『シャーロック』シーズン4:「六つのサッチャー」
以下ネタバレになりますのでご注意下さい。
あれこれ内容に触れながら 正典との繋がり、感想を書いていきたいと思います。
↓
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↓
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↓
暫らく間が空いてしまったのですが、今回は追加と最後の纏めをひつこく書いてみます。
エンディングクレジットの後、最後にもう一度メアリーのメッセージがあります。
”Go to hell, Sherlock”
そのままの意味だと「地獄へ落ちろ」なのですが、”hell”は場所との見方もありました。
ただ、後のエピソードと合わせて考えると「地獄を見ていらっしゃい」か「地獄を見る様な
辛い思いをしていらっしゃい」とかの感じでしょうか。
いずれにしても 又もや嫌な展開を予感させる言葉ですね~。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
思えば、シャーロックはS1の出だしが余りにも素晴らしかったし、”シャーロック病”の重傷
患者となあって以来、その後のシーズンを毎回ワクワクしながら待ち焦がれていたものでした。
S3終了後S4が放送される迄の3年間は飢餓状態で首を長くして待っておりました。
(途中の「忌まわしき花嫁」はあくまでもスペシャルですので)
が、S3の最後が余りにもアレだったので一抹の不安があるなか 昨年徐々に情報が出て来るに
つれ 公式画像、trailer等が余りにもダークな雰囲気なのでより不安感が募りました。
S3のE3”His Last Vow”辺りからアレ?・・・になって来て、S4は是非是非元の路線に戻って
欲しいと繰り返しひつこく騒いでいたんですけどねえ。
S4は如何にメアリーを退場させるか?が主題になるとは予想していたのですが、そうであれば
当然愁嘆場は避ける事は出来ないだろうし 直ぐには元の”シャーロックとジョン”の関係に
は戻れないだろうとは予期していました。
ただ、S3でメアリーを元プロの殺し屋であるというとんでもないキャラクター設定にしてしまった
以上 平凡な退場では納得させられないだろうとのモファティスの考え方もある程度予想出来たの
ではありますがこんな形になろうとは・・・。
そもそも、正典「4人の署名」で依頼人として登場したメアリー・モースタンは不幸を背負いながら
気丈で凛とした女性として描かれていたし、一目惚れをしたワトソンと結婚してからも数少ない登
場ながらホームズの冒険を手伝うワトソンの背中を押す好ましい、控えめな存在でしか描かれて
おらず、又ライヘンバッハでのホームズの死期以降の空白期間中曖昧な「悲しい別れ」という描
かれ方で静かに退場していたからこそ ホームズ生還の「空き家の怪事件」で自然な流れで元の
ホームズとワトソンの関係に戻るという誠に上手い決着の仕方をさせていた様に感じます。
それに引換え、HLVで元殺し屋というとんでもないキャラクター設定にしてしまったのは 放映直
後からどうしても納得できない無理な設定だと何度も繰り返し叫んでいたのですが・・・
モファティスは何度か女性のキャラクターを重視したい意向があった様に感じますが、度を超した
方向転換は正典の趣きを全く無視した異なった方向に向かってしまったように感じました。
その点グラナダ版は「4人の署名」でワトソンとメアリーは結婚させない設定であったので この様
な矛盾は全くなく最後までホームズとワトソンの物語として無理なく長期に渡り安定し、熱狂的に
支持され続けた所以でもある様に感じたのです。
で、ここからは反対のご意見、反論もあるだろうけど敢えて書かせて頂きますが、はっきり言って
今回は”シャーロック・ホームズ”では無かった。
221B に帰還し、探偵としてのシャーロックは幾つかの事件を解決するものの、テロップ多用や細
かい事項の寄せ集めと言った趣でジックリ事件を解き明かす様子は見られません。
破壊されたサッチャー胸像、ボルジア家の黒真珠等は次第に脇に置かれ、その後はメアリーに
フォーカスが置き換わる。 それ以降シャーロックは特徴のある観察力や推理力を全く使わなく
なってひたすらメアリーを守るボディーガードの様な立場になっている感じを受けてしまう。
”感情は理性を鈍らすものだ”と云う自説が影を潜めています。
メアリーの過去が冗長に描かれ、暗い過去から逃れようと平凡で幸せな生活を望んだが結局過去
から逃れられず悲劇的な最後を迎える・・・と云うお約束に満ちたメロドラマ的な描き方をされて
はいても 結局メアリーに感情移入出来ず何か胸につかえたまま最後を迎える。
プロの殺し屋であったという暗い過去、嘘で固めた新たな生活をシャーロックの身代わりで犠牲
的な死を迎える事で帳消しにしてメアリーを悲劇のヒロインとしようとする設定、ジョンがシャーロック
を逆恨みするという展開は納得出来ない澱の様な物が残ってしまう。
これまでの様な謎解きの面白さ、テンポの良さ、セリフに込められたウィットやユーモアも感じられ
なかったのです。
何故シャーロックがメアリーに対して特別な感情を持つのか。
親友である大切なジョンの妻であるからだけでは無い メアリーの中に自分と同じ”Psycopath”或は
”High-functioning sociopath”という同じ匂いを感じたある種のシンパシーの様な感情なのか。
初対面の時から「嘘つき」である事を見抜いていたし、自分の保身のためシャーロックを撃ち瀕死の
重傷を負わされたにも拘らず「命の恩人」であると言い出した時点からおかしな方向に向かっていた
様に思う。
モファティスは何度も、シャーロックを”more human”に・・・と繰り返していたけれど、確かに
人間として成長する必要もあり その過程も見たかったのは確かだけど、極論を言ってしまえば
シャーロックは(シャーロック・ホームズ)は普通の人間である必要は無いと思うのです。
天才、変人、傲慢で自分勝手、推理する機械であって、でもその心の奥底に深い優しさとか思い
やりがあり又弱さもありながら 時にその様な気持ちが垣間見えるからこそ そんな時により人間
味を感じるのであって、表立って人間味を押し出したキャラクターでは天才である推理人間として
のシャーロック(ホームズ)とは違ってしまう様な気もするのです。
確かに初期の作品が余りにも素晴らしかったからこそ熱狂的な支持を得 世界中の多くのファン
を楽しませた以上 常に前作を越えなければならないという製作者が持つ重圧もあろうと思う。
根底には正典を重視する一方目新しさを咥えなければならないというジレンマもあるだろうし
視聴者は次回作への期待度のハードルが高くなって来る訳で 制作する側も色々目先を変えて表
現しなければならないだろう苦労も十分に理解出来るものの 常に思っていた 基本的なカラー、
路線が変えて欲しくなかった・・・というのがE1での感想、結論になってしまうかもしれない。
又自分自身の側も期待度が高すぎるが故の厳しい見方になってしまっているのか、自分の感性が
鈍ってきたのか・・・と云うジレンマも感じるのです。
超人気ドラマの光と影を垣間見た気がした時、突然頭をよぎった「平家物語」の一文
『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の断りをあらわす
おごれるもの久しからず ただ春の夢のごとし・・・・・』
(高校時代平家物語をはじめ、源氏物語、竹取物語、更級日記等古典の冒頭部分を暗記させられ
一体何の為と文句タラタラであったけど、未だに覚えているって凄い!と自分でも驚く。
若い時の脳って凄く機能していたんですね。それに引換え今は・・・涙、涙です。
閑話休題)
色々思いが噴出し 厳しすぎるへそ曲りな見方ばかりになってしまった様な気きもしますが、何か
釈然としないまま”The Six Thatchers”を見終わりました。
色々ネガティブな事ばかりになってしまいましたが、最初に書きました様に今回は正典、グラナダ版、
ビリーワイルダー版からの引用(名前、語録等)リンクが割と多く、これを探しながら色々思い出す
という点では楽しませてもらいました。
繰り返しになりますが、モファティスは特にビリー・ワイルダー版 「シャーロック・ホームズ」を
敬愛し、影響を多く受けている様で 何度となく色々な点で引用、踏襲していてオマージュを感じます。
ビリー・ワイルダー版は昨年拙記事に書きましたので宜しければご覧になって下さい。
↓
http://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/d/20160524
E2の”The Lying Detective”はS4の中では個人的には割と好きなエピソードでしたし、比較的(こういう
表現も辛いのですが)高評価でシャーロックらしい部分も戻って来ている様に感じます。
このエピソードは書けるかどうか分からないのですが、少し心を落ち着けて気持ちの切り替えができ気合が
入ったら書いて行こうと思います。
グラナダ版「6つのナポレオン」はこちらに書きました。
↓
http://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/d/20161124
長々お付き合い頂きましてありがとうございました。
← SHERLOCK S4E1 ”The Six Thatchers” : ネタバレ感想と検証 (6)
以下ネタバレになりますのでご注意下さい。
あれこれ内容に触れながら 正典との繋がり、感想を書いていきたいと思います。
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暫らく間が空いてしまったのですが、今回は追加と最後の纏めをひつこく書いてみます。
エンディングクレジットの後、最後にもう一度メアリーのメッセージがあります。
”Go to hell, Sherlock”
そのままの意味だと「地獄へ落ちろ」なのですが、”hell”は場所との見方もありました。
ただ、後のエピソードと合わせて考えると「地獄を見ていらっしゃい」か「地獄を見る様な
辛い思いをしていらっしゃい」とかの感じでしょうか。
いずれにしても 又もや嫌な展開を予感させる言葉ですね~。
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思えば、シャーロックはS1の出だしが余りにも素晴らしかったし、”シャーロック病”の重傷
患者となあって以来、その後のシーズンを毎回ワクワクしながら待ち焦がれていたものでした。
S3終了後S4が放送される迄の3年間は飢餓状態で首を長くして待っておりました。
(途中の「忌まわしき花嫁」はあくまでもスペシャルですので)
が、S3の最後が余りにもアレだったので一抹の不安があるなか 昨年徐々に情報が出て来るに
つれ 公式画像、trailer等が余りにもダークな雰囲気なのでより不安感が募りました。
S3のE3”His Last Vow”辺りからアレ?・・・になって来て、S4は是非是非元の路線に戻って
欲しいと繰り返しひつこく騒いでいたんですけどねえ。
S4は如何にメアリーを退場させるか?が主題になるとは予想していたのですが、そうであれば
当然愁嘆場は避ける事は出来ないだろうし 直ぐには元の”シャーロックとジョン”の関係に
は戻れないだろうとは予期していました。
ただ、S3でメアリーを元プロの殺し屋であるというとんでもないキャラクター設定にしてしまった
以上 平凡な退場では納得させられないだろうとのモファティスの考え方もある程度予想出来たの
ではありますがこんな形になろうとは・・・。
そもそも、正典「4人の署名」で依頼人として登場したメアリー・モースタンは不幸を背負いながら
気丈で凛とした女性として描かれていたし、一目惚れをしたワトソンと結婚してからも数少ない登
場ながらホームズの冒険を手伝うワトソンの背中を押す好ましい、控えめな存在でしか描かれて
おらず、又ライヘンバッハでのホームズの死期以降の空白期間中曖昧な「悲しい別れ」という描
かれ方で静かに退場していたからこそ ホームズ生還の「空き家の怪事件」で自然な流れで元の
ホームズとワトソンの関係に戻るという誠に上手い決着の仕方をさせていた様に感じます。
それに引換え、HLVで元殺し屋というとんでもないキャラクター設定にしてしまったのは 放映直
後からどうしても納得できない無理な設定だと何度も繰り返し叫んでいたのですが・・・
モファティスは何度か女性のキャラクターを重視したい意向があった様に感じますが、度を超した
方向転換は正典の趣きを全く無視した異なった方向に向かってしまったように感じました。
その点グラナダ版は「4人の署名」でワトソンとメアリーは結婚させない設定であったので この様
な矛盾は全くなく最後までホームズとワトソンの物語として無理なく長期に渡り安定し、熱狂的に
支持され続けた所以でもある様に感じたのです。
で、ここからは反対のご意見、反論もあるだろうけど敢えて書かせて頂きますが、はっきり言って
今回は”シャーロック・ホームズ”では無かった。
221B に帰還し、探偵としてのシャーロックは幾つかの事件を解決するものの、テロップ多用や細
かい事項の寄せ集めと言った趣でジックリ事件を解き明かす様子は見られません。
破壊されたサッチャー胸像、ボルジア家の黒真珠等は次第に脇に置かれ、その後はメアリーに
フォーカスが置き換わる。 それ以降シャーロックは特徴のある観察力や推理力を全く使わなく
なってひたすらメアリーを守るボディーガードの様な立場になっている感じを受けてしまう。
”感情は理性を鈍らすものだ”と云う自説が影を潜めています。
メアリーの過去が冗長に描かれ、暗い過去から逃れようと平凡で幸せな生活を望んだが結局過去
から逃れられず悲劇的な最後を迎える・・・と云うお約束に満ちたメロドラマ的な描き方をされて
はいても 結局メアリーに感情移入出来ず何か胸につかえたまま最後を迎える。
プロの殺し屋であったという暗い過去、嘘で固めた新たな生活をシャーロックの身代わりで犠牲
的な死を迎える事で帳消しにしてメアリーを悲劇のヒロインとしようとする設定、ジョンがシャーロック
を逆恨みするという展開は納得出来ない澱の様な物が残ってしまう。
これまでの様な謎解きの面白さ、テンポの良さ、セリフに込められたウィットやユーモアも感じられ
なかったのです。
何故シャーロックがメアリーに対して特別な感情を持つのか。
親友である大切なジョンの妻であるからだけでは無い メアリーの中に自分と同じ”Psycopath”或は
”High-functioning sociopath”という同じ匂いを感じたある種のシンパシーの様な感情なのか。
初対面の時から「嘘つき」である事を見抜いていたし、自分の保身のためシャーロックを撃ち瀕死の
重傷を負わされたにも拘らず「命の恩人」であると言い出した時点からおかしな方向に向かっていた
様に思う。
モファティスは何度も、シャーロックを”more human”に・・・と繰り返していたけれど、確かに
人間として成長する必要もあり その過程も見たかったのは確かだけど、極論を言ってしまえば
シャーロックは(シャーロック・ホームズ)は普通の人間である必要は無いと思うのです。
天才、変人、傲慢で自分勝手、推理する機械であって、でもその心の奥底に深い優しさとか思い
やりがあり又弱さもありながら 時にその様な気持ちが垣間見えるからこそ そんな時により人間
味を感じるのであって、表立って人間味を押し出したキャラクターでは天才である推理人間として
のシャーロック(ホームズ)とは違ってしまう様な気もするのです。
確かに初期の作品が余りにも素晴らしかったからこそ熱狂的な支持を得 世界中の多くのファン
を楽しませた以上 常に前作を越えなければならないという製作者が持つ重圧もあろうと思う。
根底には正典を重視する一方目新しさを咥えなければならないというジレンマもあるだろうし
視聴者は次回作への期待度のハードルが高くなって来る訳で 制作する側も色々目先を変えて表
現しなければならないだろう苦労も十分に理解出来るものの 常に思っていた 基本的なカラー、
路線が変えて欲しくなかった・・・というのがE1での感想、結論になってしまうかもしれない。
又自分自身の側も期待度が高すぎるが故の厳しい見方になってしまっているのか、自分の感性が
鈍ってきたのか・・・と云うジレンマも感じるのです。
超人気ドラマの光と影を垣間見た気がした時、突然頭をよぎった「平家物語」の一文
『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の断りをあらわす
おごれるもの久しからず ただ春の夢のごとし・・・・・』
(高校時代平家物語をはじめ、源氏物語、竹取物語、更級日記等古典の冒頭部分を暗記させられ
一体何の為と文句タラタラであったけど、未だに覚えているって凄い!と自分でも驚く。
若い時の脳って凄く機能していたんですね。それに引換え今は・・・涙、涙です。
閑話休題)
色々思いが噴出し 厳しすぎるへそ曲りな見方ばかりになってしまった様な気きもしますが、何か
釈然としないまま”The Six Thatchers”を見終わりました。
色々ネガティブな事ばかりになってしまいましたが、最初に書きました様に今回は正典、グラナダ版、
ビリーワイルダー版からの引用(名前、語録等)リンクが割と多く、これを探しながら色々思い出す
という点では楽しませてもらいました。
繰り返しになりますが、モファティスは特にビリー・ワイルダー版 「シャーロック・ホームズ」を
敬愛し、影響を多く受けている様で 何度となく色々な点で引用、踏襲していてオマージュを感じます。
ビリー・ワイルダー版は昨年拙記事に書きましたので宜しければご覧になって下さい。
↓
http://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/d/20160524
E2の”The Lying Detective”はS4の中では個人的には割と好きなエピソードでしたし、比較的(こういう
表現も辛いのですが)高評価でシャーロックらしい部分も戻って来ている様に感じます。
このエピソードは書けるかどうか分からないのですが、少し心を落ち着けて気持ちの切り替えができ気合が
入ったら書いて行こうと思います。
グラナダ版「6つのナポレオン」はこちらに書きました。
↓
http://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/d/20161124
長々お付き合い頂きましてありがとうございました。
← SHERLOCK S4E1 ”The Six Thatchers” : ネタバレ感想と検証 (6)