すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.29 いつか、また・・・

2009-10-04 21:10:38 | 小説・舞音ちゃんシリーズ
今日の少年倶楽部。

Jr.にQのコーナーで、ひっさびさに見たQ?

一瞬ううっ・・・となった私でしたが、すぐに立ち直りました。

理由は簡単。

ぐへへへへへへ 
アクンを振り返った時の、ヨディのあごは、あごが、あごがぁ!!!!

素敵だったのよぉ




で。

なんの脈絡もありませんが、
今夜は、出来たてほっやほやの、お話をひとつ。

よろしければ、続きからお読みくださいませ。




STORY.29 いつか、また・・・





とくん、とくん、とくん、とくん・・・

彼の左腕に抱かれて、彼の音を聴くのが好きだった。

優しく髪を撫でられて、
彼の息が、私にかかってくる瞬間を、いつも待ってた。

彼の体温と鼓動とに包まれたまま、
時間だけが、ゆっくりと私たちの上を流れていく。


これが終わりの時間だと、
決めたのは、どちらからだったろう。


さよなら、は言いたくなかった。

ありがとう、も、言えなかった。

どこかですれ違ったままの、言葉の数々を、
ひとつだけ取り戻すことができるなら、

私は、

何を・・・




「そろそろ、かな」

腕の時計を見て、彼が動く。

かすかな煙草の香りがゆらめく。

横顔の彼が、私を見降ろす。

射抜かれたように見つめられて、私は、また、言葉を失くす。

「今度は、いつ?」

と、何度も訊きたかった。

だけど、
訊けなかった。

ううん、
訊かなかった。

彼の言葉はわかってるから。

約束に縛られるのが、嫌いな人だから。

ああ、違うな。

縛られるのが嫌い、なんじゃない。
約束を果たせなくなることが、嫌いだったんだ。

待つのは、嫌いじゃない。
待たされるのも、嫌いじゃない。

だけど、
彼の中で、それは、重荷でしかなかったと、
今更ながらに、気づくなんて。

「なんて顔してんねん」

そう言われるのがイヤで、
私は、薄いケットにもぐりこんで、背を向けた。

無言の彼が、
ケットの上から私の肩に、手を置いた。

撫でるでもなく、ただ、置かれた手のひらの重みが、
私を覆い尽くしていく。

これだけで、
彼の言葉を思い図るのは、
今の私には、
苦しいだけ、哀しいだけ、せつないだけ。




不意に軽くなった身体。

バスルームから、シャワーの音。

上気した身体のほてりを鎮めているのか、
あるいは、
冷めきった身体を芯まで温めようとしているのか、

いつもより長い時間、激しい水音が、散った。

ケットの中でこもった声は、
水音の響きにまぎれて、彼にまでは、届くまい。

身体を丸めて、
口元押さえて、
必死に、絞り出す悲しみと後悔。

消えるものなら、
消せるなら、

彼を愛した記憶さえも、
私の中から絞り出してしまいたい。




身支度を整える音が、聞こえる。

乾いた衣ずれの音、
ベルトの小さな金属音、
わずかな咳払い、
バッグをさぐる物音、

それだけで、
彼の動きも表情も、思い描いてしまい、

また、愛しい記憶が、積み重なった。





「なあ、顔、見せて」

俺は、彼女に声をかけた。

水色のケットの下で、
彼女の身体が、びくん、と震えるのがわかった。


どこで間違うたんやろ。


そう、思わんことはない。

一度は好きになった女やから。

精一杯、愛そうとした女やから。

初めて、
傍におってほしいと思った、
いてやりたいと思った女やったから。


どこで、すれ違ってしまったんやろ。


二人でいると、楽しかった。

二人でいると、嬉しかった。

二人でいるのが、自然で、
二人でいるのが、当たり前だった。

せやけど、

二人になるまでの時間が、俺を追い詰めた。

二人になりたい、のに、
思うに任せない不自由さが、そこには、あった。

そんなことは、わかってたはずやった。

最初から、
言うてたことやったのに。
言い続けたことやったのに。

恋をしただけやったら、よかったんかな。

会える時に、会うて、
会えた喜びを、確かめあう。

会える時間が、幸せやと思える関係でいたかった。

いや、
今やって、会えたら幸せやねん。

顔が見れて、
いろんな話をして笑いあって、

こうして触れ合って、
会えない時間なんか、カケラもなかったかのように、
心が通じ合う。

それを大切にしたいと、心底思うてた。

せやけど、
この時間が持てるんは、稀なことになり始めてる。

仕事が理由で、
せっかくの時間が短くなったり、
突然なくなったり、

そんなことが度重なってくると、
彼女の表情かて、
初めのころとは違ったもんになってくる。

それを面と向かって、
言葉や態度で責めてくるような女やない。

ただ、微妙に、淋しそうな色が、表情に浮かんでくるようになったのに、
俺が気づいただけのことや。

自分では気づいてへんのやろな。

「大丈夫よ」って言葉が、
いつのまに、自分の口癖になってること。

女に、大丈夫って、無理な我慢をさせるような男は、アカンねん。

俺は、そんな男になりたかったんちゃう。

離れてたって、互いを感じあえる存在でいたかったんや。
離れてるから、こそ。
離れてることに、意味があるって。

待ってる、
待たせてる、

それは、俺にとっては、ただの・・・




彼女がケットを剥いで、顔を見せた。
無理に作った笑顔の頬に、涙の跡が見てとれた。


「・・・遅れる、よ?」


こんな場面でも、
俺は仕事が理由で、彼女を置き去りにする。

こんな場面でも、
彼女は、俺の仕事の心配をする。

幸せになりたくて選んだもんが、
片方で、俺の幸せの邪魔をする。


みんな、どないして、乗り越えるんやろう。


ほんまに、
この選択が間違ってなかった、と思える日が、来るんやろうか。

「待ってろ」とは、よう言えん。
「付いて来い」なんて無理強いも、ようせん。

彼女を喜ばせるはずの約束が、
彼女を哀しませる。

俺を奮い立たせる約束が、
俺を追いつめてくる。

たったひとつの約束。
小さな約束。

それすら果たせん俺に、
この先、彼女を守りきれるとは、到底、思われへん。

せやったら・・・



「いつか・・・また・・・」

「・・・うん」




あのあと閉めたドアの音だけは、きっと、
俺も、
たぶん彼女も、
忘れてはおらんのやろ、と思う。




それは、
小さな舞音が、生まれるずっと前の、

若かった二人の、
エピローグで、プロローグ。





FIN.






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