ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

男と女

2020-07-03 08:42:12 | 映画のレビュー

♯ダーバダバタバタ……この懐かしいメロディ。フランシス・レイの作曲ですが、この曲をはじめ、あらゆるものがスタイリッシュでお洒落。そして、後々にいつまでも余韻の残る名画――それが、「男と女」

私はクロード・ルルーシュ監督の「愛と哀しみのボレロ」とこの「男と女」は、フランス映画の金字塔だと考えています。観る人の心をわしづかみにし、まるで映像という詩を味わったかのように格調高い。

主演のアヌーク・エーメもジャン・ルイ・トランティニヤンもはまり役ですが、ことにエーメの着こなすファッションが素敵!

高級保養地ドーヴイルの寄宿学校に子供を預けるだけあって、シャネルのバッグを粋に肩にかけたり、ムートンのコートをはおる姿も、何とも言えずエレガントなのであります。そして、くっきりした美貌。

スタントマンの夫に死に別れた彼女は、子供を同じドーヴィルの学校に預けている、カーレーサーの男(これが、トランティニャン)と出会い、恋が始まるという展開なのですが、何とも粋なのですねえ。モノクロとセピア色の映像が、交互に出てきて、それは二人の心の色を映し出すかのような繊細さを持って、観客の胸に迫ってきます。  

トランティニャンは、自動車レーサーという華やかな職業ですが、彼も妻を自殺で失うという悲劇に遭っています。その彼が同じく、心に傷を抱えるエーメと出会った時、そこに何も障壁はないはずなのですが、そうはいかないところが、大人のムツカシサというか、心模様の複雑さ。これなど、スパーッと現状打開の方向に向かってゆくアメリカ映画にはない、深みや面白さかもしれません。

「あなたを愛しています」――エーメから届けられた電報に、千キロ以上もの距離を車で飛ばしてやって来るトランティニヤン。普通なら、ここでハッピーエンドのはずなのですが、心がすれ違い、最後に再び、二人は互いを見出す。

列車のプラットフォームで互いに微笑み交わす二人のロングショットで、この映画は終わるのですが、彼らはこの先どうなるのかしら?

そう思っていたら、何と二十年先、五十何年か先の続編までできあがっているのだそう。私としては、この思わせぶりなラストシーンで、十分じゃないかと思うのですが。

     

これが、ラストで微笑みあう二人。

P.S ふと気づいたのですが、アヌーク・エーメは「愛と哀しみのボレロ」で印象的だった女優さんによく似ていますね。役柄の名前はエヴリーヌと言ったと思うのですが、ナチに協力した後自殺した女性の娘として、印象的な登場をした女の子です。バレエスクールの掃除婦として、ダンサーたちの踊る姿をうっとり見つめていたり、ジョルジュ・ドンの「ボレロ」を見物する美しい横顔は、ハッとするほどエーメに似ています。

う~ん、こういったタイプが、ルルーシュ監督の理想のミューズだったのかなあ。

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