
 プレハブとはいえ建物の外壁がいきなり崩れたら、それは誰だって驚く。しかし声高な騒ぎはすぐに収まった。桃李さんに後ろからナイフを突き立てられている全裸の僕、人質に取られた僕に気づいて、異常な事態を察したのだろう。そのとおり、確かにまずい事態になってしまった。
「動くなって言ってんだろうが」
 怒声を発して桃李さんは夏祭りの事務員たちをも牽制した。
「桃李さん、あなた・・・・・・」
 板倉さんの大きく見開いた目が涙で潤んでいる。
 ハツミさんは両手で口を覆って絶句、ミョー子さんはぽかんと口をあけて、何が起こっているのか分かりませんという顔をしている。

 信じたくないかもしれないが、これが事実なのだった。
 桃李さんは黒い宝石に所属するテロリストだった。夏祭りの閉会の挨拶の場で門松徳三郎氏を爆殺するべく、入念に計画し、事を進めていた側の人間だった。
 このテロ計画が実行されていたら、優に百を超える人が巻き添えになったことだろう。負傷者も含めたらその犠牲者は五百にも及んだかもしれない。
 こんな恐ろしい計画を実行しようとするとは、黒い宝石というのはものすごく危険な集団だ。国の機関が桐江未沙さんのような凄腕に潜入調査を依頼するだけある。

「桃李さん、どうしたのよ。これは何のお芝居?」ミョー子さんがとぼけた声を出して、桃李さんへよろけながら踏み出した。「ねえ、わたしたち、もっとおもしろい遊びをしましょうよ」
「うるせえ。近づくんじゃねえ」
 桃李さんが荒々しく一喝する。ナイフの刃先が僕の下顎の皮膚に当たった。ひええ、ミョー子さん、近づかないで、桃李さんをあんまり興奮させないで、と願う。ミョー子さんは立ち止まり、悲しげな顔を夜空に向けた。
「最初にナオスくんがあなたを疑った時、あ、もしかしてそうかもって思った。でも、わたしはそれが間違いであるほうに賭けてたんだよ、最後の最後まで」
 警察が一定の距離を置いてぐるりと囲んでいた。

 自分のふたりの仲間が、たったひとりの女性に目の前でこてんぱんにやられたのだから、桃李さんとしてはもう黙って見ていられなくなったのだろう。その気持ちはよく分かるけれど、今の桃李さんはどう見ても四面楚歌だった。
 おとなしく人質を解放するよう、警察がメガホンで呼びかけている。
 桃李さんはナイフの柄を握り直して、ふたたび僕の首筋に刃先を当てると、低い声で「気をつけだよ。手で隠すんじゃねえ」と命じた。
 命の危険を覚えた僕は半べそをかきながら、気をつけの姿勢を取った。丸出しになったおちんちんが小さく縮まっている。
「まったく諦めの悪い人だね、あなたは」
 心底あきれたとでも言うかのように大きくため息をついたのは、桐江未沙さんだった。
「なんだよ、お前は」
 桃李さんが強張った声で応じた。その目には警戒と恐怖の色が入り混じっている。
「もしその子を傷つけたら、わたし、きっちりあなたに責任とらせるからね。とっても高くつくよ」と、警告する。「殺しちゃうかもしれない」
「うるせえ。おれの邪魔さえしなけりゃ、この素っ裸のガキの体から血が流れることはねえんだよ」
 捨て台詞を吐いて、僕の片腕を背中に回し、ナイフを僕の首に当てたまま、そろそろと動き出す桃李さん。警察も桐江未沙さんもそれに連れて動くものの、僕という人質の手前、みだりに距離を縮められない。
 首に当たるナイフの刃先がぶるぶる震えていた。慎重に、警察や桐江さんを牽制しながら後ずさる桃李さんの向かう先は、倉庫だった。ステージショーの道具類を保管した倉庫、僕がマジックショーの本番直前まで控えていたあの倉庫だ。

 桃李さんがミヤジマジョーはもちろん、ほかの黒い宝石の面々と比べても格闘に強いわけではなく小心なのは、ナイフのぎこちない握り方ひとつとっても容易に推測できた。組織内ではさだめし頭脳派の部類なのだろう。武闘派には到底見えないというただそれだけの理由で僕はそう思った。
 桐江未沙さんだって、それくらいのことは当然分かっているはずだ。それなのに彼女はもどかしいほど用心深かった。隙ならいくらでもあって、その気になれば簡単に僕を救出できそうなのに・・・・・・。
 いや、もしかすると小心だからこそ、いざとなったら加減をわきまえずに僕をグサッとやってしまうことも考えられる。彼女はそれを危惧しているのかもしれなかった。その可能性を示唆するかのように、桃李さんの握るナイフの刃先が首から下がって乳首の辺りをあてもなくちらついていた。桐江さんの表情が一段と険しくなった。
 ゆっくりと連れ去られてゆく僕を夏祭り実行委員会の事務局の面々が呆然として見送っている。門松徳三郎会長だけは、とりあえず自身が危機を脱した安心感からか、少し間の抜けた顔をしてハンカチを振っていた。

 夏祭りは閉会して屋台もほとんど店仕舞いしたのに、思わぬハプニングのおかげで多くの人が広場にとどまっていた。僕は自分が全裸であることを改めて意識した。あいかわらず僕は見世物なのだった。
 ステージショーを中継したテレビカメラが今や緊迫の事態をリアルタイムで伝える報道カメラになって、桃李さんとおちんちんを丸出しにした人質の僕を追っていた。

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4 コメント

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Unknown (Gio)
2024-12-14 19:43:13
更新お疲れ様です。
毎日思い出したくないことなどの新作が読めて夢のようです。
桐江未沙さん、珍しく良識的な大人の方で
ナオス君が辛い心境を吐露したり信頼を寄せるのはマチコさん以来ですかね。
ナオス君が自分を人間として扱っている人の前では慣れたはずの裸に羞恥を感じる描写がとても良いです。
遂に全裸のまま空まで飛んでしまったり、人質として晒し者にされたりと羞恥シーンも最高です。
ナオス君の孤立感はナオス君自身の意思の強さや聡明さによるものなんですかね。
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Unknown (hal)
2024-12-14 20:05:47
素っ裸でないのに
依然としてまるで自分だけが全裸でいるような疎外感、孤独感を感じる場面が切ないです。
返信する
Unknown (M.B.O)
2024-12-15 09:41:16
 桐江未沙さんみたいに物語の中で終始ナオス君の味方でいる女性って中々いなかった様に思います。
まさか、男に襲われたり、目の前でNTRみたいな後味悪そうな展開が来るのでしょうか?
あまり来てほしくないですが…
返信する
一気に更新続けます (naosu)
2024-12-15 18:17:25
いつもコメントありがとうございます。

Gio様
マチコさん、覚えていてくださって大変に嬉しいです。晒し者になったり、全裸を露出したりするシーン、少しでも新味を加えたいと思っています。

hal様
そういう気持ち、汲み取ってくださって、しかもそのことを教えてくださって、感謝しています。

M.B.O様
そう、これまでにないキャラ登場ですね。
彼女は最後までナオス君を憐れんでくれると思いますよ。どういう展開になるかはお楽しみに! 
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