歯周病は、いまだに働き盛りの方の歯を失う最大の原因です。
世界的に見ても、歯周病は人類に最も蔓延している感染症、と分かって来ています。
そして、残念ながら、日本は先進国の中でも、歯周病がいまだにかなり進行していて、何故日本のような進んだ国が?と言われてしまっているのです。
この患者さんも、まさにそのタイプでした。
初診時が今から9年以上前です。
歯周病の自覚があり、歯医者に通っていたけれど治らない、このままでは総義歯になってしまうんじゃないか、と心配で来られた方です。
実際に、レントゲン写真で見ると、所々骨が溶けてなくなっている凸凹な状態で、歯周病がかなり進行している重症歯周病、と診断されました。
そして、このレントゲン写真がごく最近のモノです。
インプラントが6本入っていて、天然歯の周囲の骨の状態も安定していて、どこも黒くなっていません。
それどころか、骨が再生してなだらかになっています。
初診から9年以上も経っていますので、骨の状態も落ち着いていて、歯周病はほぼ制圧できた、と判断して良いと思います。
歯周病を治すことができた最大の理由は、患者さんが本気で取り組んで下さったこと、です。
そして、我々が頑張って治そうと色々と手を尽くしたことでしょう。
歯周病を治すには、必ずプラークコントロール歯垢を取り、初期の炎症を綺麗に取る、と言う初期治療が何よりも重要です。
この患者さんでも、徹底的に初期治療を行い、プラークを取り切ることをしました。
それから、どうしても残せないプラプラな歯を抜いて同時にインプラントを植立しました。
と同時に、インプラントを即時荷重して仮歯を装着し、それを固定源にして歯周病の歯の揺れを止めると言うことをしました。
9年以上前に抜歯即時インプラントを歯周病の歯を支えるために使って、歯周組織再生治療を行ったのです。
当時、いや今でもでしょうが、即時荷重インプラントを歯周病の歯を支える歯周組織再生治療の固定源にする、と言う発想はなかった筈です。
しかし、この患者さんをお救いする為に、それしか方法がない、と私は考えて行いました。
今、こうして成功を納めているので、ご報告出来ますが、その当時ではまず認められない治療方法だったかと思います。
歯周病の歯を救う為には、歯周病の治療を当たり前ですがしなければなりません。
ところが、歯周病の歯は揺れているので、歯周組織再生治療するのがとても難しいのです。
分かりやすく例えると、骨折の治療に似ていると思います。
骨折を治すには、しっかりと固定して動かさないようにしないと治るのが遅れて大変です。
それと同じで、歯周病の歯を治す、骨とか歯茎を再生させる為には、歯がグラグラに揺れていると骨もできないし、歯茎も治らないのです。
なので、揺れているのを何とかする為に、歯を削って繋いで固定する、と言う方法が従来からの方法でした。
でも、歯は削ってしまったら、今度は歯髄を取らなければならなくなったり、被せモノにして治して、になってしまうのです。
そうなると、将来的に虫歯とかが進行することになって、歯を失うことになってしまいかねません。
結局、歯を残す、と言う最大の目的を果たすことが難しくなってしまうのです。
そこで、歯は削りたくない、でも歯周病を治したい、その為には固定源が欲しい、ならインプラントが使えればとても良いのじゃないか、と私は考えたのです。
この発想は、従来の歯周病インプラント治療の全く逆の発想なんです。
それまでの歯周病インプラント治療の治し方は、歯周病を徹底的に治して、それからインプラントが定説だったのです。
それを、私は全く反対にしました。
どうしても残せない歯周病で抜かないといけない歯を抜いて、そこに抜歯即時インプラントをして、即時荷重で仮歯を付けて助けたい歯の歯周再生治療の固定源にする、と言う考え方です。
この発想は、私が17年前2000年の時から、即時荷重インプラントを行って来たからこそ得られたモノ、と考えています。
即時荷重したインプラントが、何ごともなく治り、しっかりとしている状態を見続けて、これだけしっかりしてるなら歯周病の固定に使えるんじゃないだろうか、と思い付いたのが始めです。
当時はとんでもない考えだ、と言われてしまいましたが、こうして成功している患者さんの実例をご報告できるようになりました。
この新しい発想の歯周病治療方法は、今までの歯周病治療方法に比べて、抜歯即時インプラントで歯を揺れないように、動かないように固定できますので、圧倒的に早く機能させることが可能になります。
天然の歯を削ったりして繋がないので、歯髄も守られ、虫歯のリスクも減ります。
そして何よりも、歯周組織再生が歯が揺れない為に、とてもしっかりと確実に得ることができる、のです。
但し、抜歯即時荷重インプラントと歯周再生外科手術を同時にとか、直ぐにとかで行いますので、手術の難易度は相当に上がります。
かなりのベテラン、実力者でないと難しいでしょう。
全く新しい治療方法なので、試行錯誤でその時その時で必死で考えて対応しなければならない、と言う難しさもある、と思います。
しかし、それでも尚、歯周病とインプラント、即時荷重インプラントで歯周病の歯を救う、と言う治療方法ができるのだ、と言うことは明言したいのです。
本当に患者さんを救う為、歯を歯周病から救う為。
これからも、私はエビデンスに捉われることなく、患者さんを救う為に新しい治療方法を創意工夫して頑張って行きたい、と思っています。
将来、私の主張が晴れて認められ、患者さんのお役に立つ治療となることを願いながら。
私は頑張ります!