長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『The OA』

2019-03-24 | 海外ドラマ(お)

※シーズン2のレビューはこちら※



初見の印象だけでレビューするのは危険と思い、そのまま3年間も寝かせてしまった。今回、シーズン2のオンエアに先駆けて復習の意味で再見したのだが、未だピークTVにおいて孤高の異色作であると再確認した次第だ。監督はザル・バトマングリ、脚本・主演はブリット・マーリング。環境テロ組織へ潜入するサスペンス映画『ザ・イースト』のコンビである。

数年間、行方不明だったプレーリー(ブリット・マーリング)が保護される所からドラマは始まる。失踪前、全盲だった彼女は何故か視力が回復していた。やがて彼女は5人の少年達を集め出生から失踪、そして現在に至るまでを語り明かしていく。ロシア新興財閥の娘として育った幼少期、バス転落事故による臨死体験と失明、そして失踪…プレーリーは臨死体験を研究する狂気の科学者ハップによって拉致監禁され、彼の元には同じような境遇を持つ4人の仲間が未だ囚われたままだと言う。彼らを救うためには臨死体験で授かった「5つの動作」からなる呪文のような行為で異次元の扉を開く必要があるのだ。

正気か?
ほとんど奇想と言っていいレベルである。一体どうやったらこんな物語を思いつくのか。だが劇中の少年達同様、どこへ導かれているのか見当もつかない謎めいた語り口に魅せられ、僕らもビンジ(一気見)してしまう。この"語り”こそが本作の生命線だ。ストーリーテリングを優先して全8話の放映時間は30〜70分とバラバラ。1話1時間という放映枠がないNetflixだからこそ余計なサブプロットを排除し、語りに必要な時間だけを確保する事ができるのだ。

同時に大きな違和感にも気付くだろう。果たしてプレーリーの物語は真実なのか?彼女のひとり語り以外に回想シーンを裏付ける人物は出てこない。彼女は所謂"信頼できない語り手”ではないのか?シーズン後半、少年達もこの疑惑に突き当たる。


 『The OA』は信念の物語だ。強い信念は狂気と紙一重であり、身を投げ打った者だけが新たな次元に到達できる。オルタナ女優ブリット・マーリングの超然とした存在感は僕らを引き込み、そして終幕、呼び覚まされた心が奇跡を呼ぶ。再見してもなお、このクライマックスに僕は放心状態になってしまった。いったい、これは何なのだ?2016年のシーズン1オンエア以後、『ウエストワールド』
『レギオン』『ファーゴ3』など既存のストーリーテリングにとらわれない、斬新な話術の作品が相次いだが『The OA』は未だ他の追随を許さない異能を堅持している。シーズン2でさらなる高みに達するのか、要注目だ。


『The OA』2016・米
監督 ザル・バトマングリ
出演 ブリット・マーリング、エモリー・コーエン、ジェイソン・アイザック
※Netflixで独占配信中※


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