「男女倉口」 07:50
昨晩お世話になった民宿のご主人に、昨日のゴール、男女倉口まで送っていただく。
快晴、気温5℃は峠を越えるにはまずまずのコンディションと云えそうだ。
山道を登り始めてまもなく三十三体観音がある。
本来山中の熊野権現社の石像だが中山道が廃れるに従って荒れ果てていたものを、
昭和40年代に発掘調査をして現在地に安置したそうだ。実際には4体が未発見で29体だ。
峠の難所を往来する人馬の無事を祈って祀ったものと推察される。
「永代人馬執行所跡」 08:20
山道を1.5kmほどで一旦R142と合流、茅葺屋根小屋の永代人馬執行所復元されている。
和田宿から下諏訪宿までは中山道随一の長丁場、人家もなく、旅人の苦労が多かった。
文政11年(1828)、江戸の豪商がこの難儀を救おうと、幕府に願い出て小屋を設置し、
冬季に立ち寄った旅人には、粥一杯と焚火、牛馬には年中、桶一杯の飼葉が施された。
山道に戻って2kmほどは急坂部に石を敷き詰めた区間がある。
当時は上り下りに助けになった石の道も、苔むした今、滑りやすく歩き辛い。
「広原一里塚」 09:05
「東餅屋跡」 09:10 ~ 09:30
R142に合流して1kmほどで東餅屋跡に至る。江戸時代には五軒の茶屋が繁盛した。
国道が開設され、更に有料トンネルのバイパスが峠越えを不要にした今日、最後まで
残った1軒がドライブインを細々と(失礼ながら)営んでいる。
名物の力餅は、ほどよい甘さが疲れた体に美味しく感じる。碓氷峠の力餅とは趣がちがう。
東餅屋を過ぎると頂上までは僅か。左右の樹木も低くなり徐々に視界が開けていく。
この間つづら折りになっているビーナスラインを1度潜って3度横断する。
潜る1回は沢の流れと歩道のトンネルになっている。
手前へ流れるこの沢は、やがて千曲川に合流し信濃川となって新潟港で日本海に注ぐ。
峠の反対側に流れる沢は諏訪湖に注ぎ天竜川となって遠州灘で太平洋に行き着く。
和田峠を含めビーナスラインが走る尾根筋が中央分水嶺なのだ。
「和田峠-古峠」 09:50 ~ 10:10
標高1,531m、中山道中の最高所である和田峠に至る。
R142(旧道)が離れたところを通っているため、こちらを古峠という。
正面に真っ白な頂の御嶽山3,067mが目に飛び込んでくる。御嶽山遥拝所の碑も立ち、
なるほど山岳信仰の山であることをうかがわせる。
貝原益軒の東路記に『東坂はやすらかにして西坂はけはし、三月まで雪多し』とある。
下諏訪へと下る道は狭く急だ。秀忠の大軍勢や和宮の御輿が通る様子は想像できない。
急坂の途中に「石小屋跡」がある。
崖を穿ちその石で囲いを作って板屋根を被せた一種の避難小屋があったそうだ。
「西餅屋跡」 10:50
和田宿と下諏訪宿は五里十八丁の長い峠道、四軒でなる西餅屋の茶屋も繁盛したそうだ。
近くに53番目の「西餅屋の一里塚跡」がある。
西餅屋跡の先は崖道、ひと一人通れる石がゴロゴロした道を時折ロープを頼りながら進む。
切り立ったと表現するほどでもないにしろ砥川の沢を覗き込むと足が竦む。
1kmほど先でR142に合流、大型トラックが爆走する歩道のない国道はある意味で崖道より怖い。
「浪人塚」 11:30
幕末に天狗党(元水戸藩士の浪人)が京に上る途上、松本藩・高島藩と激戦を繰り広げた。
この砥沢口合戦で討ち死にした浪士を葬った塚だそうだ。
「木落し坂」 12:20 ~ 12:40
中山道は諏訪大社御柱祭りの木落し坂を通る。
坂上から覗き込むとドキュメンタリーの画面で見るよりかなりきつい坂だ。
ここで民宿で作ってもらったおにぎりをいただきお昼とした。
「諏訪大社春宮」 13:10 ~ 13:40
諏訪大社春宮の杉木立を右手に進むと突然視界が開ける。下諏訪市街地と諏訪湖だ。
坂を下りきると『右中山道、左諏訪宮』の道標、京方から見た案内だ。
ちょっと寄り道をして春宮と「万治の石仏」を見学する。
慈雲寺門前の湧水「龍の口」を右手に見て進むと古い蔵の前に「下の原一里塚跡」の碑。
中山道は塩尻方面へ最短ルートを行かず、つの字を書くように温泉街と秋宮の門前を通る。
町家は出桁造が見当たらず、和田宿とは随分趣が違う。
「旦過の湯」「児湯」は古くから街道を行き交う旅人や修行僧に親しまれた浴場だ。
私たちは帰路の特急乗車前に児湯を楽しんだ。
「下諏訪宿」 14:00
中山道はその本陣前でL字に折れ塩尻宿へ向かう。
直進すると甲府を経て江戸へ向かう道「甲州街道」との分岐点にもなっている。
本陣の遺構は「本陣岩波家」と隣接する旅館「聴泉閣かめや」に見ることができる。
一般公開している岩波家にはそうそうたる大大名の関札が残っている。
本陣の向かい側、塩尻方面への道筋には「脇本陣まるや」など雰囲気のある建物が並ぶ。
第20日目は男女倉口から中山道中の最高所・和田峠を越えて下諏訪宿まで15.1km。
約6時間の行程を「諏訪大社秋宮」に参詣して終了した。