ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

サンローラン

2015-01-16 10:12:43 | テレビ番組
この間、TVのプレミアム特集で「イヴ・サンローラン」を観る。もともとサンローランが好きなのだが、没後映像やドキュメントで様々に回顧されているようで、とてもうれしい。

シャネルもまぎれもなく永遠のモードだけれど、やはり20世紀前半まで存在したドゥミモンドの世界の香りがするようである。洗練された社交界のものでありながら、どこか水商売っぽさもあるというような。ディオールは、大ブルジョワの出身であったから、作る洋服も上品で、保守的な傾向が強い。
そこへ行くと、サンローランは、モンドリアンの絵画をワンピースに取り入れ、サファリルックを生み出し、女性の服に初めて、ポケットをつけるなど、何とも革新的! モダンで若々しいのである。

一時代を作り、世界じゅうでコピーされたというモンドリアンルック。わたしも、若かったら、着てみたいもの!サンローランの服には、モロッコの大地からインスピレーションを受けた、鮮やかな色が氾濫していて、マゼンタ色、カナリア色、深い海の輝きを思わせるブルー…と、色彩の美しさにうっとりしてしまう。 デコルテのラインの線、スカートのドレープの襞、腰で結ばれたサシェにロープ…そんな計算されつくしたデザインがあってこそ、モードは芸術に昇華されるのだから。

そうして、サンローランの人生と対比されながら、映し出される服を観ていて、気付いたのだが本当に完璧な服には、「流行遅れ」などというものはないのである。よく昔の映像やドラマを観ていて「ああ、これは昔のものね。お化粧も服の形も、今と違ってちょっと滑稽(やぼったい)」という感想を抱くことがあるけれど、至高の芸術品と化した服は、流行も時間も超えるのである。 サンローランは「真に美しいものの前では、人間の存在は意味を失う」というような言葉を残したといわれるが、そこまで行かなくても「美の前では、言葉を失う」くらいはいえそう。

最後に興味深い事実が語られていた。あれほど、色々な民族の服のテクチュアを融合させた服を想像したサンローランは、旅をほとんどしなかったそう。ひょっとしたら、偉大なデザイナーは、デッサンに筆を走らせる時、紙上の旅を心ゆくまで楽しんでいたのかもしれない
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