The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『スティール・キス』ジェフリー・ディーバ―著

2018-04-20 | ブックレヴュー&情報
“The Steel Kiss”

ジェフリー・ディーバ―(著)、池田真紀子(翻訳)2017年10月30日
文芸春秋 2,700円

内容紹介
身近な道具が牙を剥き、あなたを殺す――。殺人犯を追跡中の刑事アメリアの目前で、エスカ
レーターが通行人を巻き込んだ。救助活動もむなしく男は死亡、殺人犯も逃走してしまった。
ある事件をキッカケにリンカーン・ライムが警察の顧問を退いた今、アメリアは単身、捜査を
つづけるほかなかった。一方ライムは、エスカレーター事故の遺族から民事訴訟のために調査
を依頼される。ライムの弟子として働き始めた元疫学研究者ジュリエット・アーチャーを交え、
調査が開始される。なぜエスカレーターは不具合を起こしたのか? 名探偵ライムと刑事アメリ
アは日常の道具を凶器に変える殺人者を捕らえることができるのか。ドンデン返しの魔術師の
名シリーズ、最新第12作。

内容(「BOOK」データベースより)
リンカーン・ライムが刑事事件から撤退を決意した!原因はバクスターという男の死だった。
ライムの徹底した捜査の結果、重罰を科されることになったバクスターは自殺を遂げた。捜査
に間違いはなかったが、しかし…。そんな疑念がライムを捕らえたのだった。だから連続殺人
犯を追うアメリア・サックスはライムの助けを借りることができない。そしてライムは、民事
訴訟のための調査依頼を引き受ける。それはサックスの目の前で起きた痛ましいエスカレーター
事故の訴訟だった…。

リンカーン・ライムシリーズ12作目です。 一年に一冊というペースが守られていて、毎年の
お楽しみとなっています。

今回のテーマは ”IoT”(Interneet of Things)。 PCやスマホのみならず、TVや冷蔵庫、電子
レンジ等あらゆる家電品がインターネットに接続されていて 通信で制御出来る様になっている
という事。考えてみるととても恐ろしい事です。
そして、今作の犯人が その ”IoT” を悪用するとどの様な事が起きるか・・・という点に着
目した内容になっていて 正に現代社会の盲点、危機をタイムリーに描いた作品です。

今回は、ライムがある事件をきっかけに捜査から手を引き大学で講師をしていることにより、
サックスとは別行動。
サックスが殺人犯を追う途中エスカレーターが突然故障し、その為に従業員が1人死亡。
その遺族の為に民事訴訟を起こす様依頼されたライムだが、その証拠を追うライムとサックス
が追う殺人犯が一致した事により2人は協力して証拠集めを始める。
冒頭はライムとサックスが共に行動していない為 何時もの様な展開が無く冗長にも思える。
ライムの新しい助手ジュリエット・アーチャーはライムと同じく車椅子を使う聡明な元免疫
学研究者。 次第にライムの思考形態に共鳴していく様子がライムを喜ばせる。

特異な体型を持つ犯人からの犯行声明を手掛かりにライムは何時も通りお得意の文法や文章に
関する拘りを見せ そこから犯人像をプロファイリングしていく。 前回も書きましたが、
この文法や言葉使いに対するライムの拘りを読むのが個人的な楽しみの一つになっています。
本当なら原作本の英文で読めばもっと面白いんだろうとは思うものの、この厚さの作品です。
翻訳本でさえかなり読みごたえがあるのですから、原文ではとても、とても、と言うか、絶
対無理!

そして、今作では、ライムチームメンバーにも色々不安要素が入っています。
アメリアは母親が心臓手術を目前に不安を抱え、そんな時服役していた元恋人ニックが出所
してアメリアと再会。自分の無実の証明をすると行動し始める。 アメリアとニックがどう
なるのか、そして、そんなニックが実は・・・・となります。
又、プラスキーは単独行動をして秘密裏に行動しているのが何やら不穏な様子を見せる。
プラスキーが一体何をしようとしているのか、ヤキモキさせられる。
この2点がサブプロットと言えるかもしれないが、毎回のどんでん返しを期待、予期してし
まう悪い癖になってしまった為、このサブプロットのオチは余り衝撃的ではなかった様な
気もするし 物足りなさも感じたりしたのです。

それでも安定の面白さ、十分の読み応えがあり、終盤にセリットーも復活、ライムとアメ
リアの関係が今後どうのか?という事で次回作に期待大です。
毎回恒例になっている大どんでん返しを予想するファンの期待値が益々上がっている為
ディーバー氏も大変だろうな~と感じつつ。

既にリンカーン・ライムシリーズ続編が発行されています。

13作目 ”The Burial Hour” : Apr.2017 発行


14作目 ”The Cutting Edge” : Apr.2018 発行



共に翻訳本が楽しみに待たれます。