前回とりあげた小説『ザリガニの鳴くところ』の映画バージョンを観ました。
「ザリガニの鳴くところ」(オリビア・ニューマン監督 2022年)
これ、Amazonで2000円(!)で配信されてたのですが700円に値下げになったので、つい買ってしまいました。
最近、映画配信がやたら高くなった気がする。
で、結論から言うと、やっぱり原作を読むべし!です。
映画はかなり原作に忠実に作られてはいるのだけど、何しろ500ページを超える長編を2時間の映画に圧縮するのは無理がある。
省略せざるをえない部分が必ず出てきて、そこ抜いちゃだめじゃん、などと原作読んでると思うわけです。
原作ではカイアの子どもの頃からの成長物語が実に丹念に描かれていて、これのどこがミステリーなんだろうと最初は思うほどで、裁判は後半になってようやく出てきます。
一方、映画の方はカイアが殺人犯として捉えられ裁判にかけられてからの法廷ドラマが主体で、その合間にカイアの成長物語が語られるという手法です。
なので、映画はもっぱら人間たちのドラマが主体。
アメリカの闇ともいえる人種差別や貧困、DVなどの問題がしっかり盛り込まれています。
一方、原作にはこれでもかと湿地の自然描写が盛り込まれ、カイアとテイトとの交流が丁寧に描かれ、むしろ湿地こそが主人公なのではないかと思えるほど。
そして、肝心のどんでん返しなのですが、これがねえ、映画じゃちょっと物足りないんじゃないかしら。
もちろん、観客は「アッ!」と思うはず。
でも、小説の方がもっとインパクトが強い。
説得力があり深い余韻を残します。
私はやはり原作をお勧めしたい。
映画は情景が美しい。湿地ってこういう場所なのねとよくわかる。
でも、小説読んでいても湿地の情景は目に浮かんできます。
見事な小説です。ぜひ一読をお勧めします。