Pains パリの味

パン屋、ベーカリー作りを応援します。

ベーカーテクノサービス

ベーカリー開業Ⅴ

2009-09-10 08:00:57 | Weblog

 最近ベーカリーでアンパンに遭遇しません。売れないことは良く解ります。若い人はアンコを食べなくなって久しく、年寄もアンパンなんか今更食べなくても他にいくらでも美味しい物があるとお考えでしょうか。

 アンパンの消費が落ち始めたのは、インストアーベーカリーが珍しくなくなった頃であると思います。それまでアンパンは袋つめのホールセールのパンが主流でした。これは一般的に前日焼成で翌日配達で、加糖中種法という菓子パン生地特有の製法で作られていました。これは日本人の味覚に合わせた最良のアンパン生地で、翌日食べてちょうど良い含水量、即ちシットリ、柔らか、クラスト(皮の部分)までしんなりソフトなパンに仕上がっていました。アンパンは元々蒸した酒饅頭の延長線上にある商品ですから、シットリ感が身上です。そのために、銀座木村屋では酒種アンパンの製法を考案し、現在までその製法を受け継いでいるわけです。大変なご苦労であると思います。

 しかし、インストアーベーカリー、オーブンフレッシュベーカリーはアンパンが固く、しかも最近は配合がブリオッシュに近くなり、製法もイースト量が多い発酵時間が短いしかも作業性を良くする為に生地を硬くし品質悪化の一途を辿っています。さらに焼成時間を長くがっちり焼き上げているので、パンの水分含量が極めて少ない、ぼそぼそのアンパンに変身してしまいました。

 しかしながら、山崎パンはシットリしたアンパンを袋つめの製品でも、冷凍生地でも供給しています。冷凍生地は高温で発酵させるとバサバサになりますので、低温の醗酵室で少し時間をかけて発酵させています。良く細部まで研究し尽くしていると感心します。アンパンは上火で焼く商品ですが、そんなこと教えるパン学校も講師もいないのでしょうか。パン学校を卒業して入社してくる連中を使えるように再教育するのが大変です。

 パンは一つ一つ生地作りも、発酵も、焼成も全て異なります。途中の間の取り方、パンチの仕方、それぞれに細かい気使いが必要です。さらに同じパンの生地でも、生地温、発酵室温、工程の進捗などにより日々、その都度変えなければならず、ここに作り手の気持ちが反映してしまうのです。

 食パンでも山型に焼くときと、角型に焼くときではパンチ時期、発酵時間を変える必要があります。