1969年に47歳の若さで亡くなったジュディ・ガーランド。『オズの魔法使い』の主人公ドロシー役で17歳にしてスターダムに上がり、ハリウッド黄金期を駆け抜けた彼女だが、決して順風満帆とは言い難い人生だった。ハリウッドの強欲な商業主義によって酷使された彼女はアルコールと薬物にまみれ、文字通りボロボロの体だったのだ。映画は彼女が亡くなる半年前、ロンドン公演での様子を描いていく。
本作でアカデミー主演女優賞ほか、全米の主要賞を独占したレネー・ゼルウィガーは再びその類稀な演技力を発揮し、まさに最期の一時と言わんばかりに燃焼するジュディの凄味を体現した。薬物によって47歳とは思えぬほど老け込み、ステージに上がればほとんど前後不覚の酩酊状態。それでも一度、歌うやミュージカルスターの華を取り戻す魔性。吹き替えなしで歌唱シーンも演じるゼルウィガーは圧巻だ。
ゼルウィガー自身も決して順調とは言えないキャリアだった。3年連続でオスカー候補に挙がり、2003年の『コールドマウンテン』でアカデミー助演女優賞を獲得。主演作『ブリジット・ジョーンズの日記』は世界中で大ヒットを記録した。しかし、多くのハリウッド女優同様、年齢と共に活躍の場は無くなり、2010年を最後に出演作はパタリと途絶える。聞けば大学へ通う等、“普通の人生”を送っていたのだと言う。
ジュディはその“普通の人生”が叶わなかった人であり、ハリウッドに疲れたゼルウィガーにとって共感する所も多かったのではないだろうか。映画では当時のハリウッドスターには珍しく同性愛を擁護していたジュディが、ゲイカップルのファンと出会い、一時の安らぎを得る場面が描かれる。彼らの象徴である“レインボーカラー”は『オズの魔法使い』の主題歌『虹の彼方に』が由来だ。そして#Me tooによって再びハリウッドの搾取構造が明らかとなった今、レネー・ゼルウィガーによってジュディは現代性を得るのである。
『ジュディ 虹の彼方に』19・英
監督 ルパート・グールド
出演 レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェウ、マイケル・ガンボン
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