アメリカの映画産業が壊滅の危機に瀕している一方、自国産の映画で国内市場を回せている国はどこ吹く風で、わずか88分の父子ドラマがこうして本国公開から遅れること1年で日本のスクリーンにかかるのだから、十分に健全と言えるだろう。『ふたりのマエストロ』は取り立てて新味のない人情モノではあるが、程よいユーモア、キャスティングの多様性、観客の満足感を水増しするクラシック音楽といったバランスに富み、もちろんフランス映画らしい恋愛のまだるっこしさもある。大ヒットしようが傑作だろうが配信スルーになることもまま増えてきた本邦でのアメリカ映画事情を思うと、そのどちらでもない凡作が公開されるのは文化的な豊かさではないだろうか。他愛がないと言うのは容易い。ランニングタイム88分、こんな小品、最近ついぞ目にしていなかった。
『ふたりのマエストロ』22・仏
監督 ブリュノ・シッシュ
出演 イヴァン・アタル、ピエール・アルディティ、ミュウミュウ、キャロリーヌ・アングラーデ、パスカル・アルビロ、ニルス・オトナン・ジラール
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