旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

夕陽に染まる松本城と信州の地酒と 篠ノ井線を完乗!

2020-10-03 | 呑み鉄放浪記

大糸線で北アルプスを眺めながら缶ビールでも開けようと、朝一番の "はくたか" で糸魚川へ向かった。
ところが、昨晩停滞した前線の影響で新潟県西部は大雨、姫川沿いの糸魚川~南小谷は運転見合わせだって。
考える間もなく代行タクシーの後部座席に押し込まれて mission incomplete 決定。
それではと、寄り道せずに松本に抜けて篠ノ井線を旅しよう。70kmほどだから午後からでも行けるだろう。

北陸新幹線を跨ぐ篠ノ井駅は3階の高さにある。なんだか東京近郊の私鉄駅みたいだ。
ペデストリアンデッキには聖火トーチを支えるブロンズ像「雪ん子像」が立っている。
なぜって?篠ノ井駅は1998長野冬季オリンピックの開会式・閉会式のスタジアムに最寄りだから。

篠ノ井線の主役は "ワイドビューしなの"。篠ノ井~松本の単線区間を1時間に上下1本ずつ走るから、
貨物列車を退避させ、各駅停車を待たせ、それはもうわがもの顔で25‰の山道を駆け抜けていく。
ボクはと云えば、後続14:20発の2240Mに乗車、各駅停車で往くのが吞み鉄ゲームのルールなのです。 

2つ目の姨捨駅には15分ほどで到着、うばすて山伝説、更科の月、そしてスイッチバックで有名です。
善光寺平を一望するこの辺りは、石北本線の旧狩勝峠、肥薩線の矢岳越えと「日本三大車窓」と称され、
ホームの展望デッキからは千曲川が滔々と流れ、甍が煌めく善光寺平の大パノラマを堪能できる。

このパノラマを楽しめるのも、わがもの顔に振る舞う主役を通過させるための待ち時間のお蔭なのだ。
ホーム下の本線を長野行きの特急が軽快に駆け下りていくと、待たされていた2240Mも出発時刻になる。

全長2,656m、レンガ造りの冠着トンネルを抜けると、そこは標高676m、篠ノ井線のピーク。
蒸気機関車の時代、急勾配の続くトンネルでは煤煙による機関士の窒息事故なども起きたそうだ。

ピークを過ぎた後続の2242M、今度は松本平に向かって勾配を駆け下りることになる。
およそ30分で視界が開けると明科、西にはすでにシルエットとなった北アルプスの頂が連なり、
傍らには山々から昨日までの雨を集めた犀川が、列車とすれ違うように北へと蛇行していく。

16:25、松本着。夏山シーズンを終えて、ようやく落ち着きを取り戻した岳都の玄関口。
お城口(東口)に出たら浅間温泉行きのバス停を探す。こんな時間だけど松本城くらいは見ておきたい。

夕陽を浴びた松本城、静けさの中に神秘的に浮かぶ。そういえばこんな時間に訪ねたのは初めてだな。
五重六階の天守、黒と白のコントラストが王ヶ鼻(美ヶ原)の濃い緑を背景に美しい。

城下町を漫ろ歩いて、今宵は駅近の「信州酒場 山里」で地酒と郷土料理を堪能したい。
場所柄、地元の若者、観光客、出張のサラリーマン風など、ちょっと混沌とした雰囲気になってるね。

まずは天竜川沿い中川村の "今錦おたまじゃくし"、ふくよかな味わいの特別純米酒ひやおろしを。
もみじを散らしたラベルには工夫があって、酒の成長をおたまじゃくしで表しているそうだ。
冬に出荷する生酒は手足なし、春の特別純米では足が出て、1年を経たひやおろしは手も生えてってね。
アテには "辛味大根おろしと馬肉叩き"、炙った赤味馬刺しに信州の辛味大根をたっぷりおろして、
ポン酢でさっぱりと美味しい。 これ、馬肉はちょっとって人でもいけるんじゃないだろうか?お奨めです。

2杯目は高瀬川沿い池田町の "大雪渓 山装う"、こちらは生酛造りの特別純米、やわらかな口当たりの酒。
秋酒らしいネーミングとラベルが気に入りました。もう一品 "岩魚と野菜のかわり天ぷら" をいただく。
身はふっくらサクサクと、骨はからっと素揚げして、安曇野の岩魚が美味なのです。

18:25、松本発。ほろ酔いの身体をクロスシートに沈めて、旅の残りはあと駅5つ。
松本~塩尻間は、長野からの列車に松本始発の新宿方面、名古屋方面への列車を加えて賑やかになる。
838M、夜の木曽路を中津川まで走り抜けるJR東海の電車はアルミのボディーにオレンジのラインが鮮やか。
18:43、塩尻駅着。ブドウ畑が広がる桔梗ヶ原を抱えて、ここ塩尻には信州ワインの産地。
宵闇に浮かぶサイン、まるでワインボトルのエチケットのような塩尻駅で篠ノ井線の旅は終わるのです。

篠ノ井線 篠ノ井~塩尻 66.7km 完乗

バスルームから愛をこめて / 山下久美子 1980



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