- グラナダ版 「最後の事件 」: The Final Problem (3) -
私事ですが、身内の入院でバタバタしておりまして 昨日の手術が取りあえず
順調に終わりホッとしたところなのですが、さすがに心身ともに疲れ果てました。
病院までかなり遠いのですが、連日通う中思いもしなかった副産物と言うか、
予想外のお花見を楽しむことが出来ました。
道中の街道沿いもさることながら、市ヶ谷、靖国神社、千鳥ヶ淵とお花見の
ベストスポットをベストのお天気の中、沿道は足の踏み場も無い程の人出で
したが、お花見渋滞もあり車中からじっくりと桜を鑑賞する事が出来疲れた
心が少し安らぎました。
昨晩は帰宅が遅くなった為、又もや夜桜まで観る事が出来、もう何年分かの
お花見を堪能しましたが、これも慰労して頂いたのだと思い込んでいます。
そんな訳で、PCの前に座る時間も無かったのですが、取り合えず山を越えたので
今日は割と早く帰宅出来まして 久々にPC立ち上げる時間が出来ました。
それは兎も角、閑話休題。
そんな訳で 大分時間が空いてしまいましたが「最後の事件」の続きです。
マイリンゲン村の”イギリス館”に到着した2人は 宿の主人からライヘンバッハの
滝の観光を勧められました。
早速滝に向かいますが 滝は雪解けのせいで水量が増え轟音を立てて流れ落ち
ています。
そこに1人の若者が宿の主人からワトソン宛の手紙を届けに来ました。
「英国人の女性が喀血した為 医者が必要だ」と書かれていた為、やむなく
ワトソンは宿に戻る事に。
宿に戻ると その様な女性も居らず、宿の主人も手紙は渡していない事が判明
します。 偽の手紙で誘き戻されたと知ったワトソンは慌てて滝に戻りました。
その頃ホームズの元にモリアーティー教授が姿を現し遂に2人の対決が始まり
ました。

↑ 滝に向かうモリアーティー教授らしき姿。
滝に戻ったワトソンですが、ホームズの姿はなく 愛用のシガレットケースが残され
ていて そこに手紙が挟まれていました。
「ワトスン君 教授の好意でこ れを書き残す。 彼は最後の話し合いをしようと
待っている。社会から彼の害悪を取り除けて僕は満足だが、代償に友人に苦痛を
与えるのがつらい。 特にワトスン 君。君にはすまない。承知の通り、僕の仕事は
死に直面していた。 これ以上僕らしい大詰めはない。実はすべてを打ち明けるが、
あの手紙は偽と分かっていた。 僕の財産は出発前に整理し兄に預けてきた。
さようなら君の真実の友 シャーロック・ホームズ。」
このホームズの遺書は痛切な言葉なので、参考までに正典に書かれている文章を
記してみました。
My dear Watson 〔it said 〕、I write these few lines through the courtesy of
Mr.Moriarty, who awaits my convenience fo the final discussion of those
questions which lie between us. He has been giving me a sketch of the
methods by which he avoided the English police and kept himself informed
of our movements. They certainly confirm the very high opinion which I had
formed of his abilities. I am pleased to think that I shall be able to free society
from any further effects of his presence, though I fear that it is at the cost
which will give pain to my friends, and especially, my dear Watson, to you.
I have already explained to you, however, that my career had in any case
reached its crisis, and that no possble conclusion to it could be more
congenial to me than this. Indeed, if I may make a full confession to you, I
was quite convinced that the letter from Meiringen was a hoax, and I allowed
you to depart on that errand under the persuasion that some development of
this sort would follow. Tell Inspector Patterson that the papaers which he
needs to convict the gang are in pigeon hole M., done up in a blue envelope
and inscribed “Moriarty.” I mad every disposition of my property before
leaving England, and handed it to my brother Mycroft. Pray give my greetings
to Mrs. Watson, and believe me to be, my dear fellow,
Very sincerely yours,
Sherlock Holmes
(最後に 「Mrs.Watsonにもよろしく伝えて欲しい」と書かれていますが、グラナダ版ではワトソンは
結婚していないので、この部分は省略されていました)。
この遺書を書いているホームズが一瞬微笑む様な表情をするのですが、それが何とも切ないです。
この手紙を残し、ホームズは宿敵モリアーティー教授と共にライヘンバッハの滝に
姿を消したのです。
そして2人の遺体は遂に見つからなかった・・・ とされています。
事件の後221Bに戻った傷心のワトソンは、今回の件はどうしても記録を書く気持
ちにはなれないと語ります。
そして、最後に、〔彼ほど最高の友であり 最も理知的な人間を今迄知りえたことは
無い」と言って結びます。
”・・・・whom I shall ever regard as the best and the wisest man whome I have
ever known.”
正典翻訳本で延原謙氏版では 「私が生涯で最も愛し かつ尊敬した一人物」と
訳されていました。 さすがですね。 素敵な表現だと思います。
ワトソンが語ったこの最後の言葉は以前から何時も心に残っているのですが、
BBC版でも The Empty Hearseでジョンも言っていました。
爆弾の仕掛けられた地下鉄の中で もう助かる見込みがないと感じたジョンが
シャーロックに告白したセリフでした。
”You were the best and the wisest man I have ever known.”
大分前に書いたReviewの時の 「心の残ったセリフ」でもしつこく書いて
ありますが、このセリフが好きで以前から拘っています。
それから、これも以前書いたのですが、パスティーシュ版「神の息吹殺人事件」
でも tEHと同じ様に地下鉄の場面でジョンがこのセリフを言っていました。
嬉しくて感動だったですよ。
その昔 最初にTVでこのエピソードを見た時は衝撃的でした。
悲しかった事を覚えています。
実際にはそれ以前のもっと昔に正典で読んだ筈だったのにすっかり忘却の彼方
だったのと映像で観るともっとショックを受けました。
ACDはこのエピソードでホームズを葬り去るつもりだったそうですが、熱烈なファン
の要望もあり12年後に短編集「シャーロック・ホームズの帰還」の中での「空き家
の怪事件」でホームズの生還を書く事になったんですね。(ストーリー上は3年後の
設定になっています)。
BBC版の順序に合せてグラナダ版に触れているので、次回は ”The Empty
House” (空き家の怪事件)について書いてみるつもりです。(出来れば)
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以前ジェレミーの若かりし頃の出演作”戦争と平和” と”マイ・フェア・レディー”
の美しい画像を載せたのですが、今回もっと若い頃の物凄~い美しい画像を
見つけたのです。
超絶美形です! 唖然としてひっくり返る程の美しさです。
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