ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

陽のあたる場所

2020-07-01 07:17:54 | 映画のレビュー

映画「陽のあたる場所」を観ました。これは、もう何回目になるかわからないほど、何度も観た映画。1949年に制作が始まったというのですから、もう70年以上も昔の作品ですね。

上の写真は、主演のモンゴメリー・クリフトと彼と恋に陥る社交界の令嬢役を演じるエリザベス・テイラー。二人とも、本当に美しいです!

内容は――というと、それこそ、貧しい青年が「陽のあたる場所」を目指す物語。モンティー(モンゴメリリー・クリフトの愛称)演じるジョージ・イートマンは母と二人でく暮らしてきた貧しい青年。それが、東部で水着工場を営む伯父のところで働き始めるというのが、発端です。

革ジャンを着て、貧し気であるながら、極めてハンサムな青年ジョージ。彼は、伯父の工場でも真面目に働き始めるのですが、伯父はまるで甥の存在を忘れたかのよう。ジョージは、同じ工場に勤める女工アリスと急速に仲を深めていきます。

ところが、気まぐれから彼を呼び出した伯父の家であった、社交界の花のアンジェラ。これをリズが演じているのですが、登場したとたん、モノクロームの映像が光り輝きはじめたかのような、輝くばかりの美しさ。私見ですが、この「陽のあたる場所」こそが、モンティーのみならず、リズにとって、最大の代表作なのでは?

アンジェラにすっかり、心を奪われるジョージですが、あちらは天上に咲く花のような手の届かない存在。そう思い、心を秘めるジョージですが、肝心のアンジェラの方が、彼にすっかり興味を持ってしまったから大変。

アンジェラは彼を自分の湖畔の別荘に誘い、娘のあまりの熱中ぶりに、彼女の両親も二人の間を黙認するまでになります。こうなれば黙っていられないのが、工場での恋人アリス。妊娠しても堕胎することはできず、ジョージに執拗に結婚を迫るまでになるのですね。

そして、彼が富豪の令嬢に見初められたことを知ると「あなたと私のことをぶちまけてやる」と逆上するのですが、ジョージが彼女をなだめるために提案したのが、湖でのボート乗り。

           

実は、この映画の胆はここにあるのでは? と思わせられるほど、湖上でのシーンは凄みがあります。黙ってオールを漕ぐジョージは無言のままで、その表情に、どこか張りつめたものが漂っている。対するアリスとは言えば、彼との愛の復活を願い、これからの家庭生活をひたむきに語ってみせる――何とも、残酷なシーンですよね。私なら、「こんな所で、切々と言われたら、困るなあ」とジョージに同情してしまうのですけど。

頭の中では彼女の死を願っているジョージと、彼に必死でしがみついているアリスの姿。

モノクロームの陰影が、湖の水が光り、上の木々が暗い木立を作っている様子をまざまざと写し出し、本当に危険で、肌寒くなるような秋の湖の雰囲気を醸し出しています。

話し合いの途中、突然、アリスが逆上してボートの上に立ち会あがったため、ボートは転覆し、ジョージ達は水の中に投げ出される。アリスは死に、ジョージは生き残り、最愛の女性アンジェラを手に入れられるかと思うのですが――。

   

貧しい青年が、出世し、金持ちの女性を手に入れるために、殺人を犯す――これは、ずっと昔の松本清張の本などにも見られたテーマで、社会派的様相を帯びるはずのものなのですが、この「陽のあたる場所」はやはりロマンチック。

リズとモンティーという輝くばかりに美しいカップルが、主役を演じるせいもあるだろうけど、これはやっぱり恋愛映画ですね。この甘さがあるからこそ、かくも長い歳月の間、「名画」として生き残ってきたはず!

モンゴメリー・クリフトは、美貌・演技力に恵まれながら、どこか線が細く破滅的な人生を終わった人。エリザベス・テイラーとは仲が良く、リズは、最後まで彼の面倒を見たそうです。

モンティーは、自分が演じる役を選ぶのに気難しく、「エデンの東」や「波止場」の主役のオファーが回って来た時も蹴ったという逸話がありますが、何だかジェームス・ディーンではなく、モンティーの「エデンの東」のキャルも見て見たかったような気がしてなりません。

 

コメント    この記事についてブログを書く
« ホームステイ | トップ | 男と女 »

コメントを投稿

映画のレビュー」カテゴリの最新記事