8月27日夕刻、花咲港はほとんどの漁船が出払って、残る船も出航準備に余念がない。
一隻また一隻、集魚灯を点灯しながら防波堤を出ていく。
千島沖でまとまった魚群と遭遇したサンマ漁は、28・29日に3,000トンの水揚げを見込む。
根室は9月第1週に「かに祭り」、第3週に「さんま祭り」が開催され、短い秋を迎える。
07:47発、第4走者は池田行き、2両連結のディーゼルカーは高校生で溢れている。
真っ白な上履きなんか手にして、月曜日の朝、関東より1週間早い始業式の様だね。
十勝川の鉄橋を渡るとワインの池田町。太平洋に出会うまではこの大河にお付き合い。
池田駅で下車。ワイン城は丘の上、陽射しは強いけど、渡る風は秋の匂いがする。
この町のブランド「清舞・山幸」の畑から、空が高くなった十勝平野を見下ろす。
第5走者の釧路行き2両編成は、厚内駅で特急列車の交換で長い停車をする。
跨線橋に上ると家並みの先に海が見える。列車が大きく左に弧を描くと太平洋と出会う。
開け放った窓、潮の香りが広がる。寒流が下りてくる太平洋、風は一層涼やかだ。
まだ霧っぽい午過ぎの釧路駅。座席の確保と駅弁調達を役割分担する9分間。
アンカーはワインレッドのラインを引いたステンレスカー、4番線でぽつんと待っている。
発車を待ち切れず駅弁を開ける。"たらば寿し" と "かきべん" だ。
オヤジの "かきべん" は、カキの炊き込みご飯にふっくら柔らか旨みあるカキが美味しい。
単行ディーゼルカーは別当賀駅を過ぎみたび太平洋に近ずくと、殆ど停車のような徐行。
落石岬へとつづく海岸線の風景を堪能、粋な計らいだね。
高校生が乗り込む木造のホームは東根室、東経145度35分50秒は日本最東端の駅だ。
15:59、単行ディーゼルカーは最果ての根室駅に静かにガクンと停車する。
滝川から400kmを超える旅路の果て、秋を迎えにやってきた根室本線の旅は終わる。
タクシーを飛ばして納沙布岬。朽ちかけた貝殻島灯台の先に歯舞群島が見える。
根室本線 滝川~根室 443.8km 完乗
夏の終わりのハーモニー / 井上陽水&玉置浩二