梅雨の晴れ間が広がった宮古、先週に引き続き三陸海岸までやってきた。
盛岡と宮古を結ぶ主役はすでに急行バス、1時間に1本が県都と湊町を繋いでいる。
対する今回のアプローチ、山田線は日に4本の直通列車が走るのみで勝負はついている。
利便性より旅情を求める呑み人としては、駅ビルで地酒を仕込んで2番線へ下りる。
ところがだ、11:05発の快速リアスは満員御礼、なんとかロングシートに席を確保する。
どうやら地酒はリュックの底に沈んで、家まで持ち帰るらしい。
大志田、浅岸とかつての秘境駅は廃止となり、2両編成は駅間27キロを駆けて区界へ。
標高744mの区界(くざかい)駅は東北地方のJR最高所、もちろん山田線のピークになる。
一日平均乗降人員1名の区界を過ぎると、急坂を転げるように列車は下っていく。
この先宮古まで寄り添う閉伊川の渓谷が美しい。まもなく鮎が解禁になるそうだ。
快速リアスは100キロの道程を2時間と少々かけて、七夕が飾られた宮古駅に終着する。
この先釜石までの区間は、3月の復旧とともに三陸鉄道に委譲されている。
宮古駅では6分の待ち合わせで、浄土ヶ浜へ行く路線バスに乗り継げる。
さながら極楽浄土のごとき白い流紋岩が林立する景勝地を観よう。呑むだけが旅ではない。
荒天で楽しめなかった先週の北山崎断崖クルーズのリベンジを誓って遊覧船に乗り込む。
ウミネコパンが販売され出航を待つ。ご婦人らの殆どがパンを購入。美味いのかな。
出航と同時に、ウミネコが船の回りを群れ飛ぶ。否、襲いかかるが如きだ。
この後数分、よく映像で見る餌付けの光景が展開する。
ウミネコたちは現金なもの、パンが尽きたと見るや、ひと足先に防波堤へと帰って行く。
さて、松の緑、岩肌の白、海の群青が共演する極楽浄土がごとき風景はと云うと、
いやまたしても「やませ」特有の濃霧が海岸線を包んでいる。
船内放送では、残念ながら船は港に引き返すこと、乗船券を払い戻すことを伝えている。
いやいや、煩悩を抱える者には、そう簡単に極楽浄土は見えないらしい。
さて今日の一杯は、宮古駅近くの「蛇の目本店」と決めてある。
上り列車が出るまでの2時間が「呑み鉄」のクライマックスなのだ。
浄土ヶ浜から歩いて戻ったから、先ずは生ビール。喉を鳴らして一気に呷る。
お通しの "イカの塩辛" がなかなかの出来栄えだ。
酒は "千兩男山"、先週も飲んだ地元宮古の生貯蔵酒を愉しむ。
肴は "海鮮サラダ" と "カキフライ"、三陸の豊かな海を感じる逸品に満足の昼呑みなのだ。
山田線 盛岡~宮古 102.1km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
かもめが翔んだ日 / 渡辺真知子 1978