この古色蒼然(?)とした表紙、見て下さい。実は、三十年も前、当時中学一年生だった私が、愛読した青春小説なのであります。ふと思い立って、書斎の二階にず~っとしまったきりになっていた、この「青い太陽」をひっぱりだして正月の間、読んでいたのでありますが、懐かしかった…。 「青い太陽」--タイトルも時代を感じさせるのですが、物語の舞台となっているのは、何と1966年! わたしもまだ生まれていない頃です。
東京オリンピックがあった二年後を舞台に、水泳に青春をかける女子高生和世(この表紙のストレートヘアの女の子)を主人公に同じく水泳のエース三輪光との恋愛や青春群像を描いたものなのですが、今の時代に比べて「純粋」という言葉がぴったり。わたし自身は運痴(死語)で、スポーツとは縁のない青春時代を過ごしたのですが、この小説にすっかり魅せられて、似たような設定の小説を書いて遊んでいたことも…。地理の授業で配られる地図帳を片手に、「鈴蘭台」といった地名を探し出して、必死に小説の舞台作りをしていた中学生の姿を思い浮かべると、自分ながら微笑ましい気もしますね。
そして、描かれた1960年代後半の東京が、不思議に懐かしいのです。庄司薫の「赤ずきんちゃん 気をつけて」とか「白鳥の歌なんか聞こえない」といったかつての青春小説も当時を描いたものですが、この頃の東京はずいぶんのんびりとしていて、若者たちの生態もテンポがゆっくりしているような感じ。出てくるケーキやお菓子もチョコレートケーキやレモンパイ、といったもので、今みたいなきらびやかな宝石細工みたいな瀟洒なものではないし。 でも、とても惹きつけられる空気感があって、「わたし、ひょっとしたらこの時代の東京に青春を送るべきだったのでは?」と思ってしまうほど。 以前、人と映画の話をしていて、「ロミー・シュナイダーとかジェームス・ディーンが好き」と言うと「あなた、戦後に生まれりゃよかったのにね」と言われたこともありました。わたしって、生まれてくる時代を間違えたのかも(そんな大げさなものか?)
主人公和世は、メキシコオリンピックを目指して泳ぎ続けるのでありますが、代々木にある五輪プールに東京五輪の金メダリストたちの名前を刻んだ、金色のプレートがあるということもこの小説を読んではじめて知りました。千駄ヶ谷駅、代々木競技場…「青い太陽」に出てくる地名は、のちに東京で暮らすことになった時も、あまり縁のない場所ながら懐かしい響きを持って感じられたもの。 皆さんにも、こうした忘れられない本ってありますか?
P.S この本が発行されたのは、「コバルト文庫」から。当時は、ティーンエイジャー向けの小説をたくさん出していたところですが、今もあるのでしょうか?
東京オリンピックがあった二年後を舞台に、水泳に青春をかける女子高生和世(この表紙のストレートヘアの女の子)を主人公に同じく水泳のエース三輪光との恋愛や青春群像を描いたものなのですが、今の時代に比べて「純粋」という言葉がぴったり。わたし自身は運痴(死語)で、スポーツとは縁のない青春時代を過ごしたのですが、この小説にすっかり魅せられて、似たような設定の小説を書いて遊んでいたことも…。地理の授業で配られる地図帳を片手に、「鈴蘭台」といった地名を探し出して、必死に小説の舞台作りをしていた中学生の姿を思い浮かべると、自分ながら微笑ましい気もしますね。
そして、描かれた1960年代後半の東京が、不思議に懐かしいのです。庄司薫の「赤ずきんちゃん 気をつけて」とか「白鳥の歌なんか聞こえない」といったかつての青春小説も当時を描いたものですが、この頃の東京はずいぶんのんびりとしていて、若者たちの生態もテンポがゆっくりしているような感じ。出てくるケーキやお菓子もチョコレートケーキやレモンパイ、といったもので、今みたいなきらびやかな宝石細工みたいな瀟洒なものではないし。 でも、とても惹きつけられる空気感があって、「わたし、ひょっとしたらこの時代の東京に青春を送るべきだったのでは?」と思ってしまうほど。 以前、人と映画の話をしていて、「ロミー・シュナイダーとかジェームス・ディーンが好き」と言うと「あなた、戦後に生まれりゃよかったのにね」と言われたこともありました。わたしって、生まれてくる時代を間違えたのかも(そんな大げさなものか?)
主人公和世は、メキシコオリンピックを目指して泳ぎ続けるのでありますが、代々木にある五輪プールに東京五輪の金メダリストたちの名前を刻んだ、金色のプレートがあるということもこの小説を読んではじめて知りました。千駄ヶ谷駅、代々木競技場…「青い太陽」に出てくる地名は、のちに東京で暮らすことになった時も、あまり縁のない場所ながら懐かしい響きを持って感じられたもの。 皆さんにも、こうした忘れられない本ってありますか?
P.S この本が発行されたのは、「コバルト文庫」から。当時は、ティーンエイジャー向けの小説をたくさん出していたところですが、今もあるのでしょうか?