日本海側の地方に大雪が降る前、師走のある日、快速おいこっとで千曲川旅情と地酒を愉しむ旅に出た。
“兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川…”、車内放送で唱歌「故郷(ふるさと)」が流れる。
里山、田畑、茅葺き民家、千曲川沿いの田園風景は、この唱歌が作詞された「ふるさと」そのものだ。
2両編成のディーゼルカーが豊野から飯山線に入ると、車窓には「ふるさと」の情景が展開する。
車内ではアテンダントから "野沢菜漬け" が振る舞われる。すかさず缶ビールのプルトップを開けるのだ。
なんだか温かい沿線案内は、日本昔ばなしの常田富士男さん、陽射しと相乗効果でとても心地よい。
ホームに鐘楼がある情緒たっぷりの飯山駅は、北陸新幹線の延伸開業で近代的な駅に生まれ変わった。
新駅は内装に地産のスギ材をふんだんに用いて暖かみのある雰囲気を演出している。
1階のいいやま観光局は日本版DMO(地域観光づくり法人)の優等生で、魅力あるコンテンツを提供している。
ちょっと寄り道、駅前から野沢温泉ライナーってリムジンバスで30分、北信濃の湯に浸かろう。
ところが野沢温泉のシンボル、雰囲気ある「大湯」は清掃中だって、ついていない。
温泉街を漫ろ歩いて麻釜(おがま)、野沢温泉に30ほどある源泉の1つで100度近い熱湯が湧き出している。
村の方々はここで野沢菜を洗ったり、卵をゆでたり笹団子を蒸したりする。部外者は立ち入りできない。
麻釜から100mほど坂を下ると外湯「麻釜(あさがま)湯」が開いていた。
大湯と比べるとずいぶん小さいけれど、地元の親父さんと背中をならべて源泉に浸かる。至福なのだ。
飯山線の旅は続く。旅の供は "水尾小吟"、地元の金紋錦を醸した華やかでコクのある香りの純米吟醸酒だ。
駅で求めた "笹寿し" は川中島に出陣する上杉謙信に、村人が献上した勝利を願った兵糧が始まりと云われる。
故に飯山では冠婚葬祭や晴れの日のおもてなし料理として親しまれている。
おいこっとは信越県境にほど近い森宮野原駅で長めの停車をする。
この駅は日本最高積雪地点、昭和20年の豪雪の際に7.85mを記録している。その標柱の高さが凄い。
車窓に迫る千曲川は新潟県に入ると信濃川と名を変えて日本海に注ぐ、甲武信ヶ岳からの367kmは日本最長だ。
クリームと臙脂で描かれているのは、田舎の「おばあちゃんの家」を連想する茅葺き屋根の民家、
その襖や障子などをイメージしたデザインだそうだ。おいこっとは2時間半をかけて十日町に到着する。
隣の3番線には、乗り継ぎの越後川口行き単行ディーゼルカーが、エンジンを震わせて待っている。
この12:55発は見送って途中下車、いつもの店だけどご当地の "へぎそば" は食べておきたい。
駅を背に歩いて6~7分、雪除けのアーケードを備えたR117沿いに小嶋屋本店がある。
地酒 "松乃井" を枡に零してもらう。冷やでよし燗でなおよし、やや辛口、地元親父の晩酌の酒ってところか。
アテは "鴨の黒胡椒焼き" を択ぶ。さっとレモンを絞って、ジューシーな鴨肉が美味しい。
そして "へぎそば" を一枚、天然布海苔をつなぎにした滑らかな食感の十割をズズっと啜る。美味い。
ちなみに「へぎ」とは、木を剥いだ板を折敷にしたこの器のこと。布海苔そばを指すのではない。
久しぶりの "へぎそば" を堪能して十日町駅、13:38発、131Dに乗ったら終点までは所要30分。
車窓に米どころ魚沼の田圃風景を眺めていると、やがて右手から上越線の複線が近寄ってくる。
信濃川が魚野川を抱き込む越後川口で、飯山線は信濃川(千曲川)に寄り添った100キロの旅を終える。
飯山線 豊野~越後川口 96.7km 完乗
チェリーブラッサム / 松田聖子 1981
“快速おいこっと” で往く千曲川旅情
私も拝見してます。
けっこう拘りのお昼をお楽しみですね。
本年もよろしくお付き合いください。
私も鉄旅が好きなので
この完乗シリーズは大好物です
イイですねー、おいこっと
私も乗ってみたいです(^^)
お酒、もちろん ”天神囃子” もありましたよ。
あとは南魚沼の酒でしたね。
という訳で私にとっては二択でした。
年末年始はお帰りになりましたか?
松乃井はお店のお勧めだったのでしょうか。
まさにおっしゃる通りの酒。
ワンカップもあり、それがちょうど良いのです。
小さなことですが、魚沼川ではなくて魚野川です。