「翼よ あれがパリの灯だ」を観る。1957年のビリー・ワイルダー監督作。主演は、いうまでもなくジェームス・スチュアワート・
実は、この映画は観たいと思っていながら、今まで一度も観ていません。映画ファンの間で、世評高い名作なのに。
題名からしてわかると思いますが、実はこれはじめてニューヨーク―パリ間の大西洋飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの伝記映画であります。
1926年に、この快挙を成し遂げた時、当時リンドバーグ25歳。若かったんだなあ……この大成功の後、リンドバーグが空の英雄として、今なお人々の記憶に刻まれているのは御存じの通り。
このリンドバーグを演ずるのは、ジェームス・スチュワート。若さの盛りにいたはずのリンドバーグと違って、どうみても40過ぎのややくたびれたおじさんにしか見えないのですが、そこはご愛敬。
そして、ハリウッド娯楽作であるにもかかわらず、史上初の命を顧みぬ冒険に旅立った主人公の心情や、臨場感が圧倒的なまでに伝わってくるのです。
当時は、飛行機の創世期だっただけあって、空への情熱に憑かれたパイロットは後をたたなかったはず。その余興が過ぎて、飛行ショーで、サーカスも真っ青という危険な曲芸乗りをする職業も存在していたと聞きます。
若き日のリンドバーグもそんなことをしたり、郵便飛行士として働いていたんですね。
その頃、ニューヨークからパリまでノンストップで飛び続けて、二日間はかかる――そんな過酷な飛行に、たった一人、飛び立っていったわけですが、この愛機「セントルイススピリット号」は、本当に、狭いのです。経費を削減するために、前方に窓さえなく、潜望鏡でのぞくのと、横の窓を開くことで、ようやく空の様子がつかめるという程度。しかし、こんな狭い空間に、長時間いて、リンドバーグは、エコノミー症候群になどならなかったのかな? トイレは? 食事は?
これだけで、リンドバーグという人の強靭な精神力、死を恐れぬ冒険心がわかろうというもの。
そして、これが何も見えぬ海上を飛び続けて、ようやくたどり着いたパリの夜景――ああ、綺麗だなあ。
こんな世紀の冒険とは、全然違うお気楽な旅行客の気分でしたが、私も飛行機に乗って、着陸が間近になった時、街の夜景が見えてきた時、とても感動してしまいます。この世に、こんな美しいものがあったのか――と。
「翼よ、あれがパリの灯だ」とこの瞬間、リンドバーグは叫んだと言うのですが、この名セリフ。本当に、彼が言ったかどうかはともかくとして、何ともしれん詩的な、人の心にいつまでも残る言葉ですね。
この映画には、素晴らしく感動はしたのですが、リンドバーグという人物は「英雄」という言葉ではひとくくりに出来ない影の部分を持っていただろうな、と私は今まで思っていました。
まず、まだ乳児だった愛児の誘拐殺人事件。この悲劇に、人々はリンドバーグ夫妻に深く同情しましたが、あれも謎の多い事件でした。犯人はつかまりましたが……。
そして、第二次大戦中の、ナチス・ドイツへの友好的な発言。アメリカを参戦させまいとしたのはわかるとしても、ドイツに親近感を抱いたというのが理解できません。
それでも、実は私は、リンドバーグ夫人のアン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈り物」という本が大好きでした。深い教養を感じさせる筆致。そして、北の島のイメージ。 リンドバーグ夫人が、どこかの島にしばらく閉じこもり、自分の家庭生活や、アメリカの文明社会について考察を重ねる、という内容だったと思うのですが、文章が詩的で澄んでいて、多くの人を魅了したのもなるほどと思わせられるものでした。
また、「海からの贈り物」を再読してみようかな。
ノエルさんは「男と女」についても、載せていらっしゃいましたが、DVDは買われるのですか?レンタルなさるのですか?「男と女」は、観たことはないのですが、ドーヴィルのオテルノルマンディーは、憧れです。一度行ってみたい街です。スノッブな街かもしれないですが。ドーヴィル、ルアーブル、カレー、サンマロ、カーンそしてエトルタ、ルーアン、行ってみたいです。
ノエルさんは、ガーデニング、カリグラフィー、少女漫画、ミステリー、シネマ、児童文学と引き出しが、多種多様で深いですね。いつも、感心しております。
早く、梅雨が明ければ良いのにな――。
DVDですが、映画好きの方から譲ってもらったものを観ています。ルーさんの方は、どうされていますか?
今、コロナで映画館には行きにくいですよね。
「海からの贈り物」ですが、アン・モロウ・リンドバーグは、サン・テグジュペリとも親交があり(彼女自身も飛行家でしたから)、彼に対して、尊敬と愛情を抱いていたそうです(サンテグジュペリの伝記に書いてあったのですが、何だかロマンチック)。
ドーヴイル、カーン、そしてエトルタ……ルーさんは、パリといった定番の都会よりも、北フランスの街がお好きなのでしょうね。
私は、けっこう食いしん坊のせいか、ブルターニュが何だか憧れの地です。クッキーのガレットが大好きだし、クレープも美味しそう!
そして、少し前TVでブルターニュの海にぽっかり浮かんでいる、その名も「地獄灯台」がくっきり記憶に焼き付いています。
ここは、波が荒れ狂うと、海に佇む灯台をすっぽり飲みこんでしまうような、恐ろしい場所。しかし、そんなところにも、以前は灯台守がいて、寝泊りしていたというのだから、凄い!
大波が灯台を襲いかかった瞬間、灯台の入り口を開けた灯台守の姿をとらえた写真があって、それは息を飲むほどの迫真力でした。
そして、もちろん、アルセーヌ・ルパンが奇岩城を築いていた絵エトルタの針はぜひ行きたいなあ!と思っています。
ここも、ルパンゆかりの場所として、有名な観光地になっているようですけれど。