私には、昔から一つのイメージがあって、それは海辺で余生を過ごしたいということ。もともと島が好きで、そこに一人住む海洋学者を描いた小説をいつか書いてみたいという夢とも関連するのだろうけれど、イメージというにはやや具体的な願望も混じっている。
例えていえば、鎌倉の海岸といった場所で、真っ白いコテージを思わせる家に住みたい。そうして、そこの広くもない庭で植物や花を育てたいのである。 海に面した大きな一枚ガラスの窓からは、青や群青、マリンブルーといった様々な色に移り変わる海を見ることができ、雄大な日没も嵐の風景も見ることができるだろう。 そこで、何をしなければならないということもなく、海を見ながら紅茶を飲んだり、ハーブや薔薇を育てるといった日々は、理想的な老境にも思えるのだが、いかがなものだろう?
海辺の家は、それ自体が一艘の船のようであるべきだ。 外壁も室内も真っ白なペンキで塗られ、船室灯を思わせる照明が、夜ともなると灯台のように鮮やかに灯る……そして、犬がそばにいればこれ以上の望みはない、と言っていいのだが、やっぱり現実離れしてるかしら?