グラナダ版『赤髪連盟』 : The Adventure of Sherlock Holmes : ”The Red Headed League” (3)
(1985年) - S2E5
・・・続きです。
サラサーテの演奏会でワトソン曰く、夢見心地で幸せな表情を見せていたホームズ。
その姿を見たワトソンは「彼が捕えようとしている連中は最悪の目に合うに違いない」と
独りごちていました。
その後221B に戻り、ワトソンは早速黒板にサックス・コバーグ街近辺の地図を書き出します。

それを見たホームズは、「上出来だ。 地図製作者になれるぞ」と持ち上げ、まんざらでも
なく嬉しそうな表情のワトソン。
そこへホームズが招いたスコットランドヤードのジョーンズ警部とシティー・アンド・サバー
バン銀行の重役メリーウェザー氏が訪れます。
ホームズのジョーンズ警部評は「お粗末な刑事だが獲物に食いついたら放さん」←酷い!
ジョーンズ警部はホームズと仕事をすることを喜んで張り切っているのに・・・

一方メリーウェザー氏は、素人探偵など信じられない。 うちの銀行の警備はロンドンでも指折り
だから侵入など不可能だと警備会社も言っている。 土曜の夜にカードが出来ないのは27年間で
初めてだ。 等々不信感、不平丸出しで不機嫌な様子。
ホームズは、「今夜のゲームの方が刺激的で掛け金は莫大だ」と言いながら出かける支度をします。

↑ この時のホームズの姿は珍しいです。黒のダブルブレストショートコート(襟立ててるし!)、
シルクハットではなく中折れ帽。これ又麗しいですねぇ。
ジョーンズ警部は「私は何を貰える?」と尋ねると、「クレイと言う若者だ」と答えるホームズに
「クレイか、是非捕えたいね」と張り切ります。
クレイというのは祖父が公爵であった名門の出で、自らもオックスフォード出身であったが落ちこぼれ
で悪賢くすばしこくて侵入や偽造等がお手の物だという人物の様です。
「ワトソン、銃を!」と言うホームズに今回も危険物担当ワトソンは銃の点検をします。
その後全員で馬車にのり、銀行に向かいます。
地下の金庫室に向かうとメリーウェザー氏によれば、金庫室の鍵は頭取と自分が持つ2つだけ。
上からの侵入も下からの侵入も不可能で賊が入れるはずがないと言います。

しかし何故この銀行が狙われるのか必ず秘密がある筈だと尋ねるホームズに対し渋々ながら説明をした
重役によれば、重役しか知らない極秘情報だがと前置きしながら、資金強化のためフランス銀行から
金貨6万枚を借り入れた。したがって現在は通常の保管額よりはるか上回る多くの金貨が保管されて
いるのだとの事です。
彼は、ホームズの事を”素人探偵”呼ばわりをするのですが、その時ワトソンが憤然と反論するのです。
「私立探偵ですよ。 犯罪史上に於いて類のない存在です。」← ワトソンよく言った。良いぞッ!と
思わず拍手!
その金貨は何処に?と尋ねるホームズに、「ワトソン氏が座っている箱の中です」と聞き開けてみると
フランス金貨が燦然と輝いています。
そして、いよいよここから犯人を待ち構えるシーンが始まりますが、犯人を待つ間のホームズの緊迫
した表情が溜まりませんですね。
床を探ったり、柱に耳を付けたりして犯人の気配を探るホームズを見てもまだ不信感を持ち納得しない
メリーウェザー氏にこの事件の犯人に関して語るホームズ。
「クレイと言うのは短絡的な犯罪が専門で 周到に準備するタイプではない。ヤツは単なる駒なのかも
知れず、極秘情報を手に入れ入念に計画した黒幕が裏に居る。モリアーティー教授が絡んでいる気がする」
と言います。

モリアーティー教授とは?と聞かれ、「我々も会った事がないのだが、暗黒街では有名です。上流階級の
出で高い教育を受けていながら悪魔のような素質を遺伝的に受け継いでいる。ロンドンに於ける悪事の
半分、迷宮入りの大半は彼の指揮によるもので捕まった事はない。 手下が捕えられても悪の中枢は
疑われもせず闇の中に居る」とホームズが説明します。(此処で初めてモリアーティー教授の存在、
秘密が明かされるのです。そして彼に対するホームズのある種の怖れと緊張感が伝わって来て気迫溢れる
シーンです。)
間もなく犯人現れるだろうから灯りを消して配置につく様に、ワトソンには銃の用意をする様に指示し
暗闇で緊迫の時間が流れます。

間もなく床のタイルをはがして現れたクレイ(もう一人の犯人は逃亡)はすかさず捕えられます。
観念したクレイはホームズに対し、「完璧な筋書きだ。お見事だ」と言うと、ホームズも「君もな」と
返します。
逮捕しようとするジョーンズ警部に対し、「僕には王室の血が流れている。話す時は敬語を使って貰おう」
と毅然とした態度を取り、去り際にもホームズに対し、失礼すると言いながら丁寧な礼をするのです。
最後にホームズが「赤髪連盟の裏に居たのはモリアーティー教授か?」と尋ねると「長生きしたければ
その名は口にするな」とクレイ(徐々にモリアーティー教授の恐ろしさが募って来ますね~)
その後、ホームズをバカにしていた頭取の手のひら返しの態度には笑えます。
「本当に面目ない。貴方の能力を疑った私を許してくれ。 何とも素晴らしい推理だ。 前代未聞の銀行
強盗が防げた」と称賛しますと、ホームズは「少し経費が掛かりました。銀行からお支払い頂けますな?」
に対して「勿論です!」。
一方質屋に逃げ戻った犯人の片割れは 張り込みをしていた警官と大捕り物の上捕まるのですが、その時
質屋の中はメチャメチャになってしまうのです。
一方、赤毛連盟に居たロス氏もモリアーティー教授の前では赤毛のカツラを取りこの件の結末を報告して
います。

モリアーティーは「何たることだ。これは大失態だ」と怒っています。
ホームズに関しては、「単なる素人にすぎないが賢い男だ。 興味深い男なので失うのは惜しい。 だが、
ヤツに妨害されたのは3度目なので何とかするしかない。 手を引く様に言うか、遠くに行って貰うか・・・」
と今後の動きが予感されるようなセリフです。
メチャメチャにされた質屋を見て泣言を言っているウィルソン氏の元を訪れたワトソンはホームズから
預かったという50ポンドを渡しますと大喜びのウィルソン氏。

(この50ポンドはホームズが銀行から貰った礼金なんですね。 ホームズはお金の為に働くのではないと
言う規範はここでも現れています。)
最後に一言「次に人を雇う時はまともな給料を払う様にとホームズからの助言です」と釘をさしました。

事件が一段落し、本屋で買い物をするワトソンと外で待って居るホームズ。
緊迫感溢れるシーンのあと日常の穏やかなシーンを見られるのも素晴らしいし、嬉しい事ですわ~。
出て来たワトソンが「僕は余程勘が鈍いのかな?君と同じことを見聞きしていたのに何が起こったのか未だ
に全容が見えない」と尋ねると、ホームズが推理の過程を説明するのです。
店員が給料の半分で雇われた→何か目的があったに違いない→店員の容貌、外観を聞いてすぐにクレイである
ことが分かった→写真が趣味と言って地下で何かしていた→トンネル堀だ(銀行に伸びていた)→店員に道を
尋ねた時に膝が汚れていた→連盟が解散したのはトンネルが貫通したからだ→決行が土曜日だと言ったのは、
銀行が休みなら盗みがバレる迄猶予がある。
これを聞いたワトソンが感心し、「実に鮮やかだ!」に対し、ホームズは「暇つぶしさ。 私の全人生の目的
は平凡な日常から逃避する事にあるんだ」
ワトソンは「いや、君は人類に多大な貢献をしている」と言うと、「確かに少しはね。」そして、
”L’homme c'est rien, I'oeuvre c'est tout” (今度はフランス語)「人生は空しい 作品こそすべてだ。
フローベルからジョルジュ・サンドへの言葉さ」

ここでシガレットケースをワトソンに渡し、咥えたタバコにホームズが火をつけてあげるのですよ。
(いやぁ、良いシーンです。 和やかな2人の気の利いたシーン。好きですねぇ)
そんな和やかな2人を物陰から眺めるモリアーティ教授。

次の「最後の事件」を暗示させる恐ろしい顔つきがアップになるシーンで終わります。
↓ エンディングクレジットもモリアーティー
以上で終わります。
今回で纏めようと少し長くなりました。
次回感想とちょっとしたtrivia等を続けようと思います(まだ続くんかい)
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