”River”
制作:2015年 英国 全6話
キャスト:
脚本:アビ・モーガン
演出:リチャード・ラクストン、ティム・ファイウェル、ジェシカ・ホッブス
出演:
ジョン・リバー:ステラン・スカルスガルド
ジャッキー・”スティービー”・スティーブンソン:二コラ・ウォーカー
アディール・アクタル:アイラ・キング
クリシー・リード:レスリー・マンヴィル
他
スウェーデン出身のステラン・スカルスガルドが演じるリバー警部補は高い検挙率を誇る優秀な
刑事であるが、死んだ人々の姿が見え、彼等と会話する能力を持っています。 一歩間違えば荒
唐無稽な物語になりかねない設定ですが、脚本の良さと素晴らしい役者達により大人のクライム
サスペンスの傑作に仕上がっている作品だと感じました。
もっと早くにアップする予定だったのですが、つい遅くなってしまいました。
再放送中でもあるので、ネタバレはなるべく避けるようにするつもりです。
相棒であるスティービーが目の前で射殺され、その犯人を執拗に追い求めるなかで、スティー
ビーが個人的に秘密裏に調査していた事を追っていくうちに リバーの知らなかった彼女の隠さ
れていた私生活や家族関係が現れて来る。
死者の姿が見え、彼らと会話しているリバーは周囲の人々から見れば独り言が多い変人と見られ、
又本来担当していた事件をほっぼり出して迄スティービーの死の真相を追う姿は周囲からは妄想
を抱いている危うい姿と写り、上司からも精神鑑定を受けるように指示される。
仏頂面で不器用な初老のリバーは哀愁を感じさせるのです。
同僚であり特別な存在であったスティービーの事を理解出来ていなかった後悔の念や 目の前で
射殺されてしまった彼女を救う事が出来なかった絶望感等がリバーを苦しめ、その事が犯人を追
う執念を感じさせれれます。
普段は感情を表に出さないリバーもスティービーが軽口を叩いたり、冗談を言うと微笑み 楽し
そうな様子を見せますが、これは余計に痛々しく胸を打ちます。
そんなリバーに対しても上司である部長刑事クリスティーやカウンセラーの女性はそんなリバー
を理解しようと努力しながら優しく接し気遣う姿を見ると少し救いがあります。
カウンセラーとの会話で、
”You see ghosts” 「幽霊が見えるの?」
”Not ghosts”「幽霊ではない」
”Then what do you think ?” 「では何?」
”Manifest” 「”意志”だ」
字幕では ”Manifest”が「”意志”だ」となっているのですが、これがとても難しい。
BBCのライターさんが書き込んでいた文章から、この”manifest”の意味が、「心に語り掛けて来た
声の物理的に具象化された現象」 という様な説明がされていました。 それを聞いて、ようやく
何となく納得出来ました。
死者はスティービーの他にも何人か登場します。
始めの頃、リバーの自宅に若い女性がいるのですが、最初に見た時はリバーの娘か?等と思っ
てしまいました。 後に、この女性の正体と共に、この時の会話が事件の解決の布石であった
事が判明します。
又、殺人鬼トーマス・クリームは昔処刑された連続殺人鬼であり、リバーが読んでいる本(伝記?)
の主人公で、直接リバーとは関係無い存在ではあるものの、負や死の象徴として現れる様です。
作中でも ”I am death”と云いながらリバーを死に誘います。
スティービーの死の瞬間を移した監視カメラの映像を飽くことなく見続けるリバーは、次第に判明
するスティービーの側面、チラつく男性の影に嫉妬したり、遺品の中に口紅を見つけ 「口紅付け
てたのか・・・」と改めて気付いたりする姿は哀愁が漂います。
ただ、新しい相棒のアディール・アクタルはそんなリバーの行動は信じてはいないものの、控えに
根気よく彼をサポート、理解しようと努める姿がリバーの吸収剤の様な役割を果たし、素晴らしい
相棒を得て恵まれたのだと感じさせられます。
紆余曲折を経て、スティービーを殺害した犯人を突き止めたものの、その結果は残酷で衝撃的な事
実です。 最後の瞬間に犯人の顔を認識したであろうスティービーにとっては信じられない様な結
果で哀れでなりません。
リバーがスティービーと共に過ごした最後の晩をやり直す為に花束を持ってレストランを訪れ、彼
女と最後の晩餐を共にしする(勿論周囲にリバー1人しか見えないのだけど)。
そして、その後イルミネーションが輝く道で2人が楽し気に踊る姿。 この時流れる曲はドラマに何
度か挿入されるスティービーお気に入りの ”I Love to Love”(by Tina Charles).
この曲はドラマ中何度か挿入されるのですが、印象的で何時までも頭の中にリフレインしてしまいます。
そして、この時リバーはスティービーに対する自分の気持ちを告白し、又スティービーも気持ちを伝え、
それを聞いたリバーの嬉しそうな表情が忘れられず 思わず涙、涙で美しい背景と共に心に残ります。
最後に、アディールの赤ちゃんを抱っこさせら、ぎこちなくあやしながらも微笑むリバーの表情も
忘れられず、やっと心のわだかまりから解放させられたのではないかと思わせられる良いシーンで
した。
美男美女が出る訳でも無く、絵的には地味ながら 脚本の素晴らしさ、実力派の俳優陣の演技の素晴
らしさ等で余韻の残る 静かながらジックリ見せる英国ドラマらしい作品でした。
二コラ・ウォーカーはMI-5”Spooks”以来久し振りに見たのですが、 が、今回殆ど同時期に観て
いた「埋もれる殺意~39年目の真実~」”Unforgotten” でも刑事役でチョット混乱しましたが、
相変わらず地味ながら上手い役者さんだと思わせられました。
まだまだ書き足らない点も大く、想いは多々あるのですが、書き出すといい加減長くなりそうなの
でこの辺で止めておきます。
兎に角、
比類のないクライム・ドラマとして 英国ドラマ好きにお勧めしたいドラマです。