長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『フィンガーネイルズ』

2023-11-08 | 映画レビュー(ふ)

 ジェシー・バックリー(『ロスト・ドーター』、リズ・アーメド(『サウンド・オブ・メタル』)、そして傑作TVシリーズ『The Bear』のジェレミー・アレン・ホワイトらが一同に会するとなれば、映画ファンには放っておけない1本だ。近未来、人類は互いの愛情を数値化できるようになり、人々は真実の愛を求めて検査に列をなしていた。検査方法はカップルの指の爪を同時に抜くことだ。

 愛のために己の目玉を捧げるヨルゴス・ランティモスのような意地の悪さはないの安心してほしい。相手の名前でこっそり相性診断をしたことがある人なら、どんなに頑張っても10回までしか調べられない未来世界に戸惑うことだろう。そもそも愛とは数値にできなければ言葉にもならないのではないか?ジェシー・バックリー演じるアナはジェレミー・アレン・ホワイト扮する恋人のライアンと安定した生活を送っている。ところが職場の同僚アミール(アーメド)に心惹かれた事から、ライアンとの愛情度100パーセントという数字が信じられなくなる。『ユーフォリア』などサム・レヴィンソン組の名撮影監督マルセル・レーヴの暖かみに満ちたカメラの中で(面白いことにフィルムを模してスクラッチが付けられている)、恋の高揚を抱き始めたバックリーの口角、想いを胸に留めるアーメドの無言の佇まいにこそ、愛の予兆は宿るのだ。


『フィンガーネイルズ』23・米
監督 クリストス・ニク
出演 ジェシー・バックリー、リズ・アーメド、ジェレミー・アレン・ホワイト

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