旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

街角の蕎麦屋にて「浦和宿の老舗そば屋」

2021-08-25 | 日記・エッセイ・コラム

 やや甘のつゆに山葵をたっぷり溶いたら、刻み海苔とネギといっしょに、大げさにズズっと啜る。
夏の昼下がりに “大ざる” をいただく、こんな暑い日には冷たい蕎麦がいい。美味いねぇ。
使い込んだ漆器に味がある店は昭和10年の創業と云うから、すでに85年を超える老舗なのだ。

とても昭和な雰囲気の旧中山道に面した老舗を一歩裏手に入ると高級マンションやお屋敷が並ぶ住宅街。
子供たちが虫取り網を手に駆けている大楠の都市公園は、徳川家康が鷹狩の際に滞在した浦和御殿の跡地だ。
こんな立地の店だから旧くからの顧客も多いんだろうね。おかもちを据えたスーパーカブで、兄さんが
忙しなく出たり入ったりしている。

大衆食堂的に進化してきたお店はメニューも豊富。とある日は、懐かしい “中華そば” に “ヤキメシ” を半分こ。
出汁を効かしているのかな、明らかにチャーハンとは別物の一皿は試していただきたい逸品。

こんな蕎麦屋さんの丼ものだからハズレはない。多めに盛られたご飯の上に、ふんわりと玉子でとじた
ジューシーな豚カツをのせて “カツ丼” が美味しい。お約束の豆腐とワカメの味噌汁が泣かせる。
ところで、厨房のご主人と料理人さん、甲斐甲斐しいおかみさんも結構なお年とお見受けするのだけど、
こんなお店はいつまでも残って欲しいな。またお邪魔しますね。ごちそう様でした。

少女人形 / 伊藤つかさ 1981