ジェニファー・ケント監督による『ババドック』から6年、またしてもオーストラリアから女性監督によるユニークなホラー映画が登場した。『ババドック』がシングルマザーの子育てに対する恐怖を描いた“ワンオペ育児×ネグレクトホラー”なら、ナタリー・エリカ・ジェームズ監督による『レリック』は“認知症介護ホラー”だ。聞けばエリカ・ジェームズの最愛の祖母がアルツハイマーに冒され、かつてとまるで人柄が変わってしまった事にショックを受けたのが創作動機だと言う。
長らく疎遠だった老母エドナの失踪を聞き、娘ケイと孫サムがやって来る。家の様子からエドナは夫に先立たれて以後、認知症に苦しんでいたようだ。程なくしてエドナは帰宅。しかし、どこへ行っていたのか頑なに語ろうとせず、何か様子がおかしい。そして彼女の身体には不気味な黒斑が…。
ゴミ屋敷が出口のない迷宮と化す終盤の怖さは孤老生活を送るエドナの心象であり、匂わされる過去の出来事や女性のみで構成された登場人物から古今東西、家庭において女性たちが介護者として搾取されてきた因習が“呪い”として浮かび上がる。
そしてもう1つ注目したいのがラストシーンだ。サムは母ケイの背中にもエドナと同じ死の黒斑を見つける。未だ若い子供にとって、いつか来るであろう親の死を悟ることほど恐ろしいものはないのだ。
『レリック 遺物』20・米、豪
監督 ナタリー・エリカ・ジェームズ
出演 エミリー・モーティマー、ロビン・ネビン、ベラ・ヒースコート
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