複数インプラント治療を無事終了して、いざ上部のセラミック冠を作製する訳ですが、インプラントにはインプラントのやり方があり、天然歯の治療とはルールが違います。
まず、インプラントは殆ど動かない、と言うのが天然歯とは全く違います。
天然歯の治療で複数歯繋いだりする場合には、それぞれの歯を1本ずつ分割して作業して、模型上で綺麗に繋げて治す訳ですが、インプラントでは全く動かないので、1本ずつ分割してそれを模型上で繋げても、実のインプラントの植立状態とは微妙にずれが生じていて口腔内には入らないのです。
ここが技工士さん方には中々分かったいただけない。
ついつい天然歯の治療と同様に1本ずつ分割して丁寧に仕上げて完成させてしまうのです。
天然歯で歯根膜と言うクッションになるものがあり、そこで模型との微妙なずれを補正してくれるのですが、インプラントでは全く動かないので、本当に口腔内のインプラントの状況を再現しないと入らない、となるのです。
インプラントの技工が天然歯よりも何倍も難しい、と言う言われる所以です。
しかし、インプラントにはインプラントのやり方があると言うだけで、天然歯よりも何倍も難しい、と言うのには違うと私は思います。
インプラントの上部冠を造る時には、分割しない、模型のままに作製する、これで入ります。
それじゃ1本ずつの丁寧な仕上げはどうするんだよ、と言われるでしょうが、それに対してはもう1つ型取りをして模型を作製して、それを1本ずつ作業用として使えば解決します。
たったこれだけの事です。
だから、私は、技工士さんに頼む時には、予備も含めて3個の模型をお渡ししています。
1つはそのままの状態で造るもの、1つは1本ずつに分割して丁寧に仕上げるもの、1つは予備であり、仕上げている途中でのチェックとしても使えるもので、そうして相互チェック出来るように入るようにして仕上げてくれていると、必ず患者さんの腔内でピタッと入るからです。
模型1つ1つが違うんだから入る訳ない、と言われる方も多いですが、模型の精度の違いではないでしょうか?
私自身は寸分違わない模型を作って渡しているので、チャンと互換性があり、入ります。
インプラントは動かないからそのまま再現して、そのまま作製する、これがインプラントの上部冠の基本です。
そこが分かっていて、工夫していただければ、インプラントの補綴も上手になるでしょう。
相互に互換性があるくらいのレベルの高い模型を複数作製して、技工士さんに渡し、分割しない模型で最終的にスパッと入るように仕上げる。
これがコツです。
知っているだけでインプラントの技工が何倍も楽になります。
歯科医側が、寸分違わない模型を何個でも作れること、これがポイントです。