ストルガツキイの『月曜日は土曜日にはじまる』は長らく品薄状態が続いていましたが、群像社が重版を出したそうです。めでたい! この勢いで他の作品ももっと店頭に並ぶようになることを願います。
製作: 1995年
監督: エミール・クストリッツァ
出演: ミキ・マノイロヴィチ/ラザル・リストフスキー/ミリャナ・ヤコヴィチ/スラヴコ・スティマチ
《あらすじ》
旧ユーゴスラビア50余年の激動の歴史を描いた映像絵巻。武器商人マルコは、戦争が終わっても避難民にそのことを知らせず武器を作らせていた…。
監督は『パパは出張中!』『アリゾナ・ドリーム』『黒猫白猫』のエミール・クストリッツァ。
とんでもない映画を観てしまいました。
クストリッツァは『黒猫白猫』の底抜けの明るさと独特の音楽の魅力によって好きになったのですが、それに先立つこの『アンダーグラウンド』は何というか、はちゃめちゃな楽しさと、どうしようもない暗さと悲しみが驚くべき表現力によって共存しているという、何を言ってるのか自分でもよくわかりませんが、とにかく凄い映画です。あまりの衝撃に、もう再び観ようという気になりません。観なくても、きっと忘れられません。およそ2時間40分の長さですが、全然中弛みさせずに最後まで持ってゆく力量は恐るべきものです。というか、よくこの時間内に収まったな、というくらい密度が濃いです。色々な意味で。そして、かなり象徴的なお話なので、何が何を表しているのかを、じっくり考えてみるのも興味深いでしょう。
劇中には、マルコが道端を歩く黒い猫を捕まえて、それで靴を磨いたり、いつでもクロ(マルコの親友)の後をついてゆく音楽隊といった笑える描写がとても多く、地下社会での賑やかな結婚式、世界中に通じているかもしれない不思議な地下道のような幻想的な場面も散りばめられています。それなのに、観終えると、非常に沢山の問題に直面させられていることに急に気付かされてしまいます。全然笑えなくなっています。と言うより、面白可笑しかった前半は巧妙な伏線となっていて、最後の痛ましさにつながっていることが分かると、面白かった分、より一層痛みが増すように出来ています。上手い。上手過ぎる。凄まじい表現力に、私はすっかり打ちのめされました。この監督の作品には、いつも感極まってしまいます。圧倒的なエネルギーの塊。『パパは出張中!』も観ようと思いましたが、立ち直るまでしばらくはお預けになりそうです。
監督: エミール・クストリッツァ
出演: ミキ・マノイロヴィチ/ラザル・リストフスキー/ミリャナ・ヤコヴィチ/スラヴコ・スティマチ
《あらすじ》
旧ユーゴスラビア50余年の激動の歴史を描いた映像絵巻。武器商人マルコは、戦争が終わっても避難民にそのことを知らせず武器を作らせていた…。
監督は『パパは出張中!』『アリゾナ・ドリーム』『黒猫白猫』のエミール・クストリッツァ。
とんでもない映画を観てしまいました。
クストリッツァは『黒猫白猫』の底抜けの明るさと独特の音楽の魅力によって好きになったのですが、それに先立つこの『アンダーグラウンド』は何というか、はちゃめちゃな楽しさと、どうしようもない暗さと悲しみが驚くべき表現力によって共存しているという、何を言ってるのか自分でもよくわかりませんが、とにかく凄い映画です。あまりの衝撃に、もう再び観ようという気になりません。観なくても、きっと忘れられません。およそ2時間40分の長さですが、全然中弛みさせずに最後まで持ってゆく力量は恐るべきものです。というか、よくこの時間内に収まったな、というくらい密度が濃いです。色々な意味で。そして、かなり象徴的なお話なので、何が何を表しているのかを、じっくり考えてみるのも興味深いでしょう。
劇中には、マルコが道端を歩く黒い猫を捕まえて、それで靴を磨いたり、いつでもクロ(マルコの親友)の後をついてゆく音楽隊といった笑える描写がとても多く、地下社会での賑やかな結婚式、世界中に通じているかもしれない不思議な地下道のような幻想的な場面も散りばめられています。それなのに、観終えると、非常に沢山の問題に直面させられていることに急に気付かされてしまいます。全然笑えなくなっています。と言うより、面白可笑しかった前半は巧妙な伏線となっていて、最後の痛ましさにつながっていることが分かると、面白かった分、より一層痛みが増すように出来ています。上手い。上手過ぎる。凄まじい表現力に、私はすっかり打ちのめされました。この監督の作品には、いつも感極まってしまいます。圧倒的なエネルギーの塊。『パパは出張中!』も観ようと思いましたが、立ち直るまでしばらくはお預けになりそうです。
一兎も得ず、と言いますが、実のところはどうなのでしょう。
私は常に気持ちがあちらこちらへ散り散りになっていて、なかなか集中できないのですが、それでもいくつかのことを地道に続けていたら、このところ少し軌道に乗ってきたような気がします。いや、一般的に見れば、どれも全然ものにできていないわけですが。
画像は、目下製作中のアニメーションの一コマです。物語が全然面白くなりません。が、以前に比べると、要領良く作業を進めることができるようになったので、私としてはそれだけで満足です。なんとか完成まで辿り着きたいものです。私の気が逸れないうちに、なんとか。
私は常に気持ちがあちらこちらへ散り散りになっていて、なかなか集中できないのですが、それでもいくつかのことを地道に続けていたら、このところ少し軌道に乗ってきたような気がします。いや、一般的に見れば、どれも全然ものにできていないわけですが。
画像は、目下製作中のアニメーションの一コマです。物語が全然面白くなりません。が、以前に比べると、要領良く作業を進めることができるようになったので、私としてはそれだけで満足です。なんとか完成まで辿り着きたいものです。私の気が逸れないうちに、なんとか。
A&B・ストルガツキイ 深見弾訳(群像社)
《あらすじ》
<魔法妖術科学研究所>でくりひろげられる奇怪な実験……徘徊する古今東西の妖怪、時間と空間を超えた不思議な現実の物語
《この一文》
”疲れてきたせいだろうが、しだいに、はっきりとことばに猫訛がではじめた。猫がうたいだした。
野良ニャー…野良じゃ、鋤がひとりで畑を耕している…ニャーオ…
だんニャがあとからついていく…まてよ、ここは、ニャそ、ニャそつい
ていく、だったかニャ?……
第一話「ソファーをめぐるてんやわんや」より”
涼しくなってきたので、ストルガツキイ再び。古本屋で入手したこの本は、古本にしてはかなりの美本であったのも嬉しかったのですが、それよりも何よりもその中身はひっくり返るほど面白いのでした。はまります。引用したのは、第一話に登場する猫のワシーリイのせりふ。うっ、胸が苦しい! 猫訛は反則です!
さて、この『月曜日は土曜日に始まる』はタイトルが不思議なように、物語も不思議に満ちています。人語を解す猫や魚、ありとあらゆる妖怪や精霊、登場人物たちも奇人ばかりが勢揃い、まるでお祭り騒ぎのような賑やかさで、想像力の限界に挑戦という感じです。主人公のプリワーロフはプログラマーで、ある日ふとした出会いによって「MYKK」の職員に採用されることになります。その「MYKK」がまたあまりにも楽しそうな職場なので、そんなところで私も働いてみたいと真剣に思ってしまいます。
この本には、第一話「ソファーをめぐるてんやわんや」、第二話「うたかたの夢」、第三話「てんてこまい」の3つのお話が収められています。
どれも大変に面白いのですが、私は特に第二話が気に入りました。確かに大晦日の夜には何か不思議なことが起こりそうですよね。そして、人物の描写が最高に冴えてます。ストルガツキイの作品に登場する人物は、いつもどことなく間が抜けているのですが、その絶妙な間抜け感がたまりません。『みにくい白鳥』でいうならば、「知的同胞」チームとか。何だかんだでヴィクトルも間が抜けてましたな。今回のプリワーロフもなかなか良い感じです。しかも眼鏡をかけているらしい。眼鏡をかけた間の抜けた人物……まずいな、ツボです。
第一話は始まりの物語。いきなりどんどん奇妙な方向へ展開するので、久しぶりにストルガツキイを読んだ私は、最初少しついていけませんでした、不覚……。
第三話は謎解き。ストルガツキイらしい展開で最後には少し考えさせられるような深みを持っています。
これらに続く第4話は『トロイカ物語』として別の本として群像社から出されています。全て、主人公がプリワーロフであるという点が共通しているようです。『トロイカ』も入手済み、くくく、早く読みたいです。
《あらすじ》
<魔法妖術科学研究所>でくりひろげられる奇怪な実験……徘徊する古今東西の妖怪、時間と空間を超えた不思議な現実の物語
《この一文》
”疲れてきたせいだろうが、しだいに、はっきりとことばに猫訛がではじめた。猫がうたいだした。
野良ニャー…野良じゃ、鋤がひとりで畑を耕している…ニャーオ…
だんニャがあとからついていく…まてよ、ここは、ニャそ、ニャそつい
ていく、だったかニャ?……
第一話「ソファーをめぐるてんやわんや」より”
涼しくなってきたので、ストルガツキイ再び。古本屋で入手したこの本は、古本にしてはかなりの美本であったのも嬉しかったのですが、それよりも何よりもその中身はひっくり返るほど面白いのでした。はまります。引用したのは、第一話に登場する猫のワシーリイのせりふ。うっ、胸が苦しい! 猫訛は反則です!
さて、この『月曜日は土曜日に始まる』はタイトルが不思議なように、物語も不思議に満ちています。人語を解す猫や魚、ありとあらゆる妖怪や精霊、登場人物たちも奇人ばかりが勢揃い、まるでお祭り騒ぎのような賑やかさで、想像力の限界に挑戦という感じです。主人公のプリワーロフはプログラマーで、ある日ふとした出会いによって「MYKK」の職員に採用されることになります。その「MYKK」がまたあまりにも楽しそうな職場なので、そんなところで私も働いてみたいと真剣に思ってしまいます。
この本には、第一話「ソファーをめぐるてんやわんや」、第二話「うたかたの夢」、第三話「てんてこまい」の3つのお話が収められています。
どれも大変に面白いのですが、私は特に第二話が気に入りました。確かに大晦日の夜には何か不思議なことが起こりそうですよね。そして、人物の描写が最高に冴えてます。ストルガツキイの作品に登場する人物は、いつもどことなく間が抜けているのですが、その絶妙な間抜け感がたまりません。『みにくい白鳥』でいうならば、「知的同胞」チームとか。何だかんだでヴィクトルも間が抜けてましたな。今回のプリワーロフもなかなか良い感じです。しかも眼鏡をかけているらしい。眼鏡をかけた間の抜けた人物……まずいな、ツボです。
第一話は始まりの物語。いきなりどんどん奇妙な方向へ展開するので、久しぶりにストルガツキイを読んだ私は、最初少しついていけませんでした、不覚……。
第三話は謎解き。ストルガツキイらしい展開で最後には少し考えさせられるような深みを持っています。
これらに続く第4話は『トロイカ物語』として別の本として群像社から出されています。全て、主人公がプリワーロフであるという点が共通しているようです。『トロイカ』も入手済み、くくく、早く読みたいです。
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