ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

青い太陽

2015-01-12 21:15:20 | 本のレビュー
この古色蒼然(?)とした表紙、見て下さい。実は、三十年も前、当時中学一年生だった私が、愛読した青春小説なのであります。ふと思い立って、書斎の二階にず~っとしまったきりになっていた、この「青い太陽」をひっぱりだして正月の間、読んでいたのでありますが、懐かしかった…。 「青い太陽」--タイトルも時代を感じさせるのですが、物語の舞台となっているのは、何と1966年! わたしもまだ生まれていない頃です。

東京オリンピックがあった二年後を舞台に、水泳に青春をかける女子高生和世(この表紙のストレートヘアの女の子)を主人公に同じく水泳のエース三輪光との恋愛や青春群像を描いたものなのですが、今の時代に比べて「純粋」という言葉がぴったり。わたし自身は運痴(死語)で、スポーツとは縁のない青春時代を過ごしたのですが、この小説にすっかり魅せられて、似たような設定の小説を書いて遊んでいたことも…。地理の授業で配られる地図帳を片手に、「鈴蘭台」といった地名を探し出して、必死に小説の舞台作りをしていた中学生の姿を思い浮かべると、自分ながら微笑ましい気もしますね。

そして、描かれた1960年代後半の東京が、不思議に懐かしいのです。庄司薫の「赤ずきんちゃん 気をつけて」とか「白鳥の歌なんか聞こえない」といったかつての青春小説も当時を描いたものですが、この頃の東京はずいぶんのんびりとしていて、若者たちの生態もテンポがゆっくりしているような感じ。出てくるケーキやお菓子もチョコレートケーキやレモンパイ、といったもので、今みたいなきらびやかな宝石細工みたいな瀟洒なものではないし。 でも、とても惹きつけられる空気感があって、「わたし、ひょっとしたらこの時代の東京に青春を送るべきだったのでは?」と思ってしまうほど。 以前、人と映画の話をしていて、「ロミー・シュナイダーとかジェームス・ディーンが好き」と言うと「あなた、戦後に生まれりゃよかったのにね」と言われたこともありました。わたしって、生まれてくる時代を間違えたのかも(そんな大げさなものか?)

主人公和世は、メキシコオリンピックを目指して泳ぎ続けるのでありますが、代々木にある五輪プールに東京五輪の金メダリストたちの名前を刻んだ、金色のプレートがあるということもこの小説を読んではじめて知りました。千駄ヶ谷駅、代々木競技場…「青い太陽」に出てくる地名は、のちに東京で暮らすことになった時も、あまり縁のない場所ながら懐かしい響きを持って感じられたもの。 皆さんにも、こうした忘れられない本ってありますか?

P.S この本が発行されたのは、「コバルト文庫」から。当時は、ティーンエイジャー向けの小説をたくさん出していたところですが、今もあるのでしょうか? 



新年

2015-01-12 20:53:51 | ある日の日記
遅ればせながら、初詣に行ってきた。遅過ぎる…もちろん、わたしも正月三が日のうちに行きたいのだが、車がすご~く混んでいて、参るだけで一日仕事という大変さなのだ。

そんな訳で、人が少なくなった頃を見すまして、ささっと参ることに決めているのだけど、上の写真がやっとの思いでゲットした破魔矢であります。そこまでして行かなくても--と自分ながら思ってしまうのだが、神社に行かないと新年が来たような気がしない。 石段を登り、掃き清められた境内に参拝して、すがすがしい朝日を浴びること--これあってこそ、日本人というものだわ――まあ、信心というより情緒的な気持ちよさで行っているというのが、本当ですけど。

いつも行っているのは、吉備津神社。いうまでもなく、古代吉備の国を連想させる古式ゆかしい本殿と、松の木がずらっと続く参道がどこか海辺の松原を連想させる社であります。そして、ここで有名なのが、「吉備津の釜」。上田秋成の「雨月物語」にも恐ろしい物語として出てくる、この釜…祈祷してもらったら、実物にお目にかかることができるのだろうけれど、ちょっと勇気がいるかも。