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インプラント治療と寿命、明日死ぬとしても今日お腹は空くのです。

2020年10月28日 | Weblog
インプラント治療と寿命を結び付ける考え方が一般的な世の中ですが、私は敢えてその考え方は間違っている、と断言します。

インプラント始めとする歯科治療は、勿論長く持つこと、治療後の経過の良い状態が長続きすることを良いことだ、と考える考え方は正しいと思います。

しかし、金銭的に高額治療だから長く使わなかった、残念ながら癌とかの病気で倒れられたから、その治療をした意味がなかったと言うのは、全然違うと思います。

ある患者さんが突然癌を発病して、治療が間に合わなくて亡くなられると言うことは、今でもなお置きていることです。

それは運命と呼ぶしかない、悲しいけれどどうしようもないことです。

しかし、その時にその患者さんがインプラント治療始めとする歯科治療をして、治療が終了して(もしくは仮歯ででも)快適に噛めるようになって、歯がない不自由さ、入れ歯の気持ち悪さから開放されて、最後の人生の時を楽しめたとしたら、それはとても素晴らしい価値があることではないのですか?と言いたいのです。

人生最後の時間で、闘病生活になって、食べたいものをも食べられなくなって、そのまま死なせるような終わり方をしたい、させたいのですか?と真摯に患者さんとそのご家族に問いたいのです。

もっとハッキリ書きます。

患者さんが死んでしまってから、葬式だ、棺桶だ、位牌だにお金掛けて、亡くなった方の人生が充実するんでしょうか?

同じだけお金を掛けるなら、生きているうちに使って、人生を充実させることに使ったほうが、患者さんのためになりませんか?

あなたのお婆ちゃん、お爺ちゃんの余命が3年だから、もう食べられる機能回復にお金掛けるのって無駄なんですか?

最後の時を過ごしている時に、その患者さんはせめて最後に好きなものを食べて逝きたい、と思っていても口に出せないで我慢しているのかも知れません。

それを叶えてあげるインプラント治療、歯科治療って、お金の無駄ですか?

高額だから?

でも、人生最後の一食好きなものを食べさせてあげる、というのが叶うとしたら、その価値観って金額で図れるものなんですか?

もう一度ハッキリ書きますが、皆さん殆どの高齢者が最後の時にはゼリー食のようなものを与えられて死んで行くんです。

それが仕方がない、という方は仕方がないのでしょう?

しかし、最後の望みを叶えられる資産があって、人生充実させるために使わないで、あああの時にやっておけば良かった、という悔いを残して逝きたいのですか?

昔プレジデントで高齢者の方にアンケートを取ったら、後悔していることのトップが歯を大事にしなかったこと、と出てるんです。

皆さん、その時になって気が付くんです。

しかし、その時には身体が追い付かなくて、もう間に合わないんです。

だから、アンケートのような結果が出てるんです。

まだ若くて、元気で、身体がなんとかなってる時には分からないんです。

失礼ですが、学んでないんです。
 
幾らでも学ぼうと思えば学べるし、どうすべきなのか考える時間はあるのに、しないんです。

そして、身内の高齢者がインプラントとか自費の歯科治療して、癌に倒れるとか、衰えていって亡くなると、治療やった意味がなかった、というのは全然おかしい考え方だ、と思います。

私自身の事例で書くと、癌に侵されて余命3年と言われてしまったお爺ちゃんSさんがいました。

で、Sさんは、高齢者に良くある多発根面カリエスで歯がボロボロになって来ていました。

内科とかの先生が出していた薬とかの影響だと思っていますが、唾液の出が少なくなってものの1年でどんどん進行していったんです。

そして、歯がもうダメだ、という状態で、次をどうするのか?で悩まなければならなくなりました。

患者さんは余命3年。

投薬とか受けていて全身状態も当然悪い。

抜いて入れ歯、が順当な考え方なんでしょう。

しかし、歯医者は知っていますが、唾液のない方は入れ歯がとても大変なんです。

入れ歯が上手くいくには、唾液がないと駄目なんです。

そのことを、内科の先生始めとする医者は全く知ろうともしません。

勿論、一般人の方、患者さんのご家族の方だって知りません。

これらに関しては、ちゃんと広報しない歯科側に問題が大だ、とこれも明言しておきます。

そして、Sさんは実は奥歯にインプラントしていて、その治療経験者でした。

良く話し合いました。

何度も何度も。

その結果、その患者さんご自身の決断で「先生、俺インプラントやるよ」と決断されたんです。

多分、今でもインプラント業界、歯科業界、医科業界の偉い先生方から物凄く叱られる、と思います。

全身状態だって悪いんですから。

でも、私は患者さんの最後まで入れ歯なんかじゃなくて噛める状態、食べられる状態で死にたい、というご意思を最大限に受け止めて、抜歯即時荷重インプラントをしました。

そして、そういう方でしたから、即日に噛めるようにもしました。

そうです、本当の即時荷重、即時機能です。

そうして、その日からある程度使えるようになっていて、傷口が癒えた後は、勿論普通に食べたいモノを食べられていました。

実は、Sさんにはセラミックまでは行かないまま、プラスチックの仮歯の素材で、でもできるだけ綺麗に仕上げて、そのままで余生を生きていただきました。

3年と言う時間しか与えられてませんから、もうこれで良い、と話し合ってのことです。

そして、やはり残念ながら余命宣告通りになってしまい、私がSさんに告げられてから3年ちょっとの時間で天国に逝かれました。

多分、今の常識的な考え方からしたら、とんでもないことをしている奴だ、とお叱りを受けるでしょう。

でも、Sさんは本当に具合悪くされて入院され、そのまま亡くなられる1ヶ月前まで、ちゃんとメインテナンスに来て下さっていて、好きなものを好きなように食べられる、先生のお陰だよ、と喜んでおられました。

段々と痩せていかれてるのが本当に心配で、大丈夫ですか、と伺いながらお口の管理をさせていただきました。

それで、最後の時ちょっと具合が悪いから病院に行ってくるね、と電話があって、それが最期になりました。

このSさんの生き方がおかしんでしょうか?

どうせ死ぬのに高い金かけてインプラントするなんて・・・

私はそうは思いません。

何故なら、私は介護の現場を良く知っているからです。

殆どの方が、口腔崩壊をきたし、介護食、ゼリー食で締め括っているんです。

それも何年もです。

繰り返します、何年もです。

女性13年、男性8年の介護期間が平均値です。

その最後の数年、お口はとても残念な状態になってしまうんです。

この現実と比べた時に、Sさんの生き方の方が良いのではないでしょうか?

私はそれを強調したいのです。

Sさんは亡くなられる1ヶ月前まで好きなものを召し上がれる、と喜ばれていました。

その前から、通院してくださっていて、お体の方も介護とかにならないように予防できていて、ついに介護期間1ヶ月で旅立たれた。

歯を大事にされることは、介護期間を短くすることに劇的なまでの効果がある、と私は確信しています。

でも、殆どの方が間に合わないんです。

Sさんは、そっちの方では間に合ってくれたのに、癌は忍び寄って命を奪いましたが、それは運命としか言いようがない残念無念なことです。

それを高い金かけたんだから、その分元を取ると言う考えしかできなかったら、手遅れになって最期はゼリー食を何年もになります。

それで良いんですか?と私は問いたい。

人生を充実させることに、生きているうちにかけることのほうが、良い価値観ではないですか?

最期に生意気書きます。

患者さんの人生最後の最期まで付き合って、充実させてあげられるのって歯科医なんです。

失礼ですが、本音で書きますが、医者なんてその時には無力です。

看取っていくことしかできない。

歯科医は違います。

お口の機能を良くすることで、ああ生きてて良かった、と感じさせられるんです。

明日死ぬとしても、今日お腹は空くんです。

その価値観を正しく普及したくて、長々と書かせていただきました。

暇があったら、ちゃんと全文読んでみて下さい。

そして、コメントいただければ嬉しいです。