『時の娘』ハヤカワ・ミステリ文庫-1977/6/30
”The Daughter of Time”
ジョセフィン・テイ(著)、小泉喜美子(翻訳)
ジョセフィン・テイ作のグラント警部シリーズの作品で 1951年に発表された長編推理小説。
《内容紹介》
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみ
からリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦
然と輝く歴史ミステリ不朽の名作
タイトルの【時の娘】”The Daughter of Time” とは ”Truth is the daughter of time” あるいは、
”Truth, the daughter of Time” と云うフレーズの一部で、【真実は今は隠されているかもしれ
ないが、時間の経過によって明らかにされる】と言う意味だと言われています。
この作品を最初に読んだのは随分昔の事でした。
その後、BBC製作の”The Hollow Crown”「嘆きの王冠」の製作を機に再読。もう4年位前でしたか。
”The Hollow Crown”は2012年ロンドンオリンピックを記念して、文化的オリンピックの一環として
製作されたシェイクスピアプロジェクトで 兎に角出演者が超豪華版でのけ反る程の作品でした。
ベネディクトがリチャード3世を演じる事もあり、これは「時の娘」も再読せねば・・・と思った
次第で。
そして今回久々の再読(何度目かの再再読?)です。
さて、「時の娘」の内容は、
事件捜査中誤ってマンホールに墜落して足を骨折、入院しているグラント警部。
毎日天井を眺めるだけの退屈な入院生活を送っていた時、友人で女優のマータが歴史上の人物の
肖像画を持ってきます。
グラント警部は常々人間の”顔”に特別な興味を持って居り、事件捜査にも”顔”から人物像を判断
するという手法を用いていたのです。
何の予備知識も無くある肖像画の人物に特別な興味を抱きます。そして、警部は彼がイギリス史
の中でも悪名高いリチャード3世である事を知ります。
兄の子供(幼い甥)2人をロンドン塔に幽閉し殺害したと云われている残虐な悪王には思えないリ
チャードの肖像画から、これ迄の歴史的通説に疑問を抱いたグラント警部は、chair detective
(安楽椅子探偵)ならぬbed detectiveとなり、マータから紹介されたアメリカ人青年キャラダイン
を助手にあらゆる文献を頼りに歴史家の視線とは異なる 犯罪捜査的推理を積み重ねてこれまで
の歴史の裏側に迫っていきます。
歴史書を手掛かりに、刑事としての視点からミステリとして推理していく過程は興味が深まります。
リチャード3世を滅ぼし、プランタジネット家を滅亡させ、テューダー朝の始祖ヘンリー7世が賢王
とされる矛盾をついたラストはとても鋭く、グラント警部が導き出した節が正解かどうかは判断し
ようが無いとは言え、何となく納得させられる魅力的な”ミステリ”となっていると思います。
ジョセフィン・テイの代表作と言われる本作は 探偵役が歴史上の謎を解き明かす歴史ミステリの
名作として、又 ”ベッド・ディテクティブ”の嚆矢的作品としても知られ、又 英ガーディアン紙
が選ぶ死ぬまでに必読1000冊にも含まれています。
因みに、
シェイクスピアが描くリチャード3世は 極悪非道な王として描かれていますが、その原作を
基にした前述”The Hollow Crown”が製作、放送された丁度同じ頃の2012年、リチャード3世の
遺骨が発掘され、DNA鑑定の結果 ”金髪、碧眼”であると判定され、その説に従って肖像画も
変更されています。
→
リチャード3世遺骨発掘の情報、その後の再埋葬等は過去拙記事に書きましたのでご参照下さい。
↓
The Hollow Crown : Richard III - (1)
The Hollow Crown : Richard III - (2)
ついでながら、
リチャード2世から始まる”The Hollow Crown”「嘆きの王冠」は出演者も超豪華で、とても分かり
やすく描かれていたし、興味深く楽しめるシリーズでした。
上記リチャード3世以外のエピソードに関しては、右カテゴリー欄 ”The Hollow Crown” をご参照
下さい。
”The Daughter of Time”
ジョセフィン・テイ(著)、小泉喜美子(翻訳)
ジョセフィン・テイ作のグラント警部シリーズの作品で 1951年に発表された長編推理小説。
《内容紹介》
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみ
からリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦
然と輝く歴史ミステリ不朽の名作
タイトルの【時の娘】”The Daughter of Time” とは ”Truth is the daughter of time” あるいは、
”Truth, the daughter of Time” と云うフレーズの一部で、【真実は今は隠されているかもしれ
ないが、時間の経過によって明らかにされる】と言う意味だと言われています。
この作品を最初に読んだのは随分昔の事でした。
その後、BBC製作の”The Hollow Crown”「嘆きの王冠」の製作を機に再読。もう4年位前でしたか。
”The Hollow Crown”は2012年ロンドンオリンピックを記念して、文化的オリンピックの一環として
製作されたシェイクスピアプロジェクトで 兎に角出演者が超豪華版でのけ反る程の作品でした。
ベネディクトがリチャード3世を演じる事もあり、これは「時の娘」も再読せねば・・・と思った
次第で。
そして今回久々の再読(何度目かの再再読?)です。
さて、「時の娘」の内容は、
事件捜査中誤ってマンホールに墜落して足を骨折、入院しているグラント警部。
毎日天井を眺めるだけの退屈な入院生活を送っていた時、友人で女優のマータが歴史上の人物の
肖像画を持ってきます。
グラント警部は常々人間の”顔”に特別な興味を持って居り、事件捜査にも”顔”から人物像を判断
するという手法を用いていたのです。
何の予備知識も無くある肖像画の人物に特別な興味を抱きます。そして、警部は彼がイギリス史
の中でも悪名高いリチャード3世である事を知ります。
兄の子供(幼い甥)2人をロンドン塔に幽閉し殺害したと云われている残虐な悪王には思えないリ
チャードの肖像画から、これ迄の歴史的通説に疑問を抱いたグラント警部は、chair detective
(安楽椅子探偵)ならぬbed detectiveとなり、マータから紹介されたアメリカ人青年キャラダイン
を助手にあらゆる文献を頼りに歴史家の視線とは異なる 犯罪捜査的推理を積み重ねてこれまで
の歴史の裏側に迫っていきます。
歴史書を手掛かりに、刑事としての視点からミステリとして推理していく過程は興味が深まります。
リチャード3世を滅ぼし、プランタジネット家を滅亡させ、テューダー朝の始祖ヘンリー7世が賢王
とされる矛盾をついたラストはとても鋭く、グラント警部が導き出した節が正解かどうかは判断し
ようが無いとは言え、何となく納得させられる魅力的な”ミステリ”となっていると思います。
ジョセフィン・テイの代表作と言われる本作は 探偵役が歴史上の謎を解き明かす歴史ミステリの
名作として、又 ”ベッド・ディテクティブ”の嚆矢的作品としても知られ、又 英ガーディアン紙
が選ぶ死ぬまでに必読1000冊にも含まれています。
因みに、
シェイクスピアが描くリチャード3世は 極悪非道な王として描かれていますが、その原作を
基にした前述”The Hollow Crown”が製作、放送された丁度同じ頃の2012年、リチャード3世の
遺骨が発掘され、DNA鑑定の結果 ”金髪、碧眼”であると判定され、その説に従って肖像画も
変更されています。
→
リチャード3世遺骨発掘の情報、その後の再埋葬等は過去拙記事に書きましたのでご参照下さい。
↓
The Hollow Crown : Richard III - (1)
The Hollow Crown : Richard III - (2)
ついでながら、
リチャード2世から始まる”The Hollow Crown”「嘆きの王冠」は出演者も超豪華で、とても分かり
やすく描かれていたし、興味深く楽しめるシリーズでした。
上記リチャード3世以外のエピソードに関しては、右カテゴリー欄 ”The Hollow Crown” をご参照
下さい。