はやぶさ49号が発車する際に「夕暮れ時はさびしそう」のメロディーが流れる。
後で調べたらNPSの3人は、ここ一関高専在学中(1972年)に結成したバンドだそうだ。
大人の休日は三陸海岸へ、今週のアプローチはドラゴンレールで往く。
大船渡線は、東北本線一ノ関を起点に、北上山地を横断して盛を結んでいる。
地図上で見ると曲りくねり、まるで竜が飛翔するような線形がドラゴンレールの所以だ。
この線形は大正期の政治家による我田引鉄の結果だと云う。
2両編成の気道車はそんな経緯も知らず、四角形の三辺を遠回りして三陸海岸をめざす。
先週に引き続き訪ねた気仙沼では「ポケモントレイン」に迎えられる。
東北沿岸の子どもたちに笑顔を届ける「POKÉMON with YOU トレイン」は、
明日、団体臨時列車として、 山田線から三陸鉄道リアス線に直通運転する。
東日本大震災で被害を受けた大船渡線は、気仙沼から先の海岸区間はBRTで仮復旧した。
その後、JRが提案する鉄路の廃止、BRTの継続運行を沿線自治体が受け入れ現在に至る。
12:00発、盛(さかり)行きが2番線に時間ぴったりに入る。このあたり鉄道と変わらない。
橋梁も随道もそのままに、真っ赤なハイブリッドのBRTは専用道路を走り抜ける。
奇跡の一本松が見えると陸前高田、被害が大きかった町は巨大な防潮堤が屹立している。
半島の付け根をトンネルで越えると大船渡湾、鈍く光る海に牡蠣筏の風景が広がった。
やがて真っ赤なハイブリッドは盛駅でアイドリングを停め、大船渡線の旅が終わる。
構内に轟く音に振り返ると、岩手開発鉄道の長大な貨物列車が走り抜けて行く。
大船渡鉱山で産出される石灰石を太平洋セメント工場まで輸送する貨物鉄道なのだ。
余韻もそこそこに路線バスに飛び乗る。3キロほど盛川を遡って酒蔵を訪ねるのだ。
陸前高田で被災した酔仙酒造は氷上山を隔てて、ここ大船渡に蔵を再建した。
地元営業担当だと云う古株の社員氏に被災のこと、酒造りのことを熱く説明いただいた。
「芳醇にして呑み飽きしないきれいなお酒」 をめざして酒造りをされている。
試飲が過ぎたかな?"辛口酔仙" をぶら下げて、良い気分で迎えのタクシーに腰を沈めた。
小さな地方の町の午後3時、飲食店など開いてやしない。
唯一赤い暖簾を提げていた大衆食堂に吸い込まれ、中生ジョッキーを呷る。旨いね。
熱い "五目ラーメン" を啜ったら、ここからは三陸鉄道リアス線の旅が始まる。
大船渡線 一ノ関~盛 105.7km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
道標ない旅 / 永井龍雲 1979