長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『バンブルビー』

2019-04-18 | 映画レビュー(は)

マイケル・ベイの臆面もないタイアップと、ひたすら破壊だけを繰り広げる通称”ベイヘム”演出によって人気が凋落した『トランスフォーマー』シリーズのリブート作。監督に『KUBO』のトラヴィス・ナイトを迎え、オリジナルアニメ放映時の80年代に舞台を変更。ジョン・ヒューズとアンブリンのテイストがぎっしり詰まった好編として生まれ変わった。全米では2週連続で興行収入記録NO.1ヒットを記録、批評家からも大絶賛され、まさに起死回生の1本となった。

ファミリー映画として優等生的なアレンジである。第1作目(これはまだ良かった)の車と少年の物語を車と少女の物語へ変換。女の子だって車や巨大ロボットと心を通わして然るべきだ。ヒロインのチャーリーは父の死後、再婚した母が許せず家庭に居場所を見出す事ができなかった。揺れる少女の心をヘイリー・スタインフェルドが溌溂と演じ、大作を牽引できるだけの存在感を示している。彼女の恋人がアフリカ系というのも時代に則した配役だ(もちろん、必ずしもロマンスが生まれる必要はない)。

負傷によって記憶を失ったバンブルビーがまるで大きな動物のように可愛らしいのもいい。彼は言葉が話せない代わりに搭載されたカーステレオから当時のヒットソングを流し、心情を語るのである。セイ・エニシング!

このシリーズに対して何度も言ってきた言葉だが、今回もロボットものは日本に一日の長があると思わずにいられなかった。『トランスフォーマー』の魅力は正義のオートボット(サイバトロン)のみならず、悪のディセプコン(デストロン)も個性豊かに描かれた事だ。裏切りと反省を繰り返すねずみ男キャラのスタースクリームをせっかく原作アニメに近いデザインで登場させたのに、この無個性ぶりでは実に物足りないではないか。

本作の成功を受けてさらなるシリーズの続行が決まったが、願わくばこのプロダクションを維持して原作シリーズの魅力を掘り下げてもらいたい所である。

『バンブルビー』18・米

監督 トラビス・ナイト

出演 ヘイリー・スタインフェルド、ジョン・シナ、ホルヘ・レンデボルグJr.


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