鉄路が太平洋に出会う上総一宮はサーフィンの町、待合室のベンチの背もたれはサーフボードになってる。
九十九里ビーチラインに出たら、サーフショップ、カフェ、ペンションが並んでちょっぴりアメリカンだ。
総武本線と外房線がY字に分岐する真ん中に7階建ての白亜の駅ビル「ペリア千葉」が存在感を示している。
千葉駅は都会的なターミナルだ。っとちょうど3階のホームに懸垂式のモノレールが入って来た。
今回は外房線を安房鴨川まで呑み潰す。6番線のトップランナー233Mはやはり青色と黄色のラインが流れてる。
大網を出る頃には車内もだいぶ落ち着いてきた。それではと “一番搾り 清澄み” を開ける。
これ、セブン&アイの限定商品なんだね、知らなかった。後味すっきり、爽やかな香りに仕上がっている。
朝ビールをひと缶飲み終えたころに上総一ノ宮に到着する。青色と黄色のライン、8輌編成の疾走はここまでだ。
上総一ノ宮までは、総武快速線からの15両編成や京葉線からの10両編成も乗り入れる幹線の風景。
この先は一挙にコンパクトな2両編成に選手交代になる。ボックスシートはわずかに4つ、呑む旅には厳しい。
二番手の2333Mを御宿で見送る。海岸に出るとそこは童謡「月の沙漠」の舞台になった白い砂浜だ。
月の沙漠を はるばると 旅の駱駝が ゆきました、おとぎ話の王子様とお姫様はどこをめざして旅するのだろう。
お盆を過ぎて波が出てきた太平洋、王子様とお姫様の視線の先、岬の向こう側は勝浦になる。
幾つかのトンネルを潜って勝浦、行き違いの上り列車もやはり2両編成、長いホームにちょこんと停車した。
フロントの青色と黄色の水玉模様は房総の海の波しぶきをイメージして、あくまでも爽やかなのだ。
たったひと駅の乗車で再び途中下車するのは、勝浦港の市場食堂で鰹づくしをかっくらうため。
そうこの店「勝喰(かっくらう)」ってなんとも勇ましい名前なのだ。黄色い看板と庇が目にしみる。
黒の板皿に、刺身・たたき・漬け・なめろうを贅沢に満載して “かつお4点盛り定食” が登場。
本来なら、地酒のお供に漬けとたたき、あったかご飯と刺身、残ったご飯となめろうにだし汁をかけて、
ってのが王道かと思うがそこはそれ、生姜と紅葉おろしで美味しくいただきました。満腹、満足なのです。
三番手の3239Mはおあつらえ向きにボックスシートが空いていた。
辺りに乗客も居ないので海を眺めながら暫しのワンカップタイム、今回も芳醇な安房の酒 “寿萬亀” を。
カップの底を啜って安房天津に途中下車、ワンボックスの日東バスに乗って山へ分け入る。
安房の山は深くたった10分の乗車で静粛の中、ここは大本山清澄寺、んっけさ飲んだ缶ビールと同じだ。
朱に塗られた仁王門、阿像(那羅延金剛)と吽像(密迹金剛)が信心なき者を睨みつける。
祖師堂、本堂を巡り、千年杉を見上げて旭が森に登ると日蓮聖人蔵が立つ。ここは聖人が出家得度した寺だ。
清澄寺には浮世絵の歌川広重が訪れ、山海見立相撲「安房清住山」を残している。
折り重なる尾根の先に太平洋が横たわり、鴨川の町の先に仁右衛門島が浮かんでいる。この風景に違いない。
アンカーの3245Mにひと駅揺られ、安房鴨川の3番ホームで外房線の旅は終わるのだ。
東京行きの特急に乗るのだろうか、夏休み最後の週末を楽しんだ家族連れ、駅舎に西陽が射している。
外房線 千葉〜安房鴨川 93.3km 完乗
ラストショー / 浜田省吾 1981