― The Abominable Bride : 『忌まわしき花嫁』感想と検証 (最後です) ―
いい加減に終わらせないと・・・(汗)
と言う訳で、今回が最終と致します。
引き続きネタばれしておりますのでお含みおき下さいませ。
やっと21世紀の現実に戻ったシャーロックは、(221Bに帰ろう)とジェット機を降ります。
が、6ヶ月以上お留守にする筈だったのに・・・
シャーロックは
”Moriarty is dead. No question. I know exactly what he is going to do next”
(モリアーティーは死んだ。間違いない。僕は彼が次に何を仕掛けて来るかちゃんと分っている)と
言うのですが、結局
”Miss me ?” の謎は解けていない訳だし S4に引っ張るんですね?
すると再び画面は19世紀の221B に変わり、シャーロックとジョンがリコレッティ事件について話し合っています。
”From drop of water, a logician should be able to infer the possibility of an Atlantic or Niagara”
は正典
”A Study in Scarlet" 『緋色の研究』からの引用で、(一滴の水から評論家は大西洋やナイアガラ
の可能性を推察できる。どちらも見る事も聞く事も無くてもね。)
今回の事件のタイトルをどう書こうと思っているんだ? と聞くシャーロックは、
”The Adventure of ・・・the
Imvisible Army?(姿なき軍隊の冒険 ?)← これは1945年のデンマーク映画のタイトルでもある様です。
”The League of Fueries ?”(復讐の女神連盟?)、
”The Monstrous Regiment ?” ← は エリック・マコーミック
の著書
”First Blast of the Trumpet Against the Monstrous Regiment of Women” (女たちのおぞましい支配
に異を唱えるラッパの最初の一吹き」と言う長ーい題名の小説から、という解釈と、ローリー・キング著 ホームズ
パスティーシュである「シャーロック・ホームズの愛弟子」
”The Monstrous Regiment of Women” (女たちの闇)
からの引用か? 良く分かりません。
結局これらのシャーロック提案はジョンによって全て却下され、ジョンは
”The Abominable Bride” 『忌まわしき花嫁』
だと決めます。
↓ 余談ですが、こんなものありました。
最後にシャーロックが窓際に立つと、外は現代のベーカー街に戻っていました。
以前も触れましたが、今回のエピソードは兎に角モファティスの遊び心満載で これでもか!と言う程正典からの引用、
又グラナダ版、ビリー・ワイルダー版からの引用 オマージュが散りばめられていて 嬉しいやら思い出すのに苦労する
やで本当に大変です。
ただ、両御大に仕掛けられた布石を探し出し、気付くと楽しさ倍増である事も確かだと思います。
ストーリーも19世紀と21世紀入り乱れ、又シャーロックのマインドパレス(今回は深層心理)の多重構造、入れ子状態は
複雑で混乱させられますので 一度観ただけではなかなか理解できないのではないかと感じます。
シャーロックの”深層心理” を扱っている為、今回彼の中でのそれぞれの人物感が如実に表されていると気づきます。
ジョンに関しては、何度も書きましたが、やはりメアリーと結婚して自分から離れてしまった寂しさ、本当はこれまでの
様に何時も一緒に行動して欲しいと言う願望。頼りに思っている心情等が感じられて、強がりを言っていても本当は寂し
いのね。(涙)
そして、あとになって気付けば ジョンの口を借りての自分の恋愛観、結婚観、アイリーン・アドラーに関しての突っ込み
はシャーロックが自分自身に突っ込みを入れている訳で可笑しかったのですが、何となく自分自身を納得させている、彼の
心の中の葛藤の様な物を感じるのですが、考え過ぎですかしら?
マイクロフトに対しては、ジョンやメアリーの口を借りて言っている様に 一抹の劣等感も感じられるけど、
(”clever
one” と言う表現)、頭脳では絶対的に自分より優れている事を認めている。そしてはシャーロックの事を心配して止まな
い事も理解している様です。
これまでは マイクロフトは面と向かってあからさまにシャーロックに対して優しい言葉を掛けたり、心配をしている様子を
現さなかったのに、次第に”マミー度”上がって来ている様で、「シャーロック心配」発言が多くなってきています。
ジェット機の中で ジョンに
”Dr. Watson. Look after him. Please”(ジョンでは無くドクター・ワトソンと改まった
呼び方をし、彼の事をよろしく頼む)とも言っています。 これから予想される危険を又感じさせられてしまうのです。
問題のメアリーは、S3直後から何度も繰り返し論争の的になっていましたが、今回のマインドパレス内でもシャーロックは
やはり彼女の正体に疑問を持っている様に感じます。19世紀パートではマイクロフトのスパイではないか? これは彼の
根底にある疑惑で 私達も考えた様に シャーロックを撃ち傷害致死になり得た状況であり、その後彼女の為にシャーロック
が殺人の罪迄犯した張本人でありながら 何故平気でこれまで同様の生活を送っている? どういう訳?
個人的妄想、想像では、メアリーは元CIAであった時の秘密情報と引き換えに司法取引により政府又はMI-5の保護下に入って
居る・・・ってな事なんですけど。違うかな?
そして、今後メアリーの存在をどう扱うのかに関しては2年前からずっと引き続き喧々諤々の論争を繰り返してきましたが
何と言っても子供の存在がある為 このままメアリーを引き続き表立って登場させるとなれば 当然シャーロックとジョン
の関係が以前の様に戻る事は不可能だし、メアリーを退場させるとなれば これまた楽しい設定は望めないし、いずれに
しても難しいキャラクターにしてしまっています。
厄介なのは、シャーロックがメアリーを気に入っているという点ですね。
元々シャーロックは(or シャーロック・ホームズは)女性に関して、女性らしさとか 外見とかには興味が無く、何より知性
行動力等に感銘を受け魅力を感じる筈で、そんな点からいうとアイリーン・アドラー正に直球ど真ん中であった訳ですが、メアリー
もそんな点から惹かれているんでしょう。それにジョンの大切な人であるからという意味もあるのでしょうが、アイリーンの様に
毅然とした女性であれば それも又理解出来るのですがメアリーは何処か自分本位の様な感じも受けるのです。
いずれにしても、これだけ存在感を大きくしてしまった以上 何となく そっと退場とは行かなくなってしまっているんですね。
正典の様に、ワトソンと結婚しても余り表立って登場していなかったし、自然消滅の様にさり気なく退場させていたので不自然さ
も無く継続してきた訳だし、グラナダ版の様にワトソンを結婚させなかった事によって ずっとあれほどの長寿人気を保ってこら
れたのだと感じます。(独断と偏見?)
本当にどうするつもりなんでしょう?
それと、「モリアーティーは死んだ」と明言されましたが、今後彼の仕掛けた罠がどの様な形で出て来るのか・・・シャーロック
待ち構えて戦う気十分だしね。
”Miss me ?”の謎も解明されていないし、モリアーティーの残党の影と言えば本来モラン大佐(モラン卿)を思うのですが、S3で
モラン卿はあっけなく逮捕されてしまったし、後は、やっぱりモリアーティーの兄弟? 或は 又しても
”the other one”
(3人目のホームズ)? 或は又してもメアリー介入説? あ、それともモラン卿脱獄して?
あらら、又色々妄想が・・・・
結局S3で残された謎がS4にそのまま引っ張られて行くんですね。
話は元に戻りますが、今回のエピソードでは ディオゲネスクラブでのシャーロックとマイクロフトの会話を始めとして「ギリシャ語通訳」
からの引用がかなり多いです。
そう言えば、
”A Scandal in Belgravia” でシャーロックの元を訪れた若者達の事をジョンがブログに
”Geek interpreter”
(オタクの・・・)って書いてましたっけね。
これこそ、
”Greek Interpreter”のモジリだ! モファティス遊んでるんだからぁ。
ワタクシももう一度読み直しの必要性を実感しましたし、グラナダ版の「ギリシャ語通訳」も観直したいし、ビリー・ワイルダー版も
機会があればもう一度観たくなりました。
あーもう忙しい(大汗)。←勝手にしろッ?
これから映画をご覧になる場合余裕があれば一度読んでから観る方がより楽しめるかも知れません。
約5年前に何気なく観て以来、シャーロック&ベネディクトの底なし沼にどっぷり引き込まれているのですが、その当時は周囲の友人達、
知人達は誰も「シャーロックの事は知らない」、「観た事ない」と言われ寂しい思いをしたものの ブログ上で同好の士と意見交換させて
頂くことで気持ちを発散して居りました中、今回映画館で見る事が出来る様になるとは灌漑無量です。
街の中でポスターを見かけたり、映画館で大きな看板を観ると何だか不思議な感じがするのですが、嬉しい限りです。
君たちビッグになったねぇ~!(偉そうに!)
映画公開迄2週間を切りました。
映画館で大きな画面で日本語字幕版を観直し、又気付かなかった点、新たに感じる点も出て来るかと思います。
その時は又改めて(ひつこく)書いてみようと思います。
ダラダラ長引いてしまいましたが、お立ち寄り頂き 拙文をお読みいただき有難うございました。
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