「農家の誇りが戻った」 南相馬の避難区域外で田植えNHK
「農家の誇りが戻った」 南相馬の避難区域外で田植え
東京電力福島第1原発事故による避難区域を除く地域で、今年から本格的な稲作を再開する南相馬市では5月に入り、田植えやその準備に取り組む農家の姿が見られるようになった。
同市鹿島区の村井利次さん(66)は3日、田植えを行った。「放射性物質への不安はあるが、このままにしておいても田んぼが駄目になるだけ」と、次男裕次さん(32)と共に1日かけて約50アールの水田で苗を植えた。連休中に計100アールの水田で田植えを行う予定だ。
植えた苗は県のオリジナル品種「天のつぶ」。倒れにくい性質から選んだ。村井さんは「(倒れて)稲が地面に付くと、セシウムを吸収するから」と話した。田植えに先駆けて4月20日ごろから行った代かきでも、土中の放射性物質を吸着するゼオライトや、根からの放射性物質吸収を抑制するカリウム肥料を散布し、放射性物質の対策を施した。
今後、水の管理や除草など稲の刈り取りまで気の抜けない作業が続くが、村井さんは「農家の誇りが戻ってきた」と笑顔を見せる。一方で、周辺の田んぼで作付けする農家はまだ少ない。「相馬野馬追で、騎馬武者たちが緑広がる田園を走るときの気持ちは何ともいえず良いものだ、とよく言っていた。あのころの光景が早く戻ってほしい」と願う。
南相馬市の避難区域外で今年、コメの作付けが行われる見込み面積は約94ヘクタール。市が目標に掲げた500ヘクタールを大きく下回り、試験栽培だった昨年の約122ヘクタールにも及ばない。市は作付けした農家に独自の補助制度を設けているが、収入の試算は作付けを自粛した場合の賠償額を下回った。農家の営農意欲をどのように回復させるか課題は大きい。
(2014年5月4日 福島民友ニュース)