2019年を代表するアニメ『アナと雪の女王2』『クロース』を見て気付いた人もいるだろう。アナとエルサが森の中で出会う先住民族と、サンタクロースへ手紙を書きたい先住民族の子供は同じ“サーミ人”だ。彼らはスウェーデン、フィンランド、ロシアなど北方圏に広く分布しており、“ラップ人”との蔑称でも呼ばれている。世界の先住民族同様、彼らもまた差別に晒された歴史の持ち主であり、本作はアマンダ・シェーネル監督のルーツを基にしているという。
1930年代、スウェーデンはサーミ人の子供に教育を与える事でサーミ語を封印し、彼らの“白人化”を行っていった。主人公エレ・マリャは聡明で意志の強い少女だが、いわれなき差別の日々にやがてサーミ人という自らのルーツを憎むようになっていく。それはサーミ人同士の分断であり、哀しいかなこの搾取構造はいつの時代、どの場所でも行われ続けている。映画は老境のエレ・マリャが妹の葬儀に参加する場面から始まり、彼女が頑なに同郷との会話を拒む様子を描いていく。教師となったエレ・マリャは人生の長い時を白人社会に同化する事で過ごしてきたのだ。彼女の頑迷さに心が痛む。
『アナと雪の女王2』『クロース』という訴求力の強い2作品によって彼らに再びスポットが当たった意義は大きい。この2作のサブテキストとしてもぜひ見てもらいたい1本だ。
『サーミの血』16・スウェーデン、デンマーク、ノルウェー
監督 アマンダ・シェーネル
出演 レーネ・セシリア・スパルロク
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