― グラナダ版 『瀕死の探偵』 “ The Dying Detective” : (3) ―

(1994年)
・・・・最後です。
ソファに横たわるームズは痩せ衰え、目は落ちくぼみ、熱も高そうな様子であることを見て
驚いたワトソンが近づこうとすると激しく制止させられました。
接触感染するというスマトラ病に冒されたのだと言います。
ホームズは「スミスはいけ好かないヤツだか殺人は犯していなかった。 殺人では無く病死だ。
見誤っていた。伝染病だ。 ロンドン中に蔓延するぞ」と熱に浮かされた様に言います。
そして、うわ言のように ”If there are bi-valves, presumably there are monovalves”
「二枚貝があるなら一枚貝もあるはずだ・・・」← (これは正典には無かったセリフだと思います)。
「私が助ける」と云うワトソンに、「君は親友だが一介の開業医にすぎない。東洋には君の知らない
奇妙な病気が多い」とワトソンを傷つける様な事言ってしまいます。
「頼れるのは我々が疑った男一人だけだ。彼しかいない」と言い募るホームズです。
そして、
”Oysters, They do bread don't they ? I cannot think but whole bed of the ocean is one
solid mass of oysters” 「牡蛎だ、繁殖を続けている。何故海底は牡蛎だらけにならないんだろう」
←かなり有名なセリフですね。 (何故か貝に拘るうわ言ばかり・・・?)
そんなホームズのうわ言を聞いてカルバートン・スミスを連れて来るというワトソンに「説得したら
必ず一人で先に戻れ。彼に謝罪してくれ。 頼むから私を死なせないでくれ」哀れな様子でこんな
言葉を吐くホームズは信じられない思いです。 有り得ない!って思ってしまうのですよ。
ワトソンはそりゃあ慌てますわ。
スミス宅を訪れたワトソンに対し、自分を愚弄したホームズを助ける謂れはないと拒絶するのですが、
ワトソンは必死に貴方しか彼を救える人はいないから是非手を貸してくれるように懇願します。
スミスはホームズの様子を聞きます、熱はあるのか?、うわ言を言っているか? 何時からそんな
状態になったのか?
ワトソンから詳細を聞いたスミスはしぶしぶ出掛ける事に同意します。
221Bに戻ったワトソンに ホームズは直ぐに帰れと言いますが 帰る訳がないワトソンです。
それなら隠れている様に言っている所にスミスが訪ねてきました。
ハドソンさんが泣きながら案内してきます。
弱々しい声でよく来てくれたと礼を云うホームズに スミスは仇に恩で報いるのだと瀕死の状態に
いる様子をみて この病に侵されたら助からないと嘲笑します。
そしてビクターに関する真相は、ロザーハイムのアヘン窟で菌を持つ蚊を首にとまらせて感染させた
のだと言います。
サヴェッジに対する疑惑は忘れるから助けてほしいと懇願するホームズに この病に掛かった原因は
自分が送った煙草入れの小箱に仕込んだ鋲だと言いました。
証拠の煙草入れが何処にあるか詰問するスミスに衰弱したホームズはガス灯を付けて欲しいと頼みます。
他にして欲しい事はないか?と訊ねるスミスに、「マッチとタバコを取ってくれ」。スミスが振り返って
見たものは、しっかり立ち上がりタバコに火をつけるホームズでした!! ジャジャ~ん!ってとこですね。
結構ハラハラさせられたけど やはりホームズです。
そして外で待機していた警部を呼びました。(ガス灯を付けるのが合図でありました)
「お前はサヴェッジ殺しを自供した」というホームズに 「証拠が無い」と喚くスミス。
隠れていたワトソンを呼び、証拠の煙草入れ箱を慎重に扱う様に指示します。
かくしてスミスは逮捕となりました。

↑ ホームズの目元にあたるブルーライト(カーテンから差し込む光?)が冷たい怒りを表している様で印象的です。
事件は解決し、ハドソンさんの用意した食事を食べ、美味しそうにタバコを吸うホームズ。
「名優は役になりきるものだ」
額に油を塗り、目元はベラドンナ、蜜ろうは唇をかさつかせる為だったと言います。
「感染しないのに何故僕を遠ざけたんだ」と詰問するワトソンに、「君は優秀な医者だ。
離れていれば騙されるが 傍に寄られれば直ぐに見破られてしまう。 君とハドソンさんに危篤だと
思わさなければスミスに気付かれてしまう」とぬけぬけと説明するホームズに対してハドソンさんは
”Rats !Beewax !”「もう呆れたッ! 貴方はロンドン中で最悪の間借人だわッ」とお怒りで行って
しまいます。
(因みに、”Rats” は、汚い言葉で言えば「くそッ!」、「バカな!」って感じですが、ハドソンさん
ですからねぇ・・・ そして”Beewax” は「蜜ロウ」ですが、ホームズが変装に使った蜜ロウの事
なのか、それとも他の意味があるのか良くわかりません)。
事件が無事解決し、屋敷に戻れたサヴェッジの遺族達です。
娘がワトソンに、「有難うワトソン先生。又家に戻れました」とハグ。
ワトソンが「お礼ならホームズに」と云うと モジモジ、緊張した様子でホームズ(帽子で顔を覆って
お寛ぎ中です)に近づくお嬢ちゃんです。
ホームズに手を差し出し、”We are very grateful to you, sir” 「 心から感謝します」とお行儀よく
云うと、手袋を外してホームズも握手 ”My previlege, Miss Savage” 「お役に立てて光栄だ」
で、めでたしめでたし・・・・
(ところで、又脱線しますが、”目の周りのクマ” とか、”手袋を外して握手” とか見ると
”His Last Vow” のシャーロックを思い出しますですねぇ← 遠い目)
ハドソンさんが食事を用意したり、最後のサヴェッジ邸の様子はグラナダ版のオリジナルです。
それにしても、又もやワトソンはホームズに欺かれてしまったんですね。
何度もやられてしまうけど 当初は怒っていても直ぐに許してしまう良い人ワトソン。
人が良すぎるから直ぐに顔にでてしまう、陰謀に加担させられない、だからいつもワトソンは
蚊帳の外に置かれ最後に打ち明けられるって構図なんですよね。
まぁ、敵を欺くには身内から・・・って事なんでしょうけど。
そして、ホームズの”うわ言”は支離滅裂で(何故貝に拘るかは不明ですが、”牡蛎の繁殖云々”
はかなり有名なセリフですね)、これも後に分かる事ですが 問題の伝染病の特徴である事を
あらかじめ調査したからこその大事なポイントであったことが分かります。
正典には他にも半クラウン銀貨についても訳の分からない事を言っています(笑)
最初にも書きましたが、この作品も前半約30分余りはグラナダ版のオリジナルですが、正典
部分を補足して事件の背景を丁寧に描いているのでスミスの悪辣ぶりが際立っているし、それ
に対するホームズの怒りも理解できるように描かれていると感じます。
そしてこれも最初に書いた点ですが、瀕死のホームズはジェレミーの容態のせいも加わり誠に
リアルに描かれていて メークも過剰な位で恐ろし気ですね。
最後に、再度書き残しますが「瀕死の探偵」がS4のモチーフになっているかどうかは定かでは
ないのですが、正典のパジェット版にあるカルバートン・スミスの風貌はE2に起用されたトビー・
ジョーンズと雰囲気が似ている様に感じます。
もし、このエピソード引用されているなら、シャーロックが「牡蛎の繁殖が・・・」なんて口走る
のを聞いてみたいなぁ。想像すると楽しくなってしまいますね。
これで終わります。
拙い纏めでしたがお付き合い頂き有難うございました。
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