復興加速へ 新たな指針決定NHK
福島の復興の加速に向けた政府の新たな指針が、20日に閣議決定され、避難指示の解除によって帰還する住民に対し、1人あたり90万円の賠償金を追加で支払うなどとする、支援策が盛り込まれました。
しかし、焦点だった、帰還をあきらめて新たな土地で生活しようとする人への支援策は、賠償金の積み増し以外、具体的に示されませんでした。
原発事故からの復旧や復興の加速に向けた新たな指針は、安倍総理大臣や茂木経済産業大臣ら、関係閣僚が出席して開かれた、政府の原子力災害対策本部でまとめました。
この中で安倍総理大臣は、指針について「福島の復興なくして、日本の再生はない。関係閣僚は、今回の決定に従って、地元と十分に協議しながら、被災者の生活再建と、関係自治体の再生の道筋を具体化していってもらいたい」と述べました。
閣議決定された新たな指針では、▼避難指示が解除されたあとに、できるだけ早い帰還を望む人と、▼避難先など、新たな土地での生活を始めようとする人、双方に対する支援策を提示しています。
このうち、帰還する人に対しては、▼1人1人に線量計を渡し、被ばく線量を把握するとともに、測定結果を丁寧に説明することや、
▼保健師などによる健康相談を充実させること、
さらに、
▼不便な生活を強いることに対し、1人あたり90万円の賠償金を追加で支払うよう、東京電力に求めることなどが盛り込まれました。現地対策本部によりますと、この追加の賠償金の対象は、再来年ごろまでに避難指示が解除され、帰還した住民を想定しているということで、早期に避難指示が解除される可能性のある区域を念頭においているとみられます。
一方、焦点だった、帰還をあきらめて、新たな土地で生活しようとする人への支援策は、移住先での住宅を取得しやすいよう、土地と建物の賠償金を積み増すこと以外、具体的に示されませんでした。
今回の指針のベースとなった、与党が政府に提出した提言では、住民の帰還の判断材料になる、帰還できる時期の見通しを明確に示すなどとなっていましたが、今回の政府の指針では明らかにされず、課題が残りました。
20日に政府が決めた、福島の復興の加速に向けた新たな指針について、浪江町の馬場有町長は、「私たちの要望が反映された部分もあるが、合わない部分もある。特に、高線量地域の除染について、踏み込みが足りない。
長期的には、1ミリシーベルトを目標にするということは理解できるが、費用対効果だけでは除染はできない。とにかく、町を全面的に除染してもらって、私たちが目指す全町帰還を実現してほしい」と話しました。
一方、町に長期にわたり戻れない住民への支援については、「町外につくるコミュニティーを充実させる形で支援し、町内に戻る住民と連携させていかなくてはならない」と述べ、賠償だけでなく、きめ細かい支援が必要だという認識を示しました。
政府がまとめた復興加速の新たな指針で、帰還できない住民に対する支援の拡充が盛り込まれたことについて、住民からは、賠償などの金銭的な支援に加えて、移住先での医療や介護サービスなどの充実や、地域のつながりを維持することへの支援などを求める意見が聞かれました。
原発事故の避難区域に指定されている、福島県浪江町から避難していた鈴木充さん(70)は、ことし6月に、避難先の福島県いわき市に新たな住宅を建築しました。震災から2年以上、月に2回は自宅に一時帰宅し、掃除など帰還に向けた準備を続けてきましたが、自宅周辺は依然、1時間あたりおよそ5マイクロシーベルトと高い放射線量を記録し、将来の見通しが立たないことから、迷った末に帰還を諦め、新天地での生活再建を決断せざるを得ませんでした。しかし、鈴木さんは、移住先で周囲への遠慮から、病院に行くことをためらうことがあるなど、移住を決めた人が医療や介護、保育などの行政サービスを受けづらい現状があるといいます。
また、原発事故前から、地区の区長を務める鈴木さんは、家族や地域の住民がバラバラになってしまい、移住先で孤立する住民が相次いでいると指摘します。
一時帰宅して、地元の集会所を訪れるたびに、地区の住民たちが集まり、カラオケや伝統の踊りを楽しんだ原発事故前の生活を思い出し、金銭的な支援だけでなく、地域のつながりを維持するための支援が必要だと考えるといいます。鈴木さんは、「政府は、お金を出せばそれでいいということではなく、今後は避難者が新たな生活を始めたあとで、生活を再建するためにきめ細かいフォローが大事になると思う」と話していました。
12月20日 19時57分
福島の復興の加速に向けた政府の新たな指針が、20日に閣議決定され、避難指示の解除によって帰還する住民に対し、1人あたり90万円の賠償金を追加で支払うなどとする、支援策が盛り込まれました。
しかし、焦点だった、帰還をあきらめて新たな土地で生活しようとする人への支援策は、賠償金の積み増し以外、具体的に示されませんでした。
原発事故からの復旧や復興の加速に向けた新たな指針は、安倍総理大臣や茂木経済産業大臣ら、関係閣僚が出席して開かれた、政府の原子力災害対策本部でまとめました。
この中で安倍総理大臣は、指針について「福島の復興なくして、日本の再生はない。関係閣僚は、今回の決定に従って、地元と十分に協議しながら、被災者の生活再建と、関係自治体の再生の道筋を具体化していってもらいたい」と述べました。
閣議決定された新たな指針では、▼避難指示が解除されたあとに、できるだけ早い帰還を望む人と、▼避難先など、新たな土地での生活を始めようとする人、双方に対する支援策を提示しています。
このうち、帰還する人に対しては、▼1人1人に線量計を渡し、被ばく線量を把握するとともに、測定結果を丁寧に説明することや、
▼保健師などによる健康相談を充実させること、
さらに、
▼不便な生活を強いることに対し、1人あたり90万円の賠償金を追加で支払うよう、東京電力に求めることなどが盛り込まれました。現地対策本部によりますと、この追加の賠償金の対象は、再来年ごろまでに避難指示が解除され、帰還した住民を想定しているということで、早期に避難指示が解除される可能性のある区域を念頭においているとみられます。
一方、焦点だった、帰還をあきらめて、新たな土地で生活しようとする人への支援策は、移住先での住宅を取得しやすいよう、土地と建物の賠償金を積み増すこと以外、具体的に示されませんでした。
今回の指針のベースとなった、与党が政府に提出した提言では、住民の帰還の判断材料になる、帰還できる時期の見通しを明確に示すなどとなっていましたが、今回の政府の指針では明らかにされず、課題が残りました。
20日に政府が決めた、福島の復興の加速に向けた新たな指針について、浪江町の馬場有町長は、「私たちの要望が反映された部分もあるが、合わない部分もある。特に、高線量地域の除染について、踏み込みが足りない。
長期的には、1ミリシーベルトを目標にするということは理解できるが、費用対効果だけでは除染はできない。とにかく、町を全面的に除染してもらって、私たちが目指す全町帰還を実現してほしい」と話しました。
一方、町に長期にわたり戻れない住民への支援については、「町外につくるコミュニティーを充実させる形で支援し、町内に戻る住民と連携させていかなくてはならない」と述べ、賠償だけでなく、きめ細かい支援が必要だという認識を示しました。
政府がまとめた復興加速の新たな指針で、帰還できない住民に対する支援の拡充が盛り込まれたことについて、住民からは、賠償などの金銭的な支援に加えて、移住先での医療や介護サービスなどの充実や、地域のつながりを維持することへの支援などを求める意見が聞かれました。
原発事故の避難区域に指定されている、福島県浪江町から避難していた鈴木充さん(70)は、ことし6月に、避難先の福島県いわき市に新たな住宅を建築しました。震災から2年以上、月に2回は自宅に一時帰宅し、掃除など帰還に向けた準備を続けてきましたが、自宅周辺は依然、1時間あたりおよそ5マイクロシーベルトと高い放射線量を記録し、将来の見通しが立たないことから、迷った末に帰還を諦め、新天地での生活再建を決断せざるを得ませんでした。しかし、鈴木さんは、移住先で周囲への遠慮から、病院に行くことをためらうことがあるなど、移住を決めた人が医療や介護、保育などの行政サービスを受けづらい現状があるといいます。
また、原発事故前から、地区の区長を務める鈴木さんは、家族や地域の住民がバラバラになってしまい、移住先で孤立する住民が相次いでいると指摘します。
一時帰宅して、地元の集会所を訪れるたびに、地区の住民たちが集まり、カラオケや伝統の踊りを楽しんだ原発事故前の生活を思い出し、金銭的な支援だけでなく、地域のつながりを維持するための支援が必要だと考えるといいます。鈴木さんは、「政府は、お金を出せばそれでいいということではなく、今後は避難者が新たな生活を始めたあとで、生活を再建するためにきめ細かいフォローが大事になると思う」と話していました。
12月20日 19時57分