市川海老蔵殴打事件に思う・・・

　連日連夜、市川海老蔵殴打事件を報道するテレビ局のしつこいこと。双方の言い分がまったく違うことから色々と憶測され、マスコミにとってはこれほど面白いネタはないわけで、格好のエサとなっているのであろうが、ちょっと異常ではないかとも思える。
　彼のご乱行は以前から周知の事実だったようで、いずれはこういうことも起こりうると予想できたのではないか。ケンカは１人ではできないし、殴られるにもそれなりの理由があるはずだ。今回の事件で、「梨園の御曹司」の“ご立派なお姿”は一変し、ご乱行の数々が出るわ出るわ、実際はどうしようもないドラ息子であったらしい。
　「一方的に殴られたという息子の言葉を信じています」と記者会見で語った父親の市川團十郎、こうした息子のご乱行を知らなかったのかどうか、とんだ大恥をかいたものである。また、血だらけで帰って来た海老蔵をみて、驚いた妻が１１０番通報をしたことを軽率だったと歌舞伎関係者が語ったとか。なぜ、１１０番だったのか？　普通は１１９番だろうし、先に父親に相談していればこうまで大ごとにならなかったかもしれないのに、とは私も思った。週刊誌の見出しに、『妻・麻央は梨園の妻失格！』というのがあったが、「梨園の妻」に限らず、有名人の奥さんは、どんな場合でも夫の立場を考えて行動しなければならないということであろう。

　それにしても、自分たちが作り上げた偶像を、一瞬にして叩き壊すのだから、マスコミは本当に怖い。また、海老蔵に不利なことが明らかになるに連れ、歌舞伎ファンらの見方も変わりつつあるというが、マスコミ報道によって、「自業自得」と簡単に切り捨てるファンの気持ちも怖い。私などファンではないが、テレビで見る普段の海老蔵からは高慢ちきな若造という姿が見えて、あまりいい印象は持っていなかったから、事件を知ったときから「自業自得」だと思っていた。

　そもそも歌舞伎とは、安土桃山時代、出雲大社の巫女となった阿国が出雲大社勧進のため諸国を巡回したことから始まる。その阿国のかぶき踊りが現在に至る歌舞伎の起源と言われているが、昔は歌舞伎役者の身分は低く、「」といわれていたのである。阿国が京都の四条河原でかぶき踊りを始めたとこから「」ともいわれ、役者は、芸能を披露して物を乞うことから「乞食」と侮蔑されたのである。そういう低い地位から、日本の伝統芸能として無形文化財に指定されるまでの何百年もの歴史を思えば、己の地位がいかに重いものかが分かるであろうに。
　あの朝青龍と同じよう、実力があるからと天狗になった本人が一番アホだが、「梨園の御曹司」と誉めそやし、甘やかし放題にした周囲も悪い。今回の事件がどういう形で収拾されるのか分からないが、今回の騒動で海老蔵はすでに３つのテレビＣＭが当面、放送中止というダメージを受けている。これからどうやって名誉挽回するのか、見ものである