長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ロブスター』

2019-03-13 | 映画レビュー(ろ)



『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞にノミネートされたギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の第3作目。45日以内にパートナーを見つけなければ動物に変えられてしまう世界でコリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジョン・C・ライリーら豪華スターが右往左往する。くすぐったい笑いが満載のブラックな1本だ。

妻に先立たれたコリン・ファレルはカップル成立のためのお見合い施設に送り込まれる。非モテ連中はカップル席が見える位置で1人メシ、オナニーを禁じるために利き手は拘束され、美人メイドに毎朝尻コキでチェックされる(もちろんイク寸前で止められる)。セミナーで見せられるのはカップルでいる事がどれだけ重要かという雑~な寸劇だ。ファレルはでっぷりと太り、ベタついた髪と眼鏡でモテ男オーラを封印。ライリー、ウィショーらと並ぶとむせかえるような非モテ臭が立ち上る。

ひょんな事から施設を脱走したファレルは森で暮らす御一人様至上主義のセクトに合流、行動を共にする。いつも以上に不機嫌そうなレア・セドゥがリーダーを務めるこの組織は個人の自由が尊重されても恋愛はご法度。掟を破った者には血の制裁が科せられる。ところがそこにはレイチェル・ワイズがいて当然、恋せずにはいられなくなってしまう…。行くも地獄、戻るも地獄。管理社会は同調圧力だらけだ。脚本も務めたランティモスは吹き出してしまうようなシチェーションを積み上げ、エグいシーンの手前で場面を切り替える。ホントにエグい場面は観客の頭の中で出来上がるという寸法だ。

 劇中の非モテ共は“共通事項”がカップル成立の条件と錯覚している。すぐ鼻血が出ること、足が悪いこと、近視であること、そして…前作『籠の中の乙女』では原題Dog teathにちなんで犬歯がキーワードになったが、今回も声を上げてしまうようなクライマックスが待ち受ける。ちなみにファレル扮する主人公は改造されるならロブスターがいいと言うが、確かにこんなすったもんだがあるくらいなら水底で一人静かにプランクトンでも漁っていたい所である。って考えるオレも十分非モテか!



『ロブスター』15・ギリシャ、アイルランド、オランダ、英
監督 ヨルゴス・ランティモス
出演 コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、ベン・ウィショー、ジョン・C・ライリー、レア・セドゥ、オリヴィア・コールマン

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ファースト・マン』 | トップ | 『ピリオド 羽ばたく女性たち』 »

コメントを投稿

映画レビュー(ろ)」カテゴリの最新記事