旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

対馬マグロと日南鶏と筑紫の酒と 篠栗線を完乗!

2021-08-07 | 呑み鉄放浪記

 筑豊本線の桂川(けいせん)駅の3番線、都会的なオールステンレスの4両編成が入線してきた。
両開きのドアから車内に一歩入ると、天井から降りてくる心地よい冷気にようやく人心地つく。

「福北ゆたか線」と愛称される篠栗線は、福岡と筑豊を結ぶ通勤通学の足として、20分ヘッドで電車が走る。
桂川から篠栗の区間は1968年の比較的新しい開業、トンネルと鉄橋が連続する山岳区間だ。

小さな橙色のとんがり帽を頭に載せた駅舎が可愛らしい篠栗駅。
ここから終点の吉塚駅までの区間は明治37年に開業している。もちろん石炭輸送を担うためだ。

篠栗折り返しのダイヤもあるから、ここから先はかなりの運行頻度になってくる。
それでも全線単線なので、だいたい2駅毎に下り電車と交換する感じなのだ。
車窓は一転、隙間なく宅地が並んで、なるほど150万都市・福岡のベッドタウンであることを実感する。

電車が山陽新幹線を潜って高架に駆け上ると、正面にマンション群が見えてくる。
4両編成がゆっくりと左カーブすると、鹿児島本線の複線が寄り添ってきて吉塚駅5番ホームに滑り込む。

延長25キロ、所要40分の短い篠栗線の旅はここで終わり、呑み人はひとり813系電車を見送る。
ステンレスのボディーに西日を反射させ、電車は一つ先の博多へと並走する山陽新幹線を追いかけて行く。

夕方の吉塚駅に向かう人並みが半端ではない。人混みに逆らって県道の交差点を渡る。
なるほど、駅の西側には威圧的な福岡県庁舎がでんと構え、さらにその先には九大病院の敷地が広がる。
亀山上皇銅像を戴く東公園をぐるっと巡ったら、予定調和で駅前の酒場に吸い込まれてみる。

 席を占めたのはカウンターの角、目の前に “もつ煮込み” の大鍋が雰囲気を出している。
今日も暑い中を歩いたから、先ずはキンキンに冷えた “サッポロ生” を呷る。美味いねぇ。
お通しは “珠どうふ” にたっぷりの “しらす” をトッピングしてもらって、訳もなくハッピーな気分になる。

地酒は八女の喜多屋 “蒼田ブルー”、山田錦を磨いた上品な芳香とふくよかな味わいの純米吟醸酒だ。
アテは対馬に揚がった “本マグロ盛り合わせ”、洒落た器に中トロ、炙り、漬け、ネギトロと華やかに並ぶ。

店推しの “梅タルタルで食べるアジフライ” が、夏のひと皿らしく、さわやかに美味しい。
そして二杯目の “喜多屋” は50%磨きの純米大吟醸、フルーティーな香りと芳醇で深い味わいの一杯がいい。

“日南鶏の鶏天” はポン酢でいただく。さらに和がらしをたっぷり付けて、ツンとくる位が美味しい。
一度訪ねてからお気に入りになった “三井の寿” は三井郡大刀洗町の蔵、日本酒度+14の大辛口。
辛いだけじゃない爽快な旨口の酒を愉しみながら、夏の福岡に夜がやってくる。んっ、やはり出張はいい。

篠栗線 桂川〜吉塚 25.1km 完乗

酒と泪と男と女 / 河島英五 1981
     



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