グラナダ版 ”A Scandal in Bohemia”Revision : (5)
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The Adventure of Sherlock Holmes
(1984年)
・・・・・ やり直し: その(5)
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翌朝ホームズは国王とワトソンと共にアイリーンの家を訪れます。
(
※ ここで、これ以後ホームズの定番となる シルクハットと黒のフロックコート初お目見えとなり
ます。 ジェレミーのこの姿は本当にエレガントで他の誰も勝てない姿です←独断)
ホームズは、アイリーンが夫を愛していれば陛下を愛さない。そうすれば陛下の結婚も邪魔しない。と
言いながら家の扉をノックしようとすると待っていたかのようにメイドが現れ、「シャーロック・ホー
ムズ様ですね」と尋ねます。怪訝な顔をするホームズに、メイドはアイリーンからホームズが来ること
を聞いていたと。
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そして夫妻は早朝ヨーロッパに向かった事、そして二度と戻らない事を告げます。
(この時のメイドは鬼の首を取った様にホームズをあざ笑う様な表情)
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慌てて室内に入り、前夜確認しておいた隠し場所を明けると写真と手紙が入っていました。
王に手渡すと、「この写真ではない」と。 問題のツーショットではなくアイリーン1人のポートレート
でした。
手紙を読み始めるホームズ(ホームズ宛ての手紙でした)
アイリーンの手紙には、(少し長いですが全文書きました)
『シャーロック・ホームズ様、実にお見事でした。火事のところまでは疑いませんでした。でも隠し場
所が露見した時 私は数か月前に貴方に気を付ける様忠告されていた事に思い当たりました。王が探偵
を雇うならあなた以外には考えられない。貴方は噂通りの腕前をお示しになりました。大勢の人に囲ま
れた時気付くべきでしたが、まさか親切な老神父に下心があるとは思いもしませんでした。でも、ご存
知の通り、私は女優の経験があるので男装はお手の物です。貴方の家の前まで追ったのは私です。貴方
が本当にシャーロック・ホームズ様か確かめるために。 貴方におやすみの挨拶をしてそれから夫に会
いました。私達は王から逃れる為この国を離れる事を考え秘密裏に結婚しました。貴方の出現は脅威で
した。私の手におえない方ですから。明日いらしても私はいません。写真の事でしたら 王は安心な
さって結構です。王よりも素晴らしい男性と結ばれましたから。王は・・・・(ここでホームズは手紙
を王に渡し、王が読み始めます)。昔捨てた女の事等お構いなく。ただ、写真は護身用として持ってお
きます。今後も王の手から逃れ続けられる様に。
最後に、王の為に別の写真を残します。ご機嫌よう。親愛なるシャーロック・ホームズ様。
”アイリーン・ノートン 旧姓アドラー”』
(途中、英国を離れる船上で寄り添うアイリーンとノートンの映像が挿入されています。 アイリーン
は問題の写真を灌漑深げに眺めた後、海に投げ捨てます。これは正典にないグラナダ版オリジナルの
シーンです)
手紙を読み終わった王は、「何たる女性だ。女王に相応しい。階級の違いが残念だ」と云うとホームズ
は「全くです。確かに彼女は陛下とは人間的な値が違う様です」と冷ややかに言い放ちます。
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(ホームズにしてみれば 彼女は貴方にはもったいないよッ!って事でしょうね)
そして率直に今回は期待に添えず申し訳なかったと王に詫びます。
しかし王は、アイリーンは約束を守る女性であるから もはやあの写真は火に投じたも同然であると
大満足を示します。
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そして感謝のしるしとして、自分がつけていた指輪を授けようとするとホームズは「陛下はもっと価値の
あるものをお持ちです」、王が「云い給え」と云うと、「これです」とアイリーンの写真を示すホームズ。
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「良いとも、君が望むなら」と云う王に、それではご機嫌ようと云うと握手をしようと手を差し伸べる王
を無視して構わずさっさと立ち去るホームズ。 その態度はアイリーンという素晴らしい女性を弄んだ国
王に対する嫉妬めいた非難の感情と共に、相手が国王であろうといっこうに臆することなく公然とした態
度が現れていて、ホームズの性格の一旦を如実に示していると言えます。そんなホームズをフォローして
慌てて代わりに握手をするワトソン(初対面の時握手を無視されたワトソン、今回はやった!ですわ。)
ここからワトソンのモノローグになります。
『これが如何にボヘミア王国を揺るがすスキャンダルになる恐れがあったか。 そして、優秀な頭脳を誇
るシャーロック・ホームズが1人の女性の機知に打ち負かされたか の顛末である。彼は以前は女性の浅
知恵を冷やかしたものだが、最近はそれを聞かなくなった。そして彼がアイリーン・アドラーの事を口に
する時は畏敬の念を込めて”The Woman”「あの人」と呼んだ。彼にとって彼女はただ1人の人であった。
しかし決して彼が彼女を愛していた訳ではない。冷静で論理的な感情は愛という感情を嫌う。
彼は女性を事件を構成する一要素としか見ていない。だがしかし、彼は彼女の写真を鍵を掛けて大切に保
管している。彼にとってそんな女性は・・美しく謎多きアイリーン・アドラーだけだ』
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ホームズはアイリーンの写真を何とも言えない表情で見つめた後、引き出しに仕舞鍵を掛けます。
(
※ 正典にはこの記述はないと思いますが・・・。 余談ですが、この引き出しの中の写真は後の ”The
Blue Carbuncle”「青い紅玉」のシーンにも出てきます。その時にも書いたのですが、写真が微妙に違って
います。完全なバストショットで手が写っていません。余計な事ですけどね)
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↑ こちらが「青い紅玉」にあったアイリーンの写真
そして、その後ホームズはヴァイオリンを奏で 暖炉の傍に腰を下ろし物思いに耽ります。
(
※ 今まで何度も観ていたのに全く気付いて居なかったんですが、今回初めて確認しました。この時ホー
ムズが奏でている曲は、アイリーンが歌っていた曲『あなたは不安なのですか?』でありました。コックス
監督がもう一度ラストでホームズにこの曲を弾かせる事でアイリーンへの追憶を込めたのです)
このエンディングでは、正典とは少し解釈を変えて グラナダ版ではアイリーンに対して感じている心情を
彼が軽蔑するロマンティックな想いをほんの少し奥底に生じさせながらも、それより少し恋愛感情に近い特
別な気持ちを抱いている様に描いています。何とも味わい深く印象に残るエンディングになっていると思います。
アイリーン・アドラーは正典の中でも最も人気のあるキャラクターの1人であり、他の多くのホームズ作品
でも取り上げられ それぞれ異なるタイプで映像化されています。
そして、BBC版を含めホームズのアイリーンに対する感情も色々異なる解釈で描かれています。(特に「新
ロシア版」では2人は恋愛状態にありました)
ただ、正典でもこのエピソード一回だけの登場でしたので、より印象に強く残るキャラクターになっている
のだと思います。
そんな中、何度も繰り返して書いていますが、グラナダ版のアイリーンを演じたゲイル・ハニカットは
本当に美しいです。ただ美しいだけでなく、凛とした佇まいや勇気のある態度を素晴らしく演じています。
ホームズを打ち負かした唯一の女性に相応しい女優さんです。
他のホームズ作品でも多くの女優さんがアイリーンを演じていますが、個人的にはこの作品のアイリーンが
一番イメージに合っていると思うし、一番気に入っています。
拙い内容ですが前回よりは少し丁寧に書いたつもりです。
お付き合い頂き有難うございました。
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グラナダ版『ボヘミアの醜聞』再掲 : (4)