長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『グッド・プレイス』

2021-01-29 | 海外ドラマ(く)

 エレノアはふと目を覚ますと待合室のような場所にいた。蝶ネクタイのイケオジ(テッド・ダンソン)に名を呼ばれ、オフィスに入ると告げられる。「Good Placeへようこそ」え、死んだってこと??

 ところがエレノアにはGood Place=天国にいる理由がさっぱり思いつかない。彼女は考えうる限り、これまで(しょーもない)酷いことばかりをしてきた人生だからだ。程なくして、グッド・プレイスでは地面が割れ、シュリンプが宙を舞う怪事が続発する。Bad Place行きの魂がいることで世界のバランスが崩れ始めたのだ。エレノアは何とかグッド・プレイスに居続けるべく、哲学者チディの講義を受け、良い人間に変わろうとするのだが…。

 『グッド・プレイス』はこれまで何度も作られてきた“天国コメディ”だが、それらと一線を画すのは「善行とは何か?」という問いかけに始まる哲学的主題を散りばめていることだ。シーズン1第5話、天国AIのジャネットを破壊しようとするも、見た目が人間のジャネットを殺すことは殺人では?と、ほとんど『ウエストワールド』みたいな展開をギャグとしてやっている。物語が後半に向かうにつれ、運命と自由意志という近年のTVシリーズに共通する命題も現れ、1話30分弱の放映時間にギャグとリファレンスが盛り沢山だ。

 もう1つの魅力は主要キャスト6人のアンサンブルだ。エレノア役クリステン・ベルはありとあらゆるギャグを決めるキレッキレのコメディエンヌぶりを発揮しており、近年の代表作が『アナと雪の女王』のアナ役だけというのが実に勿体ない。

 そしてエレノアに講義する哲学ナードで、命取りになるほど優柔不断(&プリケツの持ち主)なチディ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)は画期的キャラクターだ。マッチョでもセクシーでもなく、超文系の黒人登場人物が物語の最重要人物というのは近年、記憶にない。かのオバマ元大統領も毎年末に公開しているフェイバリットリストで本作を挙げている。
 人気コメディシリーズ『ブルックリン・ナイン-ナイン』のマイケル・シュアが製作を務めているため、ゲスト出演陣の顔触れがかぶっているのも楽しい。中でも『ブルックリン・ナイン-ナイン』で潜入捜査のトラウマでどうかしちゃった刑事を演じるジェイソン・マンツォーカスが、ここでもトンチキなキャラを怪演。場をさらっているぞ。

 グッド・プレイスにはインド超財閥の娘タハニや、手が付けられないほどドアホのジェイソンなど、一癖も二癖もある人ばかりが住んでおり、エレノアは自身の素性を隠しながら彼らに気配りをしなくてはならない。彼女同様、ズボラな性格の僕が「天国ってめんどくさいな…」と思った矢先、大ドンデン返しが起こる。『グッド・プレイス』は全4シーズン、ほとんど別物と言っても過言ではない展開が待ち受けており、たったこれだけのシチェーションでここまで遠くに来れるのかと驚かされた。ぜひとも事前情報ナシで見ることをオススメしたい。


『グッド・プレイス』16~20・米
製作 マイケル・シュア
出演 クリステン・ベル、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ジャミーラ・ジャミル、マニー・ハシント、ダーシー・カーデン、テッド・ダンソン

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